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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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やってそうな2人


 人の上に立つ人間というのは他人の心情を顧みない人が多いと思う。

 俺の主観だけど。


「おつとめご苦労貞男、じゃなくて乱闘男だったっな」


 ただパワーでクラスカーストのトップ層にいるこの男、矢神剛と話すと俺の主観は間違ってないんじゃないかと思ってしまう。


「俺は一切手を出してないんだけど」

「あ? 前にやったんだろ?」


 中学の時の話しかよ。


 あれだけ宮内が俺にキレていればホントの話しと思う奴もいるよな、喧嘩したってのは間違ってないし。


 ただあそこまで発狂していると何がホントの話しなのか信用できなくなる人も大勢いるだろう、そこは俺にとって好都合だな。


 てかコイツいちいち高圧的だな、怖いんですけど。


「前……まあそうだけど」

「やっぱそうじゃねーかよ、つかお前のせいで全国大会の出場が取り消しになったってマジ?」


 なるほど。

 やけに教室が静かだと思っていたけど、皆の代理が矢神ってわけだ。

 ……なかなかの視線シャワーじゃないか。


 俺が休みの間に誰が聞くのか算段がついていたんだろうな、嫌だねまったく。


「……そうなるかな」

「うわ、貞男貞男とは思ってたけど引くわー。おい! マジらしいぜ? 宮内の言ってたこと全部ホントらしい!」


 矢神はクラス中に届く野太い声でスクープを一瞬にしてクラスメイト達に共有した。


 は? おいおい全部ホントって下着ドロ、万引き、クスリもってことじゃねーかよこの馬鹿。


 ……なんでこうなんだヤンキーってやつは。


 ……そして陰キャってやつはなんで大声で反論ができないのか。


 俺が呆気にとられているうちに俺の悪名がクラス中に轟いてしまった。皆が皆鵜呑みにはしないかもしれないけど明らかにかなりの人間が俺を見てしかめ面をしていた。


 あーあ、謹慎明け1発目からこれですか。

 

 この矢神って男は俺に恨みでもあるのかね、ことある毎に不利益を被っている気がしてならない。


 反論しない友達も少ない俺みたいな奴は攻撃しやすいだろうな。

 いや攻撃とすら思ってなさそう、矢神からしたら通り道の小石を蹴飛ばして退かしてるようなもんだろ。


「えっと、喧嘩しただけなんだけど……」


 俺の呟きは喧騒に書き消され、そして皆が口々に俺の悪口や宮内さんの悪口、擁護をしている。


 悪い流れを引いてしまった。


 本来なら『弱って可哀想な宮内さん』が一番の懸念だった。

 けどこれは普通に俺が全責任を押し付けられるような流れだ。


 想像していたよりヤバイ状況じゃねーかよ、どうしよう。


「あ? 声が小さくて聞こえないんだけど!」


 俺にずかずかと歩み寄ってきた金髪の女は()()()クラス中に聞こえるように声を張った。


 ……わざとだと思いたい、いやこれは9割本気で言ってるな。


 杏梨の声はよく響く、彼女を知ってる人間限定で。

 だからクラスの喧騒は少し小さくなってまたこっちに視線が集まった。


 単純にまだ何かあるのか? っていう好奇心だろう。


 杏梨も俺を睨んでいる。

 ちゃんと説明しろよって後押しだ、これを無下にするわけにはいかない。俺にとって見逃せないチャンスだし、何よりここで気合いを入れないと後が怖い。


「……お、俺がやったのは喧嘩だけで、後は全部風評被害だから!」


 しんと静まる教室、皆が何を信じるのか一瞬の思考を巡らせたその時、また杏梨が動いた。


「そりゃそうだよな、良介に下着を盗む度胸なんてないでしょ。つかクスリやってるならもうちょいテンション高くね? ダウナー?」


「いややってねーから! そこまでテンション低くもないから!」


 目の前のギャルは顔を崩してからからと笑った。


「あれ? やっぱテンション高いじゃん、アッパーだった?」


 おちょくられてんな。

 でも彼女なりの手助けだ、これは俺が悪い奴じゃないってデモンストレーションで、珍しいことに杏梨から愉快な会話を持ちかけてきている。

 

 杏梨はリーダーシップをとるのが上手い、さっきも自分の立場をわきまえた上での声量で人目を集めていたし。杏梨が学校で幅を利かせているのもそれの積み重ねなのかもしれない。


 性格の割りに搦め手も使うってところが面白い、普段はイノシンみたいな性格してるのに、意外と計算高いのかもしれない。

 

「ちげーよ! つかさっきから俺よりよっぽど詳しそうだよな!? リアルな感じで話すの止めてもらえますかね、怖いから!」


「別に普通に話してるだけじゃん、リアルもクソもねーから」


 ハンと鼻で笑う杏梨。

 

「そうゆうとこだよ、てか見た目的にも一番やってそうじゃん」

「はあ? お前人を見た目で判断するなって習わなかったの?」


 だんだん言い合いみたいになってきたけど、クラスの会話から俺への暴言は減ってるように感じる。

 つかそもそも悪口が俺に聞こえてるし、チラチラ見たりとか気をつけろよな、バレバレなんだよ皆。


「杏梨こそちょっと前まで俺が映画のお化けに似てるからって貞男って呼んでたじゃねーかよ!」


「それは皆がそう呼んでるからあたしもそうしてただけだし、てか昔のこと掘り出すとかどんだけ必死なんだよ、論点ズレてね?」


 1寸のズレもないけど?

 睨んどけば恐怖で思考停止するとか思ってそうなやり口だな、俺はお前の視線には慣れてんだっての。


「そんな昔でもないし、明らかに俺の見た目で判断してただろ!」

「チッ、めんどくさい。普段からそんくらい言い返せよな! それだけいえてれば下着ドロとか、万引きとか、クスリやってるなんて噂になんねーから! 主張しろよバカ」


 吐き捨てるようにいい放った杏梨の言葉に思い当たり過ぎて絶句した。

 言うだけあってハッキリ言ってくれますね。


 口をパクパクしてる俺を見た杏梨は口の端を持ち上げて勝ち誇った顔をすると、桃花のいるほうへ向かっていった。


 ……負けた。


「川上ってあんな感じなのか……」

「杏梨といいあってたよ、ヤバくない?」

「でもどうなんだろうな、島崎とあれだけ言い合えるって相当度胸あるし、むしろクスリくらいやってそうなきが……」

「宮内のやつイカれてたしあいつ被害者なんじゃね?」

「でも美香ちゃん普段はあそこまで酷くないんだけどなあ」


 クラスはもっぱら俺達の噂で持ちきりだ。

 ただやっぱり俺に聞こえないように話せないのかよ、人の気持ちとか推し量ったことありますか? みなさん。


 何か杏梨とのこ芝居も少しだけ好転したかな? ってくらいだな。

 杏梨には悪いけど、素行の悪い奴と付き合ってると思われたらそうなるよな。


 アッパーとダウナーは禁止用語だろ。


「というか良介は私が好き過ぎて他の女は目に入らないって言ってたし、下着泥棒はしないんじゃないかしら?」


 噂話に聞き耳を立てていると、わが校誇る美少女2人がやってきた。


「え、ええ!? そ、そうなの!?」

 

 また俺のあらぬ噂が広まっていく、他の女は目に入らないって台詞でざわめきが一段と大きくなる。

 そしてもう1人は本気で驚いてるしなんかの作戦じゃないのかよ。

 渚のアドリブだな、凛がついていけないのも無理はないか。

 

「そうよ。だから盗むなら私の下着じゃない? でも盗まれてないし、違うと思うわよ?」


 え? 自信すご。渚の下着以外は俺が盗まないって作り話だとしても自信ありすぎだろ。

 そしてさも当然だというこの表情やけに説得力があるし、周りで「確かに」とかうなずいちゃってる奴がいる。


 何も確かじゃないっての。


「り、りょうくんが、な、渚のこと以外目に入らないって言ったの!?」


 案の定凛は話を鵜呑みにしてるし……


「そうね、あれから3回も告白されてるし」

「うそ!?」


 俺をほんの少し視線に入れて肩を竦めた渚、付きまとわれて迷惑してますみたいな反応してやがる。

 さすがに止めるか俺の名誉のためにも。


「まてまてさすがに盛り過ぎだろ!」

「ん?」

「ん? じゃねーよ! ……告白したのは最初の1回だけだろ!」


 何でこの告白した設定を俺は貫かなきゃならんのだ。


「……そうだった気がしないでもないわね」

「え!? 渚覚えてないの!?」


 この2人と話すってことは嫌でも目立つってことだ、2人とも自然と人目を集めしまうからな。

 それを見越して渚は囮をかって出てくれたらしい。


 杏梨といい渚といいマジで感謝だ。

 またライゼリアで何でも奢ろう、それじゃ安いくらい世話になってるけどな。


「そうね告白してきたの良介だけじゃないから別の人と勘違いしてたみたい、ごめんなさいね」


 教室の気温が5度くらい下がったぞ。

 目立つのは殺気だった女子とうなだれる男子だ。


 せっかくヘイトが別に向いてるんだから大人しくしとけよ……

 口の悪さとやることが反対なんだよコイツは。


 無駄な行動の裏には何か意味がある。今回のは単純に俺のためってとこだけど、自分を犠牲にするやり方は勘弁してもらいたい。

 

「スゴッ! アタシなんて告白されたこないよ!」

「「え!?」」


 うそだろ? いつも人を小馬鹿にしてる側の渚も驚いてるぞ。

 凛が告白されたことないってのはさすがに……

 でも嘘つくような奴じゃないし。マジ?


「ど、どうしたの2人とも。というか皆に見られてる」


 そりゃ捉えようによったら謙遜のしすぎで逆にムカつくって思われそうな発言だしな。

 ……まあ皆素直に驚いてるけど。凛が嘘つくような奴とは思ってないんだなやっぱ。


「……凛、ホントのことでもね口にしないほうがいいことってあるのよ?」

「お前が言うの?」

「……うるさいわね」

「はいすいません」

 

 ああ今のが口にしないほうがいいことか、わかりやすいなあ。


「口にしないほうがいいことが何なのかアタシにはわかんないけど、りょうくんが悪いことしない人だってことはわかるよ?」


「ホントにそうか?」


 ここで異論を口にしたのは以外な人物だった。

 人付き合いがうまく誰とでも仲良くしている野球部のイケメン、風見だった。



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