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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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杏梨と渚


 テレビがあってスマホがある。そして化粧台とベッドがあり、その傍らにはファッション雑誌が転がっている。

 あたしは豹柄とかゼブラ柄をやたら多様するのは好きじゃないから、これぞギャルの部屋って感じでもない。


 良介あたりを入れたらガッカリしそうだな"これはギャルの部屋じゃない"とかわけわかんないこと言って。

 女の部屋に上がれるのに。


 単なる妄想にニヤリと笑ってしまう。そして自分が恥ずかしくなって悶える。


 あれからあたしは家に引きこもって、休みの間は1歩も外に出なかった。

 新しい目標もできて直ぐに立ち直って心機一転!そんな単純な性格ならよかったんだけどな。


 あたしフラれたのも告白したのも人生初だったんだよなー

 やっばいな、こんなにやる気が出ないのも初めてだ。


「今日学校いくのダリィな」


 心の奥底にしまってある本音が零れ落ちる。何の気なしにスマホでゲームをつけてみたり、SNSでサーフィンしたり。


 でも、ふと気づくと打ち上げの日が脳内で再生されて、剛にフラれてしまう。そんなのをこの休みの間100回は繰り返している。

 なんつーかあたしってこんなに女々しかったんだな。


「あーどんな顔して会えばいいんだ?」


 しかも3人もその相手がいる。剛に渚に良介、まあウジウジ悩んでても仕方ないし、行くしかないか。


 これで学校休んだらそれこそ負けたみたいだし、あの3人に。


 あたしは2度寝の誘惑を振り切ってベッドを出た。


「ま、渚とも話したいことあったしな」



 いくら内心で会うのが気まずいとか思っていても、なにもなかったように普段通りに接する。だって意識してるって思われたらダサいし、相手にナメられるからな。


 ナメられる理由の殆どが自分のせいだ。普段から気をはってればそう易々とナメられることはない。


 良介みたいな特殊な奴だとそうも行かないらしいけど。


「おはよー杏梨」

「はよ」


 待ち合わせの場所で、今日も朝から元気な桃花が待っていた。あたしがカットもカラーもしてる、ふわふわしたキャラメルブロンドの茶髪がよく似合っている。


「休みは何してたの? せっかく一緒に買い物行く約束してたのにすっぽかすんだから!」

 明るくて分け隔てない性格に、可愛くてとある一部分が男子を虜にしてやまない桃花は、プンプン怒っているんだけど誰が見ても怖くない。

 

「桃花って特だよなー」


 桃花が告白したら誰も断らなさそうだもんな、マジで風見にはもったいないと思うけど、あいつチャラいし。

 桃花を泣かせたら急所を蹴飛ばしてやんかんな。


「はい?」

 頭をかしげるとふんわりした髪に顔が乗ってるみたいだ。


「なんでもない、こっちの話しだから」

「ああ、そう。ってそうじゃないよ! なんですっぽかしたの!」


 どっちみち桃花には話すつもりだったしな、あの話しをすると思うと自然と大きなため息が出てきた。


「……打ち上げの時さ────」


 通学の間に桃花にあの話しをした。でもフラれたことしか言ってない。人の秘密を勝手に話すなんて良介じゃないんだから、あたしはやらない。たぶんだけど。


 ……またムカついて来たな、もう一発くらい殴っとくか。


「そっかあ、フラれちゃったか……」


 自分のことのように落ち込む桃花。良介が神様みたいに信仰してんのもわかる気がする。しねーけど。


「でもそろそろ吹っ切れて来たかな、学校も普通にこれたし」

 弱音を吐ける数少ない相手が桃花。桃花がいるからこれてるのかもしんねーな。

 

「ええ! 早!?」

「決めたんだよね、次はさ、絶対に勝ってやるって」

「んん? どうゆう意味?」

「ほら、いいから行かないと遅刻するって、ちょっと走るかんね」


 眉根を寄せて考え込む桃花を置いて、あたしは走り出す。これ以上はまだ親友にだって話さない。

 なんだか桃花と話していたらあんなに憂鬱だった学校が、ちょっと楽しみになってきた。


「あ、ちょっとまってよ!」


 そうだな、まずはやっぱり一撃入れるとこから始めよう。



 朝の教室、結構ギリギリだったから殆どの生徒が揃ってる。

 目的の席は窓際の1番後ろにある。今日もあいつは机に突っ伏していた。髪を切ってもそう簡単に視線に慣れないのかな?


 あたしは適当にクラスの奴らに挨拶しながら、自分の席にもよらないで良介のとこに直行する。


「よっ」

 指と肩に引っ掻けた学生カバンを、頭めがけて振り下ろす。大丈夫、化粧道具くらいしか入ってねえし。


「いったあ!」

 飛び起きた良介は頭を押さえて、恨めしげにあたしを見ているが文句はないらしい。ま、あたりまえだな。


 そしてあたしは黙って自分の席に帰る。


「うっそだろ、おい。殺すきじゃんあいつ、え? 血でてない? 出てないよね」

 あ、そういやビンに入った化粧水入れてたかも……まあ生きてるしセーフセーフ。


「あー良介くん……血は、大丈夫だけど、すごいコブ」

 隣のナマケモノのみたいな生物が良介の頭を触っている。

 なんか距離ちかくね? つかあいつあたしらと渚以外に友達いたのかよ。


「いった、ちょ、工藤押すなよ!」

「……えい、えい」

「いったいよ! え? え? なんなのこの人!」


 はあ? マジであたしより仲良くね工藤のやつ。

 ……まあいいや、あたしが髪切って男前になったおかげだろうし、少しは感謝しろよな。


「んああっ! またあんたら朝から騒いで! うるさいっての!」


 チッ阿久津か、めんどくさいのが出てきたな。


「おお! 今日も朝から元気ですね、るいちん!」


 うるさいって言ってんのにもっとうるさいの来てんじゃん。

 阿久津の絶望する顔が今日のあたしの活力になる、ナイス凛。


 桃花とはまた違う、底抜けな明るさを持ったスマイル女子、凛。見た目だけなら渚よりも上なんだよな、あれ。


「ああ……もう諦めた、好きにして」


 あーあそれをバスケやってる奴に言ったら逆効果なのに、バカなやつ。


「うおおお! 諦めたらぁ! そこでぇい! 試合ぃ! しょーりょおお!」

「好きにして」


 想像以上だよ、こっちまでイライラするほどうっさいじゃん。

 でも阿久津があそこまで大人しくなるとか、ある意味ヤバイなあのバカ。


「りょうくん! るいちんが相手にしてくれないよ! 傷心のアタシを慰めて!」

「ってうお! 急に顔よせるなよ!」


 おい、さすがに近いってそれ。


 ……そういえば凛って前から良介にかまってたな、それこそ貞男のころから。いくら底抜けに明るいっていってもあの良介に毎日のように話しかけるって……まさかな。


 つか良介の回りって女ばっかじゃね?良介のクセに生意気でしょ。

 

 ……なんだよ乙女かよ、あたしは。


 あーもう切り替え切り替え!


 やろうと思ったら直ぐにやる! それがあたしのポリシーだかんな。


 そして目指すのは黒髪の美少女の所、いかにもお嬢様ってオーラを出してる渚は、いつも男に囲まれているんだけど、今日はタイミングがいいからか誰もいない。


「……あら、なにかようかしら、杏梨?」


 あたしが近づくと向こうから話しかけてきた。来るって思ってたみたいだ。

 ここいう人を見透かした態度も気に入らないんだけど、まあ勘弁してやるか。人にはいろいろあるからな。


「ああ、放課後2人で話したいんだけど」

「え?……いいわよ」


 今、目の下がピクッと動いた。嫌がってんのは分かるけど、何でOKしたんだろ。

 

 まあ都合いいし、いっか。


「じゃ、放課後まってろよ」


 あとは。


「剛、はよ」

「あ、ああ島崎か、よお」


 学校中のヤンキーをシメる巨漢で、性格も尖っててカッコいい。

 そんな奴が気まずそうにしてる、あの剛が。この顔が見れただけでも告白した価値あったんじゃねーかな。


「誰にも話してないんだ?」

「別に広めるもんでもねーしな」


 こういう所は男前なんだけどな。変な所でチキッてんじゃねーよバカ。

 いい女になって、あたしをフッたこと絶対に後悔させてやるからな。


「後悔しても遅いからな、女は気移りしやすいんだから」

「あ? ……しねーよ」


 挑戦的に言ったのが気にいったのか、剛は獰猛な笑みで答えた。上級生でも震え上がってしまいそうな顔だ。

 ま、絶対後悔すっから、その頃には手遅れだろうけど。


「それだけ」

「おう」


 よし、これで剛とも元通り、むしろ前よりいい関係かもしれない。

 今更よくなっても意味ないけどな。

 

 それに今になって考えると、あたしは冷静さがかけてた。そりゃ元からわかってやったことだけど、でも今なら別の選択をできると思う。

 もしかしたら良介との特訓はちゃんと身になったのかもしんねーな。


 さて、昨日あんまり寝てないし、放課後まで寝るかな。



 放課後、待っていた渚の席に行く。


「じゃあ、ついてきてくれる?」

「わかった」

 ライゼリアにでも行こうかと思っていたけど、渚が場所を用意してくれるらしい。


 渚が向かっていったのは部室棟の4階、『生徒会執行部』の部室があるところだ。生徒会の生徒に許可されないと入ることさえ出来ない、噂だと中では不良生徒の洗脳が行われているだとか、麻薬の売買が行われているとか色々ある。


 普通の部室棟に豪華な扉があって、入れないとなるとそんな噂が立つのもしかたないだろ。つかあたしも侵入しようとしたことあるし、入るとこなくて諦めたけど。


「入って」


 罠?そりゃ考えすぎか。


「わかった」


 渚に言われるがまま入った部屋は、あたしが見たことあるモデルルームよりずっと豪華で、想像を絶する空間だった。てかゲーム機とか冷蔵庫とか、なんでもありかよ。


 あたしがなんも言わないで部屋を見ていると、渚がブレザーを脱いだ。コイツも桃花には全然勝てないけど、あたしよりは明らかに数段上なんだよな。良介のやつサイズで仲良くなる女決めてないだろーな。


 そんな下らないことを考えてると。


「顔は目立つから体にしてもらえない?」


 渚が訳の分からないことをいいだした。


「は?」


 訪ね返したんだけど、渚は何を勘違いしたのか大きくため息をついた。


「わかったわよ、けど一発だからね、それ以上は私も抵抗するから」


 もしかして、すごい誤解があるじゃねーかこれ。


「いやいや、お前なんの話ししてんの?」

「なにって、殴りに来たんでしょ?」


 ほらな、あたしはなんだと思われてんだよ、……やっぱ原始人?

 まあでも今までやってきたことを考えるとあれか。

 渚と剛を無理やり引きはがしたり、バスケットボール叩きつけたり、良介をはたいたり。

 渚の反応は妥当か。

 

「違うから、別に殴りに来たわけじゃ……え? 殴らせてくれんの?」

 それは是非とも、今までの借りをいっぺんに返せるな。


「……冗談よ」

 ホッと息をついた渚はブレザーを羽織る。チッめったないチャンスを逃したぞこれ、つか一生なさそうだけど。


「……良介を2回叩いたし、かんべんしてやるよ」

「あらそう、もったいないわね?こんな千載一遇のチャンス、来来来世にも巡ってこないっていうのに、殊勝じゃない」


 スゲー手のひら返しだな、心臓に陰毛でもはえてんじゃねーのこの女。殴られないと思ったら強気になりやがった。


「殊勝なのはそっちじゃん、そこまで責任感じてるとは思わなかったけどね」


 大仰に頷いた渚は腕を組んで、偉そうに、しかも人を小馬鹿にしたような口調で話し出した。


「そうね、どうしても想いの届かない女子が、どう考えても似合わない恰好で、どうしようもない努力をした結果が、苦し紛れの突拍子もない告白だったなんて、私なら耐えられそうにないから。少しでもストレスの発散をさせてあげようと思っただけよ」


 ……コイツ良介よりイカれてね?


「やっぱ殴っていい?」

「……嫌よ」


 ……喧嘩しにきたわけじゃないしな、落ち着けあたし。落ち着けー落ち着けー練習を思い出してー。


 あたしが深呼吸を繰り返していると、渚からクラスじゃ見せないような普通のトーンで話しかけてきた。


「謝る気はない。だから殴らせてやるって言ったのよ」

 

 それって謝罪じゃないのかよ……あたしより頑固者かもしんねーなこいつ。謝ること自体にプライドが傷付くのか、それとも自分がしたことに間違いはなかったと考えてるのか、それはわからない。


 けど、譲れない物のために意地をはる、そうゆう奴は嫌いじゃない。


「いいよ、その話しはもう終わりな。でもさ、まさか渚が親父に反抗するために、()()()までしてるなんて思ってもなかったわ……お前も苦労してるんだな」


 渚の境遇を考えると涙ぐんでくる。親に反抗するために体を売ってるなんて……。高飛車で何不自由しない生活をしてるんだって思ってたあたしが馬鹿みたいじゃんか。


「は、はあ!?」


 顔、声、動き、全部すっとんきょうだった。バレてないと思ってたのか……嫌だよな、あたしだってそんなのやってたらバレたくない。

 でも、もしかしたら話しを聞いてやれることは、できるかもしんないし。


「大丈夫だれにもいってねーから、それに相談のるからさ。なんなら家でいいならバイト紹介できると思うし──」

「ちょっと待ちなさい!」


 両肩に手を乗せられて、目が合う。渚の目は物凄い怒りの色をしていて、燃えてるみたいだった。

 あたしが手を差しのべるのは、プライドを傷つけてしまったのかもしれない。


「……でもさ」


 渚とは色々あったし、今もライバルだとあたしは思ってる。けど、猫を被ってない渚は悪くないなって、そう思ったんだ。


 あたしはレールを外れた人間だし、渚にもそうなんだろう。なんつーかそうゆう奴をあたしはほっとけないんだ。


「聞いてる? ……聞いてないわね」

「もしかしたら、今までのことをなかったことにして、友達になれるんじゃねーかな!」

「まあ、それは構わないけど──」

「そっかあ!」


 肩に手が置かれてたから距離は近い、あたしは渚に避けられる前に渚を抱き締めた。きっと力になってやれるハズだ、ライバルが私情で本気になれないとかじゃつまんねーしな。


 渚はやけに長く溜息をついた。


「──意外と情に厚いところもあるのね。なんかキャラが違いすぎてビックリしてるんだけど、とりあえず1回黙って私の話しを聞いてもらうわよ?……もう全部話すから」


 全部か……どんな稼ぎ方をしたんだろう。

 大変だったんだろうな。


 あたしはそんな想像をしながら渚の説明を聞いていくと、あたしは大きな勘違いをしていたことが発覚した。


「は? じゃあパパ活は?」

「してないから! 失礼ね!」

「……マジか」


 あたしこの休みの間に渚のこと誤解してたって、悔やんでたのに……。


「他所でこの話ししないでよね、一瞬で私が……パパ活してるって噂になりそうだし」


 渚は心底"パパ活"という単語を使うのが嫌なのだろう、絞り出すように発音している。

 その噂を流してれば剛も諦めただろうにな。


「その手があったか……」

「あなたね……でも、それすら恋のスパイスになってたかもね、ウヒヒ」


 どうやら何があっても負けるつもりはないらしい。ま、こうゆうやつが相手なら不足はない。


「変な笑い方だなお前」

「いいのよ、()()の前なんだから」

「そっか」


 こうしてあたしは渚と友達になった。



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