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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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変化する意思


「って早!」


 アタシはりょうくんの背中に重なるように手を伸ばし、その手を下ろす。

 ああいくら手を伸ばしても届かない、これが貴方とアタシの距離なのね!


 ……と一人寸劇を頭のなかでやってもさみしいだけ。


 せっかく部活も生徒会も休みだったのに……加えて渚もりーさんも既に下校済みという絶好のチャンスにも関わらずこれなんだもんなあ。


 残されたアタシはため息混じりに応急セットを詰めていく。


 そして呟く。


「……やっぱり好きだなあ」


 ……な、何をくちばしってんだアタシは、恥ずかしい。

 誰もいないのに勝手に身悶えしたアタシを見たらりょうくんはドン引きした顔をするだろう。

 容易に想像がついちゃいますもんね。


 誰もみてないですよね!?

 周囲をキョロキョロと見回して安全確保するとひとまずは安心だ。


「いつからだろ?」


 前から好意はあったはず、というかアタシはりょうくんのファンだから、あの日試合を見に行ったんだから。


 それがりょうくんの足を引っ張ることになるなんて思いもしないで……


 はっ! 危ない、よくない思考に陥るところだった。

 落ち込んでる姿を見せると生徒会のメンバーが心配しますからね。 

 アタシも常に楽しい気持ちでいたいし。


 うーん、りょうくんが貞男になってた時は罪悪感とかでそんなこと考えてる暇もなかったし……やっぱり仲直りというか全部告白して許してもらえた時かな。


 その前からちょっとドキドキしてたけど、アタシは許してもらえてない人に恋するほど卑怯な人間じゃないはず!

 ……そのはず!


 さっきもちょっと大胆すぎたかな?

 もちろん応急措置はちゃんとやったけど、りょうくんに抱きしめられてから忘れられないんですよね、あの感覚が。


 な、なんていうか満たされているような幸福な感覚。

 男の人の体ってすごい固くて、りょうくん大きいし……

 さっきも触らなくてもいいところを無駄に触ったり、わざわざ腕を組んで治療したりして自分の体を押し付けたりした。


 で、でもりょうくんだって悪いんだ、アタシの告白をことごとく袖にするから……

 というか普通気づくんじゃないかな!?

 もしかして気づいてないフリされてるのかな!? まさかアタシはキープ!?


「……アタシ、マンモスヤバいかもしれない」


 普段なら異性に対して絶対しない自身の異常行動と思考の乱れ、カバンに顔を埋めると顔の熱が自分に帰ってきて不快だった。  

 そしてりょうくんが座っていた席をおもむろに眺めると、そこにはあってはならないものがポツンと転がっていた。

 

「あ、りょうくんのスマホ……」


 これでりょうくんの家にいく口実が……


『ピロン!』


 りょうくんのスマホから何かの知らせだ。

 失くしたと勘違いしてるかもしれないし早く届けないと!


 そう思ってスマホを掴もうとしたアタシは画面を見て止まる。

 なぜなら。


『宮内に謝れば?キモいよお前』


 PINEの通知が届いていたからだ。


 アタシは人の携帯とかそんなことアッサリ忘れて電源ボタンを押した。


「ついた……」


 良かったりょうくんは画面ロックしない人らしい。

 ……無用心だ。


 けど今はそれどころじゃない、アタシは「ゴメン」とつぶやいてPINEのアプリを開き食い入るようにそれを見る。


 それは個人へ相談できるようにって作られたりょうくん専用のアカウントだった。


 そしてそこには川上良介に向けられた悪意、暴言がみっしりと書き込まれていて、それも1人じゃない。スクロールしていくとどうやら始まりはアカウントを作ったその日からみたいで、みやちゃんが教室に来て暴れてからは悪化してる。


 そんな……知らなかった。

 な、なんでこんな単純なことにも気付けなかったの?

 アタシは自分の不甲斐なさに怒りを通り越して呆れてしまう。


 何をやっているんだアタシは、りょうくんが大変だって時に。

 今の今までアタシはりょうくんがみやちゃんに責められていたことだって忘れてた。


 自分の感情を優先してりょうくんの心労を察しようともしなかった。

 恥ずかしい……ホントに失望する。


「あーもー! それにしてもこれは許せないよ!」


 今は自分を責めるよりもこの状況をどうにかしないと!

 いつも通り平気そうな顔をしてるけどりょうくんだってショックなはずだ、アタシならもうとっくに折れているような炎上っぷりですよこれ。


 それもこれも…………みやちゃんのせいだ。


 宮内美香。名前を考えるだけで腹の底から嫌な感情がわき出てくる。

 この感覚は大っ嫌い、アタシのポリシーに反するしこの前も渚に窘められたばっかりだし。

 アタシを嫌う相手ともどうにか仲良くする、自分で決めたことだ。


 なんでそんなことを勝手に決めて勝手に守っているのか理由は単純、怖いから。アタシは悪意に人一倍敏感で苦手だ。

 ムカつくとかやり返そうとか考える前に怖くなる。


 人に嫌われるのが怖い。

 だから多少のことなら迎合するし、苦手意識をもつ相手とだって仲良くする。

 りーさんとかるいちんとかごっちんと話す時はいつも緊張するんですよね、素の状態で怖いんだもん。


 りーさんは最近慣れてきたけど。


 こんな情けないアタシだけど、友達が責められたり喧嘩してる所をみるのはもっと嫌いだ。

 だから脊髄反射てきなあれで止めに入って怒られる。


 あそこで喧嘩はやめよーとか言えればかっこいいんだけどね、アタシはいっつも震えるだけで何もできない。

 そんな自分が嫌いだ。


 そして今も、バスケにおいて尊敬していて異性として慕っているクラスメイトが不特定多数に糾弾され、しかもその主悪が特定できているのにも関わらずアタシは行動を起こそうかどうか迷っている、本物のヘタレだ。


 渚には自分が決めたことを貫けと言われた。りーさんにはハッキリしろって言われた。りょうくんはいつだってアタシがピンチの時に助けてくれるヒーローで、憧れの人だ。


 ……確かにアタシは皆と仲良くするって決めた。それは例外なくアタシ自身を嫌う人だって根気よく仲良くしていくつもりだ。


 それでもだ。


 アタシはアタシの()()な人に、()()()()()()人が嫌がらせを続けると言うなら、変えよう。


 "意思"を曲げよう。


 自分の中で意識の切り替えをした瞬間、ごちゃごちゃと絡まっていた選択肢がすんなりとほどけて、アタシの中に溶け込んで一本化する。


 そうだ人に何を言われたからってその通りにしなければいけないわけじゃない。

 なんでアタシはこんなに悩んでいたんだろう?


 仲良しの渚に言われたことだからそうしなきゃって固定概念があったのかも……

 そもそも渚だってクラスの男子全員に告白させるって目標を途中で取り下げたらしいし、ずっと猫をかぶっていたらしい!


 アタシなんてずっと仲良しだと思ってたのに渚は心を開いてくれていなかったのだ、しどい!

 これはズババイと文句の一言でもいうべきでは?


 ……と思ったけど丸め込まれる想像しか出来ないのが辛いですね。


 でもそうだ、うん。今アタシが考えてる()()は自分の意思。アタシがアタシで考えた最適な選択で、今までのアタシの定則に少しだけ触れる。


 だからアタシのルールブックに付け加えよう。


「アタシの大好きな人に仇なす相手はその限りじゃない!」


 口に出したらさらにスッキリしましたね!

 よっしそうなったら協力者を探さないと……うーん。

 

 アタシがやろうとすることに乗っかってくれる人……渚? は絶対止めてくるだろうし。

 りーさんはライバルだから論外。


 となるとやっぱことちゃんがいいかな?


 うん、それがいい!

 それにこの携帯もついでにことちゃんに連絡すればいいんだから、一石二鳥! 善は急げ!


 電話するとことちゃんは2つ返事でOKをくれた。

 兄弟して頼りになるなんて血筋は争えないな……というかアタシは後輩にすがる頼りない先輩じゃないかな? ……まあことちゃんには元より残念な人扱いされてるし平気平気!

 

 アタシは1年生の教室にスパグパっと向かった。


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