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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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過去の失態


 不幸は重なるなんて言葉があるが、最近の俺は幸運が重なり過ぎていた。

 だからこれは均整をとるための調整が行われたのかもしれない。


「ん? 御劔か、なに? どうしたの」

 球技大会から御劔とは挨拶するくらいには仲良くなった。

 少しは話すしな。


「それなんだけどな」

 御劔にしては歯切れが悪く、いいずらそうにしてる。

 この場面をみた杏梨はまたイラついたのか、口を挟んできた。


「お前もかよ、ハッキリしろって!」

「お前もって言われてもね」

「さっきからハッキリしない奴ばっかりでイライラすんだよ」

 そういって凛と俺を指さした。なんで巻き込まれてんの、俺関係なくない?


「ハハハ、悪いね、ちょっと聞きづらい内容だったからさ」

 こんな爽やかイケメンにも聞きづらいことなんてあるのか。

 

「それで?」

 気になるし、ちゃんと聞いておこう。 

 球技大会の時も御劔からの話しだったしな。


「うん、実はさっき聞いた話しでね、良介のことなんだけど。良介が中学生の頃に暴力騒ぎを起こして、バスケ部の全国大会行きを潰したって話しは本当なのかい?」

 その話しをされた瞬間、骨が鉄になってしまったと勘違いするほど、身動きできなくなった。

 

「は? 良介がそんなことするわけないじゃん」

「そうだよ智也(ともや)、なんかの間違いじゃないかな」

 2人が俺を擁護してくれているのは分かる、けど何を喋っているのか理解出来なかった。

 ヤバイな、しっかりしないと。


「いや、僕としても嘘ならちゃんと知っておきたくてね、何しろ僕も全国に行くために努力している身だからね、それがどれだけ大変かわかってるつもりなんだ」

 そうだよな。つっても俺はこのクラス1カーストの高い男を落胆させることしかできない。


「……すまん、本当の話しだそれ」

「本当かい?」

 御劔は俺の顔を覗きこんできた。

「……ああ」

「そうか……」

 言葉を探す、御劔の目はそんな感じに泳いでいる。


「ホントかよ良介、お前もやるときゃやんだな」

 杏梨は俺の肩を叩いて笑った。

 なぜだかすごく安心する。たぶん軽蔑されるんじゃないかって、怖かったんだと思う。


「杏梨、たぶん誉めちゃダメな話しだと思うよ」

「あ?いいんだよ、女には引けない時があんの」

「良介は男の子だよ」

「どっちも一緒、一緒」

「てきとうだなあ杏梨は」

 桃花はそうしてクスクス笑いだす。


「どうして……」

 俺の口から出たのは疑問、無意識の発言だった。


「あ?」

「杏梨……」

 ガンを飛ばす杏梨をみて桃花は嘆息する。


「どうしてせめないのかと思って」

 質問したら杏梨の顔が更に怖くなる。


「当たり前じゃん、お前が理由もなく暴力? 喧嘩はしないでしょ」

 杏梨の視線は強力だけど込められてる気持ちは、そんなことも分からないのかよ、そう叱られてる気分になるものだった。


「たしかにね、良介とか怖い人いたら逃げそうだし」

 桃花の的を射た言葉に杏梨は口を大きく開けて笑った。


「そうだな! てか女がいても逃げそう!」

 杏梨がそう言った瞬間、湿気っていた導火線に火がつくように、凛が声をあげた。


「──ッそんなことない!」

 凛が杏梨を睨んでいる。その光景に誰もが驚いた。

 

「あ?」

 睨まれたら黙っているわけない杏梨が、睨み返しているのは自明の理だ。


 ──それでも。


「りょうくんは逃げない」

 凛はそう続けたのだ。


 一発触発の中、先に視線をおろしたのは杏梨だった。


「……そうか、まあそうかもな」


「え!?杏梨が引いた……」

 桃花は口をポカンと開けて動かない。それだけ異常事態なのだ、睨まれた杏梨が引いたのは。


「……僕も凛と杏梨に賛成かな、良介がそんなことするタイプに見えないしね。それに言いたくないこともあるんだろ?君が己がために暴力を振るったのなら軽蔑するけどね」


 御劔は俺と視線を合わせると、またどっかいってしまった。

 なんでコイツは人の考えてることが分かるのだろうか、目から情報をインストールしてんじゃないだろうな。


「つかお前ヤバくね?」

「……ヤバイかもなこれは」


 そのうちこうなるかな、とは思っていたけど想像の倍は早かった。

 可能性としては過分にあったから、いつも身構えていた。いざ御劔にその話しをされたら固まってしまう、体たらくだけど。 


 最寄り駅の隣の高校に通っているんだ、俺のやらかした事を知ってる、中学時代からの学生はけっこういると思う、同級生に限らずな。


 球技大会で、それもバスケで活躍してる俺が癪に障ったんだろう。


「ごめんなさい」


「ん? どうしたんだよ凛」

 凛が急に頭を下げてくるのだ。

 まさかこの噂を広げたのは凛なのか? だとしたらショックだ。


「今日の放課後、屋上に来てもらえる?」


「それはいいけど……」

 なんでとは聞きずらいな。

 

「それじゃアタシはこれで」

 自分の席に戻っていく凛の顔は、何かを1点に見つめた決意の表情だ。でも元気のないポニーテールが印象的だった。


「また3人になっちゃったね」

 桃花は変わらない笑みで俺に話しかけてくる。

 ふんわりした髪に優しい笑顔、女神だ拝まなきゃ。


「ねえ杏梨」

「ん?」

「なんか拝まれてない私」

「……見えないフリしとけばそのうち消えるから」

「それじゃお化けの対処法だよ……」

「似たようなもんだろ」

「「…………」」

 

「……おっと失礼しました女神よ」

「やっぱ拝まれてた!」

 反応も素晴らしい、そしてなにより尊い。


「良介が桃花を好きなのはわかったから、お前どうすんだよ。御劔が聞いてきたってことは、噂が広まってるってことなんじゃねーの?」


 杏梨のいう通りだ。恐らく数日もしたら視線という名の、針のむしろにされるのは目に見えている。

 

 また視線恐怖症が再発したらどうしてくれるだよ。と思ってはいるんだけど、意外と余裕がある。


 こちとらあの黒原渚に卒業を言い渡されてんだ、再入学なんてできるわけがない。そんなことになったら合わせる顔がないし。


 それに最近は信頼できる友達も増えたからな。


「確かにそうだよな、助けくれよ杏梨」

「……はあ?」

 俺は杏梨がめんどくさそうな顔をする前に、笑みを一瞬浮かべたのを見逃していない。

 

「頼れるのは杏梨しかいないし」


 お、ニヤニヤしだしたぞ。


「まあ、そこまで言うなら協力してやってもいいけどな」

「おお、サンキュー!」


「ま、あたしが噂を広めた奴を探してボコれば一発で黙るだろ」

 ルーズソックスと金髪メッシュの彼女に、セリフがマッチしすぎだ。

 

「……やっぱいいです」

「あ?」

 なんで力で解決しようとすんだよ、途中までいい感じだったのに。


「良介がどんどん杏梨の扱いを心得てる……」

 視線を感じると、慄然とした桃花がそこにいた、自分の胸を抱いている。

 重そうだな。


「でも杏梨が味方になってくれると思うと、嬉しいな」

「な、な、そんなの当たり前だろ!」


 ツンデレか? ヤンキーだからヤンデレ?

 とにかく杏梨が友達想いって話しは間違いない。顔を真っ赤にするほど恥ずかしがることないのにな。


「ちょっと杏梨こっち来て」

「……なんだよ」

  

 桃花は俺をチラ見して杏梨とナイショ話しを始めてしまった。

 え、悪口?悪口はやめてくださいよ、今はただでさえナイーブなんだから。

 桃花に嫌われたらそれこそ恐怖症がこんにちはするって。


「……梨………………のこと……きでしょ?」

「はあ!?んなわけねーだろ!」


 あの、杏梨の声だけ駄々漏れですけど。


「ちょっと声おとしてよ!」

「……おう」

 なんだ、大人しく杏梨がしたがってる。

 やっと桃花の偉大さにきづいたか。


「友達……だ…ら分……るよ、ホン………剛の……も分………てたんだよ?」

「ああマジ?」

 杏梨がどんどん赤くなっていってる。どんな卑猥な話ししてんだ?

 じゃっかん聞こえなくもないけど、内容はまったくつかめない。

 

「良……なら……私………するよ?……対……より………よ」

「お、おう」

 杏梨は最後まで声の大きさ変えなかったな、ナイショ話しできない人じゃん。


「ごめんね良介、感じ悪かったよね?でも安心してね、この前杏梨が絶対に勝つって言ってた意味がやっとわかったからさ! 確認のために聞いてたんだよね」


「そうなんだ。で、なんだったの?」

「それは秘密だよ、ねー杏梨!」

「あ、ああ。聞いたら殺すからな絶対」

「もう5・7・5ですらないじゃん」

「あーもーいいんだよ!」

 真似したわけじゃないのか。



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