第9章07話 合同演習2
ネットゲームのイベントじゃあるまいし、年に何回もモンスターに街を襲われるのは納得行かない。去年なら大騒ぎになっている筈なのに演習対象になってしまっている。
顔を出さない訳にもいかないので、城壁上の貴賓席に顔を出して三人でコソコソ話している。
「原因を突き止めないと面倒な事になりそうな気がします」
女王様とマネさんは同意してくれたのだが、方法が判らない。
「さっき空中から見ても空間的な歪みも無かったし、魔素溜まりらしき物も見え無かった」
女王様が諦めムードだ。
「サイクロプスが居る事からも、ここらのダンジョンから来たとは思えんな」
マネさんに賛成するしか無いだろう。この大陸でサイクロプスの話しは聞かない。
「出て来る場所が限定的ならソシル子爵の所にでも転送してあげるのに」
「ソシル子爵には走り回るのでも送るしか無いだろう」
マネさんが笑いながら話している。やる気が有るみたいだ。
貴賓席にテルリアさんが居る。
「ノア兄さんは?」
「あの隅っこの所に居ます」
指された所を見ると騎士見習いを三人引き連れて整列している。相変わらず目立たないようにして戦いに参加だ。
「ノア殿が居るのですか?」
ロドニー公が気にして聞いて来た。居る所を教えると興味津々で見ている。ノア兄さんの所に親衛隊のプレートを着た騎士が現れた。
ノア兄さんと打ち合わせしているようだ。
「あれステン王子ですよ」
俺が言うと王様とボナブル公爵も注目を始めた。
「何故あんな所で……」
王様が不満そうだ。
「ここはあの二人が目立ってはいかんだろう」
皆、女王様の一言で納得していた。
森からモンスター達が出て来た。王様達が拍手で迎えている。完全にエンターテイメントになっている。
「確かにこうやって見ているとカッコ良いな」
女王様の言う通りだ。1200人を超える騎士団が陣を整えて待ち、モンスター達が射程圏に入るのを弓部隊が待っている。
「客に見えるように、飛騎竜部隊はトロルが森から出るのを待っているようだな」
「モンスター達も統率されて無いしダラダラ森から出て来るので演習には最適でしょう」
見ていると騎士5人でモンスター1体を片付けているようだ。
「ドロン隊長は完全に混成編成で挑みましたな。家の騎士団みたいに経験の無い騎士達には最適な勉強の機会です」
ボナブル公爵がとても喜んでいる。
「魔国の騎士団も動きが違うし、作戦編成が高度なので勉強になりますぞ。鼻の高いフライト将軍が大人しくドロン騎士団隊長の言う事を聞いてます」
ラルドさんが笑っている。
「ステン王子の親衛隊が強くなりましたな。羨ましい」
王様が溜め息混じりにボヤいている。
「ノア殿は強いですな! ステン王子と見習いを引き連れて切り進んでますな」
王様が感心している。
「トロルが現れましたぞ」
「ドロン騎士団隊長が隊列を下げてますな」
ボナブル公爵とロドニー公が興味津々だ。
ドロン騎士団隊長が飛騎竜部隊を投入した。空から弓と魔法の攻撃でトロルを叩き始めた。
「ガオー!」
飛騎竜部隊はトロルを徹底的に攻撃している。我が魔術師達は上空から見物のようだ。
「魔術師抜きで結構戦えるものですな。作戦と練度で騎士団が凄い戦力になっている」
ラルドさんは魔国飛騎竜部隊と騎士団の活躍に満足しているようだ。
飛騎竜部隊が高度を一斉に上げると、騎士団の後ろに居た合同弓部隊300名が一斉に矢を放った。放物線を描いて矢がトロルに襲い掛かってゆく。
飛騎竜部隊は真上からファイヤーボールと矢をトロルに浴びせ掛けていく。
「トロル50体全部、騎士団と飛騎竜部隊に渡しても良かったな」
マネさんの言う通りだ。魔国の飛騎竜部隊は何時も叩く側だったので弱いと思い込んでいた。
「あれはフェン兄さんですね。王宮の留守は大丈夫です?」
弓部隊の中にフェン兄さんが見える。
「演習にしてしまってますが、ホフマブルグが攻められている訳ですから駄目とは言えませんな」
ラルドさんが笑って言っている。内緒で来ている訳では無いようだ。
弓部隊と飛騎竜部隊の攻撃でトロルを倒し終えると、合同弓部隊と飛騎竜部隊はオークとオーガの討伐にかかった。
合同騎士団も攻撃前進を再開してモンスターを押し上げ、矢と飛騎竜部隊の魔法攻撃の雨の中に追い込んで行く。
合同騎士団もモンスターの数をドンドン減らしてゆくので、あっという間にオーガとオークの数が半減している。
騎士団がモンスター達を囲むように展開して、逃げ道を塞いでいる。飛騎竜部隊は逃げ始めたモンスター達を狩り始めた。
合同騎士団に当たるので、弓部隊が攻撃を止めてから1時間くらいでモンスター達は全滅した。
飛騎竜部隊も次々と降りて来ると整列を始めた。
「諸君! 今ここで合同騎士団によるモンスター討伐が我等の完勝である事を宣言する!」
ドロン騎士団隊長の勝利宣言が平野に響き渡り、騎士団と飛騎竜部隊の歓声が沸き上がった。
空から見ていた魔術師達が透明化を解いて現れ、着陸して怪我人の治療を始めた。皆さん軽症のようで治療時間はすぐに終わった。
警備隊の助っ人が正門から出て、騎士団と合同でモンスター達の魔石回収を始めた。
「魔国は今、肉不足でして……」
ラルドさんの希望で魔石回収が終わったモンスター達は、マジックバッグに入れ魔国に持ち帰る事になった。粒状化をしなくて済むのでとても楽だ。
サイクロプスの解体は既に済んでいるようで、テリッチさんがゴキゲンだ。トメラさんはテリッチさんにサイクロプスの角を一本貰ったらしく、ニコニコしている。
話し合いの結果回収した魔石は家とラルドさん、ロドニー公とボナブル公爵で4等分した。
「我が家の奥様達とサキバさんは除いて、参加してくれた魔術師達と弓士達に一人2個の魔石を配って下さい。オーガ1個とオーク1個ずつです。残りは騎士団と警備隊の経費とします」
トメラさんとステン王子が辞退して、魔石は結構経費となった。




