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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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思春期長男の一日 出歯亀編

王立学園は基本的に現代日本の大学に近い。


1年生の間はいわゆる普通の授業がメインなのだが、2年生や3年生ともなるとより専門的な学問を修めるべく特定の教師に弟子入りする生徒が多くなる。


そうなると日本の大学研究室のように論文を書くために学校に泊まり込んだり、徹夜で実験を行ったりする場面も増えてくる。


その結果、学園には朝も夜も関係なく人が出入りし、様々な研究や授業、訓練などが行われる事となる。



必然的に学園唯一の食堂にも朝から晩まで

誰かが食事をしている事になる。


つまり、学園の食堂は常に混んでいた。




「やっぱり食堂は混んでますねぇ……」


2人分の飲み物を持ったソフィアがキョロキョロと辺りを見渡す。


いくつものテーブルセットが並べられた大広間に何百人もの生徒や教師がごった返していた。



「ですねぇ。……それに文化祭が近いからか、

泊まり込みをしててさっき起きたみたいな生徒も多いですね。」


昼食をのせたトレイを2つ持ったアランが

行き交う人を器用に避けながら応える。


「アラン様はいつもお昼は食堂で召し上がっていらっしゃるのですか?」


「週に1回か2回くらいですかね?

レオとの朝練が早い時は弁当を用意するのが

間に合わないので……。

ソフィア様はよく来られるのですか?」


騎士として家を興したと言っても、今も孤児院で暮らしているアランはシスターと弟妹達が

用意してくれる弁当を持って来ていた。


しかし、どうしても朝練をするとなると日の出前に家を出る必要があるので、その時だけは

この食堂で食べていた。



「実は私あまり来たことがなくて……。

席の確保をしてから料理を選んだ方が良かったのでしょうか?」


「え、あぁ、多分大丈夫ですよ。

ここは回転も早いんで―――。」


「おい、アラン! お前久しぶりだな!」


食堂の奥から粗野な様子の上級生がアランに声を掛けて来た。


この学園にいるので貴族ではあるのだろうが、その粗野な見た目は決してお近づきになりたいタイプではない。


だらしなく着崩した制服。

ボサボサの黒髪。


やけに鋭い眼光が印象的な2年生だ。



「ああ! お久しぶりです。先輩!」


少し怯えるソフィアをよそに、朗らかに挨拶をするアラン。



「お前最近ちょくちょく学校休んでたらしいな。大丈夫か? いじめられてんのか?」


「皆良くしてくれますよ。休んでたのは公爵家の仕事関係でちょっと。」


「あぁ、なるほど。英雄候補は大変だな。

たまには実戦剣術の授業にも顔を出せよ。

お前がいないと張り合いがねぇんだ。」


「あ、今週は普通に出れると思います。

俺も先輩と戦うの楽しみですよ。」


アランがそう言うと、上級生は好戦的な笑みを浮かべ、この席使えよと席を譲ってくれた。



それを見てソフィアは納得する。



―――ああ、誰もがこの人に憧れているんだ。


身分差なんか意に介さない圧倒的実力。

それを鼻にかけない朗らかな人柄。


まるで御伽噺に出てくる勇者だ。


いえ、事実彼は英雄。

この国で今後も謳われることになるであろう

最も新しき伝説。


白き炎の勇者。


そんな彼に誰も彼もが憧れ、手を伸ばす。


まるで光に集まる虫の様だ。



彼等の気持ちはよく分かる。



何せ、自分も同じなのだから―――。



「―――ィア様、ソフィア様?」



ハッとアランの声に気付くソフィア。


少し考え事に没頭してしまっていた様だ。



「食べないんですか? ここの食事は味にうるさいレオも美味しいと言っていたので、お口に合うと思いますよ。」


にこやかに笑うアラン。


「―――あ、は、はい。

えっと、やはりレオナルド様は味に厳しい方なのですか?」


「あー、まぁそうですね……。

以前に1ヶ月くらいサバイバル訓練でまともな食事がとれなかった時があったんです。

それ以来、美味しい物が食べれる時は美味しい物以外食べたくないとワガママを言うようになって……。」


「まぁ! そんな事が!」



それを皮切りに徐々に会話が進む。

次第にお互いの緊張が解け、時に冗談を織り交ぜ、時に真摯に話をする二人。


楽しい時間は瞬く間に過ぎていった。



ガラーンガラーンと予鈴が鳴る。



「結局、何とかレオの奴はユーリア嬢をデートに誘えはしたんですが……おっと、時間か。」


「クスクス。思った以上にレオナルド様は楽しい方なんですね。でも、それだけ大事に想って貰えるのは同じ女として羨ましいです。

……残念。もうそんな時間なんですね……。」


言葉通り、残念そうな顔をするソフィア。



「また、お話して頂けますか? アラン様。」


「ええ。言葉使いを叱らないなら喜んで。」


「クスクス。私だって田舎貴族の次女です。

教会でも言葉使いは叱られてばかりだわ。

―――ね。アランって呼んじゃ不敬かしら?」


「まさか! むしろソフィア様に敬語で話させる方が不敬だと思っていたんです。」


「あら、その言葉使いは不敬よ? アラン。

ソフィアと呼んでくれなきゃ嫌だわ。」


「ふふ。分かったよ。ソフィア。」



はにかむように笑う二人。


そんな二人を少し離れたテーブルから監視する

怪しい4対の瞳。


アラン達から少し離れたテーブルを確保した

レオナルド達4人である。



「おぉー。思ったよりいい感じじゃない?

ソフィア凄い嬉しそうな顔してる!」


ソフィアが乙女な顔でアランと話す姿を見て

エヴァはご満悦だ。



「そうだな……。」


食後のデザートをもそもそと口に運びながら

テンション低くレオナルドが応える。


別に親友が婦女子と食事をしているのに嫉妬をしているわけではない。


むしろそれは浮いた噂のない親友を気にかけていたレオナルドとしては歓迎すべき事だ。


―――そう。普通ならばだ。




「……レオナルド。もう少し抑えて。戦気が漏れて《《アイツら》》に気付かれる。」


ごく自然に食後のコーヒーを飲みルーシーが

レオナルドを窘める。


「ああ。すまん。」


「でもこの違和感に気付いたのは流石。

公爵家の騎士教育のお陰?」


「あー、そうだな。最近はアルと二人で騎士団の隊長格達に絞られている。殺気や気配を感じる感覚を大事にしろと無茶ばかり言うんだ。」


「―――トニーやヴァーリ辺りが言いそう。

やり過ぎるとあの二人みたいに野生動物になるから気をつけて。」


「!? お、お前は……。」



「……ねぇ。ルーシー、レオナルド?

何の話をしてるの?」


訳知り顔で会話する二人に不思議そうな顔で

訪ねるエヴァ。



「顔は動かさないで目線だけで見てくれ。

―――アル達を監視してる奴らがいる。それも結構な数だ。」



レオナルド達のテーブルを中心に、複数の生徒達が何やら剣呑な様子で二人を監視していた。



「それってアランやソフィアのファンとかじゃなくて? ほら、あの二人って英雄と聖女で

凄く人気があるから……。」


「確かにエヴァの言うような奴らもいる。

でも、不穏な気配を纏った奴等がいる……。


例えばあの窓際の席に座った2年生、入口付近に立ってアラン達を見てる1年生の3人組。

後、今入って来た3年生も気配が怪しい。」



「え、えぇ……。ボクには分からないな……。

普通の生徒に見えるけど……。」


「付け加えるなら私の三席後ろにいる教師と

調理場からこちらを覗いている料理人も。

……レオナルド。ちゃんと学生以外も見て。

先入観は良くない。」


レオナルドの言う事を今ひとつ理解出来ない

エヴァをよそに、ルーシーが付け加える。


「ふん。……貴様、何故ここにいる?」


「ふふん。良い女には謎がある。」


「……うちのお抱えデザイナーも似た様な事を言って無茶苦茶をするんだが、なるほど。

アレと同じ破天荒なタイプだったな……。」


忌々しい顔をするレオナルドにドヤ顔をかますルーシー。



「……わかる? ウラギリス。」


「ウラギリス様と呼べ。―――全く分からん。

……しかし、お二人の指摘した者たちの共通点はわかるぞ。」


思ってもないウラギリスの発言に三人が驚いた顔をしてウラギリスを見る。



「全員が全員、熱心な『ユグドラシル教』の

教会信者の家系だ。」



「教会の関係者―――!? 全員が?」


ルーシーが珍しく目を剥いて驚く。



「え、ええ。あそこの2年生は教会の枢機卿も

排出したヨナス家。1年生の3人組はペガー家、

エヘアリー家、ハント家の出身で、共に教会の熱心な信徒です。あの3年生はかの有名な教会の重鎮デザルグ家。タルレス教諭は神学専攻で、

自身も教会の司祭の免許をお持ちです。

それに料理人のバーダ氏は熱心な信徒で、教会での慈善活動が認められて、最近準男爵に抜擢された方です。」


「やるね。ウラギリス様。」


「凄いな。 ウラギリス様。」


「あんた凄いのね、ウラギリス……。」


「ガラドリエル男爵令嬢! 貴様はウラギリス様と呼べと言ったはずだ! あ、お二人は気軽に

ウラギリスとお呼び下さい。」


偉そうな態度のウラギリスを無視して、レオナルドが話を進める。



「ソフィア嬢は聖女だ。当然、教会側も監視や護衛をつけているだろう。

それ自体はおかしくない。しかし、少し厳重

過ぎるのが気になるな……。」



「同感。あの目線や挙動。連中、明らかに

《《ソフィアを》》警戒している。」



それは漠然とした違和感。


突然アランに声を掛けた聖女ソフィア。

そんなソフィアを監視する教会関係者。


自分が伺い知れぬ何かが起こっている。



レオナルドは午後からの授業をキャンセルする為、単位数を数え出した。

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