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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
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依頼


 最近のアニメや漫画は、異世界転生ってジャンルがトレンドだ。

 俺もフォートファイトの合間によく見ていて、好きなジャンルの1つだったりする。


 そこでだ、異世界転生する方法を知りたくないかね?

 因みに俺は知ってるし、毎日してる。

 やり方は簡単。学校でクラスの扉を開くだけ。


 それだけで、意味のわからないカースト制度を味わったり、永遠に勉強させられたり、青春とかこつけて、無茶苦茶なノリに強制参加させられたりする。

 日常では味わえない、まさに異世界での出来事のようだ。

 ……転生はしてないね。


 とゆうわけで、俺は異世界の扉を開こうとしていた。

 扉の向こうは、大勢の若い男女の声が飛び交っていて、今日も我がクラスはご健勝のようだ。


 ──いざ、転生。


 生徒会室と違って普通のスライドドアを開けて俺は侵入した。

 渚に脅かされていたので、いつもよりゆっくりと音を立てずに。


 だが、やたらとドアを閉める音が響いた。

 おかしいな、みんなが騒がしいはずなのに……。

 あれ?静かになってません?


 見回してみると、辺りは一斉に静まり返っていて、俺を見たり、別の場所を見たりしている。

 チラ見ならガン見より全然いいね、ダメージ少ない。

 ──にしてもなんなんだ?


 皆様の視線を追っていくと、1人の派手な女に行き着いた。

 ルーズソックスと、ウェーブのかかったプラチナブロンドのメッシュがトレードマークの、島崎杏梨(しまざきあんり)だ。


 ああ、そうゆうこと?

 俺が怒らせたから、俺が教室にきて杏梨がどんな反応するか、皆でうかがってるってことか。

 …………とりあえず座るか。


 まあまあ皆さん、心配せずとも貞男は大丈夫ですよ?

 なんと、このギャルとお友達になったんですからね!

 ま、俺の心配じゃなくて自分の心配だよな。杏梨の怒りが自分に向くんじゃないかって、戦々恐々としてるんだろう。

 

 現に目の前にいる杏梨と、俺の行く末を固唾を飲んで見守ってくれている。

 ……いつのまに。


「なにボーっと人の顔みてんの?良介」

「意外と化粧薄いなって」

「は?殺されたいの?」

 いつもの眼光に睨まれるが、友達になったという事実が俺を守ってくれているのか、怖くない。

 それにどもらずに喋れてるな、俺。


「すみません」

「昼休み、屋上な」

「え……」

 え?あれ?友達になったんじゃ……。

 屋上?OKUJOU!?Watts!!?


 周りは葬儀のように静かだが、ボソボソとあいつ終わったな、とか島崎コエーとか聞こえてくる。 

 明日の朝日は拝めないのか……。


 杏梨が要件だけ告げて立ち去ろうとした、その瞬間。

 斜め前の住人が気だるそうに杏梨を引き留めた。


「アンタさ、クラス雰囲気悪くなるから、そうゆうのやめたら?」

 ハスキーボイスの美人、阿久津瑠色(あくつるい)だ。今日も赤色のインナーカラーが、耳のシルバーを映えさせている。


「あ?そうゆうのってなんだよ、ちゃんと言わないとわかんないんだけど?」

 スイッチ入るの速、もう喧嘩腰だよ。阿久津も最初から喧嘩腰だったけど。


「これでわからないとか……空気読めないんだね、ゴメン、ゴメン」

 クールな奴が嫌味を言うと怖いな。

 冗談で言ってない感がよくわかる。


「なに?喧嘩うってんなら最初からそういえよ」

 この2人はことあるごとに衝突してる。見慣れてきてはいるけど、これこそ雰囲気悪くなっている。

 でも、いいたくなる気持ちはわかるし、間違ってない。


 それに杏梨にここまで言える奴が殆どいないから、阿久津は貴重な戦闘員だ。


「ほら、直ぐ暴力?いつの時代に産まれたんだよ、原始時代?」

 ここで杏梨が座ってる阿久津に、よっていく。

 そして鼻と鼻がくっつきそうな距離で、口を開いた。


「お前、あんま調子のんなよ?」

 ドスの聞いた声だ。

 クラス中がヒヤヒヤしているが、これはプロレスみたいなもんだ。

 本気のキャットファイトが始まることはない。……たぶんだけど。

 それに、ここまで暖まったら向かえがくるはずだ。


「ちょ、杏梨!なにやってんの!」

 慌ててやってきたのは、杏梨の良心こと天塚桃花(あまつかももか)

 桃花は杏梨の後ろから抱きついて、阿久津から離す。

 その間、2人は睨みあったままだ。


 そしてもう1人。


「見合って見合ってーハッケヨイ、ノコッタ!相撲ですか!?でしたらこの、鈴村凛(すずむらりん)も混ぜてくだせえ!」

 2人の間柄に割って入ると、行事の真似事のようなことをやりだした。

 このタイミングでそれは、空気読めてないだろ。なんなら煽ってるまである。

 ……こいつの場合、止めに入ってるんだろうけど。


「凛、じゃま」

「う、まあまあ、るいちん落ち着いて」

 阿久津のひと睨みで一蹴されてしまう凛。何気にビビリなんだよな。

 

「いいからどけよ凛」

「りーさんも、そんなに怒らないで……」

 あははとびくつきながら笑う凛は見ていて痛々しい。

 こいつ無駄にいいやつ過ぎるんだよな、怖いなら出てこなければいいのに。

 俺みたいにな。


「はいはい~瑠色(るい)ちゃん、どう、どう」

 そしてついに工藤も動き出した。

 とゆうか止めかたが斬新だ、阿久津の襟を掴んで引っ張っている。

 ……息とまるぞあれ。


「ゲホ!ちょ!ゲッ、実乃莉(みのり)~っ!!」

 ハスキーボイスがよりすかすかになって、ヒドイことになってる。


「桃花ちゃん、リンリン、今のうち、だよー」

実乃莉(みのり)アンタね!」

 阿久津が工藤に気をとられてるうちに、桃花と凛で杏梨を引き離す。

 

「ありがと、実乃莉(みのり)!」

「すみません、みのりん!」

「ちょ、離せ!離せよ!」

 杏梨は引きずられていった。

 にしてもだいぶヒートアップしたな……。

 いつもはもうちょいマイルドなんだけど。


 ──ん?……あれか。

 渚が「こわーい」とかいいながら矢神の腕に抱きついていた。

 あれで杏梨が余計にイラついたんだろう。

 あんだけ言っても、スタンスを変えるつもりはないか、まあ渚らしいけどな。

 それに渚のスタンスを変えたら杏梨に殺されそうだし。


 あれ?もしかしてこの騒動って俺のせいにならないか?

 杏梨を怒らせた俺、空気が悪くなる教室、阿久津がキレる、もっと空気悪くなる教室。

 ……深く考えるのはよしておこう。


 ──キーンコーンカーン。

 

 いいタイミングだ。



『忘れてねーだろーな良介』

 絵文字もスタンプも一切ない淡白なメッセージが送られてきたのは、1時間目の授業が終わる直前だった。

 ギャルならもっとさ、デコデコした感じのメッセージ送れるよね?

 自分自身はデコデコしてるクセにさ。


 俺が手本を見せてやろう。

 PINE(ピネ)にメッセージを書き込む。


『もちろん☆わすれてないよ!(*^^*)/』


そして2秒で返信がくる。


『きも!メッセのテンションと普段のテンションちがいすぎでしょ』

『きも!』

 追いの"きも"はいらなかったよね?

 大事なことだから2回ですよね、わかりました。

 2人のバトルを見ていて高ぶっていたらしい。それが文章に現れてしまった、我ながらアホなメッセージだな。


 とゆうことで休み時間だ。

 短い休憩時間、無駄にするわけにはいかないな。


 まずは矢神を監視しよう。

 用があるのに話しかけたら申し訳ないからな。

聞きに行く決心がつかないとか、そんなんじゃないぞ。


「なあ智也(ともや)、これカッコよくね?」

 矢神が御劔(みつるぎ)の机の上に広げているのは、ストリート系のファッション雑誌だ。

 授業中に目星をつけておいたのだろう。ファッション雑誌とか目立つもんよく見てられるよ。矢神ほどのヤンキーになると、教師も諦めてるのかもな。


「これか?いいね、(ごう)が着てれば似合いそうだ。僕には合わなそうだけど、ははは」

 確かに、御劔はもっと大人っぽい服が似合いそうだ。

 その辺歩いてたら大学生に見えるんじゃないか。

 

「お前はなに着ても似合うだろ!これ欲しいんだけどよ、たけーんだよ!」

「どれどれ?ああ、これは無理だね。でも、安くて似たような服があるんじゃないかな」

「そうか?」

「んー、今度の休み服でも見に行くかい?」

「行くか!さすが智也(ともや)だな!」


 御劔の前だと矢神も普通の学生みたいだな。バシバシ背中を叩いて喜んでる。

 むしろ保護者と子供って感じか。

 ……なんでこいつら仲がいいんだ?理由がよくわからん。御劔と矢神なんて全然別のタイプだろ。

 なんでもできる優等生、それにバチバチのヤンキー、気が合うと思えないんだよな。


 でも御劔を中心に矢神と月島が集まるんだ、五ノ神七不思議の1つだな。


 ──キーンコーンカーン。


 あ、やべ。

 何も調査せずに休み時間を終えてしまった。 

 ……ま、まだ休み時間はあるからな。大丈夫だな。


『おい、ちゃんとやれよ、見てるからな!』

 PINE(ピネ)からのメッセージを、アプリを開かずに確認する。

 既読をつけないでおけば、最悪、気づかなかったことにできるからな。

 これがホントの策士だよ、はっはっは!


『スルーすんじゃねえ!スマホ見たの知ってるかんな!』

 ダメらしい。

 遠い席なのによく見てるよ、先生に怒られるぞ。


『次の休み時間に聞くから大丈夫』


 そして2時間目が終わり休み時間。


「──してやったんだよ」

「「ワッハッハッハ!」」

「──てことがあってな?」

「ドープだな!ごっちん!」

「ははは、ドープってなんだよライト」


 ……………あのヤンキーとラッパーとイケメンのトリオに話しかける?ムリムリ。

 なんか喧嘩したとか、絡まれたとか話してるし。

 無理でーす!


『……お前、協力するきあんの?』

 杏梨からのメッセージは、3時間目の授業でのことだ。

 昼休みまで、あと休み時間は1回しかない。ラストチャンスだ。

 でなければ屋上が校舎裏になる可能性も……どっちも一緒か。


『もちろん!ちょっと腹痛で!』

『大丈夫か?』

 ……なんで素直に信じるんだよ。バレると思ってついた嘘なのに、胸が痛むわ。

 次々こそはちゃんと行こう、信じてくれる相手を裏切るのはつらいからな。


『もう収まったから、大丈夫』


 3時間目が終わった。


 誰かと話し出してから行こうとするからダメなんだ。

 行くなら休み時間が始まってすぐ。

 ──と思ったのだが。


「渚、今の授業、わかんねーとこあんだけど、教えてくんねーか?」

「あら、剛が勉強?明日は槍でも降りそうね?」

「ほっとけ」

「ふふふ、いいわよ」

 クソ、矢神本人から動きやがった。

 しかもこの2人、付き合ってんじゃねーかってくらい、仲が進展してるんだけど。

 

 2人に近づくにつれて、心拍数がドンドン上がって、手から穴でも空いてるんじゃないかってくらい、汗が出てきた。

 大丈夫、ただ好きなタイプを聞くだけだ。


「よ、よお」

「あ?貞男?」

「良介?」

 矢神は訝しげな、渚は目を見開いて俺を迎えた。

 意外だよな、俺もちゃんとアタックできて意外だよ。


 そしてあまりにも緊張しすぎた俺は、大きな過ちを犯す。


「や、矢神の好きなタイプって渚みたいな奴か?」

 本人の前で直接聞くという蛮行に出てしまったのだ。

 違う、違うんだよ、ホントは好きなタイプ聞くだけのはずだったのに。

 ……殺される。


「あ?なんだお前急に……そうだな、長い黒髪と清楚な女は好きなタイプだけどな」

 一瞬キレそうになる矢神だったが、それは渚の前で失策だと思ったのだろう。間接的に渚がタイプだと告げるようにしたらしい。

 危なかったー殴られると思ったわ。


「ウヒ……ふふふ、良介は私みたいな女の子はどう?」

 いま普通に笑いそうになってたな、バカにしやがって。

 そして矢神の間接パンチを華麗にスルーしやがった、これも駆け引き的なやつか?俺には全くわからん。


「……俺は裏表のない素直な子がタイプかな」

「あら、それ私のことじゃない?」

 どの口が言うんだよ、逆にそこまで行くと尊敬の念すら抱くわ。

 そして俺が渚を好きだなんて、黙って見てられない奴が動く。


「おいおい貞男、さすがにお前が渚を狙うのはキツいんじゃねーか?」

 ニヤニヤと小馬鹿にした笑みを浮かべて、矢神は言った。

 むしろ満面の笑みだな、こいつには絶対に負けないという自信も垣間見える。

 

「はは、だよな」

「落ち込むなよ、俺がいい女紹介してやるからよ!」

 肩を叩かれて、慰められる。勝手に渚を巡る競争に負けたことにされてるらしい。

 なんちゅう力業だよ、カーストとパワーで完全に押しきられた。

 ……なんで俺はこんな情けない思いしてんだよ。

 

「あら、私は良介のことちょっとタイプよ?」

「あ?ホントかよ渚、趣味悪いなお前」

「そう?剛が見る目ないだけだと思うけど」

 渚が援助してくれる。

 でもそれが余計に情けなさに拍車を掛ける。やっぱりカースト上位陣と渡り合うには、経験値が少なすぎる。

 実力不足を痛感させられた。


「そんなことよりよ、勉強教えてくれよ、もういいだろ貞男」

「あ、ああ、悪い」

 そして簡単にお払い箱にされてしまう。

 今の俺は、路傍の石のように一蹴できる存在で、矢神の視界にも入らないのだろう。

 最近は奇跡的に友達が増えていたが、これが俺の普通の立場だ。

 俺みたいなのが、人と付き合っていくということは、こんな扱いを受けるということなのだ。

 忘れちゃならない。


 今は杏梨からの依頼をこなせたとして、よしとしておこう。

 じゃないと、やっていられないからな。




 

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