#67おとぎ話
「フッ!」
小さな気合の入った声の後にグサッ!と鈍い音が響く。青い空、緑色の野原、そして出てくるゴブリン。
ゴブリンという生き物はすごい哀れな生き物だ。敵を確認すると、その敵を仕留めることに一生懸命になって背後を疎かにしてしまう生き物。
また一人、また一人とゴブリンを血祭りにあげた僕に向かって後ろの方からシロさんの声が聞こえてくる。
「リックンさんすみません。リックンさんにばかり戦ってもらってしまって」
シロさんが申し訳なさそうに言う。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「本当にすみません」
実際、交換した剣の刃を見ようとして抜こうとしたら抜けなかった。何でもこの剣の名前、アグリメントブレイドの状態という欄に龍呪っていうのが記載されていた。龍呪とは、文字通り龍にかけられた呪い。始まりの街の物知りのおじいさんに聞いたら…小一時間話しをされた。
「龍呪とは、まだ人間や獣人、龍人などがまだ戦争をしていた時だった。我ら人間には獣人や龍人などの優れた身体能力はなかったが、戦闘をする他にも知識を大切にする行いがあった。自分たちの用いる知識の全てを用意て…彼らに対抗すべく何かを生み出そうと。その考えによって生まれたのが、龍殺や亜人殺(亜人キラー)である。それはあらゆる戦場の戦況を一変させた。昔に存在していた英雄ジークフリートは自らに龍殺の魔法陣を刻み、さらに武器にも刻んで戦いを挑んだという。彼は人間の中でも指で数えられるほどしかいない奴らの1人でな。彼の尋常ならざる魔力放出によって戦場にいた龍人145人を全て打ち倒したらしい。龍人たちは皆その力を見て、彼らに勝る肉体や力を持っているが、それでも知識には敵わないと考え始める戦略思想が生まれた。そして彼らも知識を深め、竜殺に対策するための呪いを開発した。その一つが…龍呪じゃ…」
「「ど、龍呪…」」
「龍呪は人を荒ぶる龍にしていく侵食呪いなどが伝わっている。そしてその後、人間たちは彼らの呪いに苦しめられ…そして多くの人が死んだ。しかし人間は諦めなかった。何度も何度も…」
とこの歴史はまだまだ続いた。最後の方は貢物を送りあったり儀式したりだとかしててなんか日本の歴史の授業を聞いていた気分だ。まぁ、結論を言うと全種族の代表が集まって和解しました、って話。これは子供向けのお伽話らしいが、長いんだよ。スゲェ長いよ!
結局、龍呪はなんなんだよ。龍が作った呪いだってことはわかったけど…なんで龍の前でしか抜けない呪いなんて作ったんだよ。すごい理解不能なんだけど!
まぁ、そんな心の怒りは抑えた僕とシロさんはドラゴンの元に向かっているところである。
「ドラゴンとの戦闘の時にお願いしますよ」
「それは任せてください!ドラゴンで血の池を作ってみせます」
その謎の気合は何…まぁ、良いか。
「シロさん」
「シロで良いですよ」
「シロ」
「どうしましたか?」
「さっきのおじいさんの話。理解できましたか?」
今思い出してたらシロさ…シロがどう思ったのか気になった。いや、みんな理解できないだろ。きっとココなんて理解出来なくて、じいさんに矛盾を唱えるぜ。
「大体は?」
「本当ですか?」
マジかよ…僕が理解できないだけ。よくココに「頭硬すぎだぜ!」とか言ってるけど…実際は僕の方が頭硬いかな。
「はい、良ければドラゴンの元に着くまで話しましょうか?」
「お願いします」
「では、ここからは僕の考察も入るのですが、よろしいでしょうか?」
「はい」
「この剣は多分ですが、さっきのおじいさんの話していたおとぎ話に出てきた剣だと思います」
あれ…剣なんて出てこなかったはず…
「剣なんて出てきましたっけ?」
「出てきてません。けどおじいさんが話の途中に「人間と龍人は互いに貢物を送ることによって徐々に仲が良くなっていき、互いに殺さないことを誓うための儀式を行った」って言ってました。多分、その儀式によってこの剣が作られたのではないでしょうか」
「儀式で作られた道具?」
「はい、これは人間と龍人が互いに殺さないための盟約を結ぶ儀式の時に作られた記念の剣だと思います。アグリメントという単語は確か英語だと『契約』という意味だと思います。多分、単語の発音に少し近いので、それを少しモジってアグリメントソードと名づけたんだと思います」
そうなのか?僕は英語苦手だからわからない。
「この剣には人間が知識の限りを尽くして考え出した、龍殺しのドラゴンキラー。そしてそれに対抗するため龍人が考え出した、龍の呪いのドラゴンカース。きっとこれは互いの弱点的な何かを打ち消すためのものだと思います。この剣は両者の鍛治士が共に製作して、龍殺を人間がもう引き抜けないようにと龍呪で抜けなくしたんでしょう。剣というものには人との友情を誓い合うために使用されるものが存在するらしいので、意外と有力だと思います」
「けどそれならどうして龍の前で抜けるんですか?」
「多分、盟約がまだ完全なものではなかったから…じゃないでしょうか。急に敵対していた人と「仲良くしろ!」と言われて仲良くなれる人はそうはいませんから。だから反対していた龍人に遭遇した時に身を守れるようにしたのでは?」
「う〜ん…」
なんか理屈はなんとなく通る気がするけど、無理矢理こじつけな気もする。
けど仮に互いの全てをその一本の剣に込めたのならかなり強いのかもしれない。意外とドラゴン討伐が楽しみだ。
「納得できなかったかな?」
シロさんが僕の顔を見ながら言う。まぁ、少し…
「いえ、なんかこじつけな感じがすごいありますね」
「ほとんどが僕の予想だから」
「けどそんな平和を誓った剣だったら良いですね」
「ええ」
僕たちが話し終える頃にはもう日が沈む頃だった。
次回予告
日が沈んでしまって辺り真っ暗。きっとこれはあのおじいさんのおとぎ話が長すぎるせいだ。この暗さではドラゴンを探すどころではなくなってしまったため野営をすることにした。
野営といったら肉を焼く!それしかない。




