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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
18/69

説明と弁解

 

「で、とうゆうこと?」


 1日のターンを使い果たしたので、俺にとってのターン回復の泉、一騎当千、爽快アクションゲームをつけたところだった。プロゲーマーだからっていつも同じゲームをやってるわけじゃない。

 息抜きだ、息抜き。

 現実ってのは、ストレスが蔓延りまくりだ。


 ウキウキ気分で据え置きゲーム機の電源をつけた俺は、妹のカットインにげんなりする。


「……今?」

「今は今しかない!ああっ!今が今過ぎて、今さっきに!」

「……うわぁ、テンションたっか」

 可愛いが割りと過干渉な琴葉(ことは)は、相手するのが大変だ。

 似た者同士、(りん)と直ぐに仲良くなれるわけだ。

 バスケ部はこんなのが2人もいて、大丈夫なのかよ。練習が崩壊するだろ。


「あの可愛いのに美人な人って、お兄ちゃんが言ってたミスコン優勝した人なんでしょ!?なんでお兄ちゃんなんかが、2人乗りしてるの!?」

 琴葉はベッドに座っている、俺の横に腰を降ろした。

 今日も風呂上がりみたいだ。


「暑苦しいんだけど……人の話し聞いてる?あと、なんかがってヒドくない?」

「鏡みてもの言ってる?」

 眉を潜めて、可哀想な者を見る目をしている。


「ついに直接的な悪口きたよ」

「絶対おかしいよ!なんなのあの女!お兄ちゃん騙されてるよ!?だってあんな可愛い人がお兄ちゃんと2人乗りなんて、絶対しないもん!お金!?」

 また変な邪推でもしてそうだな。

 例えば罰ゲームで俺に告白してみた!とかな、自分で言っときながらエグい。

 …………中学の時にやられたな。


「……ある意味、俺の信頼が厚いね、ちょっとまってろよ」


 俺は手で琴葉を制して、携帯を取った。

 琴葉に隠すようなことじゃないので、その場で(なぎさ)に電話する。

 ここまで言われると悔しいし。

 

『なに?』

『あ、渚か?俺達の関係を妹に話したいんだけど、いいか?』

『いいんじゃない?学校に味方は多いほうがいいしね』

『了解、それだけだから』

『ええ。──それより今日のこと、明日ちゃんと話してもらうわよ?』

『……はい』

 ちょっと声音がお怒りだったな……。

 明日、休みたいなあ。矢神にも取材しなきゃいけないし……。


「で?お兄ちゃん」

「ああ、うん。この前ゲーム友達と遊んだっていったろ────」

 琴葉に渚との関係を略説したが、琴葉に細かく追及されて、結局1時間は話した。

 俺のゴールデンタイムが……。


「──じゃあ渚さんに、わたしからお礼言わないと!お兄ちゃんがいつもお世話になってるんだし!」

 あの女から渚さんである。話したこともないのに名前なの?距離近すぎない?

 前から思ってたけどコミュ力お化けだなこいつ。


「あーそうだな、俺も凛にいつも妹がお世話になってますって、いっとくよ」 

「ああっ!そうだよ、なんでリンリン先輩とも仲良くなってんの!?"お兄さんと友達になりました!"って言われたんだけど!」

「凛が渚と仲いいからな、流れ?」

「お兄ちゃんの口から流れが出てくるとは……でもリンリン先輩なら安心だね、いい人だし」

 凛は後輩にもあんな感じなのか?やたら後輩から慕われるタイプだな、きっと。


「性格はよさそうだな」

 安心できる人間かは別として。


「うん。……で?」

「でって、なんだよ」

「どっちが本命なの!?妹を差し置いて!」

 浮気する夫を問い詰めるようなテンションだ。ノリノリである。

 こっちはげんなりしてるってのに。


「1つあり得ない選択肢が混じってたけど、別にそんなつもりじゃない」

「ええ!?五ノ神2トップとお近づきになれたんだよ!?どっちか狙おうよ!」

 

 どうせ遠くへ来たんだから、御当地グルメ食べようよ、みたいなノリはなんなんだよ。

 あいつらB級グルメどころか最高級A5ランクみたいな、ヤバい奴らだぞ。

 気軽に手だせるか。


「──俺が?」

「…………」

「……黙んなよ」

 普段テンション高い奴が静だと、色々と邪推しちゃうよな。

 この場合は無理を悟って、俺を哀れんでるだけだけどな。


「うーん……でも渚さんは、お兄ちゃんの良いところ知ってるみたいだし、あるかも!」

 俺を慰めるために、なんとか絞り出したって所か。

 そして女子が、恋愛話しに持ってくのは妹も共通だったな。


「はいはい、俺は1日1日を生きてくのに必死なんだよ、恋愛うんぬん言ってる余裕がない」

「……もったいない」

「ほっとけ」


 人の恋愛どうこう言ってる暇があるなら、琴葉こそどうなんだと聞きたくなる。

 ……でも好きな人ができたとか言われたらショックだし、やっぱり聞くのはやめておこう。


 それから他愛ない話を沢山した。ばんちゃんの話しとか、球技大会の話しとか。

 こうして、途切れない兄弟の声と共に、川上家の夜は更けていく。

 




 緊張する相手がいる時は、いつも腹に力を入れている。

 だからだろう、俺の腹はシックスパックで、なかなかいい体に仕上がっていると自負してる。

 これも自信になるか……。

 いや、別名ビビリ筋にそんな効果あるわけない。


 なぜこんな話しをしてるのか。

 そりゃ腹筋に力を入れてるからに決まってる。


「んで?申し開きはあるんでしょうね?」

 最初から俺が全面的に悪いって空気感だ。

 

「まあ、杏梨(あんり)の味方したのは謝るけどさ、(なぎさ)もやり過ぎじゃね?」

「先にやってきたのは向こうだけど?これ見よがしに私を省いてくれちゃって」

 ああ、あのスポーツウェアか、ちゃんとムカついてはいたんだな。

 

「にしてもヒドいだろ、矢神と見せつけるように仲良くして、好きな人の前で恥かかせて」

「恥をかいたのは自業自得でしょ?物に当たるとか子供のやることじゃない」

「……よくゆうよ、キーボードぶっ壊すくせに」


 渚はフォートファイトで負けが込んで、キーボードを破壊したことがある。

 爆笑ものだったが、かなりイカれてる。

 その怒りの体験があったからこそ、杏梨の思考を誘導できたんだろうな、ぶちギレるように。


「…………」

 図星をつかれた渚の顔は険しく歪む。

 ただし、不満そうに俺を睨んでいる。


「……怒んなよ」

「……はあ、まあいいけど。大体、好きな男がいるならアタックすればいいのよ、ギャルのクセにチキッてるから、ダメなのよ」

 俺と渚は、こんなことで喧嘩には発展しない。

 正直、あんなの裏切りの内に入らない。意見の相違だな。


「あれでも女の子なんだろ」

「杏梨が?あたしと付き合えぐらい、いいそうじゃない」

 やっぱそんな感じに思うよな。つかそんな感じだし。

 ただ恋愛だと話は別みたいだった。


「いや、実は乙女っぽい所があるんだよ」

「……なに?惚れた?」

 渚は、え?趣味悪って顔で引いている。

 

「いや惚れてないけどさ!……最近こんな話しばっかしてんな!」

「そんなの私は知らないわよ、いいことなんじゃない?女性関連の話が増えて、陰キャ卒業も直ぐそこね?」

 なんか投げやりだな。渚に見捨てられたら、俺は前の状態に戻る自信がある。


「いや、荷が重いんだよ!フォローしてくれ!」

「だから私は女子に嫌われてるの、杏梨でわかったでしょ?」

 他にもよく思ってない奴がいるんだろうな。

 女子は男と女で対応を変える女子を嫌うらしい。琴葉が言ってたから、ホントかどうか定かじゃないけど。

 渚はピッタリ当てはまる。


「……確かに、桃花(ももか)は騙せてるみたいだけどな」

 猫かぶりを。

 でも杏梨は気づいてるっぽい。

 直情的な杏梨と、性悪な渚じゃ相性最悪だろうな。


「……さっきから気になってるんだけど、あの2人と随分仲良くなったのね?」

 平素を装ってはいるが、機嫌が悪いのはわかる。

 机に指をトントン叩きつけて、落ち着きないし。


「え?」

「名前で呼んでるじゃない杏梨と桃花」

「なんか友達になったから、そう呼べって」

 何で友達になれたのかは俺にもわからない。フォローしたいって熱意が……熱意ほどのものじゃないけど、それが伝わったのか。

 杏梨の信用を得ることができたらしい。


「ふうん、私がやりすぎだからって、庇うのはまだわかるけど、友達にまでなっちゃうのね?」

 声のトーンが落ちて、明らかに怒ってる。

 理不尽だな。


「しょうがないだろ?なんか友達になってたんだから、それに渚だって友達を増やせって言ったろ」

 友達の視線が大丈夫なら、友達を増やせって。

 だから俺はなるべくちゃんと話せるように、頑張っているんだ。


「だからって私の敵と仲良くしてるのを見せられて、私がいい気持ちになれると思うわけ?杏梨と私が喧嘩したら、良介はどっちの味方になるのよ?」

 この質問、昨日までなら絶対に渚の味方をするって答えていた。

 でも、今は杏梨も友達なんだ。


「それは……俺が正しいと思ったほうだな」

「……私じゃないのね」

 どこか物悲しい表情で、渚は呟く。

 そんな顔されるとこっちも、心苦しくなってくる。

 でも理解してもらいたい、渚のことはホントに大事な友達だと思っている。だからこそ、間違ってれば注意できるような、そんな間柄でいたいだけだ。


「前までならそうだったかもしれないけど、今は杏梨も友達だし、もし渚が間違ってるなら注意するぞ、俺は」

「別にそんなのわかってるわよ」

「じゃあ──」

 渚が掌を俺に向けて制止する。


「それでも、味方するっていって欲しかっただけよ、悪い?」

 いつも自信満々の渚が、腕を組んで視線を反らす。

 こいつは、たまにだがホントに可愛い時がある。

 恥ずかしげに頬を染めている今がその時だ。これが演技なら俺は人を信じられなくなるね。


「……いや、そりゃ、その」

「あーあ、陰キャのきもロン毛でも、こんなに親身になって協力してるのに、私には味方なんていないのね」

 心底落ち込んでる素振りを見せてくる。これは演技っぽいけど、さっきの顔を見てしまった俺には見過ごすことができなかった。


「おい、まてまて、別に味方じゃないなんて言ってないだろ!仮にクラスの全員が渚の敵になっても、俺だけは渚の味方だ!渚が間違ってたとしても、俺だけはお前を見捨てない!」

 俺らしくもなく、熱弁してしまった。

 最近のリア充達との関わりで、影響を受けてしまったのかもしれない。人との関係が希薄だった俺にとって、みんなは暑苦しいぐらいに意思の疎通をとってるからな。


「ウヒ」

 ウヒ?渚がうつむいて肩を震わせている。

 そして、片手をゆっくりと俺の視線まで上げると、その手にはスマホが握られていた。


『仮にクラスの全員が渚の敵になっても、俺だけは渚の味方だ!渚が間違ってたとしても、俺だけはお前を見捨てない!』

『仮にクラスの全員が渚の敵になっても、俺だけは渚の味方だ!渚が間違ってたとしても、俺だけはお前を見捨てない!』


 リピート再生される俺の熱弁。

 それは少年マンガや、少女マンガの主人公が口にするような、歯の浮くようなセリフだ。

 現実で使うような言葉じゃない。

 それを聞かされた、俺の内側から爆発するように台頭する情緒は、羞恥心だ。


「うわあああっ!!やめてくれ!!まて!そのスマホよこせボケ!」

 お高い家具も、整頓された部屋も、なにもかもを埒外に俺達は激しい追いかけっこを始めた。

 だがそれも一瞬。

 運動神経が悪い渚を捕らえるのは容易だ。

 

「ウヒャヒャヒャッ!渡すわけないでしょ!?カ、カッコいい!!惚れちゃいそうだわ!私をまもってーー!」

 せっかく渚の腕を掴んでいたのに、あまりの恥ずかしさに俺は膝をついてしまう。


「ぐわあああっ!騙された!一瞬でも可愛いと思った俺を殺したい!まて、落ち着け!再生するな!なんでもする!なんでもするから!」

「嫌よ!これはうちの家宝にするわ!まずは朝の目覚ましに使いましょう!」

「くそおおおお!誰か殺してくれえええ!!」

「ウヒャヒャヒャ!」

 

 くそ!だ、騙された!もうだれも信じられん!

 忘れてた、渚はクラスの男子をコンプリートするとか言ってる、鬼畜やろうだったんだ!人の純情を弄びやがって!


 この後も何度もリピートされた俺のボイスは、ガリガリと俺の正常値を削って発狂させたが、渚が満足して、なんとか目の前で消してもらえることになった。


「──ほら、これでいいでしょ?」

「ああ……はあ。朝から今日1日分の体力使い果たしたわ」

「あら?そんなこと言って大丈夫なの?大変なのはこれからじゃない」

「は?何が大変なんだよ」

 意味わからないぞ。これ以上大変なことってなんだ?矢神への取材だってこれほどじゃないだろ。

 かなりキツいけどさ。


「フッ、ホントにわかってないのね。じゃあ教えてあげる。良介は杏梨を庇ったわよね?」

 それがなんだ、関係あんのか?

 あと人をバカにしたような笑みが、今は心底ムカつく。鼻で笑いやがって。


「まあな」

「みんなに杏梨を怒らせたって、言ったでしょ」

「そうだけど、それがどうしたんだよ」

「まだわからないの?バカね。怒ると面倒な杏梨を陰キャが怒らせた。そんな話し直ぐにクラスに広がるんだから、クラスに入った時が楽しみね?」

 え?マジで?あの嘘がそんなマイナス効果をもたらすなんて……。

 つかどうなるだ?想像できん。

 めんどくせえことしやがって貞男が!って感じ?それは辛いな。


「ええ……」

「あ、そろそろ時間ね、頑張りなさい」

「……はい」

 俺はやたら綺麗な生徒会室を出るため、ゾンビのような足取りで靴を履き替える。


 ドアを開けた時、後ろから呟き声がした。


「──味方して欲しいのはホントなんだけどな……」

「え?なんか言った」

「なんも言ってないわよ、さっさと行きなさい薄ノロ」

「へいへい」

 朝から罵声を浴びた俺は、教室を目指して重い扉を開いた。

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