#65黒い怪しい人の名前
「けど本当にヤバイよ、トラップマウスは」
「さっきの落とし穴…確かに深かったですね」
僕と黒い怪しい人は歩きながら話していた。いや、さっきはすごいヒヤ!ってしたよ。なんかきゅうにあしもとがなくなるのって怖いよね。よくさ、道とか歩いてて段差がないと思ってったらあって足がカクッ!ってするのと同じくらい恐怖を感じるよ。
それにしても罠鼠はヤバイ。落とし穴なんて足がズッポリいく程度だと思ってたら深さ5メートルほどあったとは。しかも落とし穴の底には鋭いトゲが沢山あった。
もし落ちてたら僕は今頃、針を刺されまくった後の針山状態になっていただろう。
「この辺りはまだトラップは仕掛けられてないらしい」
「はい…」
「そういえばまだ自己紹介もしてなかったね」
確かに自己紹介まだしてなかった…
「僕の名前はクロ。種族は見ての通り人間だよ。主に片手剣を使うよ」
サラッと自分の名前と種族と使用する武器種を明かした黒い怪しい人。黒い怪しい人の名前がクロ。そのまんまな気がする。
あ、けど初期のガチャで出てくる防具は名前とかのアカウント設定した後に手に入るからたまたまなのか。
「君の名前は?」
「僕の名前はリックン。種族はリスの獣人です。主に短剣と影魔術を使います」
「The 暗殺者だね」
The 暗殺者ではなく、僕は暗殺者だ。それだけは…それだけは譲らんぞ。知り合いが忍者とか言ってきたら斬り殺す用意はできている。まぁ、知り合いでこのゲームやってるのはココとか雪さん、ペルさん、ミケさんぐらいしかいないけど…
「一つ聞いても?」
「何ですか?」
「リスだからリックンかい?」
「…それもありますけど本名を少し変えただけです」
「そうなんだ…」
クロさんの服装と仕草、初日にあったシロさんと似てるなぁ…
シロさんとは性格が少し以上違うけどなんか似てる。似てると思うと、徐々にクロさんが真っ黒いシロさんに思えてくる。あれ…真っ黒いシロさんってなんだろう。
あ…みんなに今度紹介してみようかな、シロさん。
これはゲームを始めた時の初日の話になる。
僕がゲームを始めた時、ココとやる約束をしていた。けど初日だからなのか?人がたくさんいて小さくて可愛いココは見つからなかったんだ。待ち合わせをしておけばよかっただろ?っていう人もいると思う。けどワールドホリゾンのマップはゲーム開始時まで公開されなかったんだ。
「ココのやつ、人が多すぎて全く見つからないなぁ…」
ココの身長が170センチくらいあったら見つけやすかったのに。いや、小学生のうちに170センチもあったら化け物か。
僕は腰の短剣をケースから出したりしまったりしながらココを探していた。
なんか短剣がケースの中に入る時の金属と金属のぶつかった音、カチィン!って音。めっちゃ良くない。なんかカッコよくて。現実じゃ聞けないこの金属音。最高じゃ!
しかしいくら探してもココは見つからない。きっと雪お姉さんとやってるのかもしれないなぁ…これは。まぁ、雪さんとココは仲がいいからなぁ…僕たちとは違って。
僕の姉は弟思いじゃないからダメだ。僕のお菓子とか勝手に食べたりとかすぐするし。ゲームで一緒に遊んでくれないし。オシャレした時なんか最悪だ。うん、僕にとって災厄でしかない。
「リクリク!この長いスカートどう思う?似合う?似合う?」
って子供みたいに聞いてきて。「え、普通じゃない」とか「微妙」とか素直に感想を言うと…まぁ、半殺しぐらいにはされる。
そして何と言っても、うちの姉には胸と色気が全くない!元気だけはあるけどこの2つ(胸と色気)はない。胸はココのお姉さんの雪さんと比べて、月とスッポンレベル。地形で例えるなら、雪さんが2つの山で、僕の姉が平原である。木が一本も生えない平原である。今にも飛行機が着陸してきそうなぐらい平原である。それに色気なんて全くない。一応、スタイルは胸を除いて素晴らしいという評価に値するのに…色気がない。そしてまったくエッチでもない。今時の女の子は少しエッチな方が可愛いとか雪さんが言っても「そんなの何の役にも立ちませんよ〜」って感じだもん。
やはり僕は思うのです。
今時の姉という存在は、雪さんみたいに優しくて、可愛くて、大人しくて、そして…そして弟に少し手を出すぐらいエッチな方がいいと思うのです。
流石に雪さんのココへの愛は少し問題があるけど、少しエッチなお姉ちゃんの方が今時は良いのです。それに後もう少しお淑やかになって欲しい。
それが最近の僕の願いと化してきている。
べ、別にエッチなお姉ちゃんが羨ましいってわけじゃないよ。ただもう少し色気とか出てるお姉ちゃんが良いなぁ〜ってだけだし。
けどどうするか?ゲームサービス開始記念に始まったドラゴン討伐クエスト。リスの獣人の基本的なパラメータでは攻撃力があまり高くなく、素早さに特化しているためドラゴンを一人で倒すことは困難を極めている。
誰か知らない人のパーティに入れてもらえる…わけないか。このゲームを買いにきている人のほとんどが家族とか友達とかリア充とかゲームオタクとかだったからほとんどの人が知り合いとパーティを組むよね。
トントン…誰かが僕の肩を後ろから叩いてくる。
ココか…いや、ココは素直で優しくて可愛い子だ。背後からトントン…って肩を叩いてくるはずがない。
では誰だ?僕が後ろに振り返ると白いマント姿のカッコいいというより可愛い美少年が僕の後ろに立っていた。こんな普通以上ココ以下の可愛い美少年の知り合いなんていたっけ?
「あの…どちら様ですか?」
「すみません。君、1人ですか?」
「はい、1人です」
「そうですか。あの…良かったら僕とパーティを組んでもらえませんか?」
そう、これが僕とシロさんの出会いだった。
次回予告
白いマントに身を包んだ美少年シロさんとパーティを組むことになった僕は早速、ドラゴン討伐に!
シロさんもあまり自信がないらしいけど2人なら勝てるはず…勝てると思う。




