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悪役貴族のお父様  作者: 太郎冠者
第二章 長女とお買い物デート編

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お父様と神代の翼


ガルダは鳥人族の族長だ。


鳥人は分類上は魔族の一種であり、本来の素体はほぼ人と変わらない。


しかし、魔力が高いと鳥部分の占める割合が増えるという一つの特徴がある。


全員が背中に羽を持ち、より能力の高い者になれば手足も鳥になる。


鳥の特徴が増えれば増えるほど強いという訳だ。


しかし、鳥人族はそれ故に特有の悩みがある。



根本的な思想として、魔族には強い者が偉いという共通の価値観がある。


そして一般的な傾向として、魔力が多い者が族長などの支配階級になりやすい。


問題の原因として、鳥人は魔力が高いと自然と鳥の部分が増える……。



――――そう。つまり鳥人族の支配者階級は全員が全員、鳥頭(バカ)なのである!



族長であるガルダなんか、『覚醒者』なんて言われるでっかい鳥だ。


政治? 経済? 何それ美味しいの状態だ。

一族の統治なんか出来うるべくもない。


しかし、ガルダは賢い鳥さんだ。


一族の管理をアウトソーシングしたのだ。


つまり私に丸投げした。

それこそが、公爵家騎士団B隊(ブラボー)の実態である。



ピチョンっと空中に水鏡が浮かび上がる。

貌なしの超長距離通信魔法である。


流石に距離がある為、映像は見えず少し荒い音声が届く。




『アニキ、どうしたの? 何か急用?』


浮かんだ水鏡の向こう側で懐かしいガルダの声が聞こえる。


声帯の形が人と少し違う為、やけに甲高い声だ。


オウムみたいだと言ったら本気で怒られたのはもう20年以上前の話である。


鳥人族、特にガルダは長命種だからか、数年ぶりに話すのに懐かしさなどを感じている様子など一切ない。



「あぁ、割りとピンチだな」


『そうなの? さっき夢現で聞いていたんだけどウチの部族の子が何人か王都に飛んでた件?』



王都の件でスクランブルを掛け、リロイのA隊とガルダのB隊に動いて貰っている件だ。


寝惚けながら聞いていたのかコイツ……!



「いや、ある意味別件だ。南部が襲われているんだ」


『……南部? 襲われる? 誰に?』


「魔族だ」


『――――!? 戦争!? また戦争なの!?』



……おい。まさか今の状況知らないのか? コイツ。



「ガルダ……。起きたのいつだ?」


『うん? んー、戦争が終わって一段落したなと思って家族皆でウトウトしてて……。この通信でハッキリ起きた感じ』


なるほど。予想はしていたが本当に今の今まで寝ていたのか……。


この15年で色々動きがあったのだが、どうやら報告は全部寝惚けながら聞いていたらしい。



「戦後15年ほどたっているんだが?」


『あぁ、まだそんなもんか。思ったより短い平和だったね』


「それは同感だが、長命種のスケールで話されても困るんだがな……」


『そう? うたた寝していたら15年なんかすぐだよ? あ、そう言えば子どもは産まれた?』


頭が痛くなるな……。

そういえばガルダと最後に話をしたのが終戦協定締結してすぐの頃だから、まだレオナルドが生まれていなかったのか……。



基本的にガルダとその家族は目立つから安易には動かせない。


単なる鳥人族なら人の背中に羽根が生えた程度なので問題はないのだが……。


基本的に実務はB隊副隊長が取り仕切っている。

彼は実に頭のいい真面目な男だ。



「もうレオナルドも15歳だし、他にも三人子どもが出来た」


『何で起こしてくれないのさ!? おめでとう! 番はエリザベート姐さんだよね!?』


ああ、そうだった。

ガルダは私の事をアニキ、ベスのことは姐さんと呼んでいたな。


「そうだな。その内、家族皆でお前の所に行ってもいいし、手間でないならウチの屋敷に来てくれ。歓迎するぞ」


『行くよ! 行く行く! アニキと姐さんの子かぁ……。何かお祝いを考えなきゃ! 神鳥の加護とかでいい?』


なにそれ? 絶対なんか凄そうなやつじゃん!


「あー。それはありがたいが、今はこっちの話をしたいのだが?」


『あぁ、南部だね。うん、いいよ。丁度いい風が吹いている。すぐに向かう』


どこまで本気で理解しているのか怪しいが、まぁ大丈夫だろう。多分。


ちなみに、物事の理解力においてガルダはリロイと同じ枠である。



「すまんな。また迷惑をかける」


『アニキらしくない。昔誓ったろ? ボク達の翼はアニキに預けた。


――――鳥人族の翼はアニキの物だ。族長のボクがそう決めた。異界の神風(かぜ)がこの世界に吹き荒ぶ。ボク達はその神風(かぜ)に乗ったんだ。後はもう全部神風(かぜ)任せさ』


水鏡からカラカラと明るい笑いが聞こえる。


まぁガルダの場合は頭が悪いというより、人と違う尺度で生きている、が正しいかもしれん。


私がこの世界の人間ではないと気付いている数少ない人物(?)である。



パアァンとまるで風船が破裂したような大きな音が響く。


――――部屋にではない。

この教会、いや、この都市の上空で鳴り響く。



「……来たか」


思わずそう呟き、執務室の窓を開けてバルコニーに出る。



実際に何かが割れた訳ではない。

空間が極大の魔力によって捻じ曲げられ、戻った時の余波で大気中の魔力が震えたのだ。


その全長は40mほど。


中型の旅客機くらいはありそうな巨躯。

極彩色の羽根で覆った雄大な翼をゆっくりとはためかせる。

その荘厳な様子はまさに神鳥の名に相応しい。



『空握神鳥』ガルダ。


空を掌握した神の鳥。

その翼は万里の距離を無視し、彼の羽ばたきは地上全てを網羅する。



「久しいな、ガルダ。変わりがない様で何よりだ」


その巨躯を完全に操作し、ホバリングするガルダに声を掛ける。


「そお? さっきも言ったけどほんの15年じゃないか。でもアニキは……ちょっと変わったね」


言うな……。

なんだかんだで三十も半ばを過ぎてしまった。


「アニキだ」

「アニキ?」

「ちょっと変わった?」

「本当にアニキ?」

「でもトト様はアニキって言った」

「ならアニキか」



頭の上でガルダの子供たちが騒いでいる。


子どもと言ってもその図体はでかい。

翼開長10m以上。セスナ機くらいの大きさだ。



「――で、状況は?」


「まとめると、敵は我々より遥かに多くて広範囲に広がっている。そして既に攻め込まれている状況だな」


「うん。いつも通りじゃないか」


「増援はなし。我々が負けると被害は甚大。

一言で言うなら国の危機だ」


「逆にそうじゃない時があったかな?」


「ないな。……だから対応もいつも通りだ。」



呆れた顔をする私をクスクスと笑うガルダ。


「いいよ。ならいつも通り、戦友を戦場に運ぶのは僕達の仕事だ。距離も時間も飛び越して、好きな所へ連れて行くさ」



ガルダはそう言って力強くその翼をはためかせた。



――――――

――――

――



「何あれ……? あの人あんなデッカイ鳥も仲間にしてんの?」



「『空握神鳥』ガルダ。 人を超えた魔力を使って空間を歪め、時間と距離を飛び越える神鳥。人の形を捨て去り、種の起源に達した到達者なんて言われている存在だ。」


別室の窓から突如出現したガルダを見上げるシャルとエドワード。


規格外の存在の出現に青ざめるシャルとは対照的に、きらきらとした目でエドワードが眺めている。



「しかし、凄いな……! B隊の隊長ではあるけど、僕も見るのは初めてなんだ。魔族の神話に謳われるだけはある」


「何そのヤバそうなの……。絶対ボスキャラじゃん……」


そんなのゲームにいたかなぁとシャルが呟く。


「――って言うか、伯父さんあれと同格扱いなの⁉ 何ならAってBより上じゃん!」


シャルはいつも情けない顔でわちゃわちゃやっている伯父の顔を思い出して驚いた。


「別に隊の並びは強い順じゃあないぞ? それに確かにリロイは誰よりも強い訳ではないが、誰と比べても凄い奴だと僕は思う」


「まぁ、言いたいことは分かるけど……。あれ見ちゃうとね……。――――あんなのを仲間に引き入れるとか反則でしょ……」



間の抜けた顔をしてシャルと彼女に呆れた顔をしたエドワードが悠然と空を飛ぶガルダを見上げる。



「……もし死神公爵の一番優れている所を挙げるとするならワシはそこだと思う。彼奴は自分の無力さをよく知っておる」


窓に張り付いて空を見上げる二人の後ろから教皇が声を掛けた。


「どう言う事だ?」


自分が尊敬するロベルトを批判したいのかと言う様にエドワードが教皇を睨む。



「言葉通りの意味じゃ。確かに個人としてみれば彼奴は天才よ。しかし、個人で全てを解決出来ない事をよく知っておる。だから増長もせず、周りに助けを求め、仲間を作る。……十歳にもならんうちから実に老獪な小僧じゃったよ」


言外に真に異常な化け物はロベルトだと言いながら、備え付けられたソファに腰を落とす教皇。



「……のう? エドワード。お主、チェスは打てるか?」


「なんだ藪から棒に。……一応動かし方は分かるが、そんな暇はないぞ? 今からお前の糾弾を――」


訝しげな顔をするエドワードに教皇は手で待ったを掛ける。



「ワシはお主に敗北し、全ての要求を呑むと言った。二言はない」


下衆な教皇には似合わない真摯な瞳。


思ってもいない表情に面食らうエドワード。



「……ま、公爵様達が動いたんなら事態の解決までそう時間はかからないでしょうし、ちょっとくらいは良いんじゃない? エド」



あのロベルトすら小僧と呼ぶ教皇がエドワードの名前を呼んだ。


それに気付いたシャルがそう促した。

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