第9章17話 式相談と儀礼服
ノア兄さんの結婚式の前日朝に王様から呼び出しを食らった。ソシル子爵の館がモンスターに襲われ炎上したようだ。
「我々は何も知らないですね」
「……」
「トメル公爵の領地のように、男爵と騎士に与えれば良いではないですか?」
マネさんも興味無さそうに言っている。
「それで良いのですか?」
「坊やが良いと言っているのだ。気にするな」
女王様には逆らえないようだ。
「ボロミア公爵側の男爵達を少し寄子で引き受けて貰えませんかな? 一気に増え過ぎで王家には手が回らんのです」
「少しならなんとか……でも他の貴族達に恨まれたりするなら嫌ですよ」
「それは有り得ませんな。殆どの貴族達は自領で精一杯ですからな」
「王様も新しくお妃を娶るので大変でしょうから5家くらいまでならなんとか……」
俺が承諾すると王様が嬉しそうにしていた。
「話から推測するとステン王子はボナブル公爵跡継ぎで納得したのか?」
「ステン王子はまだ話してませんか? ステン王子とトト師匠は結婚してボナブル公爵跡継ぎになるのが一番安全な方法とボナブル公爵とロドニー公に説得されまして、その方向で行きます。今のままだと命をまた狙われるだけで良い事も無いでしょうからなぁ。
もう暫くの間ステン王子は預かってくれませんか?」
「それは構いませんよ」
「ノア殿の辺境伯跡継ぎと同時くらいに発表しようかと考えてますのじゃ。第一王子から親衛隊を取り上げましたので当分大人しいと思いますしな」
「あの使え無い騎士団は?」
「全員クビにしました」
これで王都は暫く収まりそうだ。第一騎士団が使えるようになっているので、王様も強く出れるようになっている。やはり兵力は必要だ。
「ステン王子の親衛隊はボナブル公爵が引き受けるのですか?」
「全員はキツいみたいです。20人引き受けてやっとと予想してます」
「ではリストを早めに出してくれれば、何人かは引き受けてても良いですよ」
「ステン王子が喜びます。お世話になってばかりですな」
「騎士団を増やさないとドロン騎士団隊長がキレますので」
「そうだな、自然減を埋めるだけでもしないと不味いからな」
マネさんも少しホッとしているようだ。
「トメル公爵とソシル子爵の所に出ているモンスターは何処から来ているのか知りませんかな? あのような巨大で強いのは見た事が無いと恐れている貴族が多くて困ってます」
「統治が決まったら退治して差し上げますよ。トメル公爵家とソシル子爵家の廃嫡が先でしょう」
「そうですな……決まり次第、連絡しますぞ」
ノア兄さんの結婚式後は忙しくなりそうな気がして来た。
「貴族院で暗躍していた貴族の7割は消えたので、暫くは平和だな」
マネさんの言葉に王様も頷いていた。
「第一王子はステン王子に手を出さないように説得してあるのですか?」
「いえ、表向きには何も起きてませんが……廃嫡して幽閉しました」
「随分思い切ったな」
女王様が驚いている。
「第二騎士団の隊長、中隊長は昨日逮捕したので指揮官がおりませんが、安全にはなりました」
「領地持ちの騎士で信頼出来るお爺ちゃんに暫く任せるのは如何です?」
「流石ミノル殿。それは考えつきませんでした。早速やります」
「王も思い切ったな、坊やがやると精霊が煩いから私が良いものをやろう。早く嫁をとれ」
女王様が王様に再生魔法をかけて、少し若くしてしまった。
「明日の式で皆を驚かすが良い」
王様が慌てて鏡を見ている。
「何と感謝して良いのか……」
「感謝するなら私の坊やにするのだな」
「明日の警備は? 王家としても貢献しますぞ」
「今頃、隊長さん達が全員で宿の食堂で打ち合わせしてますよ」
「我々が口を出さん方が良いぞ」
「そうですか……」
「ミノル司令。そろそろだそ」
約束の時間に近かった。
「王様スミマセン。ホフマン家の一番怖い人に召集されてますので……失礼します」
「何か有りましたら念話下さい」
マネさんが王様に言っている。
「ホフマン家の怖い人……ですかな?」
「はい。絶対に逆らえません」
「……そうですか……では、また」
マネさんと女王様と俺はホフマン家の館に飛んだ。
応接の間にテリッチさんミアさん、ポニーさんにミズリさんが司令服で緊張した顔で居た。
「ミノル坊ちゃん、お忙しいところ申し訳ありません」
「とんでもないです」
ミリーさんがニコニコと迎えてくれた。
「坊ちゃんと奥様方は明日は司令服で式典に参加ですので、しきたりに沿ったマントを用意しましたので身体に合わさせて頂きます」
「あっ、ハイ」
パトリックさんと仕立て屋さんらしき人達がマントを持って隣の部屋から現れた。
今、着ているマントを渡すと黒に裏地は赤の配色は同じだが少し長く皮長靴の少し上まであり、生地は光沢が少しある。
鏡の前で合わせてもらうと両肩に金縁に金のモールが付いているホフマン家の紋章が付いている。余り大きく無くてカッコ良い。
仕立て屋さんが肩章の位置を合わせて黒くて柔らかな
肩パットを入れて縫い付けている。
「坊ちゃん。お似合いです! ミリーは誇らしいです!」
「有り難う」
「来年にはノア様の辺境伯就任も有りますので用意させて頂きました」
「マレリア奥様は司令付き参謀ですが女王様そのものです。流石でございます。伝統のマントがお似合いです!」
「そ、そうか。有り難うミリー、世話になる」
女王様までミリーさんのペースに巻き込まれている。
テリッチさんは黒ローブの首元に背の低い詰め襟が付き金モールとなっている。袖には金の房というか羽みたいな刺繍がされていて、マントと凄く合っている。
「テリッチ奥様、キツくはありませんか? 首元が擦れるようなら言って下さいませ」
「いえ、とても楽ですし柔らかいです」
「先々代の奥様が考案なされた儀式用ローブでございます。ミリーも久し振りに見させて頂きます。お似合いでございます」
「あ、有り難う御座います」
「テリッチ奥様。使用人に丁寧語はお止め下さい」
「マネ奥様は本当に軍人らしく美しく、素晴らしいです!」
マネさんが照れまくっている。
ミリーさんが全員に話し掛け、皆がオロオロしているうちに肩章の位置とローブの長さが合わされていた。
パトリックさんが説明を始めた。
「皆さんの場合、明日とても何か有る可能性が残りますので、司令服ローブとマントの性能は同じとなっております。肩章のお陰でより余裕を持たせる事が出来ましたので戦闘は楽になっていると思われます」
奥様達は姿見の前で凄く嬉しそうだった。確かにカッコ良いのだ。
明日用の白いシャツとカッコ良い黒ブーツ全員二セットずつ貰った。
「何かの為に館に皆様の儀礼服は予備が置いてありますので申し付け下さい」
全員でミリーさんにペコペコして帰って来た。




