第9章13話 結婚式の準備
結局、俺は三日くらい女王様の洞窟で寝ていたようだ。もう大丈夫と思っていたのだが、一万人の戦死者は響いたようだ。
ミアさん、ポニーさん、ミズリさんが俺の面倒を順番に見ていてくれた。起きたら勉強会をして貰ってまた寝る。何も考えない環境を作って貰って再起も早かった。
騎士団の合同演習は大成功で、大した怪我人も無く圧勝で終わったようだ。
「他の貴族達が、こちらの大連合軍を恐れているようだぞ」
マネさんが現状を説明してくれている。
「特に第一王子がチョロチョロしているようだ。ステン王子が王位継承の意志が無いと言っていても、強い親衛隊を持って合同騎士団に所属して、今回の結婚式にもホフマン家の客人で参加するのでハラハラ者よ」
「ノア兄さんの結婚式は王様が出るので、第一王子はリストに載って無いですよね」
「だから面白いのじゃ」
女王様が楽しんでいる。
「ソシル子爵とトメル公爵が第一王子に接触しているようだぞ」
マネさんもニヤニヤ。
「王様も苦労が多いよね。早く後妻さん貰って子供でも作れば良いのに」
王様と仲の良いミズリさんが心配そうにしている。
「ロドニー公の館か私達の宿で会えないかと、王様とボナブル公爵が言って来ました」
ミアさんが念話をしている。
「ロドニー公の館を特別警戒、目立たぬようにな。10時に会談設定だ。フェン殿にも出席要請を」
マネさんの指示で動き始めた。またドロン騎士団隊長が忙しくなりそうだ。
「王党派の大物貴族達を、結婚式リストから外したという噂だぞ」
「王様も思い切ったですね」
「仕方無いさ。先日の第三王子反乱の時も動かないで様子見していた連中ばかりだからな。王宮に駆け付けたのは古い一部の伯爵と子爵、男爵ばかりだった」
「あのフルプレートのお爺ちゃん達?」
「そうだ。損得抜きで王宮に飛び込んで来たのが、あれだけだった」
女王様のお陰で少し政治が理解出来るようになったようにな気がする。かと言って係わる気は無いけど。
「結婚はするけど、ノア兄さんが辺境伯を継ぐのは一周忌が終わってからだから我々は貴族達を見ているしか無いですよ」
「貴族の結婚式の面倒な所を全て盛り込んであるのう」
マネさんの感想が全てを端的に表していた。
時間になったのでロドニー公の館に行くと、顔触れが揃っている。『なんでもっと早く来ないんだよー』という顔をしているフェン兄さんの隣りに座った。女王様とマネさんが俺の隣りで、残りの席に他の奥さん達が座った。
「ミノル殿、体調は如何ですかな?」
ロドニー公が心配そうに聞いて来た。
「お陰様で、後1万くらいの軍勢なら大丈夫なくらい復調しました。心配かけて申し訳有りません」
「お陰様で演習には丁度良い強さと量になって、騎士団は大喜びでしたぞ」
「あの弱かった我がボナブル公爵騎士団でさえ自信と練習の大切さを知ったようで合同練習に積極的になりました」
ロドニー公とボナブル公爵がとても喜んでくれている。
「第一王宮騎士団も騎士らしくなって来て、私よりドロン騎士団隊長に忠誠を誓っているという冗談が第二騎士団から出ているくらいですぞ」
全員の笑いを取ったのも束の間、王様の顔が暗くなった。
「実は今日、皆さんに相談したいのが先日の演習大成功で、他の貴族達が不満を持って怪しい動きを始めたのです。親戚関係だけで1000騎を超える正騎士団が戦闘可能な練度を持ち魔国との連合で2500騎を超え、飛竜騎兵まで持っていると、敵対していた貴族などが気が気でない状態らしくて……」
「寄子貴族達と雑兵を集めると最低でも10万の兵となりますが、我々も自分達から戦争を始める気は無いですぞ」
ロドニー公が心外と不快感を露わにしている。
「彼等が何か始めたのですかな?」
女王様が分かっていて聞いてみる。
「第一王子にソシル子爵とトメル公爵の一派が動いているらしいのです」
「また反乱ですか? アイラス教団も金と人材を失った今、戦闘を継続出来ないでしょう」
「ミノル殿が正しいと思うのですが、相手は先手を打って王都の占拠くらいなら可能と考えているようです」
「何時頃かわかります?」
「ノア殿の結婚式で王である私が王都を留守にした時という噂が聞こえて来てますな」
「第一王子は話に乗っているのですか?」
「乗り掛かっているような……いないような。ステン王子が目立っているのに焦っていると言うか……」
「ステン王子は王様レースに興味無いですよ。十分な稼ぎが有るし、今はトト師匠に認めて貰うので必死ですから」
ポニーさんが言うと、皆さん納得な様子。
「トト師匠がステン王子の嫁になってくれれば安心なんだが」
ロドニー公が言うと王様とボナブル公爵も頷いている。
「でもノアの結婚式を邪魔させる訳にもいかないよな」
フェン兄さんが珍しく真面目な顔で話している。
「大丈夫だよ。ノア兄さんがテルリアさんにデレデレしているうちに精霊様が解決策を打ち出すかも知れないし……」
「精霊様がね……ミノルに任すわ」
皆さん頷いて精霊様頼みとなった。




