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第七話「開門」

第七話「開門」


 ドクン。


 今までで一番大きく、

 アレンの胸が脈打った。


 熱い。


 身体の奥が燃えるように熱い。


 だが。


「関係ねぇ」


 黒装束は冷静だった。


 剣が振り上がる。


 アレンには止める術がない。


 魔力値2。


 戦闘能力低。


 それだけの男だ。


 それでも。


「どけ」


 身体が動いた。


 反射じゃない。


 意思だ。


 リリアの前に立つ。


 剣が来る。


 避けきれない。


 わかってる。


 でも。


 退く気にはなれなかった。


 その瞬間。


 アレンは無意識に、

 右手を前へ突き出していた。


 ドクンッ!!


「っ……!!」


 身体の奥で、

 何かが弾けた。


 熱が。


 腕を伝って。


 指先から。


 爆発した。


 轟音。


 黒装束が吹き飛ぶ。


 石畳が砕ける。


 風が巻き起こり、

 ミリナの髪が舞った。


 シェリルはもう一人を一瞬で制圧し、

 真っ直ぐアレンを見た。


 無言。


 その目だけが、

 鋭く細まっていた。


「お、おい」


 アレンは自分の右手を見つめる。


 熱い。


 でも痛くない。


 何かが出た。


 確かに出た。


 でも何が出たのか、

 まったくわからない。


「俺、今何した?」


 シェリルは答えなかった。


 代わりに、

 アレンの右手をじっと見つめる。


 それから視線を上げ、

 リリアを一瞥した。


 リリアは呆然と、

 アレンを見上げていた。


 頬が赤い。


 目が潤んでいる。


「……助けてくれた」


 小さな声。


 ドクン。


「うおっ!?」


 アレンが胸を押さえる。


 またあの感覚。


 シェリルの目が、

 わずかに揺れた。


「シェリル、これ何なんだ」


 シェリルは少し間を置いた。


「わからない」


「は?」


「まだ」


 短く言い切る。


 だが。


 その目は嘘をついていなかった。


 本当にまだわからない。


 ただ。


 何かが起きていることだけは、

 確かだった。


「とりあえず」


 セリナが頭を掻きながら口を開く。


「ここ立ってていい場所じゃねぇだろ」


 砕けた石畳。


 吹き飛んだ木箱。


 遠巻きに見ている通行人たち。


「……そうだな」


 アレンは右手を見たまま呟いた。


 まだ熱い。


 じんじんと、

 何かが残っている感じがする。


 ミリナが恐る恐る近づいてきた。


「アレンさん……本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫……だと思う」


「思う、って」


「自分でも何が起きたかわかってない」


 ミリナが困り顔になる。


 リリアはまだ、

 黙ってアレンを見ていた。


 その視線が、

 妙にくすぐったい。


 ドクン。


「だからなんなんだよ……!」


 アレンは胸を押さえながら歩き出した。


 後ろでシェリルが、

 誰にも聞こえない声で呟く。


「……絶対に調べる」


 その目は、

 すでに次の手を考えていた。

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