第三話「追跡対象」
第三話「追跡対象」
「……ありえない」
シェリル・フォン・アルディアは、
建物の影から静かに目を細めた。
視線の先にいるのは、
金髪の少女。
本来、
追っていたのは彼女だった。
王立魔術学院の図書塔。
そこから重要な魔導書が持ち出された。
犯人は不明。
だが直前、
図書塔付近で目撃されていたのが、
あの白ローブの少女だった。
だから尾行していた。
ようやく接触しようとした瞬間。
馬車が暴走した。
そして、
あの男が飛び込んできた。
「なんなのよ、あいつ……」
シェリルは小さく呟く。
アレン。
見たところ、
ただの冒険者。
いや、
装備を見る限り元冒険者か。
どこにでもいそうな男。
なのに。
少女を助けた直後から、
妙な反応が起きている。
アレンの周囲だけ、
魔力の流れが不自然に乱れていた。
しかも。
脈打つように、
断続的に。
一方その頃。
「アレンさん、本当に平気ですか?」
ミリナが心配そうに顔を覗き込む。
「……なんか変なんだよな」
アレンは胸元を押さえた。
熱い。
風邪とは違う。
身体の奥が妙にざわついている。
「顔赤いぞお前」
セリナがニヤつく。
「恋じゃね?」
「違うっての」
すると。
「あ、あの……」
金髪少女が、
遠慮がちに口を開いた。
「助けてくださって、本当にありがとうございました」
「いや、気にすんな」
アレンが笑う。
少女の頬がまた赤くなる。
その瞬間。
ドクン。
「うおっ!?」
アレンが思わず胸を押さえた。
まただ。
空気が微かに震える。
ミリナとセリナも顔を見合わせた。
「……今の何?」
「さぁな」
シェリルはその光景を見ながら考える。
タイミングが出来すぎている。
だが、
因果関係がわからない。
少女が喋った瞬間に反応した。
名前か?
接触か?
視線か?
それとも別の条件か。
「……確認が必要ね」
シェリルは静かに建物の影から出た。
少なくとも、
放置していい現象ではなかった。




