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#58それぞれの接客

「お帰りなさいませ、ご主人様!お席に案内しますね」

「おかえりなさいまえ、ご主人様。お席にご案内しますね」

「おかえりなさいませ、ご主人様!今日は何を食べますか?私とか手作り料理とかがありますよ!」

 それぞれ違うお帰りなさいませ、が店内に響く。

 メイドカフェは男の人が沢山来るなぁ…もし同じ高校の同じクラスの男の子がいたらどうしよう。

 そんな不安を抱えながらの接客は胃が痛くてしょうがない。唯一、誰からも見えない調理室に入ったときだけ心が癒される気がする。

 それにしても2人は生き生きしているなぁ。なんでそんなに生き生きとしているんだよ。

 キュウちゃんの場合。

 お客様に呼ばれると小走りで駆け寄って…

「ご主人様、今日は何を食べますか?開店祝いでたくさん作ったのでたくさん食べてくださいね」

 というのであった。キュウちゃんの胸は上下に揺れる。男の人から見たらとてもご褒美なのだろう。

「は、はい!」

 とご満悦のご様子でご注文をされるご主人様。

「じゃあお絵かきパンケーキとコーヒーをお願いします。あと…………」

 ご主人様はどんどん注文していく。おいおい、1人でそんなに食べられるの?

「…………でお願いします」

「はい、わかりました」

 そしてご注文をされたキュウちゃんは笑顔で調理室に向かって行く。

 まぁ、男の人からしたらそれはそれは嬉しいだろう。なにせ金髪の巨乳なんて滅多にいない。さらにはメイド服を着ているなんていう状況なんて人間が猫に転成するくらいありえないから。

 そしてシロさんの場合。

「ご主人様。今日は何を食べますか?」

「じゃあこのメイドさんからのお絵かきオムライスお願いします」

 とご主人様が指を指すと、シロさんも顔を近づけて…

「はい、お絵かきオムライスですね!」

 と笑顔で対応する。男の人の顔が赤く染まっていた。

 急にメイドさんから顔を近づけられたからではなく、おそらく胸に手が当たったからだろう。

 それは赤くなるだろう。男の子の手が女の子の胸に当たるなんて滅多にないから。それこそ青春ラブコメぐらいでしかありえないことだし。

「他にお飲み物とかはいかがですか?」

「シロさんのお、オススメはありますか?」

「私のですか?」

「はい」

「う〜ん…私はメロンソーダに抹茶アイスのフロートが好きかな」

「そ、そうですか。じゃあそれをお願いします」

「わかりました!」

 そして笑顔で調理室にオーダー表を店長に渡す。

 この男の子の心をまるでくすぐるような、この接客…恐ろしい。

 そして私の場合。

「ご主人様、ご注文は決まりましたか?」

「じゃあこのいちごパンケーキとコーヒーをお願いします」

「わかりました。他にご注文はありますか?」

「ありません」

「わかりました」

 とこんなよくあるカフェレストランのウェイトレス状態となっている。

 私には誘惑スキルが存在しない!らしい。悲しいことに…

 私たちのお仕事はご主人様を楽しませること。そのため商品によってすることがある。

 例えばシロちゃんのこの対応。

「お待たせしました、ご主人様。ご注文のお絵かきオムライスとメロンソーダのフロートです。それではこれから絵を描かせていただきます。何か描いて欲しい絵はありますか?」

「じゃあクマの絵を書いてください」

「わかりました!」

 シロさんはケチャップでクマの絵を書いていく。そして出来上がったのは真っ赤なクマさんの顔が…

 なんかホラーを感じる。真っ赤なクマさんの顔。何をしてきたのか?まるで人を食い殺したあとのように。

 ほら、ご主人様も顔を青ざめていない!なぜだ…なぜ青ざめない。なに、メイドさんが書けば万事解決なの?

「ご主人様、どうかしましたか?」

「クマさん上手いですね」

「そうですか?私クマさん好きなんですよ」

「そうなんですか」

「はい!クマさん可愛いじゃないですか」

「うん、可愛いよね」

「はい、それではご主人様。ごゆっくりお召し上がりください。何かあったらいつでも声をかけてください」

「は、はい…」

 クマさんは血まみれだけど、なんとか上手くいったらしい。

 シロさんは笑顔で調理室にケチャップを持って撤収する。

 一方、キュウちゃんの対応。

「ご主人様、お絵かきパンケーキをお持ちしました。クリームで絵を描かせていただきます。なんの絵がよろしいですか?」

「じゃあこの音楽少女ミサちゃんをよろしくお願いします」

「それはどのような絵ですか?」

「こういうのです」

 ご主人様はスマートフォンを操作すると1つの画像を表示する。それは無理でしょ。どう考えてもプロレベルじゃないとそれかけないでしょ。

 そう、私は思っていた。

 しかしキュウちゃんはなにも臆することなく、綺麗に音楽少女ミサちゃんを生クリームで書いたのであった。シロさんの赤いクマさんよりもかなりレベルの高いアニメキャラの絵を描いただと!

「あ、あやつ…何者?」

 私はついつい口から思ったことが飛び出る。無意識のうちに…

「どうかしましたか、ペルさん」

「いえ、どうもしてませんご主人様」

「ペルさんは何か得意なことあるんですか?」

「それはどういう意味ですか、ご主人様」

「その…キュウちゃんみたいに絵を描いたりするのって得意ですか?」

 私?私は微妙じゃ。一時期テレビで見たカフェアートって言うんだっけ?そう、あのコーヒーに絵を描くやつ。あれに一時期ハマってたんだけど、今はやってないなぁ…

「いえ、その…あまり得意じゃないです。けどカフェアートは少しだけ出来ます」

「そうなんですか」

「はい」

「それってしてもらうこと可能ですか?」

 きた!きたぞ。この微妙な立ち位置の私のアピールポイント!ここでカフェアートが多少なりともできるメイドさんって知ってもらえればた、多少の人気は出るはず!

「はい、スプーンをお借りしてもよろしいでしょうか」

「はい…お願いします」

 そう、ここで私は才能を再覚醒させることになったのだった。

次回予告

私はエクストラスキルカフェアートを再覚醒させることに成功。

そして私の人気は急…

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