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#63今治してあげるからね

「ココ、誰かいたか?」

 後ろから恐る恐るリックンが様子を伺ってくる。

「リックン、小さな狼が怪我してる」

「ココが殺ったか?」

「殺ってないよ。とりあえず僕の治療魔術で治せるかやってみるよ」

 僕は一応、治療魔術や回復魔術などのスキルも持っている。だからパーティメンバーを一応、回復することができる。まだ一度もしたことはないけど…

「おお…」

「リックン、周囲に誰かいるか確認をお願いしてもいい?」

「心得た!」

 リックンは満面の笑みを浮かべて、シャドウウォークを使って陰の中に沈んで行く。

 た、楽しそうだなぁ…

 忍者って偵察とか暗殺とかが昔お仕事だったらしく、本業でもある隠密行動をできることがとても嬉しいらしい。学校でもよく「ココ…殺って欲しいやついない?」ってよく言ってたな。

 とりあえず僕も治してあげないと…

 僕はポーチから治療魔術用の触媒と白い包帯と白い布を取り出す。

 治療魔術には、必ず触媒が必要になる。治療する部位によって触媒が大きく変化するため治療魔術師は回復魔術師よりもあまり好評ではないらしい。

 治療魔術師と回復魔術師の違いは触媒の有無の他にも大きく異なる。

 治療魔術師は外観の傷、だから骨折とか手を剣で斬られて血が出た時とかそういった外見で怪我をした時に使われる。一方、回復魔術師はHPヒットポイントを回復するスキル。だから回復魔術の初級魔術となると戦闘中の応急処置にしかならない。

 だから完璧に回復させる場合、まず止血をして治療魔術で怪我を全て治療して回復しなければならない。

「クゥーン」

「今治してあげるからね」

「クゥー…」

 小さな狼はまるで死を覚悟しているようだ。全く抵抗をしようとしなかった。

「まずは水魔術で水を作って傷口を綺麗にしないと」

 僕はまず水魔術で濡らした布で傷口を拭う。水がしみるのか小さな足をバタつかせる。

「キャンキャン!」

 見ていてとても痛そう。痛いのは小さな狼からとても伝わってくるが、これをしないと治療魔術で傷口を塞いだ時に砂とかが体内に残ってしまう。

「少しだけ我慢して」

「キャン…」

 しばらく傷口を拭っていると少しずつおとなしくなっていった。さっきは僕のやり方がダメだったのかなぁ…

「よしよし…良い子良い子」

 な、なんかこう接してると狼よりも子犬に思えてくる。

 とりあえず傷口を拭き終わった僕は治療魔術用の結晶を片手に治療魔術で治療を始めた。

 治療と言っても傷口を詠唱しながら片手で傷口に向けて魔力を放つだけである。しかし何故だろう。慣れていないだけなのか、上手く傷口が塞がらない。

 魔力量と触媒結晶は合っているはず。なのに成功しないというのは何が違うのだろうか…


「僕は暗殺者アサシン。怪しい奴はいないかなぁ…」

 僕は鼻歌を歌いながら陰から影へ飛び移る。流石、シャドーウォークというべきだろうか。陰の中に入っていると魔獣に全く気づかれない。それがまた楽しい。

 まぁ、ちゃんと仕事はやるよ。ココから半径500メートルぐらいの偵察。

 危険な魔獣とかは時々始末してるから問題ないとして問題は周囲にプレイヤーがいるのか?否か?ということである。さっきの小さな狼の傷口、パッと見だけどアレは何か罠的な何かに掛かって怪我をしたんだと思う。あ、これ僕だけの考えね。なんかたまに置いてるアレだよ、アレ。あの鉄で出来てワニの歯みたいにギザギザしてて踏むと勢いよくバシン!って音を立てて閉まるアレだよ。

 え…っとなんて言うんだっけ?うーん…まぁ、話が進まなくなるから危険物Aっていうことで話を進める。

 その危険物Aがプレイヤーの手によって仕掛けられてて小さな狼が引っかかった感じかな。なんとか抜け出したけど追手に追われててあそこの草むらに隠れてた的な展開?

 美味しいじゃないですか!正義の暗殺者が小さな狼と小さくて可愛い女の子ココくんを救う。

 早速、暗殺者っぽいことが出来るぞ〜

 偵察というかプレイヤーを探すのに優れているスキルって何かあったかな…

 僕は移動しながらスキルの項目を確認する。

 僕のスキル構成は大きく分けて2つに分かれている。

 1つは、暗殺者に最も大事な部分である隠密系スキルや隠蔽スキルなどである。

 例えば、聞き耳スキルとか夜目スキル、透明化スキルなどがそれらに相当する。

 これらのスキルは敵から隠れたり盗み聞きをする時に使うため周りの探索には優れていない。

 もう1つは、戦闘系スキル。特に近距離や中距離先頭向け。

 どんなゲームにおいても戦闘が出来なければ話にはならない。

 戦闘系スキルでも例を挙げると、短剣スキルとか投擲スキル、体術スキルなど。

 戦闘スタイルとしては陰の中に隠れてて敵が来たら背後から「こんにちは〜」して短剣技で殺害。しかしプレイヤーとなると一筋縄ではいかない場合がある。プレイヤーの場合じゃなくても索敵スキルや超感覚ハイパーセンスなどを持っている的モブにも要注意なのである。完璧に近い僕の隠蔽を躊躇なく見破ってくる。そのため隠蔽時は一瞬の油断も命取りだ。

 例え、いや、どんなことが起きようと隠蔽に集中する!それが…

暗殺者アサシンの極意」

 あと無口なところも重要だと思う。だって暗殺者って無言に華麗に人を殺害するからいいのではないか!

 皆もそう思わないか?

 ガシャン!向こうから何かが閉じる音がした。

 これは暗殺のできる予感。

 我、ただいま推参するのであります!

次回予告

僕は正義の暗殺者となるため、恐らくいると思われる罠師を暗殺!するのである。

しかしそこに這い寄る黒い影。

もしかして僕と同じ暗殺者アサシンで、誰かが僕に暗殺依頼を出したか!

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