第9章21話 終話 俺と王様の意志と精霊様の意志
7月になって暑い。家族全員で大通りを歩いてギルドに向かう途中の屋台で梨と桃の雑種みたいのをジュースにして売っているのを買う。
「今年も買いに来たよ」
「坊ちゃんか、毎年アリガトな」
子供の頃から気楽に話してくれるオジサンだ。
「これ美味しいです」
テリッチさんが言うと全員が賛同してくれた。王様に呼ばれて出掛ける前に、飲みたくなって全員で来てしまった。
「ミノルちゃん色々知ってるね」
「子供の時からチョロチョロしていたから」
ミズリさんに笑われた。
家族で散歩はノンビリして心地良いのだが王様の所に行かないとならないので仕方なく皆でワープして行った。
「忙しい所を申し訳無いですなぁ。今日はヘンドリックス辺境伯の処遇に関しての相談なのです。ミノル殿にも沢山の借財が有ると聞きましてな」
「それは気を使って下さって、ありがとう御座います」
「ヘンドリックス辺境伯とシュナイダー辺境伯は何を言っても体調などを理由に話し合いに来なかったのですが、ヘンドリックス辺境伯は返事すら来なくなりましてな、扱いに困っておりますのです」
「まとめて片付けるのは大変ですので、ヘンドリックス辺境伯の爵位を取り上げて領地に対しては経済封鎖しません?」
「経済封鎖ですか?」
「国としてアイラス教団を擁護するヘンドリックス辺境伯との交流を禁じるのですよ。一切の交流を禁じて交流を続ける貴族領には同じ措置をすると宣言するのです。寄子などは王家の指示に従うなら援助をすると発表すれば、殆ど王様に逆らわないと思います。約束を守らなかった貴族には軍を送ることにすれば良いです」
「成る程、戦争を避けて孤立させる訳ですな。その方が安上がりですな」
「まともな民はとっくに移動してますし、人口も減り経済もガタガタですから向こうから攻めては来ないと思います。北の海の海賊もヘンドリックス辺境伯の所ですし、王様が海軍を出してますが、もう少し待つて頂ければ海上警備隊を設立して2艘くらい警備艇を出せます。
海岸から1海里以上出さないようにすればアイラス教団はシュナイダー辺境伯の所に多くは逃げますから、ゆっくり料理できますよ」
王様が頷いている。
「シュナイダー辺境伯のところは無視しましょうよ。皆で空気を読んで同じようなことになりますよ」
「そうしてみます。ところで警備艇は嬉しいですな。期待しておりますぞ」
「今回の決定にゴチャゴチャ言う貴族は敵認定して合同騎士団を送ってしまいましょう」
「そうですな。貴族の入れ替えに最適ですな……ミノル殿は利益が要らぬのですか?」
「兄達も僕も家族と仲良く楽しく生きる環境は整っております。平和な世界が欲しいだけです。政治活動をする人達は王位を狙っていると思った方が良いですよ。全て王様が決める事です」
「……解りました」
話しが終わってすぐに王様の宮殿からお暇した。
家族全員でリリアドルフのカフェテラスでエールを飲みながらエビを待っている。
「坊や。素晴らしい提案だったぞ」
「儂もそう思う。あれで良いのだ。戦いは避けた方が良い」
女王様とマネさんに褒めてもらってホッとした。
「余り天下国家に関わるとロクな事が無いですよ。徐々に遠ざかりましょう」
ミアさんが言う事が正しいと思う。ダラダラと引きずられて下らない決定に参加してしまった。
「ミノルちゃんは、いつものイタズラっ子で良いのよ。削れたら駄目よ」
「そうですよミノルさんらしく無いです」
ミズリさんとポニーさんまでそろそろウンザリしているようだ。
「早く山を削りに行きましょう」
安定のテリッチさんだった。
「司令様ー、後30分くらいでカニが入ると連絡が来ました!」
「断る訳が無いです!」
「少しお待ちでーす」
お姉さんがエビのソテーを置いて行った。景色を眺めていると心が落ち着いて来る。
だが心の落ち着きなどと言っているのは束の間だった。
カニは全てを変える! 家族全員で戦争のような殺気を帯びてカニを食べ始めた。通りを歩いていた普段着の魔国の貴族夫婦が女王様に挨拶してから少し二人で相談して、我々と少し離れた席を取り山のようなカニにかぶりつき始めた。
やはり魔国の貴族3人組みが入って来てカニを食べ始めた。
カフェテラスが大儲けの日だった。
それから3日後にヘンドリックス辺境伯の爵位剥奪とヘンドリックス辺境伯領との交流禁止。アイラス教団の完全禁止が布告された。
「後はノア兄さんに任せたからね。僕はコンサーバドルフの城壁計画で忙しいから」
「……分かった」
「それと箕輪さんと相談して決済銀行の話しも進めてね。フェン兄さんも魔国の問題なんだから頑張ってね」
「ミノルも少し引き受けてくれよぅ」
「話しは殆ど決まっているじゃない。それと天下国家の話しは暫く聞きたく無いの」
交渉で何とかごまかせると考えている貴族を見るとイライラして雷神を連射したくなる。
「ライリエ伯爵に手伝って貰ったら? あのお爺ちゃん頭が良いからピシッと決めてくれるよ」
叔父さんはよくこんなイラつく事に集中していたものだ。命を賭けてまですることでは無いと思う。
次の日、朝の精霊様詣でに行くと森の精霊様が待っていた。
「ミノル、昨日は良い事に気が付いたようだな。お前の嫁である精霊の守護者と守護人の言う通りだ。お前は人の世界の面倒に関わり過ぎた。もう手を引いて天下国家は人に任せるようにしろ。
さもないと精霊の意志に思われてしまう。人を豊かに幸福に導いて行くのが、お前の仕事だ。良いな」
「はい、そうします」
山の精霊様と聖樹の精霊様達は皆さん笑顔で《ご苦労さま》と言ってくれた。
とても嬉しかった。
人に引きずり込まれるのではなく、最初の頃に戻って大きな話しは精霊様の指示に従う事にしようと思った。
今まで、やった事の結果も見れないうちに次々と新しい事に巻き込まれる。これではやって来た事が正しかったのか失敗だったのかも分からない。
地に足を着けようと思う。余りに動きが急だったばかりに身近な人達まで道を誤ってしまった。
一度道を誤れば元に戻れないのは嫌という程勉強させて貰った。
俺は今を大事にする。日本から異世界に逃げて来て家族まで出来た今、次に行く場所は無いのだから。
とりあえず……おしまい。
長い間、私の物語に付き合って下さって有り難うごさいました。読者の皆様には心から感謝しております。
書き残している部分も多いのですが、一度終わりにして練り直さないと話がどんどん大きな方向に向かってしまうので、とりあえず終わりにさせて頂きます。
初めての作品に最後まで付き合って下さって、本当に有り難うごさいました。
現在『辺境物』を書いているので、近いうちに再度お付き合いしていただけると嬉しいです。三章まで書いて書き直し中ですから何時になるか現在言えませがW
それでは、また近いうちに。




