どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい
下ごしらえは凛が食材をバラまいて杏梨をぶちギレさしたり、杏梨が肉を洗剤で洗い出したりと話題に事欠かない作業だった。意外にも俺と渚が主戦力で何とかした。主に渚が。
次はもっと料理に精通した人間を呼ぶべきだと俺は思う。例えば料理部に所属していて俺達と仲がいい人を。別に呼びたいからとかじゃなくそうすべきだからだ。だから別に呼びたいわけじゃない。
不思議なのだ天塚桃花を呼んでいないことが。普通に生徒会入ればいいんだよ。凛だって部活と両立してんだし。
とまあ過ぎたことは仕方ない。
大変だったけど今日はBBQ当日だ。
「あっつ……」
「おい何バテてんだよ、早く火つけろって」
「あついっていってんのに火つけろってどんな神経してんだよ」
「あ?」
ちょっと文句たれただけなのに杏梨はチャッカマンをカチカチ鳴らしながら俺に押し付けてくる。
「あッッッつくない!! つかあぶねぇ!! 加減!加減覚えて!」
「あっはっは! ダセー! ちゃんと火はつけてねーだろ」
「ここはなに? 動物園かなにかかしら?」
「……ヤンキーの集会みたいな会話だね」
うるさいことに顔をしかめた渚と、チャッカマンを押し付けてることにドン引きした凛だ。凛は川辺に机と椅子をセットしたりと働いているが、渚はなんか黒い傘をさして微動だにしていない。
「わかったから! やるやる! 杏梨暇なら飲み物取ってくれよ」
BBQ日よりというか日差しが強すぎる。雲1つない晴天だ。準備の時みたいに荷物の殆どを運ばされてすでにバテ気味なんだけど、休む暇もないらしい。
「は? あんでだよ」
「あんでもくそもないよ! とってくれよ頼むから!」
喉が渇き過ぎて反抗する気も起きない。
「しょーがねーな」
幸いにも機嫌がいいのか杏梨は素直? に飲み物を手渡してくれた。
銀色のカンに"生"とか"ドライ"とか書いてある飲み物だ。
「サンキュー! ……ってビールじゃねーかこれっ!! 飲めるか!」
「あっはっはナイス反応! さすが良介! でもそれノンアルだからいけんよ」
「ノンアルでもこんなの飲めるか! 苦いだけだろ! 普通にソフトドリンクをくれよ! できればスポーツドリンク!」
「ワガママな奴だなったく」
いやに素直な杏梨はノンアルビールを戻して別の飲み物を持ってきた。青いカンだからやっと水分補給ができると喜んで受け取った俺はまた叫ぶことになる。
「冷やし甘酒じゃねーか!! 酒から離れろよ不良娘!」
「いっひっひダメだ! 反応よすぎてつい」
「てか最初から狙ってるラインナップじゃん! 普通もってこないだろどっちも!」
「まーまー固いこと言うなよ良介。今日は無礼講だろ?」
「無礼講の意味わかんないで使ってんだろ杏梨…… 酒=無礼講みたいに思ってそうだなお前!」
「そりゃそうだろ、無礼講だよ無礼講」
「ダメだ……とりあえず普通の飲み物くれよ」
「あーん? あたしの酒が飲めねーってかあ?」
「うわダル! 誰か助けてー!」
俺達のやりとりを傍観していた渚はテキパキ働いていた凛に声をかけた。
「あそこダメそうだから凛がやったほうがいいんじゃない?」
「……なんで渚は自分がやろうと思わないのでしょうか」
「?」
「い、いやだからアタシは今手が離せないから渚やってよ!」
「嫌よ。炭とか汚れそうじゃない」
その一言で一気に顔が痩けた凛は混沌としたBBQ場をさらりと見渡した。動かない渚、煽る杏梨、騒ぐ良介。自分が働いた椅子の設置くらいしか準備は進んでいなかった。
彼女はこう思ったのだろう、自分がやるしかないのかと。そして彼女の頬が痩けたのだ。
「が、頑張らせていただきます」
凛の動きはさらに無駄のない素早いものに変わった。スパグパッて感じだ。
俺はさすがに凛に悪いと思って火ぐらいはちゃんとおこそうと飲み物は後回しにした。といっても炭を重ねて中に着火材を入れて火をつけるだけだ。ちゃんと予習してきたから完璧だ。
「ほれ」
「冷た!」
杏梨の声と共に後頭部にヒヤリとした刺激があった。振り返るとニカッと笑っている杏梨がパチモンスターを差し出していた。
「サンキュー…… やっと水分がとれる」
「つかこれも水分補給にならんくね? 身体に悪そう」
「杏梨はまだゲーマーってもんがわかってないらしいな」
俺はパチモンを開封すると一気に飲み干した。
「くぅーー! これこれ! 生き返るどこかテンションまで上がるぜ!」
「……ドーピングかよ、ゲーマーってキモいな」
"キモい"その単語を投げつけられた俺は膝から崩れ落ちた。確かに俺はキモいゲーマーだった、でも渚のおかげで立ち直り見た目も改善した。もうキモいと言われることは殆どなくなったのだ。なのにまたしてもその言葉を無慈悲に投げつけられる、これほど悲しいことはあるだろうか。
しかもだ、俺単体ならまだしも"ゲーマー"というくくりでキモいと言わせてしまった。全国にいるゲーマー達への風評被害だ。俺はいいんだ慣れてるから。でも他のゲーマーにまで迷惑をかけることになってしまって、それが俺にはたまらなく悔しかった。
「ず、ずまん……全国のゲーマーだち! ずまん!」
「うえ…… なんか急に泣き出したんだけど、あたしそんな酷いこといったか? なあ渚。 いつももっといっても平気じゃん」
俺のガチ泣きに杏梨はドン引きして渚のところまで下がっていった。そして頼った相手の返答で彼女はさらに困惑することとなった。
「ゲーマーの性ね」
「……意味わかんねえ」
そして凛が珍しくため息をつく。
「結局アタシが全部やるんですね……」
*
「……じゃ、じゃあカンパーイ……」
「「「カンパーイ!!」」」
凛は乾杯の音頭をとったのだが精魂がつきていた。椅子やテーブルの設置。火おこしに食材の準備、果てはゴミの仕分け袋をテーブルに張り付けるなど気のきいたことまですべて1人でやったからだ。
俺は荷物運んで疲れたけどその後はずっと杏梨と格闘してたからな、体力は完全に復活してる。あの後いっさい手伝ってないからなあ…… 申し訳ない。
自棄糞にぐいっとジュースを飲み干した凛にすかさずコーラをつぎたす。
「ささ、どうぞどうぞ」
「あ、これはどうも」
杏梨も負い目を感じていたのかノンアルビールを持って待ち構えている。ホントに負い目を感じるならノンアルビールじゃないと思うけどな。しかも早く飲めという無言の圧力をかけている。
「ぷはー」
「…………」
杏梨は黙って酌をする。
「あ……どうも」
なぜこんなことになっているのかそんな顔でキョドった凛はまたしても一気飲み。
これは面白いと思ったのか今度は渚が正面からやってきて甘酒を開けた。
「ありがとう凛よく働いてくれたわね、これはお礼よ」
「う、うぷ」
そうして注がれた甘酒を凛は死んだ目で見つめていた。
「さてゲテモノも片付い…… 凛にお礼もいったしBBQをしましょ? 良介なに網なんて置いてるのよ、鉄板を置きなさい」
コイツ凛をゴミ箱扱いしてるぞ…… つっこむのも面倒だわ。
「え? 肉焼かないの?」
「それから杏梨、野菜と豚バラだして」
「あん? なんであたしが」
俺の質問は普通にスルーされた。ほんとコイツ…… 杏梨もいっても無駄と諦めたのか肩を竦めてクーラーボックスにツカツカと向かっていった。
「……甘酒おいし」
テンション低いなあ。ちょっと前の不機嫌だった時より絡みずらいぞ。なんならロン毛バージョンの俺に話しかけるよりハードル高い。めげたスーパー陽キャはそれほどめんどくさい。大人しくアミを鉄板に交換する作業をしてたほうがマシだな。聞こえないフリしよ。
「まずは油よ」
凛のことなぞ頭の片隅にも置いてなさそうな口振りで渚は言った。
「いややれよ!!」
「……嫌よ油跳ねそーじゃない」
「お嬢様か!」
「そうよ?」
「………………」
なに当たり前のこと言ってんだ、そんな顔で俺はバカにされる。彼女に楯突くのは無駄なのだと再三に渡る戒めを自身に唱えた俺は、油をひいて鉄板を温める。
「ほら持ってきたぞ」
「んじゃ野菜入れてくれ」
焼きそば用カット野菜の袋を開けた杏梨は鉄板に豪快にぶちまけた。火力の調整が難しいBBQで俺達は素人、炭も大量にくべてあるから家庭では出せないような強火だ。ジュワっと油と水分が反発する音がして直ぐに野菜が焼けるいい匂いがした。
「なんか野菜炒めでも旨そうだなこれ」
「もう本格中華じゃね?」
そういって俺と杏梨はうなった。
「そろそろお肉も入れたほうがいいわよ」
「はいはい、了解」
「この女ホントになんもしねーな」
諦めてイエスマンの俺と呆れた杏梨は先ほどの焼き増しのような光景で肉を入れた。
「やっぱ肉入れるとめっちゃいい匂いすんな」
「なんかテンション上がってきた! めっちゃいい匂いじゃんこれ! おい凛! いつまでボケっとしてんだよ、焼きそば作んぞ!」
杏梨は普通に痛そうな威力のはたきを凛の頭にぶつけた。
「い、いたい! なにすんですかりーさん!」
「やっと治ったか。やっぱ壊れた家電は叩いて治すに限るよな」
「アタシは家電じゃないですよ! てか家電も叩いたら壊れるから!」
2人の攻防を尻目に俺は具材をかき混ぜる。
「良介、肉に火が通ったら具材を一度皿に乗せて麺を焼くわよ」
「え、そのまま麺入れればいいんじゃね?」
「なにもわかってないわね、焼きそばは麺をしっかり焼いてから具材と混ぜるほうがずっと美味しくできるのよ。それに水を入れるのは最低限でいいの、べちょべちょの焼きそばなんて食べたくないでしょ。これだから庶民は」
「お嬢様が庶民の食いもん食うなよ」
「何か言った?」
「いってないです……」
その後は復活した凛も戦力になって焼きそばを作った。渚の言う通りに麺を必要以上に焼いて具材と混ぜると、ホントに普通の焼きそばとはなんか違った感じの焼きそばができた。
なんというか日光を凄い反射してる。
「なんでこんなにテカテカしてんだこの焼きそば」
「豚バラの油がしっかり麺に絡まってるってのもあるけど、焼いてる途中に私がたしといたのよ油」
その言葉を聞いた凛は焼きそばをマジマジと見つめた。
「おお……カロリー爆弾ですね」
「あたしはチーズのせっかな」
「更に背徳的っ!」
「あと卵」
「暴力!!」
「マヨネーズ」
「ヒッなんて発想」
川辺のゴツゴツした石の上に腰を抜かした凛を見て杏梨は爆笑している。俺的には凛の演技力のほうがよっぽど恐ろしいけど、ホントに驚いてるように見える。
「はい」
振り返るとなぜか渚が焼きそばを俺に差し出していた。
「ん? お、おお。ありがとう」
「なにキョドってんのよ、相変わらずね」
「いや渚がなんかしてくれるなんて槍でもふりそうだな」
「はあ? どれだけ私が貴方のために」
「わかってる! わかってるから!」
ほっといてたら永遠に文句を聞かされそうだからな無理やり止めた。
「んで?」
「なんだよ、んでって」
渚は察しが悪いとでも言いたげにため息をついた。
「だからどうなのよ、どっちが本命?」
顎で指し示しているのは焼きそばに色んな物を乗せて爆笑してる2人だ。
「はあ!?」
「じゃあ実乃莉? それとも本気で桃花?」
「い、いやまて! なんでそうなるんだよ!」
「なるわよそりゃ。 これだけ色んな女子と関わって誰も好きにならないほうがおかしいじゃない」
「別にねーよそんなの!」
「なによ男らしくないわね」
「なんで!?」
突き放したかと思ったら今度は肩を組まれた。
「まあ私達のなかじゃない、気になってるのは? 私的には凛か杏梨だと思ってるんだけど」
終始ニヤニヤしてる渚。趣味の悪い奴だよ、だからクラスの女子から嫌われるんだよ。俺は凛をチラリと見て思いつく。
「い、いや」
「いや?」
「いえねーって」
「やっぱいるんじゃない」
更に口角を上げる渚。
「ま、まあな」
「で、誰?」
「…………だよ」
「え?」
「だから俺が気になってんのはお前だよ渚!」
よしやりきった。まあでもどうせ渚には簡単に看破されてんだろうけどさ。そう思って渚を見ると、見たことのない表情をしていた。
「え? え?」
目が泳いで顔が赤い。体をすくませて挙動がおかしい。明らかに渚が恥ずかしがっていた。
「え、い、いや! 冗談だって! 冗談!」
本気で取られたらまずい。
「……なんてね」
と思いきや渚はいきなりいつもの不遜な態度の渚に戻ってしまった。
「え」
「私を騙そうなんて100年早いのよ、貴方顔赤いわよ?」
「はあ!?」
顔を触るとやたらと熱い。マジで赤くなってそうだ。
「ウヒヒ。でも少しは会話も上達したんじゃない? けど誰が気になってるって言った時、最初に目を向けたのはあの娘だったわね?」
いやらしい笑みだ。
「おい! 勘違いすんなよ!」
「はいはい。 好きなだけよね? わかってるわかってる」
「わかってねーじゃねーか!」
渚はスタスタと2の元に歩いていって俺をチラチラ見ながら内緒話しをしだした。その間「えーっ!」とか「キャーっ!」なんて奇声が聞こえてきて非常に気分が重くなる。
にしても……
最初に見たのはあの娘。 あいつ勝手に選択肢から外して最初に見たって決めつけてたけど、俺が最初に見たのはどう考えたって…… まあいいか。 どっちにしろさ。
「どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい」
いままでありがとうございました!
完結です!
小説書くのって大変ですね笑
キャラクターの口癖とか一人称とか考えるだけでも時間かかりました。同じ一人称でも平仮名やカタカナで使い分けたりして工夫したつもりでしたけど、どうしても同じになってしまう人も結構いました。現実だったら違和感バリバリですしね笑 誰が喋っているのか分かりやすくを意識していましたがどうでしたか? 自分で読むと知ってる前提だから分からないんですよね笑 ちゃんと理解できる文になっていたら幸いです。
次は近未来?系のファンタジーを書こうと思ってます。そのうち投稿するんでよろしくお願いします。




