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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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卒業そして依頼


 とある放課後、俺は飽きもせず渚の顔を見つめていた。見つめあっているんだから当たり前だけど、他の男子生徒に見られたらギルティされるのは間違いない。


 俺は現実と非現実を区別すること、それはちゃんと出来てる人間だと思っている。簡単に説明すると現実に陰キャに優しいギャルは()()()ってわかっているのだ。


 だから桃花のことを尊び崇めているんだけど、最近はその区別がちゃんと出来てるのか心配になっている。


 だってそうだろ。オンラインのゲーム仲間がクラスメイトで美少女だし、ヤンキー気質なギャルとは仲良くなっちゃうし、過剰権力の生徒会の役員に選ばれるし。


 もうここまでくるとファンタジーなんだよな。


「良介」


 黙ってにらめっこをしていた渚が椅子に座り直した。集中してなかったのがバレたかな。


「なんだよ、改まって」

「もう卒業でいいと思うわよ?」

「──ん?」

「視線恐怖症、完治ね」


 渚の笑みは珍しく柔らかい。渚のことを桃花と同列に扱っていたころを思い出すよ。本気で祝福してくれているらしい。

 集中してなかった罪悪感が……。


「マジ?」

「そうね、ミスコン優勝者の黒原渚のご尊顔をこれからも拝み続けたい、だから症状が改善しませんっていうなら、考えてあげてもいいけど?」


 優しい笑みはいつもの人を小馬鹿にしたものになってしまう。いつもあんな顔してるなら拝み倒してもいいんだけどな。


「遠慮しとくよ……渚」

「なに?」

 

 期間としては短かったかもしれない。でも俺がここまで人の視線に耐えられるようになったのは正真正銘、渚のおかげだ。

 全国レベルの学力を維持するのだって、プロゲーマーの実力を維持するのだって並大抵じゃない。


 そんな中で彼女は俺に時間を割いてくれた。


 それに実際はにらめっこをしていただけじゃない、教室にいる時のフォローや、味方を作れってアドバイス。渚の考え方は教訓になるし、今も念頭に入っている。


 でも渚は大袈裟な礼をしても嫌がる奴だ。


 ──だから今は。


「ありがとう」


 この一言で。

 きっとこの借りは一生忘れない。


「ホレたでしょ?」

「ちょっとだけな」

「ウヒヒ、私は競争率高いからね、せいぜい頑張りなさい」

「はいはい」


 改善しないほうがよかったと思ってしまったのは渚には秘密だな。一生からかい続けられそうだ。


 それにこれからは意味もなく生徒会室に集まって、これまで以上に渚と顔を合わせるのだ、寂しいことはない。


「これからは生徒会執行部の副会長として行動しないとね?」


 この話は終わりと言わんばかりに話題を変えた渚は、ニヤッと笑う。


「ん? そうだな」

「それじゃ生徒会の最初の依頼、聞く?」

「え、依頼!? もう相談きたの?」

「まだね。PINE(ピネ)のアカウントすら作ってない」

「じゃあなんだよ」

「私が考えた依頼よ」

「渚が? 内容は?」

「内容は……生徒会執行部役員は早急に鈴村凛を救助するべし」


 こうして受理すらされていない生徒会が始動したのであった。

 




 渚の話しによるとだ。

 凛の様子がおかしいのは俺との1件からだけど、最近どうにも元気がなかったらしい。

 言われてみれば確かにそうだ、凛のことばかり目で追っていた俺なら分かる。


 いつもかまって来てた凛が来なくなると寂しくてな、前は苦手とかいってたのに都合のいい人間だよ、俺は。

 とまあ、自分を卑下するのはここまで、今は凛のことだ。


 凛のイメージは渡り鳥。

 いつもクラスメイトの間を飛び回り、クラス中に止まり木を用意していて、男女に境なく友達だ。

 2年と3年を全員知ってるくらいだしな、俺じゃ考えられないほど顔が広い。


 桃花の彼氏である風見(かざみ)も、誰とでも仲良くしてるイメージだ、それが風見鶏って呼んでる理由だし。

 けど、風見はしっかり巣があるタイプだ、ふらふらしてない時は野球部で固まってるからな。

 それに桃花ともな……チッ。


 似て非なる2人だけど、凛のこれは八方美人っていうんだ。


 浅く広くコミュニケーションをとっているってことだ、つまり凛には親友のような掛け替えのない友達はいない。


 それが祟ったのかは分からない。

 現在、凛が置かれている立場は()()()()()()()()()のようになっているらしい。


 男に媚び売ってんじゃねーぞビチクソが!

 クラスの女子からそう思われてるってことですね。


 ちょっと考えてみれば当たり前の現象だ、凛は女子だけじゃなく男子とも仲がいい。

 見た目に関しては文句のつけようがないし、メチャクチャ気安い女の子だ。


 男子ってのは馬鹿だから、ちょっと仲良くしてくれる女子が気になってしまう。それが美少女だったら? 簡単に惚れてしまうだろう。


今までは渚が敵対心(ヘイト)を集めていた、そのおかげで凛は見逃されていたに過ぎない。


 いつか渚が言っていた『モテる女は嫌われる』それが凛に襲いかかっているのだ。


 ──そしてその現場が今まさにっ!


「おい凛、最近ツレないよな、あたしんとこ全然こないし何かあんの?」

 片手を凛の机に乗せて、鋭い視線を上から下へ突き付けているのは杏梨だ。


 おいおいおい!やっぱお前バカだろ杏梨、救助ってしってる?

 お前が原因になってどうすんだよ。


「え、え、えっと……」

 案の定、凛が萎縮してしまった。

 ついでに杏梨にくっついて来てた桃花が、あたふた杏梨を叱っている。

 なんなら桃花の見た目もあいまって、ギャル2人に詰問されてる風に見えるし。

 

 見てらんないよ……

 でも、だからって俺がいっても気まずい感じになるしなあ。


 どうすんかね。


「だいたいお前はさ、いろんなとこでいい顔してっからそうなるんじゃん。ハッキリすりゃいいんだよハッキリ」

 お説教が始まったぞ…… あの杏梨の険しい表情、すでにイラついてやがる。

 

「で、でも」

「ちょ、杏梨なんでもハッキリ言えばいいってもんじゃないん──」

 反論しようとする凛は怯えてるし、押さえようとする桃花の言葉は届かない。


「よし、こい」


 つ、ついに強行策だあああ!!

 なんと杏梨選手、凛選手の腕をとって立たせているぞおお!!

 トイレか、トイレに連れ込もうというのかああっ!!

 

 内心実況で楽しん──楽しんではいないけど、神様ってのはちゃんと見てるらしい。

 杏梨が凛を引きずってきたのは、俺のほうなんだから。

 ……じゃあ俺がトイレ行こうかな。


「おう、良介メシ食おうぜ」

 昔っからの友達、それも悪友の雰囲気を出しながら杏梨が声をかけてきた。

 

「ご飯って1人で食うと味がよくわかって美味しいんだよな、人と食べると味がなくなるっていう──」

「あ?」

「あ、今席用意するんで!」


 だからさ、1言が強すぎなんだって。

 今日は阿久津と工藤がいないし、ちょうどいいな。

  

「ごめんね良介、杏梨が急に」


 桃花はそういって机を並べるのを手伝ってくれる。

 むしろあなた様はお座りになっていて下さい。


「りょ、りょうくん……」


 うわあ気まずいぞ、なんで名前を呟いてチラチラ見てくんだよ、どう反応すればいいの俺。


「それだよ、ハッキリ」


 スパンと杏梨は凛の頭をはたいた。

 なにしとんねんワレ。


「い、いたっ!」


 ギャルが自分より背の高い、モデルみたいな女の子を叩いてる。

 その光景はなんともシュールというか、ビックリしてる凛の顔がおかしかった。


「くっ、ぷ、アハハハハ!」

「ちょ、酷いよりょうくん!」

 ダメだ笑える。

 凛の裏切られたって顔も面白い。


「あー笑った、なんだよ俺の前でコントしにきたの?」

「ちげーよ、メシだよメシ」

「ここで良介のいい度胸がはっきされるんだね……」


 杏梨はドカっと阿久津の席に座り、コンビニ袋を逆さまにして中身を出す。やることが男前すぎる。

 桃花は俺をみて呆れてるし。


「あーもーじゃあアタシもご飯食べる!」


 凛はヤケクソで座った。さっきまでの気まずい感じが薄まって、調子が戻って来てる。

 荒療治も悪くないのかもな、俺の視線恐怖症みたいに。


 つか言い出しっぺの渚は何してんの?

 ──ニヤついてこっち見てるし、あいつ。


 手を出すつもりがないのか黙々と1人でご飯を食べてる。

 あいつもボッチじゃん。


「で、なんで最近元気ないわけ? ハブられてんの?」


 はい直球ど真ん中ありがとうございまーす!


「う……」


 図星じゃん、少しは嘘を身につけようよ、素直すぎる。


「リンリン、大丈夫? 私でよかったら話し聞くよ?」


 これだよこれ!こーゆー聞きかた!


「ももちゃん。うん…………最近ちょっと色んな人に嫌われちゃって」

「そっかあ、でもどうして?」

「それが、なんか泥棒猫とか、色目使ってるとか……あと何も言わずに無視されたり」


 それは辛い、気の小さい凛には効果抜群だろうな。


「リンリンを? 許せないッ!」


 珍しく怒りをあらわにする、桃花の親身な対応が嬉しいのか、凛は微笑んだ。

 つか桃花が生徒会に入れば俺と杏梨は要らない気がする。

 

「女の子って大変そうだよなあ」


 俺がそう呟くと、凛がしきりに俺を見たり、逸らしたりを繰り返す。

 その一部始終をみた桃花と杏梨は俺を睨んだ。


「お前か良介」

「良介ー!」

「ええ!?違う違う、凛なんとかいってくれよ!」

「ごめんなさい、りょうくんに今の話し聞いて欲しくなくて」


 た、助かった。


「何で聞いてんだよお前」

「ちゃんと女の子の気持ち考えなよ良介」


 これでも怒られるの!? つか連れてきたのも聞いたのも君達じゃん。

 理不尽ここに極まれり。

 

「わかったよ、じゃああっちで食べるから」

 だったら渚のとこにでも行くか。あいつの席に弁当置いたらさすがに驚くだろ。

 と思って立ち上がると、袖が捕まれて動けない。


「でも、居てくれると嬉しいです……」

 ええ……可愛い。

 上目遣いで丸っこい瞳を潤ませている凛。恥ずかしいのか顔も少し赤い。


「わ、わかった」

「お前なに恥ずかしがってんだよ」

「は?なってねーし」

「まあ、いいけどな」

 そういって杏梨は俺にくっつくくらい椅子を寄せてくる。

 近い近い。


「なんだよ」

「……別に、もっと顔が赤くなったら面白そうだと思ってな」

 とかいいながら顔は見てこないし、杏梨の耳が赤くなってる。

 ……そうゆう反応されるとこっちも恥ずかしいんだよ。

 

「え、杏梨……」


 桃花が目を見開いている。


「桃花、とりあえず殺す」

「ええ! なんで!?」

 何か騒がしくなってきたな。凛も笑ってるし、これなら最初の依頼の達成も難しくないだろう。


 そうやって油断していると足元をすくわれる。

 今回も凶報を知らせてきたのは御劔(みつるぎ)だった。


「話してるとこすまない良介。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 気配なく俺の後ろをとった御劔は、申し訳なさそうな顔をして頭をかいていた。



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