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BBQの買い物


 インドア派の俺にとってアウトドアはハードルが高い。というか川でBBQとかどこのヤンキーだよとか思ってしまう、ただの思い込みだけど。何もヤンキーしかいないわけじゃないもんな。


よく考えてみたらバスケだって室内だしインドアか? それは揚げ足ってもんか。意外とバスケもやるし俺はアウトドアもいけるのかもしれない。


 そんなアホなことを考えていたらあんまし寝れなかった。

 しかも今日は前日のただ準備をする日なのに、自分が情けなくて鼻で笑ってしまう。


 羽村に向かって自転車をこいでいた俺はなぜか緊張していた。まあ理由は分かってるんだけどな。

 俺はBBQを友達としっかりやったことがない、ゆえにBBQというものの仕組みを完璧に理解できてないからだ。


 初めてフタバックスのコーヒーを頼むときの感じに似ている。どこで注文すればいいのか分からないし、ショートとかトールとかサイズは意味が分からないし、俺は初めてのフタバックスで何も買わずに店を出た男だ。


 だって店員さんに聞くの恥ずかしいだろ。聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥というけど、一時の恥に耐えられない人間もいるってことだ。


 とまあ話しは脱線したけど今日の準備にしても正直なところ何を準備するのかよく分からない。初めてってのは何事も緊張するもんなのだ。だけど最近の俺はこの緊張感が少し心地よく感じれるようになってきている。新しいことにワクワクするようになってきて、また新しいことを求めている。


 自分でもビックリだ。


「早く来すぎたか」


 といいつつ缶コーヒーでも開けて優雅にお茶でもしてたらカッコいいかもしれない、と一瞬ひらめいてしまったがあまりにも中2くさいというかあからさまなカッコつけだ。


 じゃあジュースでも買うかな水とか絶対買いたくないし、なんかもったいない気がするんだよな水を買うのって、蛇口捻ればでてくるのに金を払う、うーんやっぱもったいない。


 自販機に金を入れた時だ、首筋になにか冷たい物を当てられた。


「冷たっ!!」

「あっはっは! なんだよその動き! ダサッ!」

「なにすんだよ杏梨!」


 振り返ると腹を抱えて俺を指差したギャルがミネラルウォーターを抱えていた。ふん、やはりギャルはバカな生き物、超低コストで手に入る水を買っていやがる!


「あ~ウケる。なんだよ飲みもん買うの? あっ手が滑った」


 白々しい口調の杏梨は両手どころか体まで使って自販機のボタンを押せるだけ押した。


「ガキかよ! てかテンション高!」

「いやー夏休み最高だな良介!」


 なんか凛がもう1人いるみたいな感じだ。普通にダルい。


「しかもコーンスープ!? なんで夏場にあったかい飲み物が入ってんだよこの自販機!」

「あっはっは! マジじゃん!」

「なんだよこれ~いらねーよ……」


 がっくりと肩を落とすとコーンスープが俺の手から引っこ抜かれる。


「いただきっ! なっはっは! いらないならもらゴクゴク……」

「「あ……」」


 うむも言わさぬ動きで凛はコーンスープを飲み干していく。俺も杏梨もただその光景を呆然と眺めていた。


「プハー! あっついね今日も!」

「そりゃ熱いわな」

 胸元をつかんでバタバタと風を送り込んでいる凛は目の毒だ。飲み物を取られた文句を言おうと思ったけど凛のことを見れなくて怯んでしまった。


「つかお前汗ヤバ! きたねーから近づくんじゃねーよ!」

「ええ~そんなこと言わずにこんにちはのハグしましょーよー!」

「したことねーよ!」

「あんなこともこんなこともした仲じゃない! 忘れたとは言わせないよ!」


 ああ。やっぱ本家のダルさはちょっと段違いだったな、浮き足だってる杏梨が足元にも及んでないよ、なんなら宙に浮いちゃってるよこれ。


「ちょっと貴女達いい加減にしてよ、恥ずかしくて近づけないじゃない。どれだけ私を待機させるつもりよ」


 眉をひそめた渚はダルそうに近寄ってくる。言い方的にかなり前から見てたみたいだ。コイツ人目とか気にするたまか? パフォーマンスだな。


「あ! 渚やっほー! 今日もあっついね!」

「……夏より暑苦しいわね」

「よく言われます! なっはっは!」


 渚の嫌味を意に介さない。というか確実に凛も夏休みパワーでテンション上がってるんだよな。つかマジで汗ヤバいぞコイツ、自転車できてホットのコーンスープなんて一気飲みするから。


「つか離れろベタベタするから!」

「え~~チュー」


 とここでマジの限界に達した杏梨が凛に拳骨を振り下ろした。


「いっった~~!!」

 頭のてっぺんを押さえて座り込む凛と、拳を握りしめてヤンキー顔してる杏梨の図はかなり面白い。


「……あと5分は様子を見るべきだったわね」

「珍しく選択ミスか?」

「はあ。こんなところで失敗なんて私もまだまだね」


 そんなこといいながら渚の口元は緩んでいる。面白いもんな、恥ずかしくても近くで見てたいよな。ツンデレかコイツは。


「でBBQの準備ってどこいくんだよ」

「ん? そんなのスーパーとかでしょ、なにいってんのよ」

「あ、そうですか」


 スーパーだけ? なんか炭とかはいらないのかね。と俺が不思議そうな顔をしていると、渚がニヤリと笑った。


「そーゆーことね。貴方さてはBBQなんてしたことないから何を準備すればいいかもよくわかってないんでしょ」

「はあ!? んなことねーし!」

「そうやってムキになってるのが証拠じゃない」


 俺達がもめていると凛が俺達の間に顔を入れて来た。


「おお! りょうくんの初めてですと! しっかたないな~このBBQ マエストロ凛と呼ばれたワタシに全てまっかせなさい!」


 胸を叩いてどこか誇らしげな凛のドヤ顔は腹が立つ。


「いや、お前に任せるのは良介に任せるよりヤベーだろ」


 杏梨にしてはまともな意見だな、たまにはいいこと言うね。


「またまたそんなこといってー! りーさんはツンデレさんなのかな? かな?」

「また殴られるぞ……」

 俺が注意してる途中で後ろにまわって盾にされた。俺ごとはっ倒しにこないあたり杏梨も一応は理性を保っているらしい。

 

 凛が杏梨を煽るのもいつもの風景になってきたな。


「……はあ、まあいいか。とりあえず駅前のスーパー行こーぜ」

「あら、珍しく許すのね」

「つか渚はあたしと凛がバトってんの楽しんでんだろ?」

「そんなことないわよ?」

「嘘つけ! 口元がにやけてんだよお前は!」

「……あら失礼、ウヒ」


 あーあ、ついにウヒり出したよこの人は。口元押さえてるけどもうバレバレだ。


 集合早々大騒ぎだ。これでまともに準備できんのか?

 疑問に思っていると凛が隣にやってきて説明してくれた。


「りょうくんはボッチ極めてたから知らないかもですけど、最近のBBQ場は食材だけ持って行けば全部レンタルできるんです! というか食材も出てくるとこあるしね! あとは紙コップとかお皿とかお箸らへんあれば大丈夫なのです!」


 凛も俺のボッチ生活をイジれる余裕が出てきたらしい。


「……お、おう、ありがとな。なんか凛がまともなこといってんだけど」

「口だけならなんとでも言えるだろ」

「今日は雪でも降るんじゃないかしら」


 俺達の忌憚のない意見にさすがの凛も目元をひくひくさせている。

 

「し、しどい……」


 日頃の行いだな。誰もカバーしてやる素振りすら見せない。これもまたこのメンバーの笑いだな。凛が落ち込んだふりをしたとこで一斉に笑い出す。


 そして誰かしらが一歩踏み出したのを皮切りに、俺達はスーパーへ買い物をしに向かった。


 外は35度を越えた猛暑、ちょっと遠くを見れば陽炎が見える地獄の様相だ。スーパーの空調は俺達にとってもはや天国に違いなかった。

 汗ばんだ体にかかる涼しい風が心地いい。もう俺はここから出ないと決めた。


「決めました! アタシはもうここから出ない!」

 俺の思考回路は凛と全く一緒だった。俺は口に出してないからまだセーフってことで、つか皆も同じこと思ってそうだけどな。


「あたしは冷凍食品と戯れてくんわ」

「ホントにやめなさいよ? 炎上するわよ」


 渚が保護者になるって普段ゲームやってると考えられないんだよな。むしろ止められる側の人間なわけで。


「じょーだんだよ! じょーだん! やるわけねーだろ!」

 豪快に笑ってる杏梨はほっといたら本気でやりかねない危うさがある。俺は渚と目を合わせて頷いた。


 もしもやろうとしてたら全力で止める。けど既にことを済ませていたら知らない人のふりをしてトンズラするぞと。人間時には引くことも大切だ、恋愛でもよくいうからな押して駄目なら引いてみろと。恋愛なんてしたことねーけど。


 こういう奴は1度痛い目をみないとわからないのであろう。……いや、痛い目をみたからって杏梨が変わるとは思えない。逆ギレするまであるぞ、やっぱ俺達が目を離さないべきだな。


「おい、お前ら本気で疑ってるだろ?」

「「…………」」

「あたしのことなんだと思ってんだよ……」


 なんだと聞かれたら答えるのが情けだって国民的アニメに教わった俺はしっかり答えてやることにした。


「非常識女ヤンキー」

「言い得て妙ね」

「よーし! じゃあ飲みもんは度数2桁からだかんなお前ら!」

「渚ヤバイってこのDQNどうにかしてくれ」

「……手にもってるだけなら警察呼ばれたりしないわよね、めんどくさいのは嫌よ私」


 バカにされてぶちギレた杏梨は日本酒を顔の位置まで持ち上げてイキっている。なんかギャルって大人っぽく見えるからあんまし違和感はないな。ワンチャン買えそうではあるな、止めるけど。


「お! 料理酒? りーさんがなにかBBQでアウトドア料理作ってくれるんですか!? あっお肉は確保したよ!」


 飲酒という選択肢がない純粋無垢な凛は両手に顔が隠れるくらいまで肉のパックを積み上げてきた。肉ってこんなに食えるのかな。


「私はどこをどうツッコめばいいのかしら良介」

「意外と肉ってたくさん買うんだな、つかカルビばっかじゃん」

「……ダメだ良介を頼りにした私が悪かったわ」


 渚は大きく息を吸った。


「まず杏梨はお酒を置きなさい、私達が悪かったから。それから凛はお肉を8割戻してきなさい! あと杏梨が料理なんてするわけないでしょ! どうみても飲むようじゃない! あと良介は使えない!」

「俺だけただの悪口じゃん!」


 それからギャーギャー騒ぐ杏梨になんとか酒を戻させて、全員で肉を見に行くことになった。やっぱあの量は相当多いみたいだった。


「ほら、カルビ戻して! それから焼きそば用に豚肉と、油ばっかじゃくどいからロースとか鶏肉入れて! あとウィンナーなんかも入れなさい! なんでカルビだけなのよ!」


 なんか渚はまだあったまってるらしい、ちょっと面白い。なんやかんや面倒見のいい奴だ。俺達は各々で言われた通りに好きな肉を入れていく。


「お! 味付け肉じゃん、こうゆうの好きなんだよなあたし」

「え、邪道じゃね? 焼き肉は塩か焼き肉のタレだろ、なんか味付け肉って古くなった肉を誤魔化すために味付けてるような気がして嫌なんだよな」


 都市伝説かどうかわからないけどそんな話しを聞いたことがあるんだよな、あとはひき肉にしたり惣菜にしたりとか。


「───おい、良介」

 ぶちギレて殴りかかってくるかと思ったが、杏梨は残念そうな顔で俺を見ている。

 

「な、なんだよ」

「だからお前はモテないんだよ」

「はあ? なんでそうなんだよ」


 肩に手を置かれて首までふられている。そんな悪いこといったか俺は。

 俺は首を傾げた。すると凛が現在進行形でバカみたいに持ってきてる肉を選別していた渚が、こちらを見もせずにペラペラと話しだす。


「まず、女性のことは否定しない、女って生き物は共感して欲しい生き物なの。なになにが好きって言われたら俺も好きって言えばいいだけの話ね、覚えときなさい。それから丁寧に人の好きな物を真っ向から否定して喧嘩売ってるみたいになってたし。杏梨じゃなかったらもう口もきいてもらえなくなっててもおかしくないわよ」


「……おう」


「そうね例えば……フォートファイト? そんなもんガキのやるゲームだろ? 普通の高校生はカラオケいったりボーリングしたりやることいっぱいあるじゃねーか! お前友達いねーのかよ! つか俺はRPGのほうが面白いと思うけどな。こんな感じに言われたらムカつくでしょ?」


「……はい」


「さっきのはそれと同じようなことだから。否定から入らない、相手の好きなものには共感するの、ね? 杏梨」

「なんかあたしの言いたいこと以上に渚がいってくれたわ、良介ボコボコじゃん」

 杏梨はそういってヘラヘラと嗤った。

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