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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
30/69

決着


 打ち上げでの呼び出しといったらなにか、打ち上げ初心者の俺でも容易に回答が出る。"告白"だ。


 これが屋上の呼び出しなら選択肢は多岐にわたるんだけどな、残念ながら今回は打ち上げだ、逆に告白以外の選択肢があるなら聞いてみたい。


 そしてこれから告白をしようと学校1番の美少女を呼び出したのは他でもない、俺らしい。

 

 おい、ふざけんなよ渚のやつ! 杏梨も矢神も御劔もいる前であんなこと言いやがって! 息するように嘘つくやつだとは思っていたけどこんなことする!? 仕返しか、やっぱり怒ってやがったな!


 見事に嵌められてしまったわけだけど、しかたないので渚を追って店の裏の駐車場に歩いて行く。


 街灯はついているけどちょっと薄暗いし、遅い時間だから森閑としている。

 

 こうひと気がないと告白するには丁度よさそうだ。

 

 見ているのは街灯に群がるガくらいのものだ。光に集まる虫を見ていると、いつも渚の背中を追っている俺と重なるものがあるな。


 なんとなくノスタルジックに浸っていると渚が振り返った。


「人を手玉に取ったつもりだったみたいだけど残念だったわね?」


 渚はそういってニヤリと笑った。


「手玉にって人聞き悪すぎだろ」


 渚は鼻で嗤う。


「だってそうでしょ。私が杏梨へ罪悪感を募らせていたのに気づいて利用したんでしょ?杏梨が試合に勝ったらどうなるか私にわざわざ知らせてね」


 まあ気づいてるよな。


「そりゃ渚の善意に賭けて言ってみたんだよ」

「それは嘘ね。視線に敏感な良介なら私が杏梨を見ていたことを知っているはずだもの、それも憐憫のね。賭けた?確信を持って私を揺さぶっていたんでしょ」

「確かに賭けたってのは語弊があったかもな、そうなるように努力はしたけどな」

「それも努力じゃなくて仕向けたでしょ?」

「なんでさっきから人聞き悪い言い方に直すんだよ!?」

「だってホントのことじゃない」

 腕を組んだ渚は無愛想にいいはなつ。こいつはさっきから俺を悪者にしたいらしいけど俺にも言い分はあるんだ。


「確かに今回に関しては俺としては不服だけど仕向けたってことにしとくよ。でもしょうがないだろ?渚のわけのわからない男子全攻略なんて馬鹿らしいもんの為に杏梨が損するなんてそれこそ馬鹿らしいじゃねーかよ」

「そうね」

「だからって……え?認めんの?」

「そうね、それやめるわ」

「え、は?」

「私のために他の女子が不幸になるのは私の意向に沿わないからやめにするわ、男子全員から告白させるって目標」


 出鼻を挫かれて唖然としている俺に告げられたのは、馬鹿な目標の撤廃。しかも憑き物が落ちたような清々しい表情であっさりと。

 こいつ俺がその馬鹿な目標のためにどんだけ頑張ったかわかってんのか?


 ちょっと泣きそうだよ。


「あ、そうなんですか」

「なによ反応薄いわね」

「いや顔面パンチ食らって悶絶してるとこだね今」

「なに意味のわからないこといってんのよ、ただ私をいいように弄んでくれたことに関してはちゃんと仕返しさせて貰うから」


 ああ、俺が渚を呼び出して告白したことにするってことね。はいはい参りました参りました、なんかもうどうでもいいよ。


「はいはい」


 でも何が渚の心境をそこまで変化させたんだ?精神的に完全敗北した俺はもう全てさらけ出して渚に直接聞いてみることにした。


「でも負けて良かったのか?"ワガママの代償"とやらはいいのか?」

 その単語を聞いた瞬間、渚の肩がピクリと反応し溜息をついたが存外に感情の起伏は少なそうだった。


「まったくそんなこと覚えてたのね、いいのよ別に。私がこんなに偏差値の低い高校に居るのおかしいと思わない?」

「お前今、全校生徒を敵に回したぞ」

「そうゆうのいいから」


 真面目な話しだもんな揚げ足はいらないか、渚の一睨みで俺は竦み上がる。


「あ、はい。まあ確かにもっといいとこ行けたんだろ?」

「ホントはね。でも親から離れたくて無理いって都心から離れたのよ。その条件が成績の維持と生活費ね」


 そうゆうことか、球技大会って体育の成績にかなり響くらしいからな、にしても生活費か。


「てことは家賃とか……」

「全部自腹よ、直ぐに根を上げると思ってたんでしょうね、あのカス親父。残念ながら私には生活支援してくれる視聴者(パパ)がたくさんいるからね」


 親にも口悪いんだなさすが渚だよ。渚は俺達のなかで一番稼いでるし余裕だろうな。けどパパは止めろパパは。

 

「そうだったのか、なんかあったら相談してくれよ」

「こんな頼りない奴に?」

「ヒドイ」

「ま、そうね。最近少しはマシになってきてるし、なんかあればね」

「つか体育の成績は大丈夫なのかよ」


 最後の最後にシュートはずしてるし、0得点だったみたいだしな。


「大丈夫よ筆記もあるし。あのエロ教師私に甘いから」


 保健と体育は同じ評価だから筆記もあるんだよな。確かにあの教師は可愛い女子にやたら甘いよな、俺には厳しいけど。


「さいですか」

「もし成績が下がったとしても親の言うことに従う道理もないしね。もう完全に独立して生活できてるんだから私」


 そう言われればそうだな、親元がいやなら出ていける基盤が既に備わっているのか。黒原不動産の跡継ぎとか勿体ないと思うんだけどな、金持ちにも色々あるのかね。


「じゃあ心配無用か」

「そうね、良介は自分の心配でもしたらいいのよ」


 そういって渚は視線を俺の背後に反らしたと思うと、頭を下げた。


「ごめんなさい!勉強が忙しくて恋愛にかまけてる暇がないの、だから今は誰とも付き合うきはないわ、ホントにごめんなさい!」

「ん、え?急になんだよ……って」


 そこで俺は背後に気配を感じて振り返る。


「あ、矢神」

 ここでカチリと歯車が噛み合うように渚の狙いがわかった。


「お、おう、ドンマイ貞男。だからいっただろ、お前には荷が重いって」


 ヤンキーの矢神でも気まずいって感情はあるんだな、そんなの気にしないと思ってたよ。それとも間接的に望みがないのがわかってショックだったか。


「え、あ、ああ」

「……じゃ、俺は」


 そうして矢神は店の方に向かっていった。なんだコイツつけて来てたのか?いつからだ?


「大丈夫よ、来たのは今だから」


 なんで俺の考えてることが分かるんだよ。


「ああ、そうかじゃあ良かった……よくなくね?」


 今ので完全に俺が告白して、しかもフラれたってことになったじゃん。マジかよ。

 

「ドンマイ貞男」

「真似すんな、つかホントに全男子攻略はやめたんだな」


 今ので矢神を牽制してたからな、()()()()()()()()()()()って。俺を利用してな。


「いったでしょやめるって」

「まあそうだけどさ」


 信用ならなかったし、今回だけ気まぐれってパターンもあったしな。


「あ、でも1人攻略しちゃったけどねウヒヒ」


 そういって俺を指差してイタズラっぽく笑う渚は、普段の憎たらしい笑みとギャップがあって可愛いいけど、やっぱ今までの苦労を思うと少しムカついた。


「でもまあ諸々でプラスかな」


 そうボソリと呟いて俺達を取り巻くダメージの清算を終わろうとした時だ、後ろから大きな声がしたのは。


「剛!待って」

「あ?なんだ島崎か、なんだよ?」


 ──そこには矢神を呼び止める杏梨がいた。


 杏梨は矢神の為にストレートにして黒染めした髪を震わせて、スカート端を強く握りしめ、そしてその瞳は決意が宿っていた。


「──あたし。剛にファミレスで助けてもらった時から剛の事が好きでした……付き合ってください!」


 睨みつけるように凝視する杏梨に、矢神は瞬きの考える素振りを見せる。その間は固唾を飲むような緊張感が夜の駐車場を刺した。


 ──そして。


「……悪い、俺は好き奴がいるから」

「そう……」

「すまん」


 そして矢神は振り返ることなく逃げるように店の中に戻っていった。


 俺と渚は一瞬の出来事に唖然。

 正常に思考することができない。


 杏梨はしばらくうつむいて動かなかったのだが、急に顔を上げたかと思うと、俺達の方にずかずかと不機嫌を隠すことなくやってくる。


「お前のお情けなんて受ける気ないから」


 そういって渚を睨み。


「それから良介も余計なことすんなや!あたしは勝って告白したかったのに!」


 そういって俺を睨みながら胸ぐらを掴む。そしてその圧の強い瞳からはポロポロと涙が溢れていた。

 そしてそれが意味するところは……。


「もしかして……」

「全部聞いてたんだよ、そこの車の影でな!」


 そういって振りかぶった手のひらは狂うことなく俺の頬に叩き込まれた。人気の少ない駐車場にはよく響く軽い音だ。


「いってえ……」

「お前も殴らせろ」


 杏梨はジロリと渚を睨んだ。


「え、嫌よ」


 問答無用で腕を振りかぶったので、俺は後ろから羽交い締めにして杏梨を止める。


「待て待て落ち着けよ!マジで謝るから!」

「じゃあもう一発殴らせろ!じゃないと気がすまない!」


 涙を見せた杏梨には恥もへったくれもない。子供のように暴れて癇癪を撒き散らす。


「それは勘弁してくれ」

「うわ、良介見事に紅葉が顔にできてるわよ。創作だけの表現だと思ってたわ。凄いわね撮っていい?」


 いい度胸してるわホント、今にも殴られそうなのに。つかこの状況で煽るんじゃねーよ。


「ッやっぱこの女は痛い目みせないと気がすまない!はなせよ良介!」

「いやマジで落ち着けよ!皆くるぞ!?」


 バタバタ暴れる渚の手足が身体じゅうに当たる。普通に一発殴られたほうが良かったかもしれん。


「はあはあ、あークソ。……フラれた」


 しばらくして涙も収まり大人しくなった杏梨は事実をゆっくり咀嚼するように受け入れる。そしてそれをぶったぎる輩がここにはいた。


「私は謝らないわよ」

「あ?」

「元はそっちが喧嘩売って来たんだし、しかも最後はあなたの為に譲歩してるんだからね私は」

「別にいいよもう」


 投げ捨てるように杏梨は言った。彼女はもう切り替えようとしているのかもしれない、そして渚は意外そうに一言。


「そう」


 やめて下さいよもう、暴れたら止めるのは俺なんだからな。つか謝らないって宣言してる時点で悪気があるんじゃねーかよ。


 てか俺が渚を誘導して女子を負けるように仕向けたのも、矢神を活躍させないようにして告白をそししたのも全部、杏梨が告白したら台無しだろ。渚だって杏梨に悪いからって成績捨てて負けてるわけだし。


 あれ?これ全員が損してね?矢神なんて最初から希望すらなかったし、得した奴いなくね?なんなのこれ。


「つかやっぱお前の本性ってそれなんだな」

「別になんだっていいでしょ?」

「そっちのほうがいいんじゃねーの?普段のハッキリいって気持ち悪いから」

「余計なお世話よ、そっちこそその格好見る度に吹き出しそうになるから早く元に戻したら?ハッキリいって気持ち悪いわよ?」

「あ?」

「は?」

「はい!ストップストップ!1回落ち着きましょう!」


 見てると胃がキリキリすんだよふざけんな!俺は睨み合う2人の間に身体をねじ込んで宥める。


「私は別に落ち着いてるわよ、黒髪が似合ってないって教えてあげてるだけで」

「あたしもブリっこして媚びてるより今のほうがいいって言ってるだけだから」

「「…………」」


 この2人って実は相性いいんじゃないの。根幹の部分が一緒な気がするわ。


 マジでそろそろ誰か助けてくれ、そう思っていたら店の外がガヤガヤと騒がしくなってくる。打ち上げが終わったらしい。


「はあ、じゃあ私は戻るわよ」


 渚がいなくなることでやっと睨み合いが終わる。ナイスタイミングだ、この後どう解散するのか悩んでたんだよ、これなら自然に人混みに紛れられる。

 

 よし、俺も戻るか。


「……ねえ良介」


 思惑どおりにはいかないらしい。どおにも杏梨らしくない塩らしい声音だ。


「ん?」

「良介はさ」

「うん」

「──あたしの黒髪と前の金髪ウェーブどっちが良かった?」


 なんだよ、渚に言われたこと気にしてんのか?意外だな。


「俺は断然、前の金髪のほうが良かったと思うけどな、そのストッキングも前のほうが似合ってた」


 杏梨はどう考えても清楚系よりギャル系だな、やっぱ。


「そっか」

「おう」

「さっきはさ余計なことって言ったけど、あたしの為に頑張ってくれたのはわかったからさ、ありがとね」


 チラチラと人の顔を盗み見る杏梨はそれこそ清楚っぽいしおらしさだったが、俺の頬はさっきから紅葉型に熱を持っている。

 

 それでもこの一言で球技大会、頑張って良かったと思えるから不思議なんだよな。




 

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