エピローグ
「只今戻りましたー」
ドアが開き、平井が両手に買い物袋をぶら下げて入ってくる。その後ろから、缶ビールの箱を抱えた各務と棚田も続いた。
「お疲れ様です」
夏野が振り返る。
「今回は何もしてないのに飲み食いさせてもらうんですから、これくらいはしないと」
平井が袋をテーブルに置きながら言う。
「そうそう、夏野さんの手料理にありつけるなんて滅多にないですからね」
各務も箱を下ろしながら笑う。
「後片付けも頼んだからな」
田所がソファから声を投げる。
その時だった。
ドアをノックする音。
「はいはい」
ビールを置いた棚田がドアへ向かい、開ける。
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは、見覚えのある顔だった。
「雨宮さん!」
夏野が驚いたように声を上げる。
「どうしたんですか?」
「山岸警部から、小林さんが罪を認めたって連絡があったんです。それで……改めてちゃんとお礼が言いたくて」
少しだけ緊張したような笑顔。
「どうぞどうぞ、入って下さい。汚いところですみません」
平井がすかさず応じる。
「まっ、平井さん。調子が良いこと」
夏野が呆れたように言う。
「平井ちゃんは美人が好きだからね」
各務が横から茶々を入れる。
「各務さんだって美人は好きでしょ?」
「まあ、そりゃあね」
「平井さんも各務さんも、早く荷物運んじゃってくださいよ」
棚田が苦笑しながら促す。
「はいはい」
二人は軽口を叩きながら奥へと消える。
雨宮が室内を見回す。
「今日はなんか賑やかですね」
田所がゆっくりと答える。
「今日は雨宮さんの事件の打ち上げなんだ。良かったら参加していくかい?」
「良いんですか!?」
ぱっと表情が明るくなる。
「良いよ。雨宮さんの冤罪が晴れた打ち上げなんだから、むしろ主役だ」
「ありがとうございます!」
雨宮は嬉しそうに頭を下げ、そのまま夏野のもとへ向かう。
「私にも何か手伝わせてください」
「主役なんだから、ゆっくりしてたら?」
「手伝いたいんです。何かさせてもらえませんか?」
その言葉に、夏野は少しだけ笑った。
「じゃあ、一緒に作りましょ」
「はい!」
二人は並んで給湯室へ向かう。
その背中を見ながら、田所がぼそりと呟く。
「今日はいつもより豪勢な料理になりそうだな」
「はい。いつもより豪勢ですよ」
振り返らずに返す夏野の声。
「でも先生は食べ過ぎない様にしてくださいね。また太りますから」
「……藪蛇だったな」
田所は小さく肩を落とし、すごすごとソファへ戻る。
部屋の中には、笑い声と、食器の触れ合う音が少しずつ増えていく。
事件は終わり、日常が戻る。
だが――これがきっかけで――――




