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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第二章】強気なギャルのラブコメ
12/69

練習


 翌日の放課後、つまりバスケの練習なんだが、学校近くの体育館を借りて練習することになった。

 みんな体操服に着替えて、和気あいあいとしている。

 

 だが俺は目の前の光景に、途方にくれていた。


「……何でこうなるんだよ」


 (なぎさ)鈴村(すずむら)天塚(あまつか)さん、ここまでは俺も了承していた。

 けど目の前にいる連中は知らん。


 知らん奴、筆頭の御劔(みつるぎ)は今日も爽やかに笑顔を浮かべてる。

 そしてそれを取り巻くようにしている数人のクラスメイト達。


 まずその1人、月島(つきしま) ライトは、バンダナを巻いた上にキャップを被るラッパースタイルだ。

 しかも学校でも常にこの格好でいる。

 もちろん校則違反のはずなんだが、なんと月島(つきしま)は校長先生に直談判、アンタが桂を脱ぐなら俺も脱ぐといって説得したらしい。

 本人談によるとバイブスとバイブスのぶつかり合いだった、ということだ。意味分からん。

 こいつも規格外(スペシャル)クラスと言われる所以の1人、やたらと人気者だ。


 2人目、矢神(やがみ) (ごう)、シンプルにヤンキーだ。体格が良くて角刈り、俺より身長がいくらか高い。

 正直、高校生に見えないし破鐘(われがね)のような力強い声は、威圧感を放っている。

 もと柔道部で有名な選手だったらしいが今はヤンキーだ。

 1年の時に学校のヤンキー、先輩も含めて締め上げた怖い奴だ。

 もちろん規格外(スペシャル)だな。

 怖い。


 そして3人目、島崎杏梨(しまざきあんり)、ギャルグループのボス、天塚さんがバスケの練習をしたいのは島崎(しまざき)に怒られないためらしい。

 こっちも怖い。


 クラスのトップカーストを全員集めたようなラインナップだ。

 胃もたれ通り越して胃潰瘍ですよ、もう。


 それから別の場所で、天塚さんとパス練習を楽しそうにやってる気に食わない奴。

 天塚さんの彼氏である、風見(かざみ) 春人(はると)もいる。

 野球部でレギュラーの、短髪が良く似合う格好いい男。

 御劔(みつるぎ)がいなければ、もっと目立ってるはずだ。


 誰とでも分け隔てなく仲良くする風見(かざみ)は、俺にもたまに話しかけてくる、珍しい奴だ。

 愛称は風見鶏(かざみどり)くん、俺が心の中で呼んでるだけだけど。


「凛、こう?シュートが届かないんだけど」

「違うって!ズッパ、スパグパだよ!」

 渚は一応ちゃんと練習しに来たんだな。

 負けず嫌いな奴だからな、スポーツが苦手とか許せないんだろう。鈴村はシュートの仕方を教えてるらしい……


 見ていてもどかしい、どっちもセンスがない。

 鈴村は教える、渚は運動の。

 致命的なミスマッチだ。鈴村は天才型ゆえに凡人が理解できないらしい。これじゃ渚は上手くならないだろう。


 たまにはでしゃばるか。


「鈴村、それじゃ分からないよ。渚はそもそも筋力が足りてないから、ワンハンドシュートじゃなくて、ツーハンドで教えた方がいいだろ」

 鈴村は片手でのシュートを教えているが、基本、女バスは両手打ちなはずだ。


 俺は鈴村からボールを取って渚の前に出る。


「いいか、渚は力が足りてないから片手シュートは難しい、でも両手なら大丈夫だ、フォームは……こう。ボールは顎のラインで、膝のバネを意識して打つとよく飛ぶぞ、──こうっ」


 俺の女バスシュートは、ネットの気持ちいい音を鳴らして、成功した。


「凄いわね良介、分かりやすかったわ」

 渚は真剣にシュートフォームの確認を──しだしたのか?

 ロボットダンスじゃないよな……

 見なかったことにしよう。


「凄いよ!川上くん!片手にしてから長くて、前のシュートフォーム忘れてたよ!なっはっは!」

 鈴村は威勢よく笑って、エアーで両手打ちのジェスチャーをしている。


「……鈴村はそもそも教えるのがヘタ過ぎる、ちゃんと言葉で伝えないと、わからないぞ?」

「ええっ!辛辣!」

「スパグパってなんだよ」

「こうだよ、こう!あ、ボール返して………」

 俺はボールを投げる。


「こう!スパグパ!」

 鈴村は急加速のドリブルを始めて、俺の前を通っていった。

 上手いし早い、さすが琴葉(ことは)が褒めるだけあるな。

 ただ渚はシュートを教えて欲しがってたのに、ドリブルを教えてたのかこいつは……

 脳筋だ。


「あ、川上!さっきやってたシュートもう1回やって!」

 風見鶏とパス練習をしていた天塚(あまつか)さんからのリクエストだ。手を振る天塚さんの体操服が大きく揺れる。

 いかん、視線をボールに……

 …………ハッ!?ボール違いだ、わざとじゃない。


 俺は天塚さんからのパスを受け、なるべくゆっくりしたモーションでシュートした。

 外れた……シュートする時はゴールを見ましょう!


「アタシのスパグパを無視したね!」

「あ、ああ、すまん」

 コートの反対まで走って戻ってきたらしい。

 体力有り余ってるな、と思ったらまたドリブルでコートを走り出した。 

 その辺の小学生より元気だな。


「よ、川上、珍しいな」 

 少々日に焼けた短髪の好青年、風見鶏くんだ。

 天塚さんが来たから、いるのは当然という顔だな。

 ……妬ましや。


 それでも相手はクラスのリア充だ、俺が対抗できるわけもなく。


「お、おう、教えて欲しいって……」

「そうか、お前バスケ上手いもんな、俺にもおしえてくれよ!」

「いいぞ、べつに……」

 さすが彼女もち、俺を褒めた後にお願いとは、距離をつめてくるのが上手い。

 こうやって人をたらして行くんだな、風見鶏め。

 

「あー!春人(はると)ズルい!私が先に教えてって頼んだんだよ!」

 天塚さんが風見の腕に抱きついた。

 ……うそだろ?

 風見の奴、驚きも鼻のしたを伸ばしもしない……

 なれていやがる、あの重量に。


「なんだよ、じゃあ一緒に教えてもらえばいいだろ?」

「そっか、それもそうだね、あはは!」


 目の前でカップルがイチャつき出して、俺は目の前がチカチカしだした。悔しくてじゃないぞ、決して!

 この2人を同時に教えるのは勘弁してくれ、そのうち目玉が弾ける。


「なにカップルでイチャついてんだよ、そいつに教えてもらうの?」

 男のような口調で絡んできたのは、島崎杏梨(しまざきあんり)だ。

 運動するからか、白っぽい金髪のメッシュを結んで、体操服を肩まで(まく)っている。

 近くにきただけで空気が、張りつめるような、そんな力をもっている女だ。

 

 恐ろしい吊目で俺を睨んでいる……

 いや、普通に見てるだけかも。


杏梨(あんり)!上手いんだよ、川上!」

「ふうん、どう見てもヘタそうだけど。それに桃花(ももか)から見たら全員上手く見えそうだし」

 島崎(しまざき)の訝しげな視線は、俺を値踏みしているようだ。

 怖すぎる。


「それが上手いんだよ、俺もビックリでさ」

 風見はズイッと前に出てきた。

 彼女がバカにされないように、俺を養護してくれたらしい。

 風見は野球部でレギュラーだ、運動神経はなかなかいい、説得力はあるな。


「もう、ひどいよ杏梨(あんり)!私も本気でやってるんだから!」

「あたしはどうせやるなら勝ちたいの、アンタちゃんと教えられんの?」

「た、たぶん……」


 急に話を振ってくるからどもってしまう。

 自信無さげな俺を見て、島崎は眉根を寄せる。


「……ホントに大丈夫なわけ?」

 埒があかないと見たか、島崎はカップルに向きなおした上で、聞き直した。

 ちょっとどもっただけじゃん!

 諦めたらそこで試合しゅーりょーですよ!


「リンリンに教わるよりは……」

「ハハハ、皆でやってれば少しは上手くなるだろ」

「ま、いいけど、あたしはあたしでやってるから、桃花(ももか)はちゃんと練習しなよ」


 島崎はそういうとシュートを打ちだした、素人にしてはちゃんとしたフォームだ。

 

 張りつめた空気が一気に弛緩した気がする。

 グループのリーダーみたいなやつは、出現するだけでその場の空気を変化させるな。

 御劔(みつるぎ)もいるだけで皆がヨイショしだす、御劔ゾーンを生み出すやつだしな。


「おお、怖」

 ぼそりと風見が呟いた。

 ああ、やっぱ俺だけじゃないよな。


「だから~杏梨はあれが普通なの!別に怒ってないんだから」

「でもな……な?川上」

「……ま、まあ」


 普通に怖い。もしかして俺は天塚さんを上手くしないと、島崎からヘイトを買うんじゃ……

 天塚さんすみません、スパルタでいかせてもらいます……

 しかたないんです、目の前でイチャイチャするし、島崎怖いし。


「えー!川上も!?ひどいよ!杏梨は友達思いなんだからね!」

 プンスカという擬音が似合いそうだ、ギャルでもなんでこんなに違いがあるのか不思議だ。

 全然怖くないからな。


「ハハハ、とりあえず練習しようぜ?その島崎に怒られるぞ?」

「む、確かに……」

 

 なんだかんだいっても、天塚さんも島崎に怒られるのは嫌らしい。


 2人ともボールを持ち出したので、天塚さんにはシュートを見せてもらった。元から両手打ちだが、下から放り投げるようにしている。

 さっき見せたよな、俺……

 仕方なたいので、そこからしっかりとフォームを改善させることにした。


 見てコピーするのが下手なのか、理解してもらえないので、手取り足取り、触って教えると、なんとか形になった。

 一応だが、俺は余計な場所はいっさい触っていないと宣言しておこう。


 後は実践だ、シュートを打たせてみたら、なんと一発で入った。

 渚を思えば全然いいぞ、ロボットダンスしてたからな、さっき。


 そう思って、転がってきたボールを天塚さんにパスすると。


「きゃあああ!」

 ──避けやがった。

 軽く投げた、1(ワン)バウンドパスだ。

 これはこれで重症かもしれん、俺の視線回避より早かったぞ今の。


「……な、なあ風見、天塚さんとパス練習してくれ」

 風見はちょっとフォームを教えたら、直ぐにコツを掴んで練習していた。こいつは結構センスある。

 だから彼女の面倒を見るべきだ。


「あ、やっぱそうなる?」

 分かってたのかよ、シュート以前の問題だよ。

 

「ボールを怖がってるみたいだから……パス練習で慣れさせてくれ、シュートはできるようになったから」

「おお、シュートできるようになっただけでもスゲーよ!後は任せてくれ!」

 心底驚いた顔をした風見はボールを持って走っていった。


「ももかー!」

「はぁ怖かっ───なにー?ってきゃあああ!」

 風見は俺のように、天塚さんに1(ワン)バウンドパスをした。

 そして逃げ惑う天塚さんを見て、風見は爆笑している。

 おのれ風見、天塚さんになにをしやがる、みんなの優しいギャルだぞ!


 ちょっと俺も笑いそうになったけど許してください。


 さて、それより渚はどうなったかな、あんまりほっといて小言を言われるのも嫌だしな。

 まさかあいつはボールを怖がったりしないだろうな……

 いや、ないな渚に限ってそれは。


「きゃあっ」

 天塚に比べれば雀が鳴いたような声。

 発生源のほうを見れば渚が頭を押さえてボールを避けている所だった。

 oh……


「おい、大丈夫かよ黒原」

「YO、YO、杏梨(あんり)の球はごっちんでもきつい豪速球!、頭に当たれば脳卒中!渚はただいま逃走中!」


 破鐘(われがね)の低い声は心配をしているが、声が厳つすぎて怖い。矢神剛(やがみごう)だ。 そしていきなりフリースタイルをしてるやつは、月島ライト(つきしまらいと)、頭の回転が早すぎるだろ。

 

「おいおい、心配しろよライト」

 苦笑いの御劔(みつるぎ)は月島に呆れている。


「チッ……カマトト女」 

 ヒエッ!渚にパスをしたであろう金髪のギャルは、島崎だ。

 なんか呪詛のような物を小声で吐いている。

 言葉通りカマトトだから擁護のしようがない。


 マジで嫌われてるじゃん渚さん……

 トップカーストの島崎だぞ、大丈夫なのかよ。

 渚もトップカーストか……だからっていいもんじゃないけど。

 

 俺が直立不動で島崎を直視していたら、目が合ってしまった。

 ヒエッ、何で俺だけ聞こえる位置にいるんだよ、別に聞きたくなかったのに!


「チッ」

 島崎はまた舌打ちして、月島の方に歩いていった。


「ちょっとライト、なにさりげにあたしdis(でぃす)ってんだよ!」

「あー!怪力で頭を潰されるー!」

 よくあの眼力を前に煽っていられるな、さすが校長と渡り合った男、

恐怖心というものが欠落している。

 それでも月島は見ていて面白いし、こんな俺でもリスペクトしている。

 人気者なだけあるよ。


 2人が戯れている間に、矢神(やがみ)が渚のほうに移動していく。

 つかまだ頭抱えてるよ。あのJILL(ジル)がか?

 ありえん、ボールを顔面に受けても怯まなそうなやつだ。

 間違いなくカマトトってやがる。


「おい、立てるか?」

「あ、(ごう)ありがとう」

 伸ばされた手を取る渚は、かよわい深窓の令嬢といった雰囲気だ。

 矢神のたくましい手に、握りつぶされてしまわないか心配になる。

 ただ騙されてはならない、演技だ、間違いない。


「きゃっ」

「気をつけろ」

 よろめく渚は矢神に背中を抱かれて、転ばないですんだ。

 2人は社交ダンスみたいに顔と顔が近くなり、渚は直ぐに恥ずかしがって顔を反らす。

 それに釣られるように矢神も顔を反らした。耳が赤い。


 ……おい。俺は何を見せられているんだ?


 ───ゾワリ。


 ふと背筋が凍るような視線を感じた。


 恐る恐る視線の発生源を見ると、般若のような形相で渚を睨んでいる島崎がいた。


 ──ヤバい、渚。

 それ以上はやめてくれ、主に俺の精神衛生上に。

 なんで?(はた)から見てるだけなのに、まるで渦中にいるかのような恐ろしさ。


 ……そんなにキレる?

 まあ俺もいつもの渚を見てるから、ちょっとキモいとは思ったけど、怒るようなことじゃなくない?


 ……え?もしかしてそゆこと?


 ──島崎が矢神をってこと?

 いやーどうだ?あの巨漢、もはやゴリラといっても過言じゃないぞ。

 しかもキレッキレのヤンキーだし。

 それはお互い様なのか、てことは案外お似合い?


「……わからん」

「僕もわからないよ」

「うわっ!?」

 いきなり真横から発生した声に、俺は飛び退いた。

 そこには俺を苦笑いで見ている御劔(みつるぎ)が、立っていた。

 頼むから足音を立てて歩けよ、ビビったわ!変なこと呟かなくて良かったわ。

  

 

 

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