第二話「きっかけ」
第二話「きっかけ」
――嫌な予感がした。
直後。
ドクン。
身体の奥で、
何かが脈打った。
「……っ!?」
胸の中心が熱い。
心臓の音が、
やけに大きく聞こえる。
同時に、
空気が震えた気がした。
「な、なんだ今の……」
アレンは困惑したまま、
腕の中の少女を見る。
金髪の少女は、
呆然とアレンを見上げていた。
「大丈夫?」
「あ……は、はい」
顔が赤い。
それもかなり。
少女は慌てて離れようとするが、
足がもつれてよろけた。
「危ない」
反射的に支える。
その瞬間。
ドクンッ。
「っ!?」
まただ。
今度はさっきより強い。
身体の奥が熱くなる。
意味がわからない。
「アレンさん!!」
ミリナが駆け寄ってきた。
「怪我してませんか!?」
「あー、大丈夫……たぶん」
「もう無茶しすぎです!」
怒っているのに、
どこか安心した顔。
すると金髪の少女が、
小さく目を瞬かせた。
「……アレンさん?」
「あ、俺の名前」
「命を助けてくださって……ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる。
その仕草が妙に可愛らしくて、
周囲の男たちがざわついた。
アレンは気まずそうに頭を掻く。
「いや、間に合ってよかったよ」
すると少女は、
さらに顔を赤くした。
そして。
ドクン。
「だからなんなんだよこれ……!」
アレンは思わず胸を押さえる。
ミリナが不安そうに覗き込む。
「アレンさん、本当に大丈夫ですか?」
「なんか変なんだよ……」
熱い。
身体が妙に熱を持っている。
すると横から、
セリナがニヤニヤしながら口を開いた。
「お前、まさか恋でもしたんじゃねぇの?」
「違うわ!」
「でも顔赤いぞ?」
「うるせぇ!」
周囲から笑いが起きる。
その時だった。
通りの向こう。
二階建ての建物の影から、
一人の少女が静かにこちらを見ていた。
赤髪を後ろで束ねた少女。
鋭い目。
上質な制服。
彼女は無言のまま、
アレンを観察している。
そして。
アレンの胸が脈打つたび、
周囲の魔力が微かに揺れていることに気づいていた。
「……ありえない」




