表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
17/69

陰キャとギャル


 怖いから極力、視界に入れないようにしていた。

 だから島崎杏梨(しまざきあんり)というギャルのことを、俺はよく知らない。

 知ってることと言えば、気が強くて、陰キャに厳しいことと、矢神(やがみ)が好きなことくらいだ。

 

 俺の中で島崎は、クラス内ヒエラルキーのトップで、気に食わない者がいればイビるような、独裁者気質のリーダーだと思い込んでいた。

 実際、矢神と島崎は一目置かれているし、恐れられてもいる。


 ──だから矢神が好きなのか聞いた時、赤面して怒ったのが意外で、可愛かった。

 ──だからシュートフォームを褒めたくらいで喜ぶなんて知らなかった。

 ──だから(なぎさ)と矢神が仲良くしてるのをみて、あんなに弱った目を見せるとは思わなかった。


 ──そして気がついてしまった。

 男のような口調で話すギャルは、普通の女の子なんだと。 

  

 その瞬間。つい魔が差した俺は、島崎の手助けをしてしまった。


「──あ?お前に何がわかるんだよ」

()()()を蹴落とそうとしてるって事はわかる」

 島崎を押さえている、疑うことをしらない天塚(あまつか)さんが、俺を睨んで批難する。


「なっ!川上!渚はそんなことしないよ!?」

桃花(ももか)、ちょっと黙ってて」

 ハッキリとした拒絶の声。

 それを聞いた天塚さんは、まだいい足りないぞと、一歩踏み出そうとしていたのを止めて、押し黙る。

 

「でもお前も渚の味方なんだろ?陰キャが名前で呼んじゃってさ、ワンチャンあると思ってるんでしょ。渚が貞男と?100%(ひゃくぱー)ないからな」

 よほど矢神が渚を名前で呼んだことがショックらしい。その腹立たしさを全て俺にぶつけてくる。

 よくこんなにスラスラと悪口というか、嫌味が出てくるよ。

 勘弁してほしい、名前で呼んでるだけで島崎に敵認定されるなんて割に合わない。

 

「んな!ちょ杏梨(あんり)、いくら()()でもそれは酷すぎるよ!」

 それで嗜めてるつもりなんですか?傷口に塩塗り込んでますけど?天塚さん。

 でも、間違っていると思えば仲のいい友人に、黙れって言われた直後でも怒るんだな。

 こんな俺の為にも。

 ガチのいい人だし、タイミングも良かった。


「……俺も天塚さんと一緒だから。渚の味方でも、間違ってると思ったら注意するし、渚が迷惑かけた相手のフォローもする。それに島崎の敵になった覚えもない」

 天塚さんだって渚とも友達だし、島崎とも友達なんだ。

 それが許されてるなら俺だって、そうなってもおかしくない筈だ。


「あっそ」

 興奮状態は俺に怒りをぶつけて、治まってきているらしい。

 それでも島崎の表情は険しいし、目が弱っている。

 そして興味を失ったように踵を返す。


「え、え?どこいくの杏梨!」

「帰る」

「ええ!まっ……ああもう!私も帰る!」

 そういって天塚さんは更衣室へ、島崎を追って走っていってしまった。


 緊迫していた空間が弛緩する。

 渚グループの方は普通にバスケしてたみたいだけど。

 他のギャル2人は、モロに島崎の憤怒に宛てられていた。


「え、杏梨マジギレじゃなかった?なんなのあれ」

「ウチはしらん、とりあえずキレ過ぎ、空気よんで欲しいわ」

「それな、ちょっと顔がいいからって調子のり過ぎなんだよ、自己中すぎ」

 島崎がいなくなった途端にでるわ、でるわ。

 友達は大事にするとか天塚さんが言ってたけど……友達からは随分と慕われているようですよ?


 不憫だなあ。

 この2人は島崎を追っていくつもりは、無いらしい。


 島崎は失敗した。でも決定的な失敗じゃない。俺と違ってまだ取り戻せる。

 だから俺は渚めがけたピッチャー返しを止めたんだ。

 ここまで強力しといて、後は知らんぷりなんて気持ちが悪い。後少しだけ肩入れしてもいいだろう。


川村(かわむら)須崎(すざき)、俺が島崎怒らせちゃったみたいで……謝ってくるから、すまん!」

「はあ?貞男のせいかよ、怒らせると面倒だよ杏梨(あいつ)

「ホントに!こっちも被害被るんだからね!」

「す、すまん!謝ってくるから!」

 俺は2人に頭を下げて、渚グループの方へ走る。


「きゃっ!もう少し優しく投げてよ!」

「いや、これ以上は無理だろ」

「ははは!ごっちんも強肩だからな!」


 3バウンドくらいさせてパスする矢神だが、渚はそれに文句をつけている。相変わらずのブリっ子だ。

 島崎の件などなかったように練習する3人は、仲むつまじい。

 俺の気も知らずにムカつく奴らだ。


「えっと、すまん!島崎怒らせちゃったから、謝ってくる!後の練習は任せた」

 楽しそうにしてる3人に割ってはいるのが気まずかったが、気合いで声をかけた。


 それを聞いた瞬間、渚が俺に不満そうな視線を向けてくるので、俺も睨み返しす。お前はやりすぎ。

 唇を尖らせた渚は小さく息を漏らして、喉まででかかっていた怨み節を飲み込んで、笑顔を見せた。


「良介が杏梨を怒らせたんだ?ダメだぞ、女の子を怒らせたら」

 人差し指を立てた渚は、指の腹を見せるようにして、叱ってくる。

 "てめえが怒らせたんだろうが!"といいたい所だが、俺も何とか飲み込んだ。今、渚と問答してる暇はない。


「あ?お前のせいかよ貞男!あいつ不機嫌だとクソめんどーだからよ、さっさと土下座してこいよ!」

 呆れたような顔の矢神。この前のもお前かと言いたそうだ。

 もうこのさい、そう思われてもいい。

 すべての汚名を被ってやろうじゃないか、これ以上下がるもんは持ち合わせてない。


「貞男が買った杏梨の不興、キレて切られてみんな負傷、不幸は散々、不況はいらない!……クラスメイトはドッグスだべ?仲直りしてこいよ貞男」

 月島はよくわかんないけど、背中を押してくれてるみたいだ。

 こうゆう奴を仲間想いっていうんじゃないか。俺は仲間と想われてないだろうけど。


「す、すまん!いってくる」

 頭を下げて踵を返す瞬間、渚と目が会う。

 大きくため息をついていた。

 すまんな、お前の謀略を台無しにして。


 急いで荷物を持ってコートから出ると、2人はすでに体育館から出た所だった。

 荷物を取ってきただけで、着替えたわけじゃなかったのか。

 危なかったな。


「ちょ、ちょっと待った!」

 喉が掠れて少し痛い、久しぶりに大声を出した気がする。島崎と天塚さんは隣り合わせで帰路を歩いていた。


 2人は同時に振り返った。

 天塚さんは驚いた顔で、島崎は不機嫌そうな顔で。


「……なに?まだなんかあんの?」

「さ、さっき言ったろ、フォローするって」

 俺は本気の奴を見放すことが、できないのかもしれない。たとえ見下されていても。

 だってそうだよな、ゲーム感覚で男を落としてる渚と、本気で好きな人と仲良くなりたがってる島崎。

 どう考えたって島崎に報われて貰いたいだろ。


「は?なに勘違いしてんだよ、キモ。何もかも見当違いすぎ、近寄んな」

 正直いって泣きそうだ。

 かなりきつい、二の句が継げないほどに。

 俺なんでこの人の味方しようとしてんだ?


「こ、こら!杏梨!せっかく川上が()()()()()してくれてるのに!」

 天塚さん……あなたはホントにちょっと残念です。

 特に彼氏持ちのところ。

 

「別にフォローしろなんて頼んでないし……」

 天塚さんに叱られてだいぶ軟化した。最初からそれくらいでいいだろ。俺の精神力考えろよ。


「あ、すまん、おせっかいだったよな……」

「か、川上!お、落ち込まないで、ありがとね!杏梨も素直じゃないだけで、ホントは喜んでるんだから!ね、ね?杏梨?」

「え?あ……うん……」

 天塚さんが一生懸命、俺を慰めてくれて、しかも島崎との間を取り持ってくれている。あれ?俺ってなんなら島崎を慰めにきたんじゃなかったっけ?

 ……なんで慰められてるんだ。


 島崎は俺に憐憫の目を向けている。

 ……ギャルの攻めっ毛が抜けるほど、落ち込んでる?俺。


「あ!そうだ!運動したらお腹減っちゃった!ライゼリア行こうよ、3人で!」

「……え?こいつも?」

「……帰ります」

「は、はい!決定です!拒否権は誰にもありません!さあ、いくぞー!おー!」

 そりゃそうだよな、キモいロン毛と一緒に、大手ファミレスのライゼリアなんて行きたくないよな。

 俺だってリア充で充満してる空間、苦手なんだ。なんなら五ノ神高校の生徒が、よくたむろしてるからな。

 まず行かない。


 それでもなぜか天塚さんの勢いに押されて、俺達は3人でライゼリアに向かった。


「いらっしゃいま!?せー」

 途中の"!?"はなんだよ……

 俺と2人を交互にみやがって、ただちゃんと持ち直したのは凄い。

 俺ならそのまま硬直してたね。


「ねえ、桃花?」

「い、いや、でもせっかく杏梨を想って来てくれたんだし……」

 さっそく2人に連れてきた事を後悔させているらしい。

 もうちょい見えないとこでやってください。こんなんでも一応ダメージありますから。


 椅子とソファーのテーブル4人席に案内された俺達は、ソファーに2人、椅子に俺が座って、余った席は荷物置きになった。

 琴葉にソファーは女性に譲れと言われていたから、譲った。妹の教育の賜物である。


「とりあえずドリンクバー3つで!」

 天塚さんが直ぐに注文を済ませる。全員分だ。

 学校帰りにファミレスとか……もしかして、俺はリア充なのか?

 ……たぶんそうだ。


 3人もと直ぐにドリンクを取りいく。確かに運動して喉渇いてるし、腹もへった。

 お、パチモンスターあるじゃん。

 わかってらっしゃる。


 たが、現実とは非情である。

 飲み物を持って全員が座った後に訪れるのは……。


「「「………………」」」


 時に異分子は静寂を生む。だから人は排他するのだろう。by.hawk(ホーク)

 なんだ、この気まずさは……なんか喋ったほうがいいよな。


「や、やっぱり島崎って矢神が好きなんだよな?」

 この3人で俺が話題にできることと言えば、これしかなかった。

 だがそれを聞いた天塚さんは、口パクで俺を批難する。

 ……たぶん"何でそれ言うの!"だと思う。


 ──もしかして、誰もネタにしてない?


「……だったら悪い?渚にいいようにされててダサい?」

 体育館での強烈な憤りは感じない。甘いもの飲んで落ち着いたか。

 琴葉も甘いもの貢いどけば機嫌よくなるからな、共通で良かった。

 

「いや、可哀想だと思って……」

「──あたしが?」

「お、おう」

「はあ、貞男に同情されるとか、どんだけダサいんだよ……」

 島崎は顔を覆って大きなため息をついた。

 めっちゃ失礼こといいながら。


「さすがに失礼では?」

「あ?」

「な、なんでもありません」

 一言で相手を黙らせる能力において、ヤンキーとギャルに対抗できる存在は恐らくいない。

 怖さでいえば渚より怖い。


「あー杏梨?ごっちんのことは……」

「──好きだけど?」

 別にそれが?とでもいいたげな態度だ。今まであれで隠してたのか……

 天塚さんも大変だな。


「あ、うん、そうだったんだねー知らなかったー」

 棒読みすごっ!

 嘘つけないのもここまで来ると見事だよ。


 島崎はジュースをグラスから一気に飲み干した。


「ふう、で?貞男、アンタ協力するって言ってたけど、具体的にどうするわけ?」

 いや、フォローって言ったつもりなんですけども……

 そうですよね、協力もフォローも大差ないですよね。


「え?」

「あ?」

 なんか目力もどってきてない?ジュース飲んで立ち直ったの?

 ……あ、メロンソーダ味のバチモンスター飲んでる。

 さすが魔剤(まざい)、恋煩いすらたちどころに癒すとは。


「じゃ、じゃあ、渚に頼んで手を引いて貰うとか……」

 緊張感で渇いた喉を潤すため、グラスに手を伸ばす。

 ──ガシッ。

 その刹那、伸びてきた手に腕を捕まれる。


「そんなんいらねーよ、あたしで勝つ!……貞男、裏切ったらどうなるか分かってんだろーな」

 怖い怖い怖い怖い。

 目が怖いのに、目が離せない。

 

「わ、わかったから手、離せよ」

「──チッ、2度と渚に頼むなんて言うなよ」

 

 やっと逃れられた……。

 これはギャルやヤンキー特有のプライドの問題だろう。島崎が渚に頼むことを許さない。

 頼んだとこで聞いてくれないと思うけど。 

 恫喝するから適当に提案しただけなのに……。


「まあまあ、杏梨、落ち着いて。なんなら川上くんに、ごっちんの好きな女性のタイプを聞いて貰うとか!」

「え?それ天塚さんでも聞けるんじゃ……」

「いやーでも、ごっちんの顔、怖いし……」

 島崎も怖いじゃん。いける、いける、ユーでやっちゃないなよ。

 ……マジか、俺が聞くの?俺だって怖いんだよ?


「え?カッコよくない?」

「「え?」」

 人の尺度は色々だ。確かに顔事態は整ってるしな。

 ただ怖いが前面に来すぎなんだよね。


「……いいよ別に、じゃあ貞男が聞いてくれんの?」

 いいよとかいいながら、納得してないのが明確である。

「わ、わかったよ……」

「直ぐに聞けよ?」

 ジロッと睨まれる。


「わかったよ、明日聞くから睨むのやめろ!」

 開き直って、好きなこと明け透けになってるし。

 もはや力業でも俺に協力させるな、これ。


「まあいいけど、お前さ渚と仲いいよね?」

「まあな」

「もしかして(ごう)が邪魔だからあたしに宛がおうとしてる?」

 そんな考え方もあるのか、盲点だったな。

 だけど考えすぎだ。


「え!?」

 天塚さんが俺を見て驚愕する。策士ここに現るといった表情だ。

 面白い。


「仲はいいし、好きだけど、男女の好きじゃない」

「……そう、じゃあお前は信用してもいいの?」

 お前()ってことは、信用できない奴がかなり入るってことか?

 たしかに川村と須崎は、言いたい放題言ってたな。

 おちゃらけてる月島のほうが何倍も信用できそうだった。


「俺も裏切られるのは大嫌いだし、人が嫌がることをするのは苦手だな」

「は?言い方が遠回しすぎてキモい、ハッキリ言えよ」

「信用しても大丈夫です!」

 いいじゃんカッコつけたい年頃なんだよ俺は!

 言葉のキャッチボールを楽しめよ!


「ふん、じゃあ信用してもいいけど」

 髪の毛をイジリながら島崎が呟くと、天塚さんが嬉しそうに笑顔を見せる。

「よ、良かったね、川上!杏梨が友達になってくれるって!」

 え?友達!?

 どこに友達要素あったんですか……。

 めっちゃ上から目線だし、いいとこ奴隷契約だぞこれ。


「……友達?」

「あ?あたしじゃ不満?」

「い、いや、嬉しくって、ははは」

 イヤだー怖いよー!天塚さんが余計なこと言わなきゃ友達(どれい)になんかならなかったのに!


「杏梨の友達なら私とも、友達だね!川上!」

「え?ホントに?天塚さんと!?」

 なるなる!専属契約結びます!


「うわっ!?急にグイグイ来た!」

 天塚さんは驚いたのか、なぜかグラスを持って退けぞった。

 どこかが強調されていたが、あえては言わないでおこう。

 天塚さんの奴隷ならしかたないな。


「おい()()、あたしと桃花で対応違わない?」

「違わないって……良介?」

「友達に貞男はないっしょ、これからは名前で呼ぶから」

「はいはーい!私も私もー!良介って呼ぶね!」

 なぜかわからないが、ギャル2人から俺は信頼を得られたらしい。 

 信用できますよって言っただけで?

 ギャルの考えはわからん。 


「お、おう」

「良介も名前でいいから」

「私もね!」

 やっぱ、そうなるのか。難易度は高いけど、近ごろ友達が増えてるから、なれてきたな。


「じゃ、じゃあ、杏梨と桃花、これからよろしく」

「いちいちどもんなよ良介、キモいから」

「杏梨いいかたヒドすぎ!よろしくね、良介」

 キモいって手軽に人の心を抉れる最悪の言葉だよね。

 なれてきたとか、調子に乗った罰でしょうか。


 杏梨と桃花、まさか俺から一番遠い人種と友達になって、しかも名前で呼び合うとか、誰が想像しただろう。

 杏梨は文句をたれながらも、今日初めての笑顔を見せた。

 とゆうより普段からあんまり笑ってないから新鮮で、綺麗だった。

 口は物凄く悪いけど、見た目はいいんだよな、やっぱり。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ