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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
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練習3


 集合場所は学校近くの体育館。向かうタイミングこそ自由だが、たどり着くのは皆同じ場所だ。

 だがよく考えてみて欲しい。自由がそこにあるからこそ、あぶれるものが出てくるのだ。

 今、俺が一番恐れている事柄は教師による一言。

 "ペアを作ってね"だ。

 クラスの人数が偶数ならまだいい、だが奇数なら?1人余るよな。そして間違いなく、地獄を見せられるのは俺なんだから。


 だからといって学校から、体育館の間を1人で行くのが寂しいとか、そんなんじゃない。むしろラッキーとすら思った。

 学校にいる間は、頻繁に絡まれるようになってきている。それに暇をしてても渚が来るから、花につられた蝶のように人が寄ってくるのだ。

 視線の恐怖を知る俺には、なかなか疲れる。


 だが今回、あぶれたのは俺だけじゃないらしく、実は(なぎさ)も一緒に体育館に向かうことになった。

 ギャルグループのリーダー島崎(しまざき)と折り合いの悪い渚は、(りん)がいない今回、1人になったらしい。


 御劔(みつるぎ)率いるヤンキーグループは、御劔がいないと、渚が入っていくのが難しいらしい。

 矢神(やがみ)が照れるみたいだ。デカイ図体して意外である。月島(つきしま)はいつも通りらしいが。


 そして、ここで問題が起きた。

 自転車通学の俺と、徒歩の渚。つまるところ、移動速度が決定的に合わないのだ。

 そして渚から、鶴の一声。


「乗せなさい」

「……はい」

 頷くしかなかった。


 自転車置場から校門へ、外に出るのは直ぐだが、人目は避けられない。

 仲良く雑沓を生み出す女子生徒、自転車をのんびりと漕ぎながら他愛ない話しで盛り上がる男子生徒、ジャージ姿で走っている運動部。

 そして学校1の美少女と2人乗りする、ロン毛のド陰キャ。


 視線、視線、視線、視線、視線、視線、視線。


 足がすくんで自転車の漕ぎかたを忘れてしまいそうだった。

 それでも前輪をフラつかせながら進んでいると、渚から声がかかった。


「あの子、とんでもなく面白い顔して、私達見てるんだけど……知り合い?」

「……ん?」

 渚の声で少し安心してしまうのがムカつくが、言われた方を見ると、そこには片サイドを編み込んでいる、スーパー美少女がいた。恐らく、学校1と謳われる渚を凌いでいるな。


「あ、琴葉(ことは)

 体力作りの最中だろうか、走り込みをしているらしい。

 もう、ちゃんと部活に参加してるんだな、流石だ。

 ただ、今は立ち止まって俺と渚をみて大口を開けている。ついでに目もカッと開いて、驚倒してしまいそうだ。


 その顔をみていたら自然と笑いが込み上げてきて、余裕ができた。

 琴葉の先にいた凛が、手を振っているのにも気づいたので、振り返すと、それを見た琴葉は、驚いて俺と凛を交互に見やる。

 帰ったら説明しないとな。


「噂の妹さん?」

「そうだな、可愛いだろ」

「そうね、あなたの妹とは思えないわね」

「まあな」

「なんで嬉しそうなのよ、気持ち悪いわね」

 

 こうして、JILL(じる)モードの渚と、体育館に向かうのだった。



 体育館に到着したのは、俺達が最後だったみたいだ。

 渚が着替えるから待ってろ、とかいってくるからだな。俺のせいじゃない。


「おい!貞男(さだお)おせーぞ!」

 ……俺のせいじゃないないのに。

 初っぱなから矢神に吠えられる。まあ、キレてるわけじゃなさそうだけど。怖いんだよ、そこらのチンピラより圧があるぞあいつ。


 でもそうか、凛がいないから今日は俺しか教える人間がいないんだ。 次はバスケ部連れてこいよな……

 

 そして今日、俺が教えなきゃいけない連中は大雑把にいえば、ヤンキーとギャルだ。

 なんでそうなるんだよ……

 そういや風見鶏(かざみどり)くんも今日はいない、部活だな。


 その代わりと言ってはなんだが、前回いなかった女子が2人いる。ギャルグループの川村(かわむら) 陽花(はるか)須崎(すざき) 真菜(まな)だ。

 これでギャルグループは全員だな。


 そしてギャルグループは、体育着じゃなくて、運動用のトレーニングウェアを着ている。前回は体育着だったのに本気だな……

 と思っていたのだが、島崎の視線が渚を捉えていたのを見て、気づいた。

 仲間外れにしたのだ。島崎の口角が少し上がっている。

 今日のメンツが分かっていたからこそ、できる所業だ。自前に誰が来るか来ないか、調べていたのだろうか……

 その努力をバスケに向けろよ。


 女子の争いというのは陰湿だな、分かりづらいわ。

 だが渚はというと、どこ吹く風で矢神と月島がいる方へ歩いていってしまう。気づいてないわけでも、なかろうに。

 俺ならヘコむね。


 島崎はその渚の行動を見て、唇を噛む。あれは数多の煮え湯を飲まされた者の表情だな。

 天塚さんが島崎の肩に手を置いている。まあ分かるよな、あれなら。

 そのままちゃんと止めといて下さい。

 

「──す、すまん、何から教える?ポジションとかリクエストがあれば教えるけど」

「おう、俺は力が強いからセンターらしいぜ」

 見るからにだな、御劔あたりがそう言ったんだろう。

 間違いない。正直バスケなんてのは、力が強くてデカければ、それだけで大きなアドバンテージを得られるスポーツだ。矢神はクラスで誰よりも素質がある奴だと俺は思う。


「そうか、じゃあゴール下でシュート練習だな」

「それだけか?コツとかねーのかよ」

「矢神ぐらいデカいと、ゴール下でパス貰って、シュートするだけで脅威になるからな、球技大会ぐらいならそれで勝てるだろ」

「あんだよ、貞男、わかってんじゃねーか」

 矢神は満足そうだ、やる前から褒めてるからな。

 ヤンキーはおだてると扱いやすい。


「良介、私は?」

「えと、そうだな……昨日の続きでシュート練習だな」

 渚には引き続きシュートの練習と、ドリブルを教えよう、練習自体は本気でやってるしな。

 

「黒原、俺達と一緒にやろーぜ、シュート練習」

 頭を掻きながら矢神が誘う。同時に教えられるのは、こっちとしても楽でいいけどな。

 ……どうなるやら。


「いいわよ(ごう)、よろしくね」

 矢神に向かって微笑む渚は、毅然としていながらも、可愛らしい。

 普段はクール気味な女だが、ボールが跳んでくると怖がるような、か弱い所も見せる。そんなギャップを矢神に見せて篭絡しているのだろう。


「なあなあ貞男!俺は!?」

「えと、月島も渚とシュート練習だな」

 背も大きくないし、線も細いからな、外からのシュート練習と、ドリブルからのレイアップがちょうどいい。


「オッケー!ガンガンぶちこむぜ、俺の言霊!ついでにリングを通すこの球!ヒャッホー!」

 月島は普通にレイアップしている。できてるな、ほっといても良さそうだ。

 

「うわ、凄いわね剛!」

 ゴール下でシュート練習をする矢神に、渚が声援を送っている。

 うん、いいね。ボードの内側の枠を狙った堅実なシュートをしてる。

 あれなら球技大会で活躍できるだろう。

 このクラスは基本的に、優秀なやつしかいないから、教えることが少なくていい。


「まあな、球技大会、絶対勝つぜ」

「それなら勝てそうね!女子も勝つから頑張ってね、男女両方でかちましょう!」

「おう!」


 ……ふむ。

 渚が勝ちたがっているから、矢神は絶対に勝ちたいとか言い出したのか。

 島崎さんよ……可哀想に。


 にしても2つのゴールで男女が綺麗に別れたな。渚は別として。

 ……俺はあっちにも行かなきゃならんのか。


 俺のテレパシーが通じたのか知らんが、島崎がやってきた。

 脇が見えるくらい袖が短いピンクのシャツに、黒いホットパンツ、下には黒いスパッツを履いている。

 スポーツジムとかにいそうな、魅力的なギャルだ。


 島崎は渚と矢神がむつまじく練習してるのを一瞥するが、すぐに目を離して俺に声をかけた。

 複雑な表情をしている、後ろ髪を引かれるが、決心したような。

 

「ちょっと貞男、あたしにも教えろよ」

「あ、ああ、了解」


 もはや命令だな。ちょっとでも、上手くなって矢神に見て貰いたいと、そうゆうことだろう。

 俺は反対コートに引き連られていく、ギャルの花園だ。

 頼りになるのは己と天塚さんだけだ、頑張ろう。


「貞男連れてきた」

「あ、川上やほー」

 軽く手を上げて微笑みかけてくる天塚さんは、島崎みたいにスポーツウェア姿だ。島崎とは天と地の差がある対応だな。

 

「ど、ども、天塚さん……」


「え?マジでそいつに教わるの?」

「2人ともパナイね」

 川村さんと須崎さんだ。

 あんまり歓迎されてない、わかっちゃいたけどね。

 2人とも俺を見て引いている。


「大丈夫、こいつ上手いから」

 なんということでしょう!昨日あんなにも懐疑的な視線を向けていた島崎が、俺を擁護してくれたぞ。

 凛を負かした甲斐があったな。


「「え~~!」」

「あははー大丈夫だからさ!……たぶん」

 天塚さん、ありがとうございます!最後の一言はいらないけど。


「いいからやるよ!」

 島崎のちょっと強めの語気だ。

 それを聞いた2人は、腰が引けたのか、しぶしぶだが俺の指示に従ってくれることとなる。

 やっぱギャルの親分はスゲーや。

 

 ──────教えること30分ほど。


「おー!ホントにウチでも出来た!凄いじゃん貞男」

「意外な特技だよねー、アニメばっか見てるヤバイ奴だと思ってたわ」

「わかるー!」

 ものの30分で2人にある程度、認められたらしい。

 因みにアニメは大好きだ、ゲームの次に。これで認められたと思う俺がヤバイ。

 にしても運動ができるってのは、武器になるね。

 

 運動が得意だから俺は目を見れる……

 見れる……

 見れる……

 

「貞男、これでいいの?」

 眼光の強い島崎だ、運動フィーバー中の今なら。

 ……見れませんね。


 俺が視線恐怖症と格闘していると、島崎はコートを力強く踏みしめながらよってきて、俺のケツを蹴った。


「──無視すんな」

「あいた!わ、わるい」

 嘘だろ、物理で攻めてきたぞこの女。矢神ですら言葉なのに、足癖悪すぎだろ。


「これでいい?」

「お、おお、良くなってる!島崎は運動神経いいな」

 滑らかな円を描いて、ゴールに吸い込まれていくボール。だが、それ以上に綺麗なシュートフォームに驚いた。

 バスケ部と遜色ないぞこれ。


「……あたし、運動だけは得意だから」

 うるさいとか、言われると思ったけど、素直に称賛を受け取ってくれるらしい。しかもちょっと嬉しそうにニヤけている。

 ……ギャルも褒めとけば扱いやすいのか。


 だが、順調?にいっていたのもここまでだった。


「やった!入った!」

「おう、()やるじゃねーか」

 下手くそなシュートを入れて、ピョンピョン跳ねて喜ぶ渚が、矢神とハイタッチする場面。

 しかも、さっきまで名字の()()と呼んでいた矢神が、名前の()で呼んでいる始末だ。

 順調に距離つめてますやん。


 ───ブワッ

 真横で風を切る音がする。

 その直後。


 ───ガタンッ!!

 ボールが体育館の壁に当たった。運動が得意というだけあって、いい速度だ。つかあぶねえ、耳かすってたんだけど。


 それを見た天塚さんが、あちゃぁと弱った顔をして、駆けてくる。


「んだ、あいつ?」

「狂犬の強肩」

「お前それ親父ギャグじゃね?」

「ぐあ!ごっちんのパンチラインが胸に……ぐはっ!」

 お前のせいだぞ矢神、順調だったのにどうしてくれんだ。

 月島は空気とか読めないのかよ。


 そして壁にぶつかったボールは、何の因果か渚の足元に転がっていく。

 それを拾い上げた渚は、島崎を見てウヒャヒャと笑いそうな、笑みを浮かべた。

 うわ、こいつホントたち悪いわ。


「あれー?杏梨ー!ボール転がって来たわよ!──えいっ!」

 渚の投げたボールは、ボテボテのゴロ。

 それを見た矢神は当然反応するわけで。


()は、()()の半分も肩ねーな」

「もう!うるさい!」

 渚は矢神の腕を軽く叩いて、そのまま軽く掴まるように、ボディータッチをしている。

 島崎に見えやすいように。


「ちょ、杏梨、落ち着いて、ね?ね?」

 肩を震わせてうつ向く島崎の、両肩を挟み込むようにして宥める天塚さん。周りから変に見えないように、声を小さくする配慮までしてる。


 その努力もむなしく、転がるボールは島崎の足元目指して進んでいく。

 足癖の悪い島崎の足元へ。


 俺は渚の味方だ。

 島崎も渚をあからさまにハブるような敵対行動をしていた。因果応報といえばそうだろう。

 渚だから意にも介さず耐えられたんだ。人によってはあれだけで消沈してしまうだろう。

 たけどだ、これは流石にヒドイと思った。好きな人の前で恥を重ねるのはあまりにも不憫だ。


 だから俺は島崎に転がるボールをダッシュで拾う。

 ギリギリだった。

 ……もう片足上がってるし。

 

「チッ」

 いつもの鋭い目に睨まれるが、その目にはまったく恐怖を感じなかった。

 怒り以上に悲しみの色が濃い、弱った目。

 毎日鏡でみる、見覚えのある目だった。


 たからだろう、島崎に肩入れしたくなってしまったのは。


「ここで蹴ったら、渚の思う壺だぞ島崎」

 



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