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#72そこまでだ!

「そこまでだ!」

 その声とともに緑色の催眠ガスがネズミ使いの方に吹き荒れる。

 な、なにが起きた!

 僕はその出来事がよくわからずにいた。

 あ…僕はその場で一瞬硬直する。いや、頭がこの難題の処理に追いついていなかった。

 しかし催眠ガスが晴れると、その状況を全て理解した。

「ク、クロ…」

「ああ、待たせた!」

 催眠ガスがさっきまであったところには、クロが立っていた。

 見る限り、クロは黒い片手剣を振った後のようだった。まさかだと思うが、クロはアニメキャラが砂埃とか煙幕を剣を振ってはらうように催眠ガスを黒い片手剣を一振りではらったというのか!

 そ、そ、そんな主人公がするようなことして…僕がカッコよく華麗にあのネズミ使いを背後から殺るっていう計画が。

「悪いが俺の仲間に手を出したってことは殺される覚悟はあるんだよな」

 クロがネズミ使いに威圧をかけるように言う。その目はまるで人を本気で殺そうとするような殺意に満ち溢れた目だった。僕のことをそこまで心配してくれているとは!

「貴様、何者だ?」

「俺はクロ。ソロプレイヤーだ」

「ソロプレイヤー…何を言っている。今、貴様はコンビを組んでいるやつがいるじゃないか」

「まぁ、な。けどこう言わないと俺がしっくりこないんだ」

 クロが何故か苦笑いする。

「貴様、私に勝てると思ってるのか?この私に」

「ああ、余裕だ」

 クロは自信満々に言う。おい、何だその自信。どこから来てるんだよ。

 まぁ、ぼ、僕からしても余裕だし。ネズミ使いとかそういうビーストテイマーに接近戦で負ける自信はないし!

 アレだ。背後をとれば余裕だし!

 ネズミ使いの男は拳を強く握ってこう言った。

「貴様、正気か?我をネズミ使いのヨギと知っての世迷言か?」

 ネズミ使いのヨギ…ネズミ使いのヨギ…ヨギ…ヨギ…ヨギ…あ!

「思い出した。ネズミ使いのヨギ。隣の村で村人からネズミたちの退治などで有名になっているあのネズミ収集家だ!ネズミを集めてニコニコしてて村の人は感謝してるけど、気持ち悪いって陰で言われてる人だ。けどそんな変な噂の絶えないが、ホリゾンタルワールドの中では一流テイマーでも有名だとか」

「な、何だと…」

 ネズミ使いのヨギと名乗った男は地面に膝をついてがっかりした声で言う。

「村人からそんな目で見られていたなんて…」

「リックンナイス!リックンはナギに100の精神ダメージを与えた!」

「いや、与えてないから」

 僕は思わずツッコむ。

「ナギじゃねぇよ。ヨギだ!」

「どっちも変わんないだろ」

 クロは真顔で言う。

 ク、クロさん…心の中まで黒い…

 もしかしてクロってかなりのドS?ドSなの?

「貴様、我を侮辱しやがって!」

「く、クロ…勝てるんですか?」

 僕はクロに向かって叫ぶ。すると余裕余裕って感じで笑顔で答えを返してくる。

「一流テイマーだか何だか知らないけど余裕だ。俺を誰と心得る?このクロだぞ」

「クロ…どこかで聞いたことがある名前…貴様、一体何者だ?」

 クロは色なんだからそんなものすごいど定番な名前なんだから何人もいるだろ。

「そんなに俺の二つ名を聞きたいのか?いいぜ、教えてやる」

 クロはマントをなびかせながら剣を構えて言う。

「俺の名前は漆黒の剣士、クロ!」

 クロの声が森中に響く。

 おいおい、そんな漆黒の剣士、クロ!だなんて言って恥ずかしくないのか?

 聞いたことないぜ、そんなの。

 ネズミ男…じゃなくてネズミ使い。何か言い返してみろよ…この厨二病をこじらせ過ぎたバカに言い返してくれよ……ってなんで青ざめてるの。なに、その人そんなに有名なの?聞いた覚えねぇぞ、僕。

「貴様、もしかして断罪の剣士、クロか!」

 そっちも聞いたことねぇよ!

「ああ、そうとも呼ばれてるな。けど俺的には漆黒の剣士、クロの方が好みかな」

「ゲーム開始から今まででもうすでに十数個の逸話を持つプレイヤー…ありとあらゆるフィールドボスを単独撃破。その優れた戦闘能力やセンスからパーティに誘われることが多いが全て拒否。そして村人が餓死しようものなら村を立て直すための知恵を与えたり、誘拐された子供たちを盗賊のアジトや奴隷商を何軒も何軒も潰してきたあのクロだと言うのか!」

「そんなこともしたかな」

 なにその実績。凄いじゃん、クロ。けどありとあらゆるフィールドボスを1人で撃破ってそれただのボッチじゃん。コミ症じゃん。自慢要素ではあるけど友達がいない雰囲気があるじゃん。

「断罪の剣士が相手とは少し分が悪い」

「そうか?じゃあ早く逃げればいい…今なら見逃してやる」

「笑わせてくれる。そんなことするわけがないだろう。私はネズミ使いだ。それ故に最強のネズミだって所有している」

 最強のネズミ?ネズミに最強もなにもあるの。だってネズミって言ったら小さくて逃げるのが得意なイメージがあるんだけど…

「そっちこそ…最強のネズミってネズミ自体が大抵弱いじゃないか」

 ネズミ使いが空中に魔法陣のようなものを描き始める。

 クロはそれを止めようとせず、ただじっと眺めていた。これが強者ゆえの行動なのか。

「言ってくれるな。ここに降臨せよ、私の最強の使い魔!」

 ネズミ使いの声で目の前の魔法陣が灰色に輝き始めて光を強めていく。

 一体なにが出るのだろうか?

次回予告

ネズミ使いの最強の使い魔はなんと…………だった。

しかし僕はネズミ使いの使い魔が…………だったことの驚きよりもクロの特徴的な剣の構え方に驚いた。

いや、だってシロの剣の構え方とほぼ一緒じゃないか。

ありえないだろ…だってアレはシロのオリジナルの構えだったはず!

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