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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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説得


「……仕方ないわね、別に気が弱いことが悪いってわけじゃないのよ? それにこの前は杏梨と競り合っていたくらいだし、いざとなれば動くんでしょう。ただ私は凛にはそのままでいて欲しいの、気配りやで明るくて優しい凛でね。それに彼女、私達がなにをしなくても自滅してるじゃない。手を汚す必要すらない小物よ?」


 1度決めたことに背を向けた凛に怒った渚だけど、その実は凛に変わらないで欲しいという内容だった。


 誰とでも仲良くしている凛が宮内と敵対するのは見たくない、そうゆうことだ。

 けどそれにも裏があるんだと思う。


 渚は昔は素直な性格だったんだって聞いたことがある。ウソかと思ったけどそんな雰囲気でもなく、珍しく消沈ぎみで印象的だったので覚えている。


 嫌なことがあって性格が歪んで今みたいになってしまったって、そう言っていた。

 まあ今も俺にとっては悪い奴じゃないだけど。


 だからそう、渚は昔の自分と今の凛を重ねて見ているのかもしれない。

 コイツなんだかんだ凛に甘いとこがあるしな。


 だからそのまま明るくていい奴でいて欲しい、渚はそう言ってるんだ。

 宮内と敵対して人の腹の黒い部分に触れ、自分のようになってしまうのを恐れて。

 

 やたらと言葉重ねているが恐らくそれが言いたいことだ。

 そしてそれはちゃんと伝わっている。


 凛が嬉しそうに頷いたから間違いない。

 

「うん! 渚がそこまでいうなら行かないよ。ね、ことちゃん!」

「……頼りのリンリン先輩がほだされた。ちょっと頼りになるかは疑問が残ることになっちゃったけど」


 我が妹はガックリ肩を落とした。

 琴葉の奴……言いたいことは分かるけど言っちゃダメだろ。

 一応先輩だぞ。

 

「うう……後輩からの評価が物凄く下がってる」

「わ、悪いな凛。琴葉の奴いいたいこと何でも言っちゃうような奴だからさ、でも悪気はないと思うから許してやってくれ」


 凛なら許してくれるだろうけど、これを杏梨に向かってやったら俺は庇いきれるか分からない。

 殴られてもしらないからな。


「あーあ、リンリン先輩バスケしてればカッコいいのになー、視線恐怖症のお兄ちゃんが酷い目にあってきて、それでも勇気を持って謝ってくれたリンリン先輩はホントにカッコ良かっのになー」

「人がかばってる端から余計なこというな!」


 コイツ凛のこと恨んでやがるな、ちょっとだろうけど。

 あんなの俺も凛も被害者みたいなもんなんだ、もちろん手を出してしまった加害者でもあるけどさ。


 正直、凛を無理やりナンパしたあいつらのせいだと思ってるけど。


「ご、ごめ……じゃなくて! アタシ頼りがいのある先輩になるからね!」


 ごめんと言おうとして杏梨から一瞥をいただいたようだ。

 琴葉も見てたけどさすがにそれ以上何かを言うことはなかった。

 まあオーバーキルだからな、さすがに可哀想だと思ったのだろう、苦笑いで頷いていた。


「琴葉あたしが一緒にいってやろうか? うちのクラスで暴れたツケも返して貰わないとな」

「杏梨先輩!」


 うちの妹がキラキラした視線を杏梨へ送っている。

 タイミングがいいな、渡りに船って感じだ。


「良介、杏梨を止めなさい」


 渚様からの天啓が下った。逆らうものは天の(いかづち)に焼かれるって顔に書いてある。

 俺は頷くしかない。


「……了解」


 ……にしても杏梨のやつ、後輩からやたらと慕われるちょい悪の先輩かよ。

 もとはと言えばコイツが琴葉と凛を煽ったようなもんだったな。

 ややこしくしやがって。


「あ? 良介にあたしが止めれんの?」

「今度メロンパフェ奢るぞ?」

「………………」


 余裕の笑みを浮かべていた杏梨から笑みが消える。

 そして明らかに目が泳ぎだした。

 悩んでる悩んでる、もう1押しだな。


「あとライゼリア近くの洋菓子屋のメロンケーキ」


 キョロキョロと考えがまとまらない杏梨の目は、ケーキという単語を聞いて定まった。飢えた野生動物のような視線を俺に向けて、重々しくその口を開いた。


「……ワンホール」


「オーケー」


「決まりだな」


 その一言で杏梨は破顔した。


 ──落ちたな。


 ケーキって女子の好感度を稼ぐ最高のアイテムだと思うんだ。杏梨の機嫌も一瞬ですこぶる良くなったし。


「……いいか琴葉、女にはやらなきゃいけない時がくる。けど今回のはそうじゃない」


 見事な手のひら返しをしたにもかかわらず、何食わぬ顔で先輩風をふかしてくる杏梨、それをスルーした琴葉は俺に詰めよってきた。


「また1人あっという間に説得されたんだけど!? お金の力を使うなんて卑劣じゃん!」

「はっはっは! 甘いな、俺レベルの男にもなると使える物はなんでも使うんだよ! 俺にはこれくらいしかできないからな!」

「自慢にならないから! 成金ヤロウ!」

「んだと、学校帰りにしょっちゅうお菓子買ってやってる恩を忘れたのかお前は!」

「そんなの可愛い妹がいる兄なら当たり前だから! むしろブランドのバックでも買ってくる気概をみせてもらいたいもんだよ!」

「んだとー!」

「なにをー!」


 売り言葉に買い言葉、瞬く間にヒートアップした口喧嘩だが、そもそもの主旨は宮内さんに文句を言いに行くか、行かないかだ。

 それも俺のために行こうとしてくれてるから、俺としては嬉しい気持ちしかない。けどその行動は彼女達にプラスにならない。


 琴葉は更に問題児扱いされるし、杏梨はヤンキーとしての泊がまたしても上がってしまう。

 そして凛は皆と仲良くするって目標に反目してしまう。


 コイツらに宮内さんをツメる理由がないのだ。


「琴葉ちゃん私は何もするなとは言ってないわよ? わざわざ直接会いに行くのはリスクが高過ぎるから、それは辞めなさいっていってるの。そこまで宮内に痛い目をみせたいって言うなら、私がいい戦略を考えましょうか?」


 ……おい、お前は止める側だったじゃねーか。

 まあ直接じゃなければいいのか?


「な、渚先輩! さすが将来のお姉ちゃん頼りになる!」

「なんで私が姉にならなきゃならないのよ」


 抱きつこうとする琴葉の頭を押さえて渚は抵抗するも、絶望的運動神経が琴葉に敵うはずもなく、一瞬で押しきられてしまう。


「あ。……もう、凛が2人いるみたいね」

「リンリン先輩の後輩ですから! 魂を受け継いでます!」

「……意味が分からないのは兄譲りかしら?」

「俺はそこまでじゃない……」


 俺の呟きはスルーされ、琴葉は頼れる姉に甘えている。

 杏梨と凛はいつの間にか広げていた菓子をつまんで、くつろいでいた。一応こっちを気にして話しは聞いてるみたいだけど。


「それで渚先輩、作戦って?」


 琴葉は弛んでいた顔を引き締めた。


「簡単よ? やられたことをそのまま返すだけ、悪い噂を流されたならこっちも噂で返せばいいのよ」


 琴葉は渚がやるように手をアゴに当てて考えた。

 脳内で噂を流したらどうなるかシュミレーションしているのだろう。


「ああ、そういうことですね。足元が崩れ出してる宮内先輩にトドメを刺すなら、それぐらいが丁度いいかも。ヘタに手を出してこっちが悪者になるのもうまくないですし」


「話せば分かるじゃない、さすが琴葉ちゃんね」


 そうだな、恐れるべきは宮内さんが可哀想な子だって認識されてしまうことだと思う。

 そうなると全ての敵意が俺に向かってしまう。

 今は宮内さんがヒステリーを起こして、周りに当たっているから面倒な奴と思われている。


 でも俺達で責め立てて、視線恐怖症を悪化させて弱りでもしたら、その面倒が可哀想にシフトしてしまう可能性がある。


 それはかなりマズイのだ。


 だからこそ渚の作戦は理にかなっていて、彼女らしい作戦だと思う。

 俺達が影で宮内の悪い噂を流して、周囲の印象をもっと悪くしていく。


 きっとそれだけでも宮内は潰れるだろう、すでにそれほど彼女は逼迫した状況にあると思う。

 少なくともうちのクラスじゃヤバイ奴扱いだろうしな。


 なんでそこまでなったしまったのかは分からないし、知りたくもない。まあ俺の悪口を言い過ぎたってことだけど……どれだけ言えば嫌われるんだよ。


 よっぽどだぞ、カースト上位の奴が嫌われるほど悪口を垂れていたって。

 恨まれ過ぎだろ俺。


 話を聞かない敵、その一言ですませてもいい手合いだとは思う。

 杏梨も元からいけすかない奴と言っていたし、俺もどんな人間だったか思い出した。


 俺のデマを流したように虚言癖のようなものがあって、自分を大きく見せようとしたり、霊感があるとか人の気を引きたいかまってちゃんタイプだった。


 間違いなくいい奴ではない。


 ただ同じ視線恐怖症仲間として助けてやりたいって気持ちがあるのも確かで、フラれたのは俺のせいだって責任を感じてる面もある。

 複雑な気持ちだ。


 ここは悪そうな顔をしてる2人を止めておこう。


「算段をたててるとこ悪いけど、俺は別にそこまでするつもりないからな、できれば和解。もしくは干渉しないのが理想的だな」


 ついでに視線恐怖症との付き合い方も話せたらいいけど。


 俺の話を聞いた渚はわざと大きなため息を俺に聞こえるようについた。


「……始まった。──あのね、今回の相手は明確に敵よ? 杏梨の時とは違うの、黙ってたらやられるだけよ?」

「でも表沙汰になったし、向こうも簡単には手出しできないだろ?」


 なんせ今頃職員会議にあげられてる頃合いだし。

 てか渚のやつあの時杏梨の味方したことまだ根にもってやがるな。


「あのキチガイなのよ? なにするか分かったもんじゃないわよ」


 今度は自分の敵にまで手を差しのべるのか、渚のしかめっ面にそう書いてある。


「いいたいことは分かるけどさ、分かるだろ? 宮内さんは明らかに視線に反応してた、俺と同じなんだよ。なった理由が俺の悪口の言い過ぎで嫌われたからってのはあれだけど……」


「ほらみなさいよ、自分で敵だって分かってるじゃない」


 俺がどもっていると渚はその隙を見逃さない。

 これは彼女なりの思いやりだ、無下にするわけにはいかない。


「けどそれも元を辿れば俺の……いや、凛に絡んだ馬鹿のせいだろ? だとしたら今の所その馬鹿の被害者しか出てきてないし、被害者同士で潰し合うなんておかしいだろ」


「そんなもの関係ない今敵なのか味方なのか、それだけじゃない。今更理解を求めるなんて不可能だし」

「だからって弱ってる子にトドメを刺すなんて誰もやりたくないだろ。てか俺がイヤだ」


 それに俺の周りの奴がそんなことをしてるとこも見たくない。


「貴方いつから聖人君子になったのよ」

「……同じ視線恐怖症の辛さが分かるから、だからこれ以上酷くなる前に止めたいってだけだよ」


 分かってもらいたいその一心で、渚の目から視線を離さなかった。

 渚はいつものクセに加えて目を瞑り、たっぷり時間を使うと短く息を吐いた。


「……好きにしなさい。てことで琴葉ちゃんごめんなさい、私も手伝えないわよ」

「いえいえ大丈夫です、わたしも何もしないことにしましたから!」


 渚は少し驚いたが、2人はお互いに見合わせて微笑んだ。

 なにを通じあってるだよこの2人は。


「そう」

「はい!」

 

 まあ分かってもらえたなら良かった。

 けどこれで俺は宮内さんと1対1で戦わないといけなくなってしまった。しかも向こうは俺を倒すつもりで、俺は相手を助けようとするってハンデ付きの無理ゲーである。


 まあ無理ゲーはいつものことだしな、なんとかなるだろ。


 俺達の話を聞いて真剣に考え込んでいる凛をみながら、俺は楽観的な答えにたどり着いた。

 凛のやつ意外に責任感が強いからな、もう少し気楽に考えてもらいたいもんだ。


 そしてさっきから視野の端に映っている、人の部屋を家捜ししているギャルは俺のベットの下に手を突っ込んでいた。


「んで杏梨はなにしてんだよ」

「エロ本探し」

「……勘弁してください」



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