第六話「追手」
第六話「追手」
王都西通り。
石畳の上を、
アレンたちは妙な空気のまま歩いていた。
「……で、なんで普通についてきてるんだ?」
アレンが後ろを振り返る。
そこにはリリア。
さらに少し距離を空けて、
シェリル。
「観察対象だから」
「人を虫みたいに言うな」
シェリルは軽く無視した。
視線はアレンから離れない。
正確には、
アレンの周囲で起きている異常反応を見ていた。
あの脈動。
あの魔力の揺れ。
普通ではありえない。
だがまだ、
“何が起きているか”までは断定できなかった。
「……あの」
その時。
リリアが不安そうに立ち止まる。
「どうした?」
「誰か……見られてる気が」
瞬間。
ヒュンッ!!
「っ!」
シェリルが細剣を抜く。
金属音。
飛来した短剣が弾かれ、
石畳へ突き刺さった。
周囲がざわつく。
屋根の上。
黒装束の男が二人。
「対象確認」
「確保する」
感情のない声。
ミリナが青ざめる。
「な、何あれ……!?」
セリナも顔をしかめた。
「おいおい、面倒なの来たな……」
男たちは一気に飛び降りる。
その動きだけでわかった。
強い。
素人じゃない。
「下がってろ」
シェリルが前へ出る。
細剣を構える姿に迷いはない。
学院生とは思えない空気だった。
「学院って剣もやるのか」
「魔術師が近接戦できないと死ぬ世界なの」
次の瞬間。
黒装束が踏み込んだ。
速い。
シェリルの細剣が閃く。
火花。
連撃。
石畳が砕ける。
「うおっ……」
アレンは思わず目を見開いた。
強い。
今まで見た誰よりも、
シェリルは実戦慣れしていた。
だが。
もう一人の男が、
戦闘を無視してリリアへ向かう。
「っ!」
リリアが凍りつく。
アレンは反射的に飛び出した。
「待て!」
剣が振り下ろされる。
避けきれない。
その瞬間。
「アレンさん!!」
リリアの叫び。
ドクン。
「っ……!?」
胸が熱くなる。
身体の奥で、
何かが脈打った。
だが。
それだけだった。
「くっ……!」
アレンは無理やり身体を捻る。
剣先が肩を掠めた。
血が飛ぶ。
「アレン!」
ミリナが悲鳴を上げる。
セリナも顔色を変えた。
「おい!」
アレンはリリアを庇うように立つ。
熱い。
まただ。
だが力には変わらない。
身体が妙に軽い気もする。
けれど、
戦況を覆すほどじゃない。
黒装束は冷静だった。
「戦闘能力低」
「障害にはならない」
「……言ってくれる」
アレンは歯を食いしばる。
その横で。
シェリルだけが、
鋭い目でアレンを見ていた。
(今、反応した……)
リリアが叫んだ瞬間。
確かに魔力が脈打った。
だが不完全。
増幅しきっていない。
(まだ“開いてない”……?)
その時。
黒装束の男が、
再びリリアへ踏み込む。
シェリルはもう一人を抑えていて動けない。
アレンが前へ出る。
勝てない。
それでも。
リリアが震える声で呟いた。
「……いや」
その瞳は、
真っ直ぐアレンを見ていた。
そして。
ドクン。
今までで一番大きく、
アレンの胸が脈打った。




