第9章15話 ライテンブルク炎上
宿の食堂で酒盛りをしていると王様から王宮にすぐ来て欲しいと連絡が入った。
「何で騒いでいるの?」
「第一王子が騒いでトメル公爵と交渉をしろと王様に詰め寄っているようだ」
馬鹿な王子だ。自分からトメル公爵側と白状しているようなものなのに……
「トメル公爵とソシル子爵はあの2万の兵を動かす気は無かったのではないか。王と話し合う為の芝居だろう」
女王様がニヤニヤしている。
「馬鹿な事を考えるから破滅が早まったようだな」
マネさんが笑いながらエールを飲んでいる。
「飲んでないで行ってあげますか」
仕方無いので全員で王宮の謁見の間にワープした。
謁見の間には昔ながらの王様の配下の貴族達がフル装備で駆けつけている。
「ミノル殿、お忙しい所を呼び出して申し訳無い。第一王子の情報でトメル公爵とソシル子爵が2~3万の兵をライテンブルクに結集しているらしくてな、王子が交渉を主張しておるのです」
「ここに居られる貴族の皆さんの意見は?」
「皆、脅されて話し合う必要無しで一致しております」
王様も困ったような顔をしている。王様が余程言い聞かせているのか、王子も貴族達も怖い顔をして俺達を見ている。
「2~3万の兵なら我々が行って蹴散らしてしまいましょうか? 1日掛からない仕事です。それとも連合騎士団の演習に使いますか? 平地戦では無いので余り演習にもならないと思いますが」
第一王子の顔色が良く無い。逆に貴族達が笑っている。
「王様の望むようにしますよ。僕もトメル公爵とソシル子爵には多少腹が立っていますので」
「先程ライテンブルクに兵が結集しているのを確認したばかりで、何の為に結集しているのかが判らんのですじゃ。いきなりこちらから叩くのも後で面倒ですからな」
「ミノル司令。コロン騎士団情報隊長からライテンブルク炎上と連絡が入りました」
ミアさんがニヤニヤして俺に小声で伝えて来た。
「国王陛下。こちらの情報ではライテンブルクが炎上しているようですね」
第一王子が青くなったり赤くなったり顔色が良く無い。
「これで精霊の守護主様の手を借りなくとも良さそうですな。王子もこれ以上騒がぬ方が良いと思いますぞ」
ライリエ伯爵がニコッと笑って始めて貴族として発言した。他の貴族達も声を出して笑い始めた。ライリエ伯爵はライリエ第一騎士団隊長のお爺ちゃんだ。70歳くらいだろうか? 白髪碧眼でフルプレートの装備でカッコ良い。貴族達のリーダー的存在らしい。
「第一騎士団が近くの山に斥候を出しております」
「じゃ私達も行ってみよう」
女王様が逃げる合図をしている。
「頼みましたぞ。現地にはライリエ第一騎士団隊長も行ってますぞ」
お爺ちゃんを見ると孫の名が出て嬉しそうにしている。
透明化して見に行ってみると30層のボスは3体程減っていた。
『魔獸も減っているようだな。少し足してやろう』
マネさんが念話でミアさんポニーさんミズリさんと話している。テリッチさんも魔法陣の様子も見ると言って4人でワープして行った。
街は館を中心に炎上している。ライテンブルクの外の兵は撤退を始めているようだ。
山に行くとライリエ第一騎士団隊長がいた。
「ミノル司令殿。御足労頂き有り難う御座います」
第一騎士団の面々が直立不動で迎えてくれた。誰の軍か分からなくなっている。
「状況は魔獸とモンスターが現れ城内の戦いになっております。城外の兵が門を制圧してモンスターと魔獸が外に出ないよう門を閉じて占拠。他の兵は帰路についていると見られます」
ライリエ第一騎士団隊長の説明を聞いているとソシル子爵に尚更腹が立って来た。
「トメル公爵も惨めなものよな。仲間に完全に見捨てられている」
マネさんが話していると、30層の強化型地獄の使者が三体追加された。テリッチさんが新たに魔力を床の魔法陣に注ぎ込んだようだ。
「爬虫類型と猪型の魔獸も増えているようです」
斥候に行っていた騎士団員が嬉しそうに報告してくれた。合同練習を始めてから、皆さんとすっかり仲良くなっている。
「誰か王様に報告しないとマズいですよ」
俺が言うとライリエ第一騎士団隊長がハッとしてワープして行った。それと同時にもう三体の地獄の使者が現れ、その内の一体が我々の居る山に巨大なファイヤーボールを放った。
「全員隠れろ!」
『テリッチさん、やり過ぎです』
『ご免なさい。撤収します』
俺の念話にテリッチさんが応えて来た。
「見つかって我々の責任にされるとマズい。総員撤収!」
王宮に帰るとロドニー公とボナブル公爵が来ていた。
「ミノル殿。これで気兼ねなく結婚式が出来ますな」
ロドニー公がニコニコと話しかけて来た。
「兄が無事に身を固めてくれないと困るので助かります」
「ノア殿が最後の独身ですかな?」
ライリエ伯爵が聞いて来た。
「そうなんです。奥手で困ります」
『王様。ライリエ伯爵は結婚式に来るの』
念話で聞いてみる。
『呼びたかったのですが、王家の枠が下らぬ奴らで一杯になってしまいましてな。第一王子すら抜いてありますのじゃ』
「ライリエ伯爵は、ご出席頂けるのですよね」
俺がカマを掛ける。
「いや。呼ばれておりまぜぬ」
「それは失礼しました。私が今から迷惑でなければ招待させて頂きます。普段着で顔出しだけでもお願い出来れば兄も喜びます」
「喜んで出席させて頂きますぞ」
ライリエ伯爵が満足そうに応えてくれた。
王様はライリエ伯爵の顔を立てれてホッとしたようだ。ロドニー公とボナブル公爵も念話で礼を言って来た。どうやら王様やロドニー公、ボナブル公爵がライリエ伯爵を招待すると他の貴族達が不満を持つので困っていたようだ。
『坊やは政治家に向いておるの』
女王様に念話でからかわれてしまった。




