表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
29/69

呼び出し


「それじゃ球技大会お疲れ様でした! カンパイ!」

「「「「カンパーイッ!!!!」」」」


 御劔の音頭でクラスメイト達が一斉にグラスを打ち付けた。


 クラスのほとんどが参加する打ち上げは、お好み焼きチェーンで行われている。1つの鉄板に4~5人のグループに別れて座るのだが、友達の少ない俺は当然困るはずだった。

 

 けど店に入るや否や御劔に呼びつけられ気づけば対面に座っていた。


 もしかしてクラスカーストNo.1の男に気に入られたか?俺の未来は明るいな。そんな甘い考えでいると続けて矢神、杏梨、渚も御劔に呼ばれて席についた。


 勘弁してくれよ御劔のやつ分かっててやってないかこれ?爽やかな笑顔がノーサイドとでもいいたげだ。


 打ち上げって人生初なんだよな。今回だって本当はきたくなかったし、そもそも誘われたことが初めてなような……


 つかさっきから杏梨と矢神が喋らないから空気が重い。そっぽを向いてグラスを傾けるばかりだ。

 

 主に喋るのは御劔と渚だけ、このメンツで俺から話題を振るのは難易度高いし。


「それにしても惜しかったね」

「そうね、良介に言われた通りのフォームで打ったんだけど入らなかったわ。教え方が悪かったんじゃないかしら」

「おい、なんで俺のせいになるんだよ」

「ふふふ、冗談じゃない」

「こ、こいつ反省してないぞ」

「ははは!」

 こんな感じでこの2人を中心に会話が進んでいる。御劔のやつ人の気苦労も知らずに楽しそうに笑いやがって。


 渚は嘘ばっかりだ。男子の試合は女子より少し早く終わったから、そのおかげで最後の方だけ見れたんだ。


 だから分かる最後の失敗はわざとだったな、俺の思惑通りに渚は動いたらしい。つまり杏梨に対する同情だ。

 

 でもおかしいんだよな、渚のことだから俺の思惑に気づいてるはずなのに機嫌悪くないし。普段だったら俺のいいように動かされたなんて知ったら噛みついてきそうなもんだけど。

 

 疑問が顔に出ていたのか渚を見ていたら、蠱惑な笑みを浮かべた。なんだ?むしろ機嫌いいぞこれ、こうなると逆にちょっと怖いな。


「みなさんすいませんでした!」


 大きな声にビクついたのは俺だけじゃないだろうな、この席静かだし。


 声の主は魅力的なスタイルと非常に整った顔をしているが、頭の毛が寂しい少女だった。具体的にいうと頭頂部の毛が一本だけはえている感じだ。サ◯エさんのお父さんかよこいつ。


「ははは!凛なんだよその髪は」

「反省して刈り上げて来ました!」

「ははは!」

 どうやら御劔はツボッたらしい、美少女のあまりの姿は確かにシュールだ。


「こら!冗談でも女の子がそんな格好しないの!」

 渚はそういうと凛の頭からどこから買ってきたのかわからんパーティーグッズを取り上げた。


「ああっ!」

「ああじゃないわよ!」

「私のせいで女子は負けたんです!反省の証しとして今日はそれで過ごすつもりだったのに!」

「ダメに決まってるでしょ!」

「ははは!」

 御劔さっきからずっと笑ってんな。凛は負けたのが相当ショックだったらしい。試合後は体育館の脇で灰になってたしな。


「それ被るとしたら渚だしね」


 ついに動いた杏梨は渾身の一撃をみまった、相手の隙をついたいい一撃だ。その一言に全員が押し黙り、鉄板の上で焼かれているお好み焼きの音が耳に痛いほど大きく聞こえる。

 

 ……あの、早くこの席から移動したいんですが。


 始まるのかついに。ここまで言われて黙ってるJILL(ジル)じゃないぞ、さていい避難所はないかな……


「そうね」


「「「「「え!?」」」」」


 全員が驚きの声を上げた、黙っていた矢神も煽った本人の杏梨もそろって。

 

 そして全員が見守るなか渚はあっさりパーティーグッズを装着してしまった。キャラ的に絶対やらなそうな渚がやると、空気がおかしくなり、みんな身の置き場が無さそうにしている。


「あら、似合わない?」


 彼女の姿は筆舌に尽くしがたいとだけいっておこう。ただ心底楽しそうに杏梨に笑顔を向けていた、どうしたんだ一体。


「なははーこれは確かによくないね、よっし回収!」

「あら」

 凛はというと渚に怒られたのに直ぐに装着し直して他の席に回っていった。注意した本人が速攻で被ったしな、つかあいつ逃げやがったな。


 奇行に驚いてた杏梨は渚の笑みに反応できなかった。それが負けたとでも思ったのか悔しそうに歯噛みする。


 それを見て俺は思うのだ、やっぱりヤンキーは面子を大事にしているんだなと。

 単純に考えれば舐められないように虚勢を張っているだけなんだろうけど、俺はヤンキーじゃないから深い理解はできない。


 今回、杏梨が勇み足になってしまったのは、矢神を取られたくないという思いよりも、渚に舐められるのに腹が立つからだ。

 もちろん取られたくないと思っていたのも事実。それでも意外や意外にも杏梨は恋愛に関しては奥手のようで決心は簡単につかなかった。


 だから彼女は自らに発破をかけるためルールを作った。球技大会で勝てば告白する、負けたらしない。ヤンキーらしい単純明快な計算式だし白黒つけてやろうという粋を感じる。


 そして気づいたのだ。もしかして矢神も杏梨とおんなじ考えなんじゃないかと。


 矢神は球技大会の練習から渚にたいするアタックが激しくなった。練習も人一倍やっていたし、杏梨と同じくらい勝利を望んでいた。


 なんなら杏梨は矢神のため、矢神は渚のために勝とうとしていたんだからな、そこに自分への報酬を用意してもおかしくないだろう。


 だかといって全てが杏梨と同じかと言えばそうじゃない。

 あれだけのアタックだ、奥手ではないだろうし優勝しなくても活躍していい所を見せてから告白する、それくらいの考えかもしれない。


 だから俺はメンツを潰してやることにした。もし、勝利したとしても足を引っ張っていたら告白するだろうか。

 

 最近の付き合いでわかる、杏梨だったらしない、ということは恐らく矢神もそうだろうと。


 だから俺はわざわざ矢神に活躍させないよう暗躍し、かつ自らの活躍という目標も達成した。


 我ながら完璧だったと自負している。

 

 そのぶん少し目立ち過ぎたかもしれないけど、まあ視線恐怖症はほとんど鳴りを潜めているから大丈夫だ。


「リ、リンリンやめろ!これは俺の魂なんだ!」

「なっはっは!よいではないか、よいではないか!」

「いけーリンリン!ライトのバンダナとっぱらえー!きっと剥げてるよ!」

「剥げてねえ!おい春人助けてくれよ!」

「でも俺もライトが帽子とバンダナ取ってるの見たことねーわ、ハゲ?」

「カップルでハゲハゲいうな!ハゲてねーっていってんべよ!」

「これを被れば誰でもハゲに!」

「そんな売り文句あるか!」


 テンション高いのが集まってんな……。

 

 月島が普通に喋ってんのも珍しい。


「それにしても良介の()()()凄かったな」

 御劔からお声がかかった、俺の目立ち過ぎはこれのことだ。


「というか良介はダンクできたのね」

 キャピキャピした声とは裏腹に視線は責めている、なぜ教えないのだと。だって出来るって言ったら"やれ"っていうだろ。結局やってるから世話ないけどさ。


「まあ一応だけどな」


「つかブザービートってやつでダンク決めたんでしょ?やるじゃん良介」

 杏梨は店に入ってから一番の笑顔で俺を誉めてくれた、不貞腐れてたのが嘘みたいだ。

 肩をぐいぐい押されてちょっかいをかけられていると、御劔が説明してくれた。


「最後にあと一本シュートを決めれば逆転って場面で僕がはずしてさ。正直焦ったよ負けたと思った。けど予測してたみたいに誰よりも早くかけよった良介がリバウンドしてそのままダンクしたんだ。アリウープっていうんだっけ?まるでプロのダンクを見てるみたいだったよ」


「マジ?御劔がべた褒めとかヤバイじゃん、さすが私が育てただけあるな」

 つかお前は清楚はどうしたんだよ、胡座かいてるし。


 しかも育てたのは俺のほうじゃねーか、部下の成果を奪う上司かお前は。まあでも髪切ってセットまで教えてくれたのは感謝してるんだけどな。


「恥ずかしいからそんなに誉めんなよ」


「あ?いいんだよ、凄かったら誉められんのが普通なの!」


 ガシガシとなでまわされる頭をガードしていると、面白く無さそうな矢神が目に写る。


 そりゃそうだよな、ほんとだったら矢神が渚に誉められているはずなのに、その立場にいるのは俺と杏梨に替わってるんだからな。

 というか矢神が落ち込んでるこんな時こそ距離を縮めるチャンスじゃないか。


 やけ食いしてる矢神の皿によそってやれよ。……と思ったら既に渚が自分の分をわけていた。さ、さすが判断が早い。

 

 でもまだ空になったコップがあるし、ドリンクバーでも取ってきてやれよ。俺は杏梨に目配せするのだが一睨みしてきたかと思えば俺のジュースを一気飲みする。


「良介飲み物取りいくの?じゃああたしの分もよろしく。あ、剛のもないじゃんついでに取ってきてやれよ」

 それで気を使ったつもりかよ、ただ俺をパシってるだけじゃん。人のアシストを無碍にしやがって。


 しょうがない。2人からリクエストを聞いて大人しくパシられてやるか。

 

 まあ時間稼ぎは成功したんだ、これから杏梨はゆっくりとは行かないまでも、時間をかけて矢神を攻略すればいい。球技大会の成果を胸に抱けばドリンクバーなんてなん往復でもしてやれるぜ。


 その後も杏梨へのアシストをしたり、シュートを決めたという桃花にハイテンションズの渦へ巻き込まれたり、私服でもやたらとガードの低い阿久津や工藤に試合凄かったと誉められたり、これまでにないほど充実している濃い時間だった。


 初めて参加した打ち上げは最初はどうなることかと思っていたけど想像以上に楽しくて、時間を忘れてクラスの人達と話した。

 

 そこには視線恐怖症の川上良介という存在はなく、クラスに溶け込む学生の1人が普通に打ち上げを楽しんでいる光景にしか見えない。いや、それが全てで真実だった。

 

 そしてそろそろ打ち上げも終わるという頃合いに、渚が告げた一言で場が盛大に動きだす。


「そういえば良介、大事な話があるって言ってたわよね?先に店でよっか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ