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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
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試合と思惑


 御劔という男は超人なのだろうか、聞くところによるとバスケは学校の授業くらいでしかやってないといっていたのに、そこらのバスケ部よりよっぽど上手い。


「「「キャーーーーッ!!」」」


 今も華麗なレイアップを決めた所だ。女子からの黄色い声援がだんだんヒートアップしてきている。

 ファンクラブでも作ったらそこそこの人数になりそうだな、爆死しろ。


 4戦目にもなると御劔がいかに頼りになるかも理解させられた。クラス唯一のバスケ部のやつより上手いんだからな、驚きだ。


 というかバスケ部のやつが可哀想だった、自分より上手いやつが2人もいるなんて思わないだろ、1人は御劔だから納得できても残りの1人が俺だからな、心中お察し。


 そのおかげで俺は体力が温存できて助かったんだけどな。

 現役から遠ざかって2年以上、正直いって体力が追い付かなかった、技術的な面は家で練習してたおかげか前より調子がいいんだけどな、御劔様々だ。


「な、ナイスー」

「ああ、ナイスパス良介!」

 しらんうちに名前で呼ばれるようになってるし、……これが友情。


 手を出して来た御劔に合わせて俺も手をだして、タッチする。その瞬間御劔ファンがまた甲高い声援というより、悲鳴のようなものを上げた。


「ともやくーーーんっ!!」

「キャーーーー!」

「私にもタッチしてー!」

「御劔くんにパスした人もナイスアシストー!……あんな人2年にいたかな」


 なんだろう、俺も一緒に声援を受けたような気分になれて気持ちいいぞ、ナイスタッチ御劔。でもいくら頑張っても貴様のアシスト役か俺は……チッ。


 先の勝った3戦の活躍のおかげかちょっとしたことで盛り上がる、明らかに空気は俺達1組のものだ。

 実際この4戦目の試合も優位な運びになってきている。俺が余計なことを考えている暇があるくらいだ。


「チッ抜かれた!貞男!」

 ディフェンスに入った直後、焦るような野太い低音ボイス、有無もいわさぬ命令を発したのは矢神だ。

 カバーに入って欲しいらしいが、俺はあえてカバーに遅れて入る。


 結果2点を返されてしまう。


「「「あ~~~~!!」」」

 気の抜けるような正直な歓声は時として選手を苦しめる。点数決めてる時はいいんだけどな、ミスにも過剰に反応されるとやっぱり焦る。

 御劔ファンは諸刃の剣だな。


「す、すまん」

「くそ!」


 俺が小さく謝ると矢神は周囲も気にせずに感情を露にするも、切り替えて走る。さすが元スポーツマン。


 試合運びは上手くいっているのだが矢神はそうも行かない、今日はこの4試合目と次の5試合目に出る予定だが、この後も矢神は失敗を続けることだろう。

 

 ボールを拾うと俺達のゴールに御劔と矢神が走って手を上げている、速攻だ。2人ともいい判断だが、俺は御劔にパスを出す。矢神はいい囮になってくれた。


「キャーーーー!また智也くんだ!」

「いけーーー!!」

 奪われたら奪い返せばいい。御劔は矢神の囮を上手く利用して、キッチリ2点取り返す。ちゃんとパスすればちゃんと決めてくるから楽でいい。

 御劔は汗で髪が張り付いていても爽やかイケメンだな。


 ここまでいいとこ無しの矢神は元から怖い顔がしかめっ面で更にまずいことになってるが気にしないでおこう。

 

 矢神は普段からいいやつじゃないけど、それでもやっぱり罪悪感はある。ホントなら矢神も御劔までとは行かなくとも相応の活躍ができる動きをしているから。


 じゃあなぜミスばかりしているのか、それは俺がわざと取りづらいパスをしたり、活躍の場を御劔に譲ったり、カバーを遅らせたりしているからだ。性格悪すぎるな我ながら。


 その上で女子の正直な声援で、矢神は余計に焦ってミスを連発しだした、なんかもう胸が痛い。


 でもちょっとざまあみろと思う自分も否定できないけど、これは副産物で真の狙いは別。とにかくまずはこの試合を勝たないと。 

 

 それにパスばかりしていて自分自信の活躍もまだだ。いくらパスが上手くても結局シュートを入れた人間が褒められるのがスポーツってもんだ。


 御劔のおかげで体力も温存できたしそろそろ気合い入れよう。


「あっ!」

 そんな折りに間の抜けた声がする、相手選手のパスミスだ。もたもたとボールを追いかけている脇を潜り抜けカット。

 俺はフリーで3ポイントラインの外側に立つことに成功した。


 確かに体力は激減した、けど家のバスケゴールで散々シュートだけは打ってきたのだ、練習は裏切らない。


「要は点数キメた奴が正義なんだよ」

 

 ボソっと呟いた俺の声は誰にも届かないだろう、なんてカッコつけながら放ったシュートは綺麗な弧を描きゴールポストに吸い込まれる。


 ──1組のカウンターに3ポイントのプラス。

 

 更に相手を引き離す。


「うお、スゲーいまの!」

「御劔くん以外にも凄い人いるよ!」

「ナイシュー!」


 よっし高評価、なかなか気分がいいものだ。相手クラスは殆ど攻めていたからとんぼ返りだ。俺はのんびり走ってディフェンスに戻る余裕があるので、聞き耳を立てている。


「りょうくんナイッシューーッ!!」

 聞き耳を立てなくても聞こえてくる大声は凛のものだ、片腕を上げてグルグル回している。

 応援してくれるのはいいが周りの人に当たりそうで危ない。


 そしてその中に迷惑そうな顔をした渚がいるが、俺が見ていることに気づいて、組んでいる腕から手だけを少し上げ、ついでに口角も上げた。


 どうやらクラスの女子がまとまって応援しに来ているらしい。

 

 ちょっと離れたとこで桃花がピョンピョン跳ねて手を振って応援してくれているのだが、周囲の男子が試合そっちのけで桃花を見ているのは仕方ないことだろう。

 

 そしてその隣ではブスッとして睨みを利かせた杏梨が男子の視線を牽制していた。見た目は清楚感でてるのにあれじゃ台無しだ。


 無視するのもあれなので軽く手を上げて声援には応えたが、気恥ずかしくてもうあっちは見れない。視線も集中してるし……


「ナイシュー」

 自陣に戻ると笑顔の御劔からボディタッチつきのお出迎えだ。女子なら卒倒してるな。


「お、おう」

「あの調子なら女子のほうも勝ったらしい、僕達も負けていられないね」

 見れば女子達の表情は明るい、無事に4試合目も勝利したらしい。

  

 残りは最後の5試合目だが、それには渚が出る予定だ。試合のタイミング的に見には行けないだろうな、お互いに。


 更にやる気を出した御劔は野性味のある笑みを浮かべて、相手のバスケ部のドリブルに密着してスティールを狙っている。


 一見、御劔は敵意や害意のない柔和な男だが、目的の為なら恥や外聞をかなぐり捨てる泥臭さのような物をもっているって話しだ。

 それがまたカッコいいらしい、そうクラスの御劔ファンの女子が話していた。


 どうやら女子の勝利が彼の野性味を活性化させたらしい、動きが機敏になって華麗な所作は荒削りで力強い体力を気にしないものに一変した。

 持ち前の運動能力を発揮した御劔は抜かれても回り込んで圧をかけ続け、相手はたまらずパス先を探すが御劔のディフェンスに気を取られ、ずさんなパスを出してしまう。

 

「ナイス御劔!」

 思わず発した褒め言葉と同時にパスカットした俺はまたしてもフリーで敵陣へ攻める。

 そういや始めて御劔相手に噛まずに話しかけられた気がする、マジでいい動きだったしな。


 カッコつけて3ポイント打ってやろうかと思ったが、さすがに思いとどまって無難なレイアップをしっかり決めた。外すとダサ過ぎるからな、1回できただけでも上々。


 俺はクラスの女子からの声援を聞き流しながら時間と得点を確認する。


 ──16点差で残り2分。

 

 もう負けはなくなっただろうし、後は矢神を気にしながら流せばいいかな。御劔に任せれば後はどうとでもなるだろ、それにしても体力スゲーな全試合ずっと走ってるよあの人。



───ビーーーー!!

 試合終了のアラームが鳴り響く。


 俺が機能しなくても負けはないだろうとか舐めたことを言っていたが、あの後御劔が無双して22点差まで広げて大差で勝利することになり、自分がいかに驕り高ぶっていたのか思いしらされてしまう。

 やっぱ得意だからっていい気になっちゃいかんよね。


 ただ御劔が脚光を浴びている横で、ひっそりと矢神は無得点、無アシストという結果を叩き出している状況に俺は内心笑みを浮かべていた。


「みんなお疲れ様」

 ヘトヘトでコートを出ると渚が全員分のスポーツドリンクを持って待っていた。首からタオルをかけているがコイツはまだ試合に出ていない筈で、タオルは必要はない。

 部活のマネージャー的なポジションを狙っているのがよくわかるね。


 ただ今は喉が乾いているのでありがたく受けとる。


「サンキュー」

「3ポイントカッコ良かったわよ良介」

「え、ああ」

 なんで褒められたんだ……不気味だ。

 

「あ、智也もずっと走って大変だったでしょ?お疲れ様」

「ああ、ありがとう渚」


 あ、わかりました、全員のプレーをちゃんと見て良かった所を褒めているんだ。つまりは男子の人心掌握術ですね。


 俺は恐る恐る他の女子の方を見てみたが後悔した。クラスの半数以上の女子が渚の背中を睨んでいたのだ、恐怖映像だろこれ。


 順番が回り矢神が受けとるが、なんとなくバツが悪そうな顔だ。


「剛もお疲れ様、剛がいい動きしてたおかげで相手が警戒して皆がフリーになりやすくなってたわね」

「ま、まあな」

 マジか。スゲー観察眼だな、こりゃ俺が矢神に活躍させないようにしてるのもバレてそうだ。

 

 だが矢神は点数を入れてないせいか決まりが悪い、けど渚からの評価ぎ嬉しいそんなどっちつかずの顔でドリンクを受け取っていた。

 

「皆の表情からして女子も勝ったのかい?」

 疲れを感じさせない御劔の笑顔は女子達を魅了しているが、話しかけているのは渚に対してだ、だから睨まれてんだな。


「勝ったわよ、もちろんね」

「おめでとう順調だね、でもこれでようやく優勝にリーチか……6組は手強いね」

 6組と1組は男女共に今のところ全勝している、つまり最後の試合で優勝決めるという狙いすましたかのような、盛り上がる展開になっているのだ。


「そうね、でも智也がいるなら楽勝ね、なんていってもテニスで全国大会に出るくらいの運動神経があるんだから」

「ははは、そう言ってもらえると嬉しいけどね、僕はまだまだだよ」

 そう言って表情に陰を落とすと女子達がため息を漏らす、だが御劔はその直後、精悍な顔つきになって言った。


「だから次の試合も勝つよ、渚も頑張って」

「ええ、お互いにね」

 真剣な顔つきに渚は驚いていたが、いつものように極上の笑みを浮かべて黒原渚になりきっていた。

 御劔は前に全国でるぐらいじゃダメみたいなこと言ってたな。意識が高いね、気持ちは痛いほど分かる。


「ちょっとりょうくん」

 俺が渚の行動を監視していると、小声で呼びつける者がいた。まあ、りょうくんと呼ぶのは凛しかいないけど。

 

 声のするほうを向くと人目を憚るように姿勢を低くした凛が手招きしていた。逆に目立つよそれ、という言葉を飲み込んで凛に近づく。


「どうかした?」

 体育館の端っこで一応人目は少ない。凛は周囲を警戒しながら口を開いたり閉じたりして、話すこと自体を悩んでいるみたいだ。


「そ、そのー……」

「ん?どうしたんだよ」

 まさか俺から会話を促す立場になるとは人生わからんもんだ。


「じゃあ単刀直入に!もしかしてりょうくんはごっちんが嫌いなのですか?」

「っ」

 油断していた。よく人を見ている人物は渚と御劔だけじゃなかった、むしろ一番人の機微に聡いのは凛なのかもしれない。


 凛の愛嬌ある丸っこい瞳は不安の色を映している、何か問題があるなら協力して解決しようとでもいいたげだ。今回に限っていえばバスケが絡んでいるから分かりやすかったのだろう。


 俺は動揺は隠せなかったけど、それでも誤魔化すことはできる。


「矢神?べつに好きでも嫌いでもないけど……」

 嘘です、どっちかと言えば嫌いです。


「うーん……そう?」

「なんだよ、そんなことで呼びつけたのか?次の試合もあるから俺はもう行くからな」

「あっ……」

 危ないな、あのまま話してたら根掘り葉掘り聞かれそうだった。


 強引に捲し立てて逃げだせたらしい。悲しそうな表情の凛に罪悪感は募る一方だが俺は俺のやることをやるしかない。ここまでやって後戻りは出来ないからな。





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