第9章20話 魔国の肉と水産物
最近ダンジョンからの利益が大きくなっている。何故かと言うと魔国が深刻な肉不足となっており、パトリックさんの魔国農場がまともに動くのは来年からなので肉の輸出が盛んなのだ。
「バイトの魔術師を増やしているのですが力不足で……」
魔法大学と魔法学校から募集して間引かせているのだが余り役に立たない。空中から攻撃するにしても重力魔法のレベルが低く、自在には飛べないのだ。
結局、家の奥さん達か警備隊の魔法大学出身組が週に一度くらい徹底的に間引いて来る。
空中から雷撃でダラダラ叩くだけなので、強くなってしまっている魔術師には退屈過ぎるのだ。
家の奥さん達はお金に興味が無いし、警備隊の魔術師達は高給取りなので魔獸の革に興味が無い。
「アナさんとハンナさんの後輩を呼べないの? 頑張ってくれた人には卒業後優先的に警備隊か情報隊に入れるよ」
餌は大切で7人雇えたけど、今の所は続くのか様子見中としか言いようが無い。
あのトナカイみたいのと走り回る走竜は機密だし面倒なのだ。
魔国の肉不足は深刻でラルドさんも困ってしまっている。今日は朝から我が家全員で魔国の肉生産に協力する事になった。
魔国では誰も捕らないと言われたトナカイと牛の混血みたいで《フオォォーン》と鳴く例の奴ですら乱獲されて減ってしまっているそうだ。
「現在、資源保護で捕獲禁止にしてあります」
ラルドさんの言葉に衝撃だった。我々が好き放題に狩って居た魔獸が保護対象になってしまっている。
我々はダンジョンが有るので構わないが、世の中変われば変わる物である。
我々はダンジョンの間引きした巨大イノシシとクマさんを持って魔国に行き複製している。
「大体、自分が呪われているのも気が付かなかったのでは、ここまで危機的にならないと肉不足にも気が付かないわな」
女王様がラルドさんをイジメて遊んでいる。
「……言葉も有りません」
日本に居た時も姉が居る友人は姉とは怖ろしい存在であると言っていたが、さすがに100歳以上離れていると凄いものだ。
「何でこうなったか解って無いだろう」
「……」
「魔国は昔から魚の国なのに無策に肉ばかり消費させるからこうなったのだぞ」
ラルドさんが国の備蓄を放出したのは良いが、あっという間に消費されて備蓄が底を突き、緊急輸入も難しい状態になってしまったようだ。
保存用マジックバッグを複製で増やしながら複製した魔獸を詰めてゆく。
ラルドさんは反論も無くショボンとしている。
「魔国の国民は魔獸好きで魔獸を食い尽くしては人口を減らして来た。同じ歴史を繰り返すのか?」
「仰る通りです」
「坊やを見習うが良い。この若さで去年から大規模農場を造って、今では肉を輸出するまでになったのだぞ」
「……勉強させていただいてます」
「女王様、そろそろ止めなよ。ラルドさんだって困っているのだし。来年からは農場が動き出して来るのだから」
実は今年になって、慌てて農場の数を3倍にしたのだ。最初からパトリックさんの言う事を聞いておけば大分違ったのだが。
「坊やは優しいのう。ラルド、坊やに感謝するが良い!」
「……はい」
サキバさんが笑っている。今日はドレッチェルさんも手伝いに来て魔獸肉増産大作戦なのだ。
「ミアさん、同じ肉ばかりじゃ飽きるからピヨちゃんも持って来ない?」
「超高級鳥ですね。最近森で捕れる魔獸鹿も持って来ますよ」
ミアさんはマイヤー商会の倉庫破りをする気だ。パトリックさんが魔国で勢力を伸ばしているので問題は無いのだが。
魔国はそもそもが魔術の発達した国で、とても豊かだったのだが、その為に発達も遅れてしまったのだ。
女王様の言う通り豊かな海産物に目もくれず、地上で魔法で手に入る魔獸を狩り食肉の生活が当たり前になってしまっている。
だから時折飢餓に襲われ国力が付かなかった。最近ホフマン領で働く人達が増えて豊かになり魔獸食いが蔓延して肉不足になってしまった。
女王様が怒っているのも解るのだが、仕方ない面も有るし騙し騙し来年を待つしか無いのだ。
朝から魔術師総出で肉の複製をして、魔国の肉備蓄は2倍くらいになった。
これで半年くらいは何とかなると思う。もっと魚を食べよう。
倉庫で魔獸の複製ばかりしていたので魔獸臭い気もするので、お暇して洞窟に戻って池に全員で浸かる。
「凄い量だったな。さすがに疲れた」
マネさんがお疲れモードだ。テリッチさんが全員にポーションを配っている。
「何か栄養の付く美味しい物でも食べましょうか」
テリッチさんがポーションを飲みながら提案している。
「宿の食堂は合同騎士団の隊長達が会議という宴会中ですね。館はノア様が寄子とボロミア公爵領分割で増える新寄子との顔合わせです」
行くとマズい所ばかりだ。洗濯物も置きに行けない。
「新寄子は何人だ?」
「ミノルが5人くらいと言ったので5人来たみたいですよ。男爵ばかりらしいです」
ミアさんが詳しい。
「全員で小麦を作ったら貧しくなってしまう。生産分担しないと」
「パトリックが説明に行ってますけど……どうなりますか。皆さん小麦を作りたがりますから」
ノア兄さんの手腕の見せ所みたいだ。
「またヘフナドルフに魚を食べに行かぬか?」
女王様は余程気に入ったようだ。全員賛成でヘフナドルフに行くことになった。
ヘフナドルフに着くと、お爺さんが喜んで迎えてくれた。
「夏も近いので魚の種類も変わった。美味いので食べてくれ」
「お爺さん、それ深海魚?」
「見た目が悪いが深海魚じゃ無い。柔らかで美味いぞ」
焼いたのを食べると醜い姿は気にならない。
「美味い魚だな! 初めて食べたぞ」
「見た目が悪いので食べる人は少ない。馬鹿な話しだ」
お爺さんの言う通りだ。
「ところで兄さん、あの大きな頑丈そうな船は何だ」
「あれは海上警備隊の船。海賊が出ているので造っているの」
「成る程。良い事だ北の海は危険になってしまっているからな」
「漁師さんの安全を守らないと美味しい魚が食べれなくなるからね」
本当に珍しい魚が多い日だった。季節と場所でこんなに変わるとは驚きだ。
異世界は水産物の宝庫だと思った。




