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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
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帰り道


 フォートファイトは戦略も大事だ、ただバトルが強いってだけじゃ必ず行き詰まる。

 俺達には軍司のばんちゃんがいるから大丈夫だけどな。

 

 だから先を見越して動く事が重要なんだ、相手がこっちに行きそうだから、俺はこっちにいって優位な場所を得る、みたいにな。


 けど、それは恐らく現実でこそ役立つ技術だ。

 ゲームならばんちゃんの指示に従うだけで、上手くいくけど、現実じゃずっと自分の指示だ。


 つまり、俺は今の現状を予想していなかった。


「いやー川上くんと一緒に帰れるなんて、感慨深いですね!」

「そ、そうだな」

 渚がいないせいか、少し緊張する。


 俺は自転車で福生、渚は電車で青梅、他の皆も電車や自転車で、俺とは別の方面だった。


 そしてなぜか俺にやたらと馴れ馴れしい鈴村だけが、同じ方面で自転車なのである。

 神は仕事をしてるのだろうか?たぶんリゾートでバカンス中だと思う。


「やっぱり渚がいないと、緊張するの?」


 ドキリと心臓が脈打った。


「え?」

「なんか急に渚と仲良くなりましたよね?休みに会ったとか!」

 ビックリするな、心読めるんじゃないだろうな。


「趣味が合うんだよ、それで仲良くなった」

「ふうん、じゃあアタシとも仲良くなれるね!バスケが好きどうし!」

 ニカッと笑う鈴村。

 可愛いし、いいやつだ。でも顔を覗こうと……いや、渚が味方を増やせって言ってたしな。

 もしかしたら友達になれるかも。


「あ、ああ、そうだな」

「おお!意気投合ですな!長かった、苦節1年とちょっと、ようやく川上くんと友達になれました!」


 あれ?また友達宣言されたけど……

 これでいいのか?


「友達……気になってたんだけどさ、なんで鈴村は俺に構うんだ?こんなどっからどうみても変なやつ」

「あ、変なやつって自覚はあるんですね」

 鈴村はあはは、と苦笑いしてる。

 

「ま、まーな」

「あはは!アタシはやっぱり、自信も度胸もなくて、卑怯だからです」

「なんだよそれ、意味わからないぞ、やっぱ脳筋だな」

 というより誤魔化された?

 ホントは別に理由があったりするのか……あんまり突っ込んで蛇が出てきても嫌だからな。


「あ!脳筋っていったね!よく言われるけど、傷つくんだからね!」

「そ、それはすまん、あんまり人と話さないから、ハッキリ言っちゃうクセがあって……」

「いやいや、そんなにしょんぼりされても……うーん川上くんは、いいやつだな!」


 人に嫌な思いをさせてしまうと、異常に自分を攻める、これは陰キャの特長らしい。

 まんま俺に当てはまる。

 でも気にしすぎなんだろうな、謝ればいい話しだし、むしろへこんで、鈴村に気を使わせてしまった。


「お、おう、ありがとう」

「なっはっは!気にしない気にしない!友達なんですから!」

「そうだな、じゃあ脳筋でいいか」

「ええ!?」

「わ、悪い、冗談」


 なんでだろう、渚やばんちゃんと話してるとブラックジョークの1つや2つ、当たり前なのにな。慣れてないやつと話すとさじ加減が難しい。

 それでも鈴村は百面相みたいに、表情を変えて笑う。


「あはは!ねえ」

 鈴村は自転車をのんびり漕ぎながら、こちらを向いた。

 視線が合う。友達宣言されたからだろうか?少しは大丈夫だ。


「なんだ?」

 鈴村は少しの間黙って自転車を漕いだ。

 車も電車も通っていない線路沿いに響くのは、自転車と風をきる音だけ。夕日が照す鈴村の横顔は、作り物のように綺麗だ。


「──りょうくんって呼んでもいいですか?渚も名前でよんでるし!」

「え?ああ、別にいいけど」

 あだ名?少し溜めたと思ったらこんなことか?

 鈴村なら了解なんて得ずに呼んできそうだけど。

 

「おお!じゃありょうくん!」

 ニコニコと俺を見つめてくる鈴村は、何かを求めているような顔だ。

 ワクワクしてるって感じ。

 ──なんだ?


「はあ、りょうくんは女心がわかってませんね」

「な、なんだよ急に鈴村」

「アタシはあだ名でりょうくんを呼ぶのに、りょうくんは鈴村のままなんですか?」

 いやまて、落ち着けよ俺。

 なんでこんなに距離をつめてくるんだ?あだ名で呼ばれるだけでも驚いたのに、今度は名前で呼べってことか?それともあだ名?

 どっちにしろ難易度高いぞ。


「……えっと、じゃあ凛」

「おお!皆は気安くリンリンって呼ぶんだけど?」

「渚も凛じゃん」

「渚のこと、よくみてるね?ラブなんですか?」

「お前はなんでそっちに繋げたがるんだよ」

「あー!女の子に"お前"は禁句ですよ?」

「……わかったよ、凛」

 

 凛のやつは、やたらと渚との関係を探ってくるな、そんなに俺達は怪しく見えるのか?

 そういや御劔(みつるぎ)も渚の話しを俺にしてきたしな。

 まだJILLが渚ってわかってから3日だぞ?こいつらどんだけ人を見てるんだよ。


 それとも惚れた腫れたってのは、この年頃の連中は皆、敏感なのかもしれない。俺がとくべつ鈍感なのだ、それなら納得いくな。


「わかればよろしい!時にりょうくん」

「ん?」

「また、1on1やりたくない?」

「……別に」

 実に目立つ行いだった、あれはよくない。

 やはりバスケが絡むと、感情が前面にでしゃばる。


「ええー!すげない、つれない、そっけない!」

「あはは、なんだよ、その3段活用」

 媚びない引かない省みないのやつみたいだな。

 脳筋かまって鈴村バージョンと命名しよう。


「お願い!」

「また、練習の時な、やるんだろ?」

 ここまでお願いされると、俺も断りきれない。

 一応、友達になったらしいしな。


「もちろん!出来る日は毎日やるよ!」


 このクラスの住人達は、イベントに乗り気なやつが多い。凛はもちろんのこと、御劔(みつるぎ)島崎(しまざき)もだ。

 ヤンキーグループを仕切る御劔と、ギャルグループを仕切る島崎が

やる気だと、ほとんどのやつがやる気になる、やる気ださなきゃハブられそうで怖いもんな。


 でも例外もいる、阿久津瑠色(あくつるい)工藤実乃莉(くどうみのり)だ、阿久津はやりたくない事は、ハッキリやらないと言うタイプだし、工藤はめんどくさがってバックレる。

 いいコンビだ。


「やる気あるな」

「もちろん!バスケで負けるわけにはいかないからね!」

「さすがバスケ部」

「うん!りょうくんはもう、バスケはやらないの?」

 その質問はいつか来ると思ってた。

 今はフォートファイトがある、バスケはだんだんと趣味に変わってきた。


「ああ、俺はもういいんだ、妹が頑張ってるしな」

「そっか、残念。もしかしてことちゃんにバスケ教えてる?」

「教えてるっていうか、よく一緒にやってるな」

「やっぱり!バックファイヤー、ことちゃんにもやられたんですよ!」

「俺がよくやるからな、それで琴葉も覚えたんだよ」

 確かに最初の頃はよく教えてたかもな、琴葉もセンスあるやつだから、自分でどんどん上手くなっていった。


「ことちゃんが上手すぎて、すでにキャプテンの座が危ういんです!お兄さん!」

「あはは、でも琴葉が褒めてたぞ?バスケ部に凄いのがいるって、自分じゃまだ勝てないかもって、凛のこと」

 凛は褒められると、だらしない笑みを浮かべた。

 わかりやすやつだな。


「そ、そうかな~、全国いった琴葉ちゃんに言われるなんて光栄だな~」

「あいつが褒めるなんて、めったにないからな、俺もやってみて上手いと思ったし」

 そういうと、だらしない笑みを浮かべていた凛が、ジト目で俺を責めてくる。


「ストレートでアタシに勝ったクセに」

「いや、一本とられたじゃん」

「オフェンス入ってからはストレートでした!」

「まあ俺も全国レベルだからな、これでも」

「え?全国?」

「まあ色々やらかして全国には、出れてないんだけどな」


 俺が自嘲気味に呟くと、凛は息を飲んだ。


「……そ、そっか、大変だったんだね」

「ん?ああ、まあな、俺が悪かったんだけどさ、はは」

「……そうですか───あっ!アタシこっち!また明日!」

「ああ、じゃあな」

 凛は焦るように離れていった、もしかして話しに夢中になって、こっちの道に来すぎたのかも。

 それともまた配慮させてしまったかな?わからない。

 ただ、ちゃんと話せたし、しかも友達になれたっぽい。

 これは大きな進歩だろう、渚にも報告しよう。 


 ハタハタなびくポニーテールを眺めながら、クラスで一番苦手な女子と友達になれたことを、喜ぶことにした。





 モニターに映っているのはフォートファイトのプレイ画面。

 アジアを取ったパーティーが、対戦相手を蹂躙していく。

 日課のようにやっているフォートファイトは、仕事でもあり、練習でもあり、仲間との会話の場でもある。


「ってことがあってさ、頑張っただろ?」

 俺は数時間前の出来事、凛が友達になった経緯を渚に話していた。


「凛は元から良介にかまってたじゃない、その流れは言わずもがなね」

 

 ヘッドフォンから出る渚の冷めた声に、俺は内心ガックリする。

 

「凛のこと苦手だったのに?」

「そんなのわかってるわよ、でも凛はなんでこんな、きもロン毛に構うのかしら」

 真顔のままコテンと頭を傾けて、平気で人の心を抉る言葉を吐いているのが、目に浮かぶ。


「おい、真実でも言っていいことと、悪いことがあるぞ」

「……まさかタイプ?──ありえない」

「聞いてないな、おい」

 

 色恋沙汰に持ち込むのは、鈴村だけじゃないらしい。やはり、俺が少数であっていたのだ。

 これからは直ぐにそっち方面に持っていこう。

 陽キャと渡り合う術を、1つ得てしまった。


「つか、今日のあれはどういうことだよ、人数倍くらい増えてたじゃねーか」

「しょうがないでしょ、凛がホームルームで募集しちゃうんだもの、凛の動きは予測がつかないのよね」


 それであのメンバーが集まるってのが、凛のカーストの高さってことなのだろう。

 俺が誘ったら……考えるのはよしておこう。


「野生動物かよ」

「似たようなもんね、犬かしら」

「わかる」

「「わはははは!!」」


 別に悪口じゃない、人のいざこざへの嗅覚も鋭いし、性格は温厚で明るい。なんか犬っぽいよな。


「良介と凛の話しができるなんてね、もっと先の話しだと思ってた」

「お、やっと褒める気になったか」

「あーやっぱ今のなし、直ぐに調子にのるじゃない」

「はは、でもマジで今日は頑張ったぞ、俺」

「そうね、凛とやったバスケの試合、あれは良かったわよ?」


 なんだ、ホントにあの渚が褒めてくれるのか?

 褒めて落とされそうで怖いな。


「お、おうサンキュー」

「あそこまで上手いとは思ってなかったわ」

「おう」

「──ただね」

 はい来ました!

 こっから怒涛のお説教だ!


「油断は禁物よ。良介は今、クラス内での評価が一番変化しやすい立場になったわ」

「え、なにそれ怖い」

 お説教のほうがまだいいじゃん、言ってる意味わからないし。

 下手したらイジメコースまっしぐらってこと?


「クラスで発言力が強い連中に、バスケが上手いって自分で知らしめたんじゃない、それも男子よりも上手い凛を完封してね」

「マジか」

 確かに月島は鈴村にストレートで負けて、俺はその凛を殆ど完封した。


「いい?いくら根暗でも、突き抜けて凄い所があれば目立つし、人は好意的になる。だから今、春人(はると)杏梨(あんり)グループは、良介に少しだけ寛容になってるわ」

「……そうなのか」

 

 よくわからないけど、こいつスゲーぞ!ウエーイ!ってことか。

 そんな単純でいいのか、いや、リア充ってのは、そんなもんな気がする。

 

「そうなの、だからその辺りのメンバーが、物珍しさにつられて良介に絡んでくるわよ」

 

 有り体にいえば新しいオモチャだ、せいぜい道化を演じろよと。

 今さらプライドもクソもないけど、難しいと思うね。

 馴れないやつと話すと、どもっちゃうんですよ。


「うわ、胃が痛い」

「何かあれば私がホローするから、好きにやりなさい」

「マジでJILL様、神様、渚様だな。なんでそんな男前なのに性格悪いの?」

「別に振るだけ振って、放置でもいいのよ?」


 無茶振りってことですかね、勘弁してください。

 つかやっぱりなんかしら振ってくるつもりでは、あるんだな。今回の練習も渚の発信だし。


「すみません、冗談です」

「わかればいいのよ、ウヒヒ」


 渚はひとしきり笑うと、真剣な声音で話しだす。


「だからね、皆の感心があなたに向いてる時に、いい印象を残すのか、それとも悪い印象のままで甘んじるのかで、今後の学校生活が変わるわよ」

 

 俺が口を開く前に、渚が息を吸った。

 顔が見えないと話すタイミングがわからないんだよな、ベッドセットは。

 ほとんどの人の顔が見れない俺が、なにいってんだって話しだが。


「前に言ってたわよね、陽キャ、リア充、カースト上位じゃなくてもいいって」

「ああ」

「それなら尚更、ここで上手くやらないとね?一芸に秀でて、話がまともにできれば、陽キャやリア充じゃなくても、変だけど面白いとか、変だけど凄いやつって認められるわよ」

「変なのは前提なんだな……」

「嫌なら髪を切って、喋り方をどうにかしないとね?」

「……ですよね」

 オマケに目を見れるようにしないと、挙動不審すぎるんだよな。

 むしろこれが一番の問題なんだが。


 ここで黙っていた男が痺れを切らした。


「あの、俺も喋っていい?そっちの話しついてけなくて、スゲー疎外感あるんだけど……」

「黙ってなさい」

「あ、そうですよね、……高校って入り直せないかな」

「ばんちゃん……」

 頼れる兄貴分のばんちゃんには、また相談に乗ってもらいたい。

 渚にいつも封殺されていても、なんだかんだ頼れる男なのだ。

 



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