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百度目は相打ちで  作者: 豆狸


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第四話 百度目の終わり(虫魔物注意!)

「いやあぁぁあっ!」


 突然叫び声が響き渡った。

 もしかして、中庭の園遊会会場にアイツが出たのだろうか。

 殿下との会話なんかで戦闘態勢を解くんじゃなかった!


 中庭の園遊会会場からの叫び声かと思ったが、声が近い。

 声の主は裏庭と中庭をつなぐ横道の入り口にいて、恐怖に顔を歪ませて私とベニアミーノ王太子殿下に駆け寄ってきた。

 ヴェレーノ男爵令嬢ラーニョ様、殿下の真実の愛のお相手だ。殿下によると、彼女だけが心から自分を愛してくれているのだという。十年来の婚約者である私や国王陛下ご夫妻、弟君達に失礼な考えではないかしら。


「ベニアミーノ、ベニアミーノ!」


 半泣きになりながら抱き着かれて、殿下は困惑した表情になる。


「ど、どうしたんだ、ラーニョ。私とアンドレアの仲を誤解したのか? べつに妙なことをしていたわけではない。このブローチの石について話していただけだ」

「いやあぁあっ!」


 ラーニョ様は殿下の手からブローチを叩き落そうとしたが、男性である殿下のほうが力が強いためかそれは叶わなかった。


「ダメよ、ベニアミーノ! そのブローチを捨てて! そのブローチを持っていたらアイツが来る!」

「なにを言っているんだ、ラーニョ。アイツとはだれのことだ?」


 殿下はブローチを持った手を上に上げ、ラーニョ様から離した。赤い石が秋の陽光を反射する。

 そういえば、殿下は二十七回目のときもアイツに殺された。

 ブローチについて問われて、ブローチを渡した直後に倒れ伏したのだ。私は、殿下殺害の容疑をかけられて尋問されている最中に背後から来たアイツにやられた。


「ベニアミーノ王太子殿下っ!」


 私は地面を蹴り、彼に向かって腕を伸ばした。

 いつの間にかアイツが来ていた。ブローチの赤い石に抱き着くようにして姿を現したのは、これまで九十九回私を殺してきた死神。八本の足を持つ毛むくじゃらの蜘蛛!

 三十回を超えるまでは見るだけで泣きたくなるほど怖かった。今も怖い。だけど今の怖さは昔とは違う。見かけではなく、殺された過去を背負っているからコイツが怖いのだ。


 ブローチごと殿下の指ごと蜘蛛をつかみ、潰す。


 どろりと黄色い体液が流れ出た。

 私は思いっきり殿下を蹴り飛ばして、蜘蛛の死骸と液体から引き離す。

 六十六回目に偶然手がぶつかって殺してしまったことがあるのだけれど、あのときは死んだ蜘蛛の毒牙が刺さって死んでしまった。この体液も触れただけで相手を殺す毒かもしれない。


「……あら?」


 体液だけでは死なないようだ。

 ブローチに抱き着いているところを外側からつかんだせいか、毒牙にも刺されずに済んでいる。


「……もしかして、勝ったのでしょうか? 今回は相打ちでいいと思っていたのに!」

「ベニアミーノ、ベニアミーノ!」


 ラーニョ様は私に蹴り倒されたベニアミーノ王太子殿下に駆け寄って、彼の名前を叫んでいる。

 殿下は意識を失っているようだ。なかなか体を起こさない。

 ……せっかくコイツを倒せたのに王太子殺害で処刑されるようなことになったら嫌だわ、と私は思った。

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