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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
32/69

人が変わると周りも変わる


 学校とはなにか、その問いには三者三様の答えが帰ってくるはずだ。


 友人と会える楽しい場所、勉強に拘束される面倒な場所、部活動に励む場所。そしてもし俺、川上良介(かわかみりょうすけ)がその質問に答えるとしたら、学校とは公開処刑場だとやさぐれながら答えていただろう。

 

 ……ちょっと前までは。


 人間なんてのは単純なもんで都合の悪かったものが取り除かれれば即刻、心変わりしてしまう。程度の差はあるにしてもな。


 そんな心変わりの要因としてあげられる多くが人間関係だというのも仕方ないことだろう。

 

 新しい環境で不安な事はなんですか、という質問の回答のほとんどが人間関係やその場の雰囲気らしいし。しょうがないよねコミュニケーションって難しいもんね。


 俺は球技大会の前のクラスの雰囲気と、その後の雰囲気の違いを確かに肌で感じている。


 前のピリピリしていながらも活気のあった教室が、今では活気がありながらも穏やかになっていた。


 それは俺の立場が変化したから、という側面もあると思うけどね。


「おい貞男、今日も学校きてんな」

「お、おう」


 自分の席に座っているとガッチリした腕に、これまたガッチリと肩を組まれる。

 いかにもヤンキーですと主張する角刈りの男、矢神剛(やがみごう)は、前までの嘲笑するような態度を潜ませて、俺をクラスの一員として扱ってきている。

 

 離れて行く矢神の後からもう1人。


「ういっす! 今日も朝からかますぜ同志よ! 一限いきなり数学小テストでどうしよ! 俺が受けたら再テストの後遺症が残るやつ、俺に教えてくれるやつには好印象が残るはず!」


 バンダナにキャップを合わせたラッパーの月島(つきしま)ライトは今日も朝から絶好調だ。俺はテンパリながらも彼の求めるであろう答えを返す。


「お、おう! 好印象のために教えるテストの調理法!」

「うおー! やるじゃん貞男!」


 かますだけかまして去っていく月島は、前からあんまり変わらないような気がするけど、矢神は俺の評価をかなり上げたらしい。

 こっちは球技大会で活躍できないように、さんざん嫌がらせしてきたのに……複雑だ。


 というかクラスでの評価がかなり良くなった、特に男子から。今日もこんなふうにちょいちょい話しかけられているのだ。


 それもこれも全て黒髪ロングの美少女で文武?両道、才色兼備の黒原渚(くろはらなぎさ)のせいだ。……いやおかげか?。

 

 とにかくやたらと男子から評価が上がっているのは、例の俺が渚に告白したことにされた事件、あれが全ての元凶だ。


 渚はクラスの半数の男子に告白されているモテ女だが、最近は本気で告白してくる奴は少なく、男子の間ではいわゆる度胸試しのようなものになっているらしい。


 つまりは渚に告白すること自体に価値が見いだされているのだ。なんかいろいろよくわかんないけど渚は何者なんだよ、むしろ現象みたいな扱いじゃねーか。


 そして俺はいかにも陰キャの姿から見た目の改善を計り、球技大会で活躍するため熱心にバスケの練習をして、打ち上げのあと渚に告白した。他の連中からするとそう見えているらしい。


 俺は1人の女のため努力して、告白する度胸を持ってる男だと男子に思われたのだ。そのおかげか特に渚に告白した同志達からは評価が高い。


 そうさっき月島もいっていた()()だ。

 なんでも1年の入学式の日に出会って3秒で告白したらしい、凄まじいバイタリティーと行動力だ。


 だからさっきからこっちを得意気に見てる渚に、苦虫を噛み潰したような表情を晒してしまっている。


 だってそうだろ? 俺は渚の気持ちに付け入って作戦を実行したのに、代償を払わせると言った渚の深意は俺のためだったんだから。


 もう頭が上がんないとかそんなレベルじゃないぞこれは、一生従僕として扱われるような貸しを作ってしまった。


 あの一連の騒動で得をした人間は0だと俺は思っていたんだけどな。しばらくしてみれば、渚に告白させられフラれた俺の1人勝ちになってしまっていた。


 完全に渚にしてやられていたのだ、顔も歪むよね。


 そして一番納得いかない現象はあれだ。


「うーす渚」

杏梨(あんり)、おはよう」


 もうあれだよね、初めてこの光景を見た時なんか頭からビックリマークとクエスチョンマークが飛び出してたよね。


「今日数学の小テストなんでしょ?マジでダルい」


 スクールバックの持ち手を、肩に引っかけた杏梨が渚の机の前にたっている。髪は黒から金髪ウェーブの白メッシュに戻ってるし、ストッキングもルーズソックスに戻ってる。


「なんでしょって、知らなかったの?」

「んーさっき聞いた」

「馬鹿ねまったく。大丈夫なの?」

「いや、無理にきまってるじゃん」

「はあ、いいからここ座りなさい教えるから」


 どうでもよさそうに答える杏梨だが、渚は親身だ。


「え、いいよ」

「いいから」

「……つかお前おせっかいだよな案外」

「座りなさい」

「はいはい」


 有無も言わせない渚の態度に、杏梨は肩をすくめながら大人しく座った。

 

 いやいや俺だったら馬鹿って言った時点で威嚇されてるとこなんだけどそれ。なんで大人しく従ってんの? つか、え? めっちゃ仲良くない!? え? え?。


 おっと危ない、あまりの親密っぷりに取り乱してしまったよ。ホントにどんどん仲良くなってるな。


 あの水と油みたいだった2人が仲良く勉強しているのだ。だらしない妹と、それを叱りながらも面倒を見る姉のような関係で。

 

 天変地異でも行ったのかと思うよね。


 この2人が仲良くなった理由は知らん。俺が聞いても教えてくれないし、あんまりしつこく聞くとキレられる。

 どっちもキレると怖いからな、マジで意味わからん。


 この2人のため奔走させられた俺の道化っぷりよ。大団円っちゃそうだけど、もっとバチバチしてるもんだと思ってたよ。


 そして最近の杏梨はギャルグループから外れて、よく渚と一緒にいるのだ。

 リアルに出現した優しいギャルの天塚桃花(あまつかももか)も一緒に。

 ギャルグループが2分したって感じだな、この2人といると渚が浮いて見えるけど。


 この2人が仲良くなったのも教室が穏やかになった理由の1つだ。

 前まではギャルのトップである杏梨が渚に敵意をむき出しにしていたからな、それがなくなっただけでも変わる。


 でも一番影響があったのは渚の態度だ、あの時いっていた通り男子の攻略を止めた渚は、執拗なまでのブリっこや媚びを売ることをしなくなっていた。


 するとどうだろうか、他の女子からしたら自分の好きな男子、または気になる男子にやたらめったらちょっかいをかける女が消えることになるのだ。

 そりゃ精神も安定するってもんだよな。


 女子がピリピリしてなきゃ男子も解放されたみたいに元気になるからな、総じてクラスが明るくなった。

 

 渚1人でどれだけの影響力があったのか今となっては恐ろしい限りだ。周りに悪影響を及ぼす虫歯、腐った果物、その辺りがあいつを表現する上で適切な比喩だな。


「んーーマンモスおはよう!」

「……急にくるよね、心臓に悪いんですけど」


 画面一杯に映る快活な笑顔が腹立たしい。

 

 ミスコン優勝者の渚と並ぶ美少女ときたもんだから手に負えない。しかもスタイルに至ってはそれこそ芸能人に引けを取らないからな、見た目だけなら完璧だ。


 鈴村凛(すずむらりん)の登場にげんなりしてると、肩をバシバシ叩かれる。


「心臓を鍛えると思えばいいじゃないですか! そんな心臓じゃバスケ部に入ったあと大変だぞ!」

「いや反省しろよ。てかバスケ部入らねーし」


 そしてこの距離感だ。男女ともに友達の多い社交的な奴で、むしろなんで渚よりモテてないのか不思議なくらいだ。

 ボディタッチって恋愛の駆け引きに重要だと思うんだよな。気があるんじゃないかってヤキモキする。


 そいや渚もボディタッチどうのこうの言ってた気がすんな。まあ凛は天然でやってるだけだな。俺は屈託ない笑顔を見てそう判断する。


「うそー!」

「いやいや、あたかも入ろうとしてたみたいな反応ね」

「なっはっは! ダメですか」


 俺のツッコミに大口を開けて笑う凛。ちょっと嬉しいんだよなこうやって笑ってもらえると。


「こえーよ、気づいた時には肩書きだけでもバスケ部になってそうだよ」

「しかも女バス!」

「笑えんわ」

「なっはっは!」

「楽しそうでなによりですね」


 大体俺が笑えない時は相手が笑える時なんだよな。俺も渚とかばんちゃんが悔しそうにしてると笑えるし。ひねくれすぎか。


「それはそうとりょうくん!」


 ガタンッと人の机に両手をついた凛は顔を近寄らせる。焦った俺の返事はぶっきらぼうになってしまう。


「なに?」

「約束してたバスケの練習はいつやる?」


 俺の冷たい反応なんて一顧だにもせず、ニッコリと聞いてきた。


「え?」


 俺はほうけていたと思う。あれって話しの流れで出てきた社交辞令だと思ってたんですけど……。


「……うえぇ? まさか忘れちゃったんですか!? し、しどい!私は遊びだったのね!」

 でたよ鈴村劇場。何がスイッチで始まってんだろこれ。わざとらしい泣き真似がちょっと面白い。


「ははは! 覚えてたけど社交辞令的なのだと思ってた」

「ええ! それこそホントにヒドイよ! それと最近りょうくんはアタシに冷たい気がするんだ!」

 凛はムッとした表情を作っているけど、どちらかというと寂しそうにしてる犬みたいな反応だ。


「いや嘘だろ? むしろ馴れてきて気兼ねなく話せてるだけだよ」

「ホントに?」


 なぜか更にシュンとしてしまう。なんでだよ、さっきの冷たい返事はまったく気にしてなかったのに、いきなり許容量こえたのか?。


「ホントホント! んなっ、ちょっと待てよホントだから、そんな寂しそうな顔すんなよ」


「……うん」


 確かに凛を相手にすると渚やばんちゃんに近い感覚で喋ってるかもな、でもこれが俺だし。

 ……なんなんだよ、ちょっと前までは俺が凛の視線にビクビクして避けてたのに、立場逆転してないか。


 凛は明らかにカースト上位のリア充なのに性格は臆病なんだよな、明るくていい奴なんだけど。

 杏梨とか阿久津(あくつ)とか矢神みたいに尖ったオーラ出してる奴は苦手っぽいし。まあ俺も怖いけど。


「あ、じゃあ部活ない日にでも琴葉(ことは)に連れてこいって言っとくから、いつでも来てくれよ」

「……今日休みだけど」


 あ、そうなの。なんだろ同級生を家に連れて行くって何年ぶりだ?なんか心の準備ができてないな、女子だし。


「え?そう……じゃあ今日くる?」

「なんか迷惑そう……」

 まてまてナイーブ過ぎませんか?いつもの調子はどうしたよ、こっちの調子が狂ってくるわ。


「いや、今から琴葉に凛が来るからって連絡しとくわ!いやー楽しみだなー今日は!」


 頬が痙攣するような笑みで心配そうに人の顔を覗く凛から目を反らす。こんな理由で目を反らす日がくるとはね、俺もビックリだよ。


 今日は帰ってフォートファイトする予定だったのに。

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