#68囲まれた?
気がつけば日が沈んできていた。
今にも山の向こうに日が沈んで夜が来ようとしていた。
「リックン」
「何ですか?」
「もうすぐ日が沈んで夜になってしまいしますがどうしますか?」
「夜になったら野営いわゆるキャンプするしかありませんね」
「キャンプですか?」
「はい、夜になる前に安全な寝床を用意するんです。夜になると普通の魔獣も凶暴化して強くなりますから」
「わかりました。ではまず、何をすればいいんですか?」
あ、これは異論なしでキャンプするんだ。しかしキャンプをするにしても道具がない。
「けどキャンプするための道具がないんですよね」
「キャンプする道具……」
シロがアイテム欄やスキル欄を開いて探している。僕も代用できるものがないか探して見るが、なにせゲーム開始1日目でキャンプ用の道具を持っている人なんてあまりいないだろ。だってゲーム内での初日って攻略!って感じじゃなくてとりあえず周囲探検だ!って感じになるじゃん。
「キャンプ用の道具ではなくても安全に寝れる場所であれば大丈夫なんですか?」
「はい、安全であればキャンプである必要はありません」
「じゃあ任せてください!」
お、何か閃いたらしい。
「リックン、少し離れてください」
「は、はい…」
何、何か大規模魔術でも放つのか!
僕はシロから少し離れる。シロは僕が離れたのを確認してから魔術の詠唱をする。
シロから白い煙が出始める。お、これはよくあるマジックショーででてくる煙に似てる。これから一体何が起きるのか?
詠唱を終えたシロは地面に両手をついて魔術を発動する。
「氷魔術、アイスドーム!」
魔術を発動した瞬間、シロさんを中心にジワジワと氷が張り始める。そしてある程度の広さになると氷が空に向かって伸びていく。
これは魔術の名前的にドームを作っているのか?
しばらく無言で観ていると、予想通り綺麗な氷のドームが完成した。
「リックン、これでどうですか?」
「シロさん凄いです。これってどうやって作ったんですか?」
「これは氷魔術のアイスドームを使用して自分を包み込むように発動したんです」
「そ、それだけで出来るんですか?」
「出来たよ」
こ、この人。天然が少し入ってるのに頭がキレる。どういう思考回路をしているんだ。
なんかその思考回路欲しいんだけど…
「とりあえず今夜はこれで問題ありませんか?」
「まったくありません。あとは火起こしですね」
「火起こしですか?」
「はい、火起こしです」
「すみません。僕、火炎魔術は使えないです。リックンは使えますか?」
僕は影魔術しかないんだけど…
「僕も火炎魔術使えません。けど古典的な火起こし方法で火を起こせばいいと思います」
「古典的な方法?」
「アレです。原始人でしたっけ?あの人たちが火を起こすために木に穴を開けて棒をグルグル回して火を起こしたっていうアレです。幸いこの側には森があるので小枝を何本か拾ってきてやってみませんか?」
「良いですね」
というわけで早速取ってきた僕とシロはそれぞれで火を起こし始めた。
いや、最初は1人でやってたんだけど、どうしても火が起きそうになかったから2人でやっていた。
氷のドームの中は予想していたよりも温かくて助かった。これで冷たかったら今夜中に2人で凍死だったな。
ひたすらカリカリカリカリと木を擦る。
頑張っても頑張っても煙り一つ起きやしない。
僕とシロはひたすら、そうひたすら木を擦っていた。
「リックン、遅いなぁ…偵察任せたのが間違いだったかなぁ…」
僕は小さな狼の治療を終えて木の陰で休んでいた。小さな狼の治療は無事成功。回復魔術もかけたためしばらくすれば元気になるだろう。
しかしリックンが遅い。やっぱり誰かに迷惑かけてる気がする。治療している時にも思ったけど、このそば全く魔獣がいない。リックンが倒してくれたのなら良いが、何かもっと厄介なことが起きている気がする。
けどこの小さな狼。なんで怪我してたんだろう。この辺りの魔獣が狼を襲っているのかな。いや、狼は襲う側の存在だ。じゃあ狼狩り?それとも魔獣にやられたのだろうか…
狼狩りならリックンは標的にされないが、魔獣の場合は心配だ。リックンの得意とする奇襲は対人戦闘において一番効力を発揮している。しかし魔獣は匂いなどでプレイヤーや周囲を警戒する。警戒している時の魔獣に奇襲はほぼ効かない。
僕とリックンが知ってる人で同い年で主戦力が欲しい。主戦力とは、主に剣技や剣術を駆使して戦う人。脳筋ではなく、魔術師じゃないくらいの人が良いなぁ…
あと盾持ちの片手剣の人とか。片手剣という武器種においての最大のメリットは盾が持てるという点でもある。片手剣で攻撃しながら盾で防ぐ。1人で攻守ができる人がパーティに1人いると嬉しいんだけどなぁ…
うちの学校はほとんどの人が部活に所属していてゲームやってる時間なんてないだろうしなぁ…
それにしてもすごい視線を感じる。
さっきからずっと僕を監視されている気がする。どこから観られているのかはわからないが…とても不気味だ。雪姉さんじゃなければいいけど…あ、雪姉さんはまだバイトから帰ってきてないか。
バイト大丈夫だったかな?ペルさんと雪姉さんともう一人いるらしいけどそのもう一人の人大丈夫かな。男の人だったら2人に襲われてないといいけど。まぁ、逆は逆でありえないけど…雪姉さんは何故か柔道の心得がある。いや、いつの間にだよ。中学3年生の時は全く運動できなかったのに、何故か最近になって柔道ができるようになってたんだよ。雪姉さんは気づいた頃には何か新しいことができるようになってるしなぁ…
ガサガサ…周りの草むらを小さな何かが移動している。人間より小さな生き物。猫よりも小さい何かが…
ん?あ、なんかもう手遅れな気がしてきた。僕に感覚系スキルがなくてもわかる。周りの草むらに小さな生き物が沢山いる。下手に動いたら殺される。
リックンはもうもしかして手遅れ…殺されちゃったのかな。そう考えるとリックンが無事なのか凄い心配。
行きてるよね、リックン?
進捗状況
何かに囲まれた僕。
リックンが殺されている可能性を考慮すると下手に動けない。だってリックンは隠蔽系スキルにかなり特化して小柄な体格を利用して超高速で移動してる暗殺者。それが殺されたってことは相手も相当速いははず…そんな相手に僕が勝てるはずがない…




