表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/112

思春期長男の一日 野次馬編

「あ、あの! アラン・フロントライン様!

い、今少しよろしいでしょうか?」



王立学園。


廊下にズラリと並んだロッカーの前で

アランは声を掛けられた。



学園では特定の教室はなく、大学や外国の学校のように授業に合わせて移動をする形態だ。


教科書やノート、カバンなどはこのロッカーに入れて教室間を移動する。


いつも一緒のレオナルドは今はいない。


レオナルドが選択した魔法歴史学の授業は

アランが苦手な授業だからだ。



アランはマジマジと声を掛けて来た女子生徒を見る。


彼女は同じAクラスの生徒だ。


エヴァとルーシーとよく三人でいる所を

見掛けるので何となく顔は覚えていた。



長いストレートの金髪。

起伏にとんだ豊かなスタイル。

女子にしては高い身長でモデルのような少女。


緊張しているのだろう。

伏し目がちな大きな金の瞳がアランをおっかなびっくりと見ている。



「……えっと、マルドゥーナ嬢ですよね?」


「は、はひ!ソフィア・グレン・フォン・マルドゥーナでふ!」



―――あぁ、そうか。この方が朝エヴァ達が

言っていたソフィアだったのか!


よく考えれば《《顔と肩書き》》は知ってても、名前はちゃんと知らなかったな……。



彼女こそが大地の聖女。


ソフィア・グレン・フォン・マルドゥーナ


当代の聖女として教会が擁立した子爵令嬢だ。



……そんな有名人がオレなんかに何の用事だろうか?


そんな事を思いながら開いたロッカーの扉を

閉めてソフィアと向き合うアラン。



「同じクラスなのに話すのは初めてですね。

アラン・フロントラインと申します。


家名で呼ばれる事に慣れてないから、良ければ

アランと呼んで頂ければ嬉しいです。」



「は、はい! アラン様! 私もソフィアと!」


緊張しているのだろう。

ソフィアは組んだ両手の親指をクルクルと

回している。



そんなソフィアを見てアランは何となく違和感を感じた。



「ちょっと気になったんですけど、ソフィア様はなんでオレの家名を知ってるんです?」


そもそもアランは家名を授かった事も騎士になった事も誰にも言っていなかった。


まぁウラギリスも知っていたくらいだ。

案外、知れ渡ってしまっているのかもしれないが……。



「あ、あう……。あ、えっと、その……。

そう! ゆ、有名ですから! 白炎の虎アラン!

王都では知らぬ者のない勇者様です!」


可哀想なくらい顔を真っ赤にしてあたふたと説明するソフィア。


「そ、そうなんですか……。あー、えっと、

それでソフィア嬢。何かオレにご用事でも?

オレに手伝えることなら手伝いますが?」


先程から照れている様子のソフィアを見て、

逆に何だか気恥ずかしくなったアランが頬をかきながら話題を変える。



「えっと、その、よ、良ければお昼ご一緒しませんか……? ほ、ほら。ここ最近アラン様って公爵家のご用事とかでお休みされていたじゃないですか?


クラス展示の案内係のシフトとか、ちゃんと連絡がいってないと思って……。わ、私、文化祭の実行委員だし……。」



消え入りそうな声でしどろもどろとアランを

誘うソフィア。



「あー、そっか。確かに騎士になったあれこれでバタバタしてたから……。」



確かにアランは公爵家の騎士になって自分の家を興したので、様々な手続きだ何だよく学校を休んでいた。


ソフィアの言う通り、案内係のシフトなど

さっぱり理解していなかった。



「そっか! わざわざありがとうございます!

えっと……、なら食堂にでも行きますか?」


「は、はい! 」


ソフィアはとても嬉しそうに、花がほころぶ様な顔で頷いた。



アランは基本的にとても大雑把な性格だ。


普通なら気付くであろう事でも、細かな些事として見逃してしまう。



何故、文化祭のシフトの話をするのに二人で

食事なのか?


何故、ソフィアは顔を真っ赤にして照れているのか?


何故、食事を了承した時ソフィアが乙女な顔で微笑んだのか?


数々の疑問を生来の大雑把さを発揮し、スルーするアラン。


まさに鈍感系主人公の本領発揮であった。




そしてそんな2人を観察する四対の目があった。



「おぉー。やるねソフィア。白炎の虎1本釣り

成功じゃん!」


「うん。ソフィア頑張った。」


「ふん。我がシタッパーノ家に代々伝わる会食誘引術に比べればまだまだよ……!」


「ふむ。確かに昼時だし、俺達も2人に合流しようか。」



レオナルドとエヴァ、ルーシー、そして何故かルーシーの世話を焼くウラギリスの四人だ。



「待て待て待て! レオナルド!? ちょっとは

空気を読んで! せっかくソフィアが勇気を振り絞ったんだ。2人にしてやって!」



何も考えず2人の後を追おうとするレオナルド。

そんなレオナルドを慌てた様子でエヴァが肩を掴む。



「……勇気? あ、も、もしかしてあれか。

ソフィア嬢はアルの事が好―――!」


「うん。そうだね。次からは言われなくても

気付いてくれるとボクは嬉しいな。」


思ったより空気の読めないレオナルドに呆れた顔をするエヴァ。


「そう。ソフィアは入学してからずっとアランを見ていた。レオナルドは完全に野暮……。

馬に蹴られて死ね。」


辛辣な言葉を投げかけるルーシー。


ウラギリスすらレオナルドのフォローを出来ずに黙り込んだ。



「むぅ。まぁそれは確かにそうだが……。

しかし、だ……。あの子は教会認定の聖女なのだろう?」


よくよく見れば明らかに恋する乙女の顔をしていたソフィアに気付かなかった自分の野暮さを

認めつつ、苦言を呈するレオナルド。


「そうですが、何か気になるのですか?

レオナルド様。」


不思議そうな顔をするウラギリス。


ウラギリス自身、教会―――。

『ユグドラシル教』の信徒ではないが、聖女だから忌避するというのは理解出来なかった。



「あー、まぁ少しな……。」



レオナルドが気にしている原因はここ最近の

ジュリアを中心に起こっている聖女騒ぎだ。



曰く、王国の危機に現れた2人の聖女。


黄金の神炎を操る炎の聖女。

清らかなる聖水を操る水の聖女。


ジュリアとシャルの事だ。


特に貴族界隈では2人の人気は非常に高い。


それこそ教会が無視出来ない程に。



特に不味いのはジュリアだ。


シャルは水と光属性を持っているので聖女を

名乗っても何らおかしくない。


加えてスチュアート家の令嬢を名乗っても許される尊い立場。


本人の人格はともかくとして、能力的には聖女の基準をクリアしてしまっている。



しかし、ジュリアは家柄はともかく光属性は

持っていない。全ては装備品のお陰だ。


そして、それが問題なのだ。


どれだけ高級でレアな装備とはいえ、それを

着れば誰でも聖女になれるのだ。


しかもそれは公爵家で量産可能という事実。


これが明るみに出れば、権威主義の教会が黙っている訳がない。



公爵家としてはこの事が外に漏れない様に隠してはいるものの、この件については目撃者が

多過ぎた。


少なくとも、建国祭の襲撃の際にジュリアが

神炎を操った事は公然の秘密となっている。



―――公爵家は正式に聖女問題は否定しているが、それをそのまま素直に受け入れるほど

ユグドラシル教の奴らが素直だとは思えん。


何事もなければ良いのだが……。



「……二人に合流するのは野暮だとしてだ。

こっそり監視するのは不味いだろうか?」


「「「!?」」」


レオナルドからの思ってもいなかった提案に

驚愕する三人。


「いやいやいや、さ、流石に淑女としてそんな面白そ……いや、はしたない真似をするなら

隠れてこっそり……いやいやいや。ボクは友達のプライベートを暴くような事はしたくないんだけど……。」


「どれだけ見たいんだ貴様……。」


分かりやすく動揺するエヴァに呆れた顔で

突っ込むウラギリス。


「エヴァ。仕方ない。この場での最上位者は

レオナルド。身分の低いクソザコナメクジである我々に逆らう権利はない。」


ふんすと鼻息を鳴らしてルーシーが頷く。


「た、確かに! ルーシーの言う通り、貴族社会的に仕方がないよね!」



言うが早いか、二人の後を追い出すエヴァと

ルーシー。



「……良いのですか? レオナルド様。」


「うん。まぁいいか……。」


呆れた顔のレオナルドとウラギリスは二人を

追い掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ