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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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近所迷惑な妹と兄


 帰宅しながら凛とたくさん話した。

 中学の頃の話しや、高一の頃の俺がどれだけ手強かったとか、皆と仲がいい凛でも好きじゃない人間もいるってこととか。


 凛が俺を認知できて俺にできなかったのは、成長期のせいだったらしい。中学の時は140センチ半ばくらいだったのが、今じゃ171もあるんだ、髪型も違うしわかるわけがない。


 俺に憧れてよく試合を見てくれていたってのは、なんか恥ずかしいけど嬉しかった。

 でもそのせいで余計に名乗り出れなかったことに責任を感じてしまったらしい。


 そして入学してから直ぐ、俺に気づいて聞き込みをした。それであの事件のあと俺がどんな境遇に置かれていたのか知って、憧れの人を潰してしまったとかなり自責したみたいだ。


 凛とのんびりチャリで並走しているんだけど、さっきから申し訳なさそうにしている。

 凛のせいじゃないって何度もいってるんだけどな、この話しをしたら毎回こうなりそうだ。


「でも俺はあの頃より充実してるからな、今やプロゲーマーだし」

「……何かなっとくいかないんだよね、りょうくんがプロゲーマーって、あんなにスポーツマンだったのに」

「いや、何で話したこともない俺がスポーツマンってわかるんだよ」

「見た目?」

「……そりゃそうか。でも最近の俺は明らかにゲームが好きそうな見た目だったろ?」

「確かに……」

 

 あの頃からゲームは好きでやってたし、人は見かけじゃないんだろうな。

 杏梨が見た目に反して恋愛音痴なのと一緒だ。


 凛は伏し目がちに俺を見て更に続けた。


「ホントにごめんね、あの話しが高校で広がっちゃう」

「だからもういいんだって、凛のせいじゃないんだから。まあこんなに近くの高校に通う俺のせいだよ、ホントなら遠くの誰もいない学校に行けばよかったんだよ」


 電車は視線がきついって理由もあって、自転車で通学できる距離に限られちゃったんだよな。

 ……一番の理由は成績だけど。


「うん」

「それより今は凛の方が心配だろ、俺はもう吹っ切れてるし。どうするんだよ、男子と女子どっちともと仲良くするって、結構大変だと思うぞ」


 というか無理ゲーだな。


「でもアタシ頑張るよ! りーさんに啖呵切っちゃったし、それに皆と仲良くなろうって今までやってきたのアタシだし。……誰かに嫌われるの嫌なんだよね」


「そうか」


 強いなあ。

 人の視線を避けていた俺とは大違いだ。

 "嫌われることを怖がるなよ"それを凛に言おうと思っていた。けど違うんだな、全員から好かれるって限りなく不可能なことを、彼女は貫きたいんだ。


 そんな軽い言葉をかけるべきじゃない。


 そもそも俺にだって嫌われる覚悟を持って暴露したに違いない。

 もし嫌われても、また1から仲良くなってやるって覚悟で。

 1年間以上も邪険に扱われてたにも関わらず、俺に話しかけていたんだから、そうなんだと思う。


 マジで悪いことしたなあ。


「でもどうすればいいかなんも思いつかないや!」


 凛は目を細めてニカッと笑いかけてきた。

 誰にでも向ける最高の笑顔、それは屈託なく差別もないきっと失くしちゃいけない素晴らしいモノだ。


 俺達生徒会は……いや、俺はこの笑顔を取り戻さないといけない。



 凛と別れたあと、薄暗い帰路をゆっくり帰っている。

 頭の中は依然として凛のことばかり、どうすれば男女の両立を図れるのか、黙考していた。


 恐らく渚あたりが妙案を出すんだろうけど、それでも俺は俺で貢献したい。

 友達としても、1年も無視し続けていた贖罪としても。


 ──ん?


 家の前に誰か立ってる。

 ミディアムヘアの片側を編み込んでる圧倒的美少女……琴葉か。


「お兄ちゃん! やっと帰ってきた!」

「おう、出迎えごくろう」

「なんでそんなに偉そうなの!? ってそんなことやってる場合じゃないって!」


 自転車から降りて押していると琴葉がまとわりついてきて、なんか騒いでる。

 まだ家に入ってなかったのか制服のまんまだ。

 ずっと待ってたのか?


「どうしたんだよ、ドラマの録画し忘れた? ウチって24時間録画じゃなかったっけ」

「いや違うよ! ……あ、今日見たいドラマあったんだったじゃないよっ!」

「……持ち直したな」

「じゃれてる場合じゃないだって、お兄ちゃん!」


 どうにもいつもの琴葉らしくない。いつもなら俺がからかわれる側なのに、今日は俺が勝ってるんだけど。

 やっと下克上が達せられたか。


「はいはいなんだよ?」

「お兄ちゃんが中学の時にやった、他校生ボコボコ事件が噂になってるんだよ!」


 なんか人聞きの悪い事件だな、元から悪いけどボコボコにはしてない、せいぜい頭かち割っただけですよ。

 ……まだボコボコのほうがマシかも。


「知ってるよ、クラスでも聞かれたし」

「んにゃーー! じゃあまた虐められてるの!? 大丈夫!? もし何かされたらあたしが詩織(しおり)ちゃん使って、ふんじばってやるからね!」


「近所迷惑だから変な咆哮上げんなよ、あと詩織ちゃんは使うな」


 詩織ちゃんは何者なんだよ。


 なんか久々に琴葉の過保護モードが発動してるらしい。心配かけてきたからな、でも大丈夫だって所を見せてやんないと。


「詩織ちゃん便利なのに!」

 相手も同じ理由でお前と付き合ってそうで怖いよ。


「俺はもう大丈夫、なんか視線もほとんど怖くないし、初対面でもかなり話せるようになったからな」

「普通になっただけじゃん! また戻ったらどうすんの!」

「うちから涌き出る謎の自信が俺を強くした」

 

 たぶん渚の得意を自信に変えるってトレーニングの成果だと思う。

 謎に自信が涌いてくるんだよな。


「ドヤ顔で意味わからないこと言われても余計心配だよ!」

「まあ今の所はドヤ顔できるくらい余裕があるってことだから……ヤバくなったら妹でも泣きつくし」

「そこは最後までカッコつけようよ……」


 憐憫の視線が突き刺さる。

 俺に過度な期待はしないで欲しいね。


「つかなに?待ってたの?」

「あ、ごまかした……まあいいか。そうだよこの薄暗やみの中お兄ちゃんが心配で待ってたんだからね! さすがわたし、世界妹ランキングNo.1なだけあるよ」


 琴葉ひ腕を組んでウンウン頷いている。

 世界お兄ちゃんランキングはあるかな? 俺は下から数えるほうが早そうだ。ないほうがいいや。


 ──にしても。


「お前も誤魔化してんじゃん…………ありがとな」


 こんなバカみたいな話の逸らし方をするってことは、きっと長時間待っていたに違いない。

 こーゆーとこで気を使う奴なんだよな。


 いい娘に育ち過ぎてお兄ちゃん困るよ、嫁に行くなんて言われたら頑固兄貴になっちゃうね。


 琴葉は恥ずかしのか「うるせー」と小突いてくる。

 それすら可愛いからな。


「じゃあホントに大丈夫なんだね?」


 琴葉は真剣な目で俺を見据えていた。ふざけたら本気で怒られそうだ。


()()大丈夫」

「わかった、でも1年の噂はわたしがどうにかするから安心してね! もはや1年はわたしの手中にあるといってもいいから!」

「いくら自信が涌いてくるっていっても、そこまで涌いてる奴を見ると自信なくなるな俺」


 冗談でもそんなこと口にしようと思えないよ。

 まあ琴葉はいつも通り頭のほうが沸いてるだけだ。でもホントに1年の噂はどうにかしてくれるんだろうな。


「自信とこの美貌だけが取り柄だからね! てかさっきから俺は俺はっていってるけど、誰か大丈夫じゃないの?」

「いやべつに」


 凛の話しは俺から言うことじゃないだろう、琴葉も思う所があるだろうしな。


「そう? それならいいけど。あ、そうそう大丈夫じゃないって言ったらーリンリン先輩が元気なくってさー、張り合いがないんだよねー」


 やけに間延びした話し方をして、伸びるたびに俺を見てくる。


「……へーそうなんだ」

「普段しないミスはするし、上の空で部活に全然集中できてないって感じでさ! ……お兄ちゃんなんか知ってるでしょ?」

 

 げ、バレてる。

 俺の考えを見透かしているかのように、琴葉は目を細めている。


「い、いや知らないけど」

「今つまったよね? やましいことがある証拠じゃん! 妹に隠し事なんて何様のつもり!」


 琴葉は鼻先が当たるほど肉薄してきた。


「いつから隠し事できない縛りやってたんだ俺」


「おら! 話しを逸らそうったって、そうは問屋が下ろさねえぜ! 吐いちまいな、吐いちまえば楽になれるぜ!」


 いきなり中腰になった琴葉が、親指で鼻を弾いた。

 江戸っ子?

 

 まあ凛がピンチだってことは話してもいいか。

 後輩に弱味を見せるのはプライドが許さないとか、そんなの無さそうだもんな。


「実は凛がクラスの女子に嫌われてるんだよ」

「リンリン先輩が嫌われるわけねえ、往生せんかわれ!」


 なぜか俺は妹に胸ぐらを掴まれている。


「いや、マジなんだって」


 琴葉にはそれだけいい先輩なんだろうけど、好きな男子を取られてしまった女子はお怒りみたいだ。


「……え、マジ?」


 やっと信じてくれたか。


「理由は嫉妬みたいだけどな、凛がモテ過ぎて女子の反感をくらってるらしい」


 驚いていた琴葉だったが、首を落とした。


「ええ……そんなこと……」


「俺もそんなことで嫌われるのかよって疑ったんだけどな、実際そうらしくてさ」


 琴葉は首を横に振って、それに合わせて手も振っている。


「いや、そんなの日常茶飯事じゃんっていいたかったの」

「はあ? 無視されたり嫌味言われたりがか?」

「うん。それはモテる女の宿命だね、とくにリンリン先輩はおっぱいでかいから余計かもね」


 琴葉は自分の胸をしかめっ面で持ち上げた。

 兄貴の前でやんなよそんなこと……


「それこそ、そんなことでって感じだな」

「そう? 男の人だったらチ──」

「はいストップ! 絶対にストップ!」


 こいつ平気で口に出すからな、一応外だし近所の視線もあるんだ、ただでさえロン毛で変なのがいるって噂だったのが、更に酷いことになんだろが。


 男は他人の股間がでかくてもスゲーってなるだけだし。


「大げさだなお兄ちゃんは、身長って言おうとしただけだよ」

「嘘つくな」

「外じゃ言わないから平気だよ、でもリンリン先輩が今さらそんなことでヘコむなんてなあ」


 追及されるのがめんどうになったのか、琴葉は重々しく凛の話題に戻した。


「それは渚が隠れ蓑になってたお陰で大丈夫だったらしい」

「じゃあ渚先輩がビッチから清楚化したせいで、リンリン先輩にってことね」

 

 なんでこんなに口が悪くなったんだよ、誰のせいだ!

 ……一緒にオンラインゲームやったせいか、いい影響がないな。


「あってるけどビッチは止めろ、渚も別にそんなんじゃないし」

「わかってるよ、言葉のあやって奴じゃん」

 

 俺の仲間にその言い草は許せない。

 琴葉に視線で講義すると、向こうが直ぐに折れた。


「悪かったよ、ごめんなさい」

「わかればいいんだよ」

「ホントに渚先輩好きだよね? 将来のお姉ちゃんは渚先輩で決まりかな」

「だからそうゆうのじゃねえって!」

「恥ずかしがることないのに」


 口をへのじに曲げて肩をすくめている、表情筋がすごいな。

 このままじゃ琴葉のペースに乗せられる、話題を元に戻さないと。


「だから琴葉も凛のこと気にかけてやってくれよ」

「……まさかお兄ちゃんに人の心配をする余裕があるなんて、世も末だね」

「本気で頼むからな」

「はいはい。ダメな兄、それでも頑張る琴葉いっきまーす!」


 玄関に走っていく琴葉は、俺を心配していたことなんて忘れてんだろうな。

 あんなんでも頼りになる奴だし、悪いようにはならないだろ。

 ……たぶん。


「……話さないほうがよかったかな」


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