#73最強のネズミ
ネズミ使いの魔法陣から大きな足が出てくる。
おそらく右足かな。けどアレ…どう見てもネズミの右足じゃないだろ、おい。
アレどう見てもドラゴンの足だろ。
ネズミ使いとか言いつつなんかドラゴン出してるんだけど。最強のネズミはどうした!
しかし足以外は僕の予想を大きく超えていた。
「何だありゃ…」
思わず僕の心の声が漏れ出してしまうように。
「……………」
クロはただ無言だった。
「いくら断罪の剣士、クロと言ってもコイツと戦うのは初めてだろ」
足や翼はドラゴンのもの。しかし胴体や歯、耳はネズミのものだった。
これはまさか…
「合成獣…」
「その通り、コイツはネズミとドラゴンの合成獣だ。名付けてドラチューだ」
「ネイミングセンス悪!」
おい、何だよそのネイミングセンスのかけらすら伺えないチンチクリンな名前は!ドラキュラみたいじゃないか。
「うっさいよ!ドラゴンとネズミの合成獣なんだからドラチュー、別にいいだろ」
「文句は言ってないし…」
「チュー!」
ドラチューが大きな咆哮をあげる。
「ちょっと待て!鳴き声はネズミなのかよ」
「ああ、ネズミの中で最強だろ」
「もうネズミじゃないだろ、ソレ」
だってドラゴンとネズミの合成獣だぞ。そんなのもうネズミじゃないだろ。
「ネズミってネズミだからネズミであって、ドラゴンとネズミの合成獣じゃ、もうそれネズミじゃなくて合成獣の部類だろ」
「ネズミが入ってるんだから問題ないんだよ!さて、断罪の剣士よ。このドラチューを目の前にしてもまだやる気か?」
「………………」
「クロ!そんなドラチューなんてぶっ倒しちゃえ!」
「………………」
クロ、無視ですか!無視なのですか!
「ちょっと…何か反応してくださいよ」
「………………」
え、もしかしてビビってるんですか?アレはドラゴンにちょっとネズミ混じってるだけだろ。
「………………」
おいおい、僕の戦闘能力じゃあんなの倒せないぞ。だって合成獣って合成する互いの良い特性を合わしたようなもんだろ。ドラゴンの硬い皮膚とネズミの素早さが混ざってると思うと恐怖でしかないんだけど…
「我のドラチューに恐怖して声も出ないか!」
「………………」
クロはただただ無言だった。
しかしクロは右手の漆黒の剣を確かに構えていた。
左足を一歩前に出した体勢、そして剣は首の高さまで持ち上げていた。まるでそう、相手の隙を伺っているかのようにただ静かに敵の隙を見計らい、隙が生まれた瞬間、突進技を発動しようとしている構え。
この構え…何処かで一度見たことのある構え。
これは…シロの構えだ!
この剣を目の高さに合わせて銃のように剣先で敵に標準を合わせるような構え方。
間違いない、シロのオリジナルの剣技の構え方だ。
確か剣技名はスコープ……スラッシュ…だったけ?剣技名を聞いただけではネーミングセンスに少々疑問が残るが、技を見てみるとそのネーミングセンスに納得がいく構え方をしていた。
ああ、あのドラゴン討伐の時は非常にヤバかったな…
ドラゴンが強く羽ばたくと、荒れ狂う風が吹き上がる。
周りの木は風で吹き飛んだ。
そしてドラゴンのブレス攻撃は非常にヤバかったなぁ。
広範囲かつ高出力、もうそれだけでだいぶ恐怖だった。いや、僕は回避系のスキルがいくつかあるからほとんど回避しながらの攻撃だったけど、シロもブレスは超ギリギリで回避したり、前方から飛んできた火の玉とか真っ二つに切ってたからな…
「シロ、正面から火の玉がきます」
「わかった。僕がなんとかします。リックンはドラゴンに背後から切りかかってください」
「了解です。けどどうするつもりなんですか?」
「それは正面から突っ込んで切ります」
「え、ちょ、待ってください!」
止める間もなくシロは…
「剣技発動、一刀両断!」
ちょっと待って、シロ!それ剣技じゃないから。いや、大きく見たら剣技の部類だけどソレ、刀剣技だから。
片手剣で刀剣技って発動するんですか!という疑問を心の奥底から叫びながら僕はドラゴンの背後に回る。
指示通りにドラゴンに切りかかるために…
ドラゴンの後方に回ってシロの方を見ると、シロは火の球を片手剣でしっかり刀剣技を発動させ火の玉を真っ二つにぶった切り、ドラゴンにさらなる攻撃を食らわさんと、剣技を発動しようとしていた。
しかしドラゴンに隙というものは存在しないのか、攻撃をしようとしたシロを思いっきり爪で吹き飛ばした。けどだいたいのゲームにおいて攻撃をしているモブには隙が生まれる!
僕はドラゴンに飛び乗り背中の右翼に暗殺技を発動した。
「暗殺技、断骨!」
断骨は武器によって相手の骨を断つ技。武器の性能によって耐久力を大きく損失する技。場合によっては武器が折れることもある。
それを翼の付け根に打てばどうなるか?ドラゴンの翼が折れてドラゴンが落ちる。そして身動きの取れなくなったドラゴンを仕留めるだけ…だと思っていた。
暗殺技を付け根に放つとどうだろう…僕自身、まったく予想してなかった出来事が起きた。
短剣の刃が骨に届かずドラゴンの皮膚に当たっただけで折れてしまった。結果、ドラゴンの皮膚に少し傷をつけるだけとなった。
おい、あの短剣、まだ入手してから1日ぐらいしか経ってないのに!
「ちょ…僕、これしか武器ないんだけど…」
まぁ、ドラゴンとしては怒り狂うだろ。
一応、骨に届いてなくても痛覚を感じたことによって怒り始めたのだろう。
いや、短気すぎだろ!僕はドラゴンが急上昇したことによって振り落とされた。シロさんと来ててほんと良かったよ、その時はバシッ!っと空中でキャッチしてもらったから助かったけど、1人だと落下死だった。
「リックン大丈夫?」
「はい、大丈夫でした。ありがとうございます」
「いえいえ、それよりもリックンの剣が…折れちゃってます」
それが1番の問題。ヤバイよ、主戦力がシロだけになってしまった。
武器がないと僕は基本的に攻撃が仕掛けられないからなぁ…あとは影魔術とかの魔術系のスキルしかないからどうしよう。
「リックン、どうしますか?」
シロは僕を地面に下ろしながら僕に聞いてくる。
これは撤退した方が良いかもしれないなぁ。
武器を新しく購入しないと僕は戦えない。いや、ここまでドラゴンが手強いとは思っていなかったからなぁ…
「一度撤退した方が…」
「リックン、さっきリックンを救出した時に近くに村が見えました」
「村ですか?」
「はい、小規模ですが…」
それじゃあ撤退したらドラゴンに村を破壊されるかもしれないじゃん。
「シロは超火力の技とかないんですか?」
シロはスキル欄をスクロールしながら…
「一応、あるにはあるんですけど、発動までに少し時間が…」
「それを発動すれば勝てる見込みはありますか?」
「はい、絶対に勝てます」
シロが笑顔で返事をする。なにその自身、ユニークスキル的ななにかを持っているのかな。
時間を稼ぐスキルなら確か影魔術にあったはず…確か技名は影踏みだったっけ?
影踏みは相手の陰を踏むとしばらくの間、相手は動けなくなる。しかしこの技は一対一でしか使えない。これを使うと使用者は相手の陰を踏んでいなければならいないので、相手に仲間がいると自分がやられてしまう。
「影魔術の影踏みを使えばドラゴンの動きを止められると思います」
「影魔術の影踏み?」
「影踏みは相手の陰を踏んで動きを封じる魔術です。発動条件は相手の体が地面についていることが、条件なので地面にドラゴンの体さえつけばしばらくは動きを止められます」
「わかりました!じゃあドラゴンを地面に撃ち落とせば良いんだね」
「出来るんですか?」
「もちろん、僕はできることしか言わないよ!」
シロはそんな簡単に言ってるけど、暗殺技で骨を切るために作られたあの断骨でも切れなかった皮膚をなにで貫通させるつもりなんだろう。
「じゃあリックンはここで見ててね。失敗するとどうなるかわからないから」
何その弱恐怖な技。なにそんな運ゲー的な技なんてあったっけ?
シロは左足を一歩前に出した体勢、そして剣は目線の高さと同じぐらいまで上げた。
………シロさん、剣の構え方が普通じゃないよ。そんな剣の構え方、アニメとかでも見たことないよ。というか剣上げすぎ!構えづらいだろソレ。
けどシロの目は真剣そのものだった。まるでこれから一騎当千の戦に挑む騎士のような目。
「白金流剣技、スコープスラッシュ」
作者より
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回からまたリックンの初日の出来事に少し戻ります。
なんか交互に話が進んでて分かりづらかったり、読みづらかったらすみません。
今後もどんどん書いていくので楽しみにしていてください!
これからもよろしくお願いします。




