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BBQの買い物2


「ていうかそろそろ肉を持ってくるのやめなさい!」

「はっ!?」

「なに驚いてるのよ。それで何事もなかったように精肉コーナーに向かわない」

「はっ!?」

 

 注意される度に言われて気づきましたみたいな反応をする凛。

 2人の攻防は俺への説教の間も続けられていた。


「コイツらコントでもやってんの? なあ良介」

「凛と関わるとコントみたいになる」

「それな。さすがの渚でもお手上げか」


 凛は制御できるような人間じゃないからな。それでも渚はなかなか制御できてると思うけど。


「なあ杏梨、キムチってありだと思う?」

「ん? ありっしょ! 肉ばっかじゃ面白みねーし! なんか漬物系も適当にいれよーぜ! あたし柚系のやつ好きなんだよな」


 あー柚系ね。あんまし好きじゃねーな……


「あー!! わかる! 俺もめっちゃ好きだよそれ!」

「わかりやす! ぜってー好きじゃないだろお前! 一瞬顔が歪んでたし、しかも間があったし!」

「ええ!? なんでわかったの!?」

「いや、今理由いったし! 我慢しすぎておかしくなってんじゃねーかお前、無理すんな」


 とかいいつつ杏梨は普通に柚味の漬物をかごに入れた。……杏梨の場合は否定も肯定も関係ないきがする。どっちにしろ自分の好きにするじゃんか。


「しょーがねーだろ、取り繕うの苦手なんだよ。てか杏梨もそうゆうの苦手なほうだろ」

「あたしは分かってても無視してるだけだから」

「なお悪いだろ!」


 やんちゃギャルはゲラゲラ笑いながら食材を物色する。杏梨らしいけどな、俺もなんか好きなもん入れるか。意外とお菓子とかありかもしんないな。甘いものもあっても口直しになるだろうし。


 俺はフラフラと製菓コーナーに向かってチョコやらポテチなんかを選定する。たまにスーパーでお菓子を見るとやたら楽しいんだよな、小さい頃を思い出すというか。


「おやおや? りょうくん! いなくなったと思ったらこんなところに!」

「……一番騒がしいのが来たな」

「なんで残念そうなの!? 美少女の登場なのに!」

「自分のこと美少女とかいう奴はちょっと……」

「あ! まだマシュマロいれてないの!? BBQといったらマシュマロだよ、ズババイと入れたまえ!」

「話し聞かない奴ばっかか」


 今日も凛は無敵である。マシュマロね、たしか焼くとうまいんだっけか。うるさいし入れてやるか。俺は目についたマシュマロを1袋取った。


「ちょ、ちょっと! まさかその小粒マシュ入れるつもりじゃないでしょーね!」

「小粒マシュ? まあこれ入れるけど」

「だあああああ!!」

「うわぁ! なんだよ!」

 仰け反って奇声を上げられたら誰でもビビると思う。夏休みで頭どうにかしちゃってるぞコイツ。


「そんな小粒はマシュマロじゃない! でっかいマシュマロを棒にぶっさして焼くのがBBQの流儀ってもんなのだよりょうくん! 君はまだ分かってないね。それに大きめのビスケットも買いなさい、焼いたマシュマロを挟むのです! 至高の食べ物なのです!」


「めんどくさ!? 自分でやれよ!」

「もっともな意見だね! なっはっは!」

「引くのはやぁ……」


 凛はでかいマシュマロとでかいビスケットを持って渚が管理する買い物かごへ向かっていった。あれなら許されるだろうな、数は普通だし。つか嵐みたいな奴だな、結局なにしに来たんだよ。マシュマロついでに俺に絡んできたのか? まあいいけどさ。 


 甘いものでもと思ったけどマシュマロあれば充分だよな。うーん……BBQって他に何が必要だ? とりあえず焼いたら旨そうなもん持ってくか、ポテチはさすがにいらないな。


 俺は余計なことしないで皆の様子をみるか。変なことして凛が2人いるみたいになってもしょうがないしな。

 ということで野菜を見てる渚の所に戻ってみるとカゴの中がかなり充実してきていた。


 肉もカルビだけじゃなくハラミやロース、豚や鳥が入ってるし、ソーセージもあった。知らないうちに海鮮系も回ったらしく色々と入っていた。この時点で正直食べきれる気がしない。


「めっちゃ入ってんじゃん、食べきれんのかよ」

「ん? ああいいのよ、食べきれなきゃ持って帰って適当に料理でもすれば」

「そんな感じなのか」

「どうせ夏休みなら時間はいくらでもあるしね、次の日にでもまた集まって皆で食べちゃいましょ」

「いいなそれ! 夏休みっぽい」

「それね、暇人の集まりともいうけどね」


 渚と軽く笑いあった俺は野菜も見てみることにした。野菜コーナーには凛と杏梨もいるし、ちょっと声をかけてみるか。


「2人ともなんかいいもんあったか?」

「あん? やっぱBBQには玉ねぎだよな」


 杏梨は玉ねぎがいくつか入ってる袋を俺に見せてきた。


「おお、いいね」

「だろ? あとは何すっかなー」


 杏梨がキョロキョロしだすと今度は凛が持ってる物を見せてきた。


「アタシはじゃがいもです!」

「じゃがいも? カレーでもつくんのか?」


 もうまったくもって食べきれないなと思っていると、凛は指をふって訂正してくる。


「チッチッチ、りょうくん甘いよ! じゃがいもは湿らした新聞紙で包んだあと銀紙で包んで火の中に直接入れるのですよ!」

「え、なんだそれ」

「ホックホックのジャガバターを食させてしんぜよう! なーはっは!」

「お、おお!」


 いつもと違いやたらと説得力のある凛に気圧された俺は内容をあまり理解せずに頷かされることとなった。ホントに大丈夫なのだろうか、頷いたあとから心配になってきたな。


 2人と入れる野菜が被らないようにと思ったけどなんか大丈夫そうだ。俺はちょっと離れてキノコでも入れるか。


 キノコといえばやっぱり椎茸だよな、これは確実だ。あとはよくわかんないけどエリンギとマッシュルームも持って行くか。ダメなら渚にせき止められるだろうからな。


「じゃあこれ」


 俺は渚の表情をみながらキノコ達をかごに投入する。一瞥した渚はなにも言わずに視線を戻した。どうやらセーフだったらしい。


「あ、良介もやしも持ってきて」

「おう、了解」


 そういや焼きそばも作るって言ってたか。マジで食べきれないなこれ。俺は笑いながらもやしを探しにいく。渚は焼きそばが好きなのかな? さっきからやたらこだわっている気がするな。


「ほい持ってきたぞ、焼きそば星人」

「誰が焼きそば星人よ、ちょっと好物なだけよ悪い?」


 軽い冗談のような口調ではあるが、渚の目は殺人鬼のそれである。おれは首を高速でふって退散する。凛の奴はよくあれに向かって懲りずに肉を持っていけるな、大したもんだよ。


 ちょっと離れて見てると渚が俺達を呼びつけた。


「そろそろいいんじゃないかしら。あとは当日に氷を買って行けば完璧だと思うわよ」

「そうかな!? あと2かごは足りてないと思うよ!」

 

 これには渚ではなく杏梨が呆れながら反応する。


「お前どんだけ食べるつもりだよ、もう2かご分一杯なんだぞ」

「1人1かごで丁度いいじゃないの!」

「よくねーよ! 大食い選手権じゃねーぞ!」


 杏梨は物理的に凛の頭を押さえつけた。めんどくさくなったなあれは。凛は「ぐぬう」とかいいながら抵抗してる。杏梨の押さえつけた手

の隙間からは挫けることのない闘志のついた瞳が覗いていた。


「まあ、付き合うことはないな、さっさとレジいこーぜ」

「それもそうね」

 俺と渚は争う2人を尻目に退散する。杏梨1人の犠牲ですんだのだからよしとしよう。勝つためには切り捨てなければならない時があるものなのだ。俺はフォートファイトで3人(トリオ)を組んでいるからそれを知っている。


「尊い犠牲でした、ウヒヒ」

 もちろん俺の隣で酷い笑い方をしてるコイツも知っている。が、コイツの場合は助けられる状況でも助けないで笑ってる事がある。人が苦しんでいるのを楽しむサイコ野郎である。


 会計はまとめて渚が払った。後で集計するからまとめて1人が払ったほうが後で楽らしい。2人で袋に品を詰めて、それが終わる頃になってようやく杏梨と凛がやってきた。


「もー!! まだまだ買うものあったのに!」

「もうねーだろ! つか会計は?」

「とりあえず私が払っておいたわよ」

「お、マジ? ごちーっす!」

「ごちーっす!」


 数瞬前まで争っていたと思えないチームワークで、奢ってもらったことにしようとしてる。よかった俺が払ってなくて、でも渚がその程度の煽りに屈するとも思えないけど。


「そうねそんな態度をとるなら私にも考えがあるわよ? ……良介ちょっとこっちに」


 手招きされた俺は大人しく従う。渚は俺の耳に口を近付けて2人をみてニヤついた。

 

「じゃあ良介これからあの2人の好きな人を教えてあげるわね」

「はあ!?ってめ渚!」

「ちょ渚それは酷いよ!」


 わざと聞こえるように1度俺から顔を離して口にした渚は、小さな声で「とりあえず驚いた顔であの2人をみなさい」そういった。


「…………」


 驚いたふり…… 口に手をあてて目を見開いとけばいけるな。2人は俺の表情を見てあわてふためいた。つかこの2人は好きな人がいたのか? 杏梨は知ってるけど別の奴に変わったとか? これだけ焦ってるんじゃ変わったのか。凛に関してはまったくの未知数だな。


「ウヒャヒャヒャヒャ!」

「うわあ……ひでえ」

 ここの所最高の高笑いが出たよ。


「なっ!? な、渚の嘘に決まってんだろ!? あたしはもっとオラついた奴がタイプだし、誰がお前を……」

「そ、そうだそうだ! あれだけやって信じなかったのに渚が言ったら信じるってどんだけ…」

 顔を赤らめた2人は異常なまでに恥ずかしがっている。そんなに俺に聞かれたくないのかよ、ちょっとショックだぞ。最近仲良くなったと思ってたのに。意味わからないこと口走ってるし。


「ウヒッ! ちょ、ちょっとやめて! 私を笑い殺すつもりなの!? ウヒャ! う、うそうそ! 教えてないから!」

「んなわけねーだろ! こっち見て驚いてたじゃねーか!」

「りょうくんのあんな反応みたことないよ!」

 

 杏梨はもはや胸ぐらを掴み、凛は肩を揺さぶり始めた。


「ウヒヒッ……ただ驚いたふりをしろって言っただけよ! それでこの反応なんだもの! ウヒャ!」

「テメー渚! やりやがったな!」

「い、いけいけりーさん! アタシのぶんまで!」


 馬鹿にされた杏梨はさらに激高したが、凛は好きな人がバレてないとわかるとホッとしたのか杏梨に全てをたくした。


「待ちなさい杏梨」

「あ!?」

「よく考えてみなさいよ、指示されたとはいえ実行したのは良介よ、誰が悪いか一目瞭然じゃない?」


 まずいここは口を挟まないと!


「どう考えてもお前じゃねーか!」


 俺は指差して渚に対抗したんだが杏梨がなぜか考え込みはじめた。それをみた渚は素知らぬ顔で黙っている。こ、コイツ。


「ん……あ? 確かに良介がわりいか?」

「お、おおーい! 杏梨さん? おかしなことになってるよ?」

「そもそもお前がぁ!」


 杏梨の腕が空を裂く。明らかに俺の胸元を狙っている。


「ひえっ! 何でそうなった!? どんな思考回路してんだこのばか!」

「誰がバカだって!? 人の心を弄びやがって!」

「いつどこで!? 俺は渚に言われた通りにしただけだって!」

「それが()りいんだろうが! 渚のやることなんてろくでもないってお前が一番わかってんだろうが! それに付き合ってんだから同罪だろ! 死ね!」

「んでそーなんだよ!」



「あー痛てえ…… 重ぇ……」

「情けない!! 男児であればシャキリと歩きたまえ!」


 凛が背中をひっぱたいてくる。痛いのが更に痛い。鈍い声を漏らしても凛はビシバシと俺を叩く、かなりご立腹だ。


 杏梨にボコされた後、食料品を杏梨の家に預けるための道すがら、スーパーのカゴ2つ分も持たされた俺は奴隷のような扱いを受けていた。

 杏梨と凛は不機嫌だし渚は愉しそうだ。ろくな場面じゃないことだけは誰だってわかる。


「おーし、着いたぞ良介」

「んじゃ後は下ごしらえして終わりね」


 小綺麗な美容院、杏梨の家は2回目か…… もう腕が上がらん。


「はあ、はあ、ちょっと休憩」

「だらしないぞ!」

「悪かったって凛…… 許してくれよ」

「む…… そんなに素直に謝られるとこっちが悪い気分になるじゃないですか」


 それは凛がお人好しだからだな、口に出しては言わないけど。渚とか杏梨ならそんなこと一切気にしないだろうに。


「おっしじゃあ全員あがれー おい! 早く荷物持ってこいよ良介! それないとなんも進まねーぞ!」

「とろい奴は何をしてもとろいわね」


 ……ほらな。


 はいと返事しながら俺は自分にムチを入れて立ち上がる。その時片手にかかる重さが和らいだ。


「…………」


 凛が黙って袋を1つ持ってくれた。やっぱこいつは悪に染まれないタイプだな。純粋にいい奴だ。

 しかもちょっと恥ずかしがってるし。


「下ごしらえとか誰かできんのかな」

「アタシはできない」

「……だろうな」

「ええ!?」


 荷物持ってやったのにそんな反応しちゃうのって顔で俺を見る凛。俺達は爆笑しながら荷物を運んだ。

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