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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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妹のコミュ力


 俺は自分に無い特技(もの)を持ってる人間に尊敬とまではいかなくも、凄さを感じる。それこそ凄いと思う特技(もの)は星の数ほどあるが、今回はそのうちの1つ"図々しさ"を上げてみよう。


 例えばティッシュ配りをしてる人にもっとティッシュをよこせと言ってみたり、人の家の冷蔵庫を勝手に開けてみたりと、例を上げればいくらでもある。

 

 これはある意味凄いけどまったく尊敬できないね。


 ただコミュニケーションに対する図々しさならどうだろうか。嫌なことを嫌と言えたり、相手の内側にずかずかと入っていけたり、これも賛否あると思うが凄いと思う。

 

 そして俺が何をいいたいのかというと。


「どうしてこうなった」


 前にもにたような展開があったよな、誘った奴が別の奴誘ってどんどん増えてくみたいな。ネズミ講かよ。


 俺の部屋には、誘った(りん)と妹の琴葉(ことは)はもちろんのこと、(なぎさ)工藤(くどう)も集まっていた。


 ……なぜこうなったのかというと、隣の席にいた工藤が。


「リンリン、良介くん家、いくの?」

「行くよー!」

「……私も、行く」

「オフコース!」


 お前らが決めんな!ということである。因みにどこから聞きつけたのか渚も。


「んじゃ私も行くから、琴葉ちゃんにも会ってみたいし」


 といってついてきた。ほらな図々しいだろ。


 だが唯一の年下である琴葉が萎縮してしまうのでは、と俺は心配していたのだが。


「リンリン先輩ウェーイ!」

「なっはっは!ことちゃんウェーイ!」


 ジュースの入ったグラスをぶつけ合う琴葉と凛は何がおかしいのか、笑いっぱなしだ。

 心配していた妹はすでに俺の部屋で俺以上に俺の同級生と馴染んでいた。

 

 ……しかも俺を心配そうにチラチラと様子見する余裕まであるらしい。そういや図々しいマスターだったわこいつ。


「この2人は相性よさそうね、完璧に体育会系じゃない」

「えー渚先輩とも相性いいと思うんだけどなぁ、ほら渚先輩ってお姉さんって感じで包容力あって、私は妹ですし! こんな綺麗なお姉ちゃんいたらなあ」


 そして琴葉渾身の上目遣いを受けた渚は。


「ふふふ、まったくあざとい子ね?」


 クスクスと微笑んで琴葉の頭を撫でている。満更でもなさそうだなおい。


「えーそんなことないですよー!」

「もう。ちょっと近いんだけど、しょうがないわね」

「えへへー」


 腕に抱きつかれた渚は言葉とは裏腹に、いつもキリッとした表情はこれまで見たことないくらいだらけていた。


 だがどうだ、工藤はそんな簡単に攻略できないぞ! クラス1の不思議人間だからな、さすがに琴葉でも……。


「あ、実乃莉(みのり)先輩ってバンド部のボーカルやってる人ですよね?」

「ん~、そうだよ」

「うわーやっぱり! わたしSUGAR(シュガー) CANDY(キャンディー)のCD持ってます!」


 SUGAR(シュガー) CANDY(キャンディー)って確か工藤や阿久津のバンドの名前だったか、なんで入学したばっかの奴がそのCD持ってるんだよ。


「……そうなんだ、どうだった?」

「ファンになりました! 握手してください!」

「いいよ。……良かった、気にいってもらえて」


 差し出された手をとび付くように掴んだ琴葉は、腕をブンブン上下にふって嬉しそうだ。ホントにファンみたいだなこれは。


「実乃莉先輩の歌声も、歌詞も曲もぜんぶ最高です!」

「うん……ありがとう。これよかったら、どうぞ」


 そう言って工藤はバックからCDケースを取り出した。


「え、これってもしかして」

 差し出されたCDを受けとる琴葉の姿は、壊れ物を扱うように慎重だ。


「新曲だよ」

「──や、やったーー! ありがとうございます! 詩織(しおり)ちゃんに自慢しちゃお!」


 喜びのあまりばんざいした琴葉は、さっきまで慎重に扱っていたCDのことを忘れてそうだ。


「うん、良かった、喜んでもらえて」

 あ。ちょっと笑ったし、あの万年無表情の工藤が。これが妹の力だというのか……恐ろしい。


「今日もバンド部の部室の前通ったらカッコ可愛い曲が流れてて……あれ? そういえば実乃莉先輩は……」

「サボった」

 事もなげに言った工藤に琴葉は一瞬停止して、大きく口を開けた。


「あっはっは! バンド部っぽい!」

「……そうそう、分かってるね、琴葉ちゃん」

「はい!」


 あーそうですよね、俺が時間をかけて作っていった友達とこんなに早く馴染めちゃうのが琴葉でしたよねー。もはやここまでいくと脱帽するよ、なぜ俺にこのスキルがないんだ妹よ。


 俺がうなだれていると。


「ちょっと良介、なに死んだ魚みたいな顔してんのよ」

「いや、目じゃなくて顔ごと!?」


 やけになって反応すると渚はうなずいた。


「それでいいのよ、そのつまんないツッコミしてれば」


 傷心の傷に更に塩をすりこみにきたよこの人、もう笑えてくるね。


「元気づけようとしてるって勘違いしてたよ、はっはっは」

「あら、勘違いじゃないのに、どうしてかしら?」


 そして俺と渚を交互に見ていた琴葉は目をキラリと光らせた。嫌な予感しかしない。


「渚先輩はわたしだけじゃなくてお兄ちゃんとも相性が良さそうですよね!」

「そう?」

「そうですよ! わたし、渚先輩がホントのお姉ちゃんになってくれたら嬉しいなー、なんて」


 マジかこいつ、なんかやると思ったけどさ。女友達とみるやいなや彼女か?彼女か?って聞いてくる親かよ、ここぞとばかりにぶっこんできたな。


「おいバカ、余計なこというな!」


「えー! いいじゃん、渚先輩にお姉ちゃんになってもらいたいもん!」


 必死に抗議してるように見えるよな、でも明らかに目が笑ってるんだよこいつ。


 そして渚は俺を見て嗜虐的な笑みを浮かべる。こっちもロクなもんじゃないぞ絶対。


「琴葉ちゃんが妹になるのはいいけど……余計なのがついてくるんじゃね」

「おい! ひどくね!?」

「ウシシ、やっぱり渚さんお姉ちゃんに来てくださいよー!」

「ふふ、気が向いたらね」


 えー! と抗議する琴葉に艶やかな笑みを浮かべた渚の答えは曖昧だ。なお、この寸劇は凛と工藤の前で行われているわけで。


「じゃ、じゃあワタシ、鈴村凛がことちゃんの姉に立候補します!」


 ビシッと挙手した凛に琴葉が一瞬で食いつく。


「ええっいいんですかリンリン先輩! お兄ちゃんのお嫁さんに来てくれるんですか!? わたしリンリン先輩なら安心です!」


 おい、なんで急にオブラートに包んでた俺との結婚をさらけ出すんだよ、いっきに生々しくなったじゃん。めっちゃ食い付きいいし。


「え、ええ!? 結婚!?」


 ものすごい動揺してるけどまずグラスを置いてくれ。手がめっちゃプルプルしてんじゃん。


「てか嘘だろ、気づいてなかったのかよ」

「え、え、あ、あのあの、その、こ、心の準備が、まだ」


 なんで頬染めて恥ずかしそうにどもりまくってんだよ、ちょっと前までの俺より酷いぞ。しかもこっち見てるし、こっちまで恥ずかしくなってきた。琴葉のやつ。


「凛ちゃん、脈あり?」

 工藤がボソリと呟く。すると凛はどんどん赤くなり、自分のおでこと首筋を触った。


「脈!? 脈拍!?」

「はあ、これはダメね」


 渚はなんかこの状態の凛に馴れてそうだな。まあ渚と一緒にいればそんな目にも遭わされるか、かわいそうに。


「リンリン先輩がなんか凄いことに……」

「お前がやったんだろうが!」


 俺の怒りなどそよ風と同等かそれ以下だろうな、コツンと頭に手を当てた琴葉を見て察した。


「てへ」

「ウヒ……ふふ、あら? 良介まで赤くなってるじゃない」


 ……こいつらマジで覚えとけよ。


「な、渚、本性でかかってんぞ」

「ん? なんのことかしら」


 俺のちょっとした仕返しも、ただ人を馬鹿にしたような笑みで一蹴されてしまう。ちくしょうダメだ、よく考えたら俺が琴葉と渚に敵うわけがなかった。


「ところで実乃莉先輩はどうですか? うちの兄のお嫁さん」

「こりない奴だなお前は、反省しろよ!」

「いいよー」

「ほら迷惑がって……」


「「「「え!?」」」」


 全員が一斉に工藤のほうを向いた、しかも混乱していた凛までも。


 最初に動いたのは琴葉だった。爆弾発言をした筈なのに、いつも通りの工藤を驚愕の表情で見ながら。


「し、正気ですか実乃莉先輩!? いっちゃなんですけどお兄ちゃんは情けないし、コミュ障ですよ!」

「さっきまで勧めてたのになんで欠点いいだすんだよ!」

「ん~良介くん、面白し、だからかな? いいよ」


 ──いいよ──いいよ──いいよ。


 俺の頭の中で工藤の声が反響する。なぜだろうか、無表情のはずなのに工藤が俺に笑顔を向けてきているような気がしてならない。

 

 ……これがトキメキ。


「ま、マジで?」

「……うん。私が専業主婦で、良介くんが、お金稼いでね。お料理とお洗濯とお掃除は苦手だから……お願いね。あと1日8時間のゲームとお昼寝もしたいなあ。……玄関までなら送り迎えするよ?」

「ほとんど引きこもりじゃねーか!」


 すっとぼけた表情してるくせに危険な奴だ、危なくヒモ人間の毒牙にかかるところだった、人のトキメキを返せよ。


「えっ! えーー!? あいたっ!」


 ガタンッと机を蹴飛ばしながらたちあがった凛は、スネを押さえてうずくまる。

 うわ、痛そう。


「ほ、本気なんですかみのりん! 結婚しちゃうんですかりょうくん!!」


 焦ってるのか? いやまさかな、そしたらホントに脈ありみたいじゃんか。いやまて俺、勘違いしてはならない。

 凛はいつも大げさに反応するし、キモイと陰で言われてたロン毛の時から気にかけてくれてる奴だったからな、善意の確認に決まってる。


 渚に並ぶ美少女でしかもスタイルはどう考えても学校1の女の子だぞ?ありえん。こいつはことある毎に人を勘違いさせようとしてくる悪女だ、2代目渚と命名しておこう。

 

「おお、立ち上がった」


 琴葉は観戦してる部外者みたいなコメントを呟いた。お前センパイじゃないのかよ、あんまなめてると怒られるぞ。

 でも凛が怒ってるところが想像できないな……。


「さすが実乃莉ね、いい性格してるじゃない」

「……分かる?」

「ええ、凄い楽しそうな顔してるわよ?」


 まったくわかんねーよ! なんでわかるんだよ! そしてなに? 俺と凛は工藤の手のひら上だったってこと!? 早くも3代目だよ、日本の魂だよ。


「……反応が、いい人って、面白いよね」

 ぐあああああ!! 悪意のない安心できる奴だと思ってた俺を殺したい! 部活サボってるのも阿久津の反応みるためとかじゃねーだろーな!


「良介の心の声が顔に全部書いてあるわね」

「語らずとも、面白い、凄い才能」

「え? 工藤ってこんな性格だっけ?」 


 俺は半分くらい魂が抜けた状態で工藤に聞いた。


「あはは、ごめんね? ……悪のり、しちゃった」


 工藤は肩にかかる髪を揺らしながらそういった。しかたない、ちょっとショックだったけど、笑顔(レア)なもんを見れたからよしとしよう。

 

「ええい! なんでアタシを無視するのだ! マンモス酷いぞ!」


 工藤にみとれていたら痺れを切らした凛が騒ぎだした。工藤って普通に可愛いんだよな、隠れモテるって話しだし。


 あれ? まてよ、冷静に考えたら学校の2トップと言われる渚と凛。その2人に見劣りしない琴葉に隠れモテる工藤。メンツえぐくない?。


 皆から奔流するリア充オーラに今さらだけど緊張してきた。


「……ええ。まだ無視するの?」


 ヤバい、凛がしょぼくれてきた。てか反応してないのって工藤もじゃん、なんで俺だけ標的にするんだよ、いじめてるみたいじゃん。


「り、リンリン先輩? 今までの冗談だったみたいですよ?」

 珍しく焦った琴葉は優しく肩を叩いてなぐさめる。


「うそっ!? 本気にしてたのアタシだけ?」

「そうみたいですね……あ、でもそんな純情なリンリン先輩があたしは好きですよ?」

「いやあ!」


 力なく叫んだ凛はそうして机に突っ伏してしまうのであった。琴葉の「お兄ちゃんも途中まで騙されてましたけどね」という呟きを聞かずに。


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