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#80偽物の雪姉さん

 山に日が沈む頃に僕たちは学校の近くの森に出ていた。

 学校の校庭というかグラウンド的なところにはキャンプファイヤーをするために、木が組まれていた。

「やっと着いたな」

「うん」

 やっと着いた…けどシュレディンガーの猫の話をしている間は意外と時間が短く感じた。

「ミケさんはどの辺りにいるかな…」

「きっと子供たちと遊んでるだろ」

 子供たちとか…というかよく考えてみたら学校にいる子供たちって僕とリックンと歳あまり変わらないじゃん。けど全体的に6歳から11歳。あまり変わらないのに呼び捨じゃなくて「ココ様」と呼ばれるのに違和感を感じる。

「ココ」

「あの学校ってペルさんとミケさんが提案したじゃん」

「うん」

「学校ってこの世界…いや、このVRMMOに需要あるのかな…って。なんか形だけな気がする…」

 うーん…確かに需要があるか?と聞かれると微妙だけどこのVRMMOは従来のVRとシステムが違う、とお父さんからいくつか聞いたことがある。詳しいことは聞かせてもらえなかったけど、NPCのシステムはサーバー内になかったり、いくつかのサーバーを経由してこのグラフィックや操作性を追求した!とか酔った勢いで話してた。というかさっきからどこからか怪しい視線を感じる。

「なぁなぁ、どう思うココ?」

「僕は需要あると思うよ」

「どうして?」

「このVRMMOと他のVRMMOのNPCの違いって何だと思う?」

「行動が独特的」

 行動が独特的って………考えても思ってない回答が来た。行動が独特的ってそんな独創的な動きするNPCっていたっけ?

「例えば?」

「例えば…トイレに行ったりとか夜の営みを営んでたりとか…」

「リックンはこのゲーム始まってからなにを見てきた…」

 夜の営みってエッチとかだよね。なんでそんな物を見たことがあるんだよ。さっきの小説の年齢制限の話よりもまずいじゃんよ。

「全て、僕はこのゲームが始まってから食べ歩きをしたり、背後から追跡したりという仕事ミッションの中、すべてを見てきた!」

 仕事ミッション途中に夜の営み見るってどんなところで仕事してたんだよ。もしかしてまさかリックンって…

「へ、変態?」

「違うから」

「じゃあストーカー?」

「違うから」

「それでどこの屋台の食べ物が美味しかったの?」

「え、屋台?それはもうアレだ、アレしかない。クラスメイトの光希みつきちゃんが経営してた移動型の屋台………って今の誰の声だ?」

「雪姉さんっぽかったね」

「そうだよ、私だよ〜」

 雪姉さんが僕とリックンの後ろから驚かすように現れる。

「雪姉さん、バイト終わったの?」

「え、うん。余裕だった!」

 と満面の笑みで答える。

「雪さん、バイトはどこでしてるんですか?」

「リックンよ、ゲーム内で現実のことを話すのはマナー違反なのです」

「あ、すみません」

「けど雪姉さん、ペルさんと一緒のバイトだったんだよね」

「うん!」

「それでペルさんとはどうだったの?」

「もう完璧!私はなんでも得意だからね」

「良いなぁ…ココ。何でもできる姉を持ってて…」

「いや、雪姉さん家事全般全く出来ないよ」

 ギク…雪姉さんが肩を小さく震わせる。

 ん?雪姉さん普段より大人しい気がする。

「あ、ココ先生!」

「ココ先生だ!」

「コッコ先生も一緒にバーベキューするの〜」

 気づくと学校の方から子供たちが走って来ていた。僕より1つ、2つ歳下の子たちがこっちに向かってきていた。最近は騎士団の魔術師さんに風魔術を教えてもらっていた。

「ココ先生?」

 あ、リックンにはまだ伝えてなかった。

「リックンにはまだ伝えてなかったね。この学校では子供たちが自分たちで身を守れるように剣技とか魔術を教えるんだよ」

「そうなんだ…それでココ先生ってことはココが魔術を教えるのか?」

「うん、僕は月に何回か魔術を教えることになってるよ」

「そうなんだ…」

「ココ先生!」

 やって来た子たちの中の一番小さい子が僕の名前を呼ぶ。

「ん?どうかしたの?」

「ミケ先生知りませんか?」

「ミケさん?」

「はい、今、夕食のバーベキューの準備ができるまで増え鬼してるんだけど、ミケ先生だけ速すぎて捕まえられないんです」

「そうなんだ…」

 今、一瞬。すごい心当たりがあるような気がしたんだけど…

 もしかして僕とリックンに接触してきた雪姉さんってミケさん?

 僕は雪姉さんの方に振り返る。

 うん、これミケさんだ。頭はクマ耳だけど…し、尻尾が猫の尻尾だ。

「そ、それよりみんな、今日ここでバーベキューするんだよね」

 雪姉さんに化けたミケさんが笑顔で接する。

「うん、そうだよ。雪様もバーベキューしに来たの?」

「この前も言ったけど、僕は雪さんとか雪ちゃんとか呼びやすい呼び方で呼んで。僕は今日行ったダンジョンのそばで牛さんのお肉を入手出来たから、お届けに参りましたんだよ!」

 ミケさんは次元収納付きの手提げから牛肉をドン!っと取り出す。あ、一応物の方は持ってたんだ…

「わ〜牛肉だ!」

「やった牛肉だ〜」

「やったやった!」

 みんな口々に喜びの声を口にする。これが化けているミケさんだとみんな知らずに…

 これは乗ってあげた方がいいのかな?

「じゃあ雪さんにお礼を言おっか?」

「はい!雪さん、ありがとうございました!」

 みんなは笑顔で答える。

「どういたしまして。それじゃあバーベキュー楽しんでね」

 そういうと雪姉さんに化けているミケさんは転移魔術で転移していったのであった。

 うん、雪姉さんは転移魔術は取得していなかったからやっぱりミケさんだったのか…

「ココ、雪さん超太っ腹じゃん。5キロぐらい牛肉を置いてってくれたぞ!」

 リックンも周りの子たちと一緒に騙されていたようだ。これは伝えるべきか…伝えないべきか…暗殺者アサシンの精神を傷つけないように伝えておくべきか…

「じゃあみんな。とりあえずこのお肉を持って学校に戻ろうか!」

「「は〜い!」」

 ミケさんって一体どんな人なんだろう。なんか色々な面々があってよくわからない人だなぁ…

次回予告

始まったバーベキューの中、僕は久しぶりに松岡さんに出会った。

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