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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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凛の異変


「そうだ、バスケやりに来たのに、何でお菓子パーティーをしてるのワタシ?」

 状態異常、混乱が解けた凛は根本的に間違っていたことにきづいた。けど、そんなこといいながら口にポテチを運んでいるのは無意識なのだろうか。


「まあ渚がいる時点で運動はな」


 上品にクッキーを咀嚼していた渚は、俺をチラリとみてティーカップの紅茶をゆっくりと飲んだ。長い黒髪を耳にかける動作は、深窓の令嬢そのものだ。


「──ふう。……は? 私がいたらどうなのよ」


 彼女の口から紡ぎだされた言葉は、洗練された上品な動作からは思いつかないような、悪態だった。


「運動嫌いだろ?別に運動音痴とはいってないんだから」

「今いったじゃない、普段からそう思ってるんでしょ? 私がいるからバスケやりたいけど出来ないなーっていってるもんじゃないそれ」


 つっかかってくるなーめんどくさい。

 猫かぶんのやめるっていってたけど、ここまで解放しちゃうんですか?もうちょい控えてもいいと思うよ俺は。


「勘ぐり超えて被害妄想の領域だなそりゃ」

「ふん、それこそ良介の妄想なんじゃない?」


 そして俺達のいつもどおりのコミュニケーションを愕然と見ていた凛が、そっと渚の腕をとった。


「渚だいじょうぶ?何かあったの?」

 凛にとってはこのJILL(ジル)っぽい渚が変なのだろう。体調が悪いのではとあちこち触っている。


「あーいいのよ、良介とはいつもこんなものだから」


 そういいながら凛の手をゆっくりと剥がしたのだが、それでも納得しないようで。


「それにしても渚らしくないような……」


 渚は上目遣いの凛を見てほんの数度だけ口角を上げた。ロクでもないことを思いついたらしい。


「でも凛も良介と話してるとき変よ?急にどもったり顔を赤くしたり、うなだれたり」

「そ、それとこれとは別!」


 たじろいだ凛はまた少し顔を赤くしてしまい、渚の嗜虐心を煽ってしまう。ありがとう凛、俺から標的がうつったよ。


「……そうね。でもよくある話しでしょ、誰にも心を開かなかった少女が、ある特定の人物だけに心をひらくってラブストーリー。私も誰かさんに告白されたばかりだから、少し他の人より打ち解けていたのかもしれないわね」


 俺に流し目を送りながら凛と話す渚の目は、凛をからかってやろうという意思が灯っている。

 その話しは蒸し返さないで欲しいんだけど、無理だよね渚だもんね。渚に仕組まれたっていっても俺のためだったしな。


「ええ!? あれってりょうくんをフッたって聞いたのに、付き合ってたの!?」


 反応のいい凛は簡単に騙される。本人が目の前にいること忘れてないかい? 鈴村さんやい。

 そして渚は困ったように、手を口元にあてる。


「誰かが勝手に話を広めたのであって、私は付き合ってるとも付き合ってないとも、いってないんだけどね」

「え、あ、……そうだったんだ。勝手に勘違いしてたみたい、2人の関係に口だしてごめんね」


 驚愕しそして落胆? したようにうつむいた凛は、俺と渚が付き合ってると勘違いさせられたらしい。これマジで訂正しないと今度は付き合ってるって噂が流れるぞ。


「なあ凛、渚は誰かさんって言っただけで俺とは一言も言ってないし、付き合ってるとも言ってないぞ?」

 俺のいってることを理解できないのか凛は頭をかしげた。人を疑うってことを知らんのか、この子。おんなじような手口で何回騙されるんだよ。


「どうゆうことですか?」

「つまり俺は……渚にフラれて、渚とは付き合ってないってことだよ」

 なにこの公開処刑、フラれた相手の目の前でこんな話しさせんなよ。クソ、別にフラれてないのに。

 これだって俺のためだとか渚から明言されてないし、俺をからかうネタを仕込んだだけじゃないのか?。


「うえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 いい反応だな。これだから渚にからかわれるんだよな。

 ウヒャりそうになってる渚は口元を押さえてる、それは隠すんですね。

 

「ちょっと、そこ、うるさい」

「うわー! 実乃莉先輩ってフォートファイト上手いんですね!」


 工藤は人のPCで勝手にフォートファイトをやっていた。自由かよ、サブのアカウントにしといて良かったわ。ホントのアカウント使ってたら俺がhawk(ホーク)ってバレるからな。バレないようにする理由もそこまでないけど。


 そしてその後ろで観戦してる琴葉、もう各々好きなことをしてる感じだ。

 

「あはは! もう凛ってば、簡単に騙されるんだから」


 JILL(ジル)と黒原渚としての境界線が揺らいでる渚は、いつもより大きな声で笑ってる。


「もうってこっちのセリフだよ! あーーまたやられたーー!!」


 凛は頭を抱えて立ち上がる。


「「あははははは!」」


確かにこれは面白いね、不覚にも渚と一緒に笑ってしまった。俺まで渚に汚染されそうだ。

 

「それにしても、こんなに手酷く騙されてよく友達続けていられるよな」

「いいのよ、こっちはこっちでいつものことだから」

「ええ!? それ渚がいうの!?」


「「あはははは!」」


「2人ともヒドイぞ! そんなに笑って! く、ぷっ、なっはっは!」


 怒ってる風の凛は、笑ってる俺達を見て自分も吹き出して笑いだした。


「ああぁ! 実乃莉先輩ヤバい! 負ける!」

「ん、大丈夫」


 自由人達は俺達が騒いでもゲームに熱中している。よそが盛り上がってると気になるけど、向こうも盛り上がってるみたいだ。


 ──どれどれ。


「へえ、ホントに上手いんだな工藤」


 俺が口にした通りだ、建前でもおべっかでもなく純粋に工藤は上手い。プロの俺から見ても文句をつけるところがない、だからって負けはしないけどな。


「……上手いわね」


 いつの間にか琴葉を俺と挟む位置に渚がいて、工藤のプレイを褒めた。JILLが褒めるなんてめったにないから工藤の腕前がそれほどということだ。


「工藤って多才なんだな」


 歌は上手いし、運動もできるし、ゲームも凄い。全部の頭に意外にもがつくのは彼女のいいところだと思う。


「……えっへん」


 胸を張っての凄いでしょアピールは、彼女なりの照れ隠しなのか。


「凄いドヤ顔ね」


 いやだからわからねーって! 真顔だよ真顔! なんで渚にはわかるんだよ。しかも照れじゃなくてドヤのほうかい。


「でも、良介くんには、勝てないな」

「ん?そうか?」

「……私じゃ、こんなにポイント、稼げないし」

「あ、ああ、アリーナポイントね、最高ランクだと敵も強いしな! 時間かけてやったからさ!」


 このランクでポイントを集めるのは至難の業だ。そのランクで今まさに優勝(ビクトリーロイヤル)した工藤もその業を持った者だろう。


「そっか。良介くんのアカウントに、私のアカウント、登録したから、今度は一緒に……ゲームしよ」

「ああそうだな、一緒にやろうな」

「ん」


 ……携帯を差し出す工藤。


「──ん?」

「連絡先教えて、ゲームするとき、連絡する」


 そっか、そりゃそうだよな、そのほうが便利だし。


「お、おう、えとえーと」


 まてよ焦るな俺、深呼吸だ。

 俺の携帯には家族と3人(トリオ)、杏梨の連絡先しか入ってない。ヤバい交換の仕方がわからん、なんで携帯を差し出してきたんだ! 俺が差し出したいのに! でもわからないってのは女の子の前でダサいのでは!?。


 テンパっていると、琴葉がため息をついた。


「はあ。お兄ちゃん甲斐性のない男ですから、携帯の登録人数1桁なんです。多分やり方わかってないんでわたしがやりますね」


 工藤と俺の携帯を奪った琴葉は、嬉しそうに携帯をいじる。


「一言多くない?」

「いいから、いいから。ダメなお兄ちゃんでもわたしが面倒みてあげるからね?」


 そういって携帯を返してきた琴葉は満面の笑みだった。


「……ブラコンね」

「……ブラコンですね」

「ん、ブラコン」


 3人からまったく同じ評価を頂くことに。俺には恥を掻かされたように感じたんですけども。


「ええ!? そんなことないです、むしろ逆ですよ! お風呂上がりのわたしを抱きしめて興奮してましたから!」


「「「うわあ……」」」


 3人の俺を見る視線は恐怖症を再発してしまうような、蔑みの目だ。


「まってくれ! 風呂上がりに抱きついて来たのは琴葉のほうからだし、興奮してない! つか琴葉の顔見ろよ、めっちゃニヤついてるから!」


 こいつ人を重度のシスコンに仕立てようとしやがって!


「でも抱きついたのはホントなんでしょ? ……うわあ」

「まてまて渚! 琴葉のほうからだって!」


 必死な俺をよそに、琴葉は目を閉じて祈るようなポーズをとると、訥々と話し出す。


「──締め付ける腕は、太く。少女の力では逃れることは敵わない。兄の首もとからは男特有の汗の匂いが……そしてわたしは逃れることを諦めるばかりか、兄を受け入れてしまう。ああっ! 神よ、家族の垣根を越えてしまったわたしに慈悲を」


 いや、どこの聖人だよ。いきなり始まった妹の偽体験談に皆は耳を傾ける。

 そして琴葉がまだ続けようとしたので、強制シャットアウト、俺はとりあえず琴葉の頭にチョップをした。


 こいつのことだから具体的なプレイ内容まででっち上げて話しかねん。


「おい! いい加減にしろ!」

 

「テヘ」


 例のごとく頭をコツンとした妹は死ぬほど可愛いが、許せん。


「毎回それで許されると思うなよ」

「うわ! お兄ちゃんが怒った! 渚さん助けて!」


 渚の後ろに隠れた琴葉はウシシと歯を見せて笑っている。


「どっちとも患ってるわね、コンプレックス」

「「うん」」


 俺と琴葉の関係は結局そこに落ち着いてしまうらしい。しょうがないか、だって妹って可愛いもんだし。 


 越えられない壁として君臨する渚を見て、俺は琴葉を追いかけるのを諦めた。

 そして座ってジュースを自棄のみしてると、皆も落ち着いたのか、またお菓子を囲うように集まりだした。


「それにしてもことちゃんはホントにお兄ちゃんが好きなんだね」


 平然と俺の横に座る琴葉に凛も苦笑いだ。


「そうですねーえい!」

「うお、なんだよ」

 横から抱きついて来た琴葉、いつもどおり挙動の読めない妹だ。


「お兄ちゃんが欲しいなら、ちゃんとわたしに断りを入れてくれないとダメですよ? リンリン先輩でも許しませんからね!」


「なははーそうみたいだね」


 人を売りに出したり、やっぱり渡さないとか言い出したり大変な奴だな。まあちょっと嬉しいなと思ってしまうのは許して欲しいね。


「でもわたし嬉しいです。リンリン先輩みたいな優しくて面白い人がお兄ちゃんの友達になってくれて!」


 なんだよ親気取りですか?恥ずかしいからやめてくれよ。


「いえいえこちらこそ、いつもお世話になってばかりで」

「そんなことありませんよ! 兄がいつも!」


 ペコペコ、ペコペコ頭を下げ合う2人。なんだこのノリは、ツッコんだほうがいいのか?悩んでいたら俺より早く工藤が動いてくれた。


「ママ友?」

「異論はないわね」

「俺としては灰汁の強い妹のめんどうを見てくれてありがとうなんだけどな」


 渚と工藤はこの短時間で琴葉のクセの強さを思いしったのか、頷いてくれた。凛とは仲良くやれそうだもんな、似たようなノリだし。


「シャラアアップ! ……リンリン先輩は入学当初からお兄ちゃんのめんどうを見てくれてたらしいですね?」


 不利になったからって直ぐに話題を変えやがったな。自分に対する不穏な空気には敏感なやつだ、さすが人気者の地位を我が物にしているだけある。


「確かにそれは気になるわね、まさかあのロン毛の良介がタイプだったなんてあり得ないし」


 言われてみればなんで凛は俺に話しかけて来たんだろう。しかも毎日、毎日だ。おかげ様で美少女を無下にする最低野郎と言われるハメになったんだけど……それは逆恨みだな。


 今はそう思えるようになった。


「ははは、本物のロン毛に怒られそうな無造作ロン毛だったけどな」


 自虐だってできる。

 

 だがどうだろう。ノリノリだった凛は俺を見たり逸らしたり、バツの悪そうな顔をしている。


「別に失礼な理由でもいいぞ?俺だって毎日かまってくる凛のことめんどうだって思ってたし、なんなら無視する俺に認めさせたいって、承認欲求がやたら高いsns系女子だって思ってたし」

「うわ、お兄ちゃんそれは無いわ、せっかくリンリン先輩がド陰キャのお兄ちゃんに救いの手を伸ばしてくれてたのに」


 俺にくっついていた琴葉はススっと離れていく。汚物にでも触ってしまったような顔をしてる。


「救いようのないグズね」

「……クズ」


 こうなるのは分かってたけどね。何か凛がいいずらそうにしてるし、俺なりの気遣いだってのに、悲しい。まあ本気で思ってたんだけどな。

 でも工藤は流れに乗っただけだろ。話しちゃんと聞いてたか?菓子ポリポリ食ってるし。


「い、いやーアタシは別に、と、特別な意味があって、り、りょうくんに話しかけて、て、てたんじゃないですよ?」


 どもるにしても、いつもの凛とは違う。冗談とかじゃなく、本気で狼狽している。そこまで動揺する理由なの?もしかして金目的か!?


「ちょっと凛、それはさすがに……。裏があるって言ってるようなモノよ?」


 そう言われても凛は挙動不審なまんまだ。それとも本気で俺がタイプでアタックしてきてたとか? ……ありえないな。


 でもそうなるとなんだ?


「……い、いえない!! 今日は帰る!」


 凛はカバンを持つとスパグパっと俺の部屋を出ていく。そしてドアを閉めきる最後に、か細い声で「ごめん」と残していったのであった。


 マジでなんなんだ。


「良介、あんた凛に何したの?」

「お兄ちゃん、リンリン先輩に何したの?」

「良介くん、リンリンに、何したの?」

 3人の声が重なった。


「知らないよ……」


 3人の顔が怖かったので俺の声は尻すぼみだ。


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