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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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88/112

お父様と服飾令嬢

私は混乱していた。


仕事中に執務室に入って来た息子が曇りなき眼で謝罪をし、どんな処分も受けると言ってきたのだ。


原因は分かっている。


昨日の貌なしとの会話を立ち聞きした事だ。



確かに褒められた事ではない。


しかし、息子を処罰する程かと言われれば、

私から言わせれば別に、という程度の話だ。



どこまで聞かれたかは分からないが、仮に一から全てを聞かれたとしても他言無用とだけ言い含めればいいだけの話。


まぁ、これで実はエドワードが教会の信者で、こっそり公爵家の情報を流していれば涙を呑んで処罰をするが、別にそうでもない。


え、私はどうすれば良いんだろう……?



チラリとエドワードを見る。


覚悟をした者の眼だ。


その眼からは全てを受け入れ、運命に殉ずる覚悟を感じる。


まるで死兵だ。


何かめっちゃ温度差を感じる……。



「あー、状況がまだ少し呑み込めていないんだが、結局昨日の話はどこまで聞いたんだ?」


「はい。教会が分裂している事。そしてき魔族達のテロ組織が絡んでいる事。そして、話の流れからD隊(デルタ)が内偵を進めている事です。」


うん。もうそれほぼ最初(イントロ)から全部聞いちゃってるね。


これは流石に叱った方がいいのか?

流石にここまでガッツリ立ち聞きするのは良くないよな……。



「何故あんな時間に執務室に来たんだ?」



顔に力を入れて問い質す。


そもそもエドワードがあんな遅い時間に執務室に来ていたのが謎だ。


万一、立ち聞きする事が目的だったら―――。



「えっと、その……。今日の会議で出た話で分からなかった事を教えて頂きたかったのと、

お兄様がお帰りされていた様だったので……、まだお父様と話されている様だったら僕も一緒に話せたらなと……。」



んんっ。無罪!



正直に思った事を言うのが恥ずかしいのだろう。少しもじもじとしながらエドワードが思いを吐露する。


そうか、お兄ちゃんと話したかったのか……。


レオナルドは明日も学校だからと、夕飯前に帰ってしまったので無駄足だったのだが……。


今度また機会を作ってやらねばな。


秋だし家族みんなで山とか川に行ってBBQとかどうだろうか?


いや、アウトドアだとジュリアが嫌がるかな。

女の子だし。レオナルドとか普通に修行とかしそうな気がするし……。


それにアラン君やユーリア君とかシャル君とか来たがるだろうか?


ううむ……。ちょっと微妙だな。

遠出だと護衛だなんだと人が動くしなぁ……。


出来れば家族だけでこじんまりとやりたい。


いいなぁ、家族でBBQ。

思えば私も立場があるし、家族だけのイベントとかした事がないな……。


んー、庭先ならワンチャンありか?



「お父様……?」


黙り込んだ私を見て不安そうにエドワードが声を掛けてくる。


おおっと、いかんいかん。



「少し考え事をな……。状況は理解した。

それで、話とはなんだったかな?エドワード。」


「え、ええっと……。」


改めてエドワードと目線を合わせ尋ねると、チラチラと部屋の扉の方に目が泳ぐ。


……ふむ。


どうしてウチの男共はこう分かりやすいのか?

答えは私の息子だからだ。



「はぁ……。シャル君。用があるなら入って来ても構わんぞ?」


扉の方に目を向け、溜息をついて声をかける。


ゆっくりと扉が開き、隙間からシャル君が顔を覗かせる。


「あ、あはは。バレてた?」


「エドワードの目線と気配でな。流石に、そう何度も裏をかかれたりはせんよ。」


息を潜めていたとはいえ、エドワードの気配を

察知出来なかったのは事実だが、警戒していればこの位は私にも出来る。



「あーあ。話は聞かせてもらった!ってやりたかったのに……。」


あー、異世界転生すると前世の漫画とかの名台詞を言いたくなる気持ちは分かる。


私も昔『だが断る』とか言ったことあるし。



シャル君がエドワードの横に腰掛けるのを待ってから話を切り出す。



「――さて。君がここにいる理由は何となく察しているつもりだ。エドワードが世話になったようだな?」


エドワードが私に謝りに来たのも、多分シャル君が状況を察して背中を押してくれたおかげだろう。


この半年程見てきたが、彼女にはそんな気遣いが出来る信頼感がある。



「そう言って頂けると光栄ですが、全てはエドワード様のお考えです。私は老婆心にかられて、少し背中を押しただけですわ。」


エドワードがいるから余所行きの口調で話すシャル君。


しかし、口では殊勝な事を言いつつも、その顔は満更でもないドヤ顔だ。



「――しかし、だ。これだけは言っておく。

これからエドワードと君が何を提案するつもりかは知らんが、もしそれがエドワードや私の子ども達を利用するような内容だった場合、それは私の逆鱗に触れる行為だ。」


私の圧を感じたのだろう。

ピリっとした顔をするシャル君とエドワード。


シャル君の事は信頼してはいるが、調子に乗りやすい性格なのも事実。


釘を刺しておく必要はあるだろう。



「相変わらず顔に似合わず親馬鹿ですこと。

ご安心ください。私が利用したいのは公爵様、貴方です。」


「――シャル!? 」


呆れ半分でいつもの調子でぶっちゃけるシャル君とそれを諌めるエドワード。


「シャル! お父様になんて口の利き方をするんだ! 謝罪しろっ!」


それが普通の反応だよね。私は公爵だし。


でも、それよりもパパはシャル君を愛称呼びしてる方が気になるんだが……?



「あー、エドワード。大丈夫だ。シャル君がこんな言い方を敢えてしたのは本音で話しているという私へのアピールからだ。」


せいぜい半年くらいの付き合いだが、その程度がわかる程度には付き合いは深い。


それに中身はほぼ同い年だし、同じ転生者。

誠に遺憾ながら話が通じるタイプなんだよな。



「さっすが公爵様♪ ご理解頂けて光栄だわ!

でね、ぶっちゃけ私って鬱展開も嫌いだけど小難しい謎解きとか政治パートとかも嫌いなのよね。日常的に仕事で根回しやら稟議やらやっててウンザリしてるのに、何で娯楽でもそんな面倒なシーン見なきゃいけないの?って思うのよ! だから、今回みたいなグダグダした展開はさっさとスキップしたい訳。」


「……先に本題を聞かせてくれるか?」


ちょっと冷たく話を戻す。

別に怒っている訳ではないが、この女を放っておくと無限に話が脱線するからな。


言うなれば、『乙女ゲーの主人公に転生したので推しと一緒に好き放題人生楽しんでやる』の

主人公だ。



「公爵様パワーで教皇を呼び出してくれないかしら? さっさとこんな面倒な話終わらせましょうよ。」



……何を言っているんだ? この女。


絶賛ややこしい感じになっている教会のトップを呼び出すなんて、そんなものは火中の栗を拾うようなもんだ。



「あのなぁシャル君。君も知っての通り、

教会は派閥争いで分裂していて――。」


「That's their problem ! それは相手の問題であって私達には関係ないわ。ウチが忖度するんじゃなくて、相手に忖度をさせましょう?」


そう言いながらシャル君はデスクの上に資料の束を置く。


これは……、冠婚葬祭業界への参入提案?

教会と連携した新規産業創計画か!



「斜陽だなんだと言われても、冠婚葬祭市場は日本でもざっくり4兆円規模の市場よ。

戦後も15年経って景気も人口も上向き気味の

王国ではこれから絶対伸びる業界! そこに公爵家アパレル部門として殴り込みをかける!

――そんな商談を聞かされた拝金主義の教皇様はどう思うかしら?」


なるほどな。


つまり、シャル君はこの事業計画を使って銭ゲバ教皇を呼び出そうと言うわけか。


確かに原作ゲームでも教皇は俗物。

必ず興味を持つだろう。


元々新品の服を買う文化に乏しいこの世界、アパレル部門用に何か販促イベントをする必要があったのだが、それの話を利用しようと言う訳だ。



「……当然話に噛みたいと思うだろうな。

新規ドレスの作成や式場選び、当日の式進行を含めた冠婚葬祭のトータルプロデュース……。

貴族相手の商売だとかなりの巨額が動く。


当然、教会からすると貴重な新規信者の勧誘の機会にもなるだろう。


そしてその為には教会に入り込んだ魔族や神聖属性を操れる魔導紡織技術。そして聖女に関する諸々――。これらの諸問題の解決を望む我々に教会は忖度せざるを得ない。


飴を提示して諸問題は全てぶん投げる。まるで外資系企業の考え方だな……。

そう言えば君は外資系出身だったか。」


「ま、昔取った杵柄ってやつね! 」


「しかし、問題がある。教皇自身が魔族に籠絡されていた場合は……。あぁ、そうか――。

だから私を利用したいのか。」



シャル君の案は面白い。


しかし、問題はどこまで魔族のテロリスト(オディマ)が入り込んでいるのかが分からない点だ。


連中が入り込んでいるのが教会の一部だった場合、教皇からのトップダウンでテロリスト達を炙り出せるだろう。


反面、教会が完全にテロリスト側だった場合はとても危険な状況になる。



「そう。公爵様でも叔父さんでもいいの。

教皇と話が出来るだけの地位を持ち、私という足手まといがいても問題なく戦える人材を用意して欲しいの。」


真剣な目で私に依頼をする仕事モードのシャル君。


普段おちゃらけた言動の多い彼女だが、前世ではバリキャリ気味の女傑だったぽい。


普段からこれくらい真面目なら……いや、それはそれで面倒くさそうだ。



「はぁ。分かったよ。教会の内偵は進めつつ、君の案で行こう。エドワード、望んだつもりはないだろうが、ここまで話を聞いたんだ。

お前にも手伝ってもらうぞ。」


「は、はい!」



嬉しそうに頷くエドワードと、そんなエドワードを見て微笑むシャル君。


教会の話も気になるが、この二人の関係も気になるな……。


はてさて。鬼が出るのか蛇が出るのか……。

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