第9章01話 ヘフナドルフでお昼
アイラス教団の修道院も叩いたし、王都の反乱も制圧したので暫くはお休みをしようと言う事となり、洞窟に引きこもって魔国から持って来た鉱石の整理などをしてダラケていた。
「坊や、倉庫が出来たぞ」
女王様が研究室の奥に材料置き場に10メートル角くらいの石造りの倉庫を作っていた。
「材料置き場だな。本当の倉庫は池を挟んだ反対側に作る予定だ」
テリッチさんが棚を作ってニコニコと整理をしている。最近、戦利品が増えて手狭になっていたので本当に助かる。
「これで新しい機材も使い易くなります」
セルファン王国からも相当持ち込んだので、機材も凄く増えている。
「セントニアで稼いでいた所は良い機材を持ってますよね」
「婆は使い方から覚えないとな」
「マレリアさんならすぐに使えるようになりますよ。便利ですよ」
テリッチさんがとにかくご機嫌だった。
「お昼はヘフナドルフに魚を食べに行きましょうよ」
ミズリさんが退屈になっているようだ。
「賛成でーす。マレリアさんも初めてでしょう」
ミアさんも出掛けたいようだ。誰か連絡したらしく、マネさんとポニーさんは騎士団の練習を切り上げて帰って来た。
「今、汗を流すから少し待て」
マネさんとポニーさんが池に浸かっている。
「皆、楽しみにしているな。そんなに良い所なのか?」
女王様が不思議そうに聞いて来た。
「漁村ですよ。漁師さんが取れたてを料理してくれるのが美味しいのです」
「楽しみだな」
女王様がソワソワしている。女王様の魚介類好きは筋金入りだ。刺身も気にしないで食べる。
「用意出来ました」
ポニーさんまで満腹用意でローブ姿になっている。誰一人剣帯すら着けていない。
全員でヘフナドルフに飛んだ。
お爺さんに会うのは久し振りだ。
「兄さん元気だったかい?」
「お陰様で」
「今日はまた凄い美人が増えているな。良く来た。美味しい生きの良いのが沢山釣れているぞ」
お爺さんがフライパンを3個並べて用意を始めた。
「兄さん、今日は平和に飯が食えると良いな」
女王様が『?』と言う顔をしている。
ヘフナドルフは現在、港の整備中で特別警戒をしている。ここに飛び込んで来る馬鹿も居ないだろう。
「今まで僕がここに来ると、必ずトラブルが起きていたのですよ」
「坊やはトラブルを呼び込むのが得意なタイプかのぉ」
「嫌な事は忘れて魚を楽しみましょう」
ミアさんの目は大きな魚に釘付けになっている。
「この先に料理店も出来たのじゃ」
「お爺さんのが美味いに決まっているのに、行く馬鹿は居ないですよ」
「そうだな、夜に来た時なら行っても良いが昼間ならミノルの言う通りだな」
「なかなか気の良い奴で、元漁師だから夜に来たら使ってやってくれ。夜中までやっている」
「港湾工事は遅くまでやっているの?」
「遅くまで、なかなか忙しくやっているぞ」
大きな白身魚が焼き上がって、配り始めた。
「白身だが油が乗っている。美味いぞ」
お爺さんが次のをバター焼きにし出した。お孫さんのお姉さんがエールを配っている。
「美味い! 坊や、これは美味いぞ!」
「エールも自家製ですよ。魚に合います」
「本当だ。これは美味い!」
女王様が喜んで食べている。
「この外でキャンプみたいにして食べるのが良いな」
「兄さん達が来たから警備隊がウロウロし出したぞ」
お爺さんが笑っている。警備隊は俺がヘフナドルフのトラブルメーカーと思っているらしい。
鮭みたいな赤身の魚がバターの焦げ目が着いて美味そうに焼けて来ている。
早く焼けないかなと思って見ていると、箕輪夫人のドレッチェルさんが現れた。
「伯母様、お邪魔して良いです?」
「座れ。良く来た」
「ミアさんに誘われて我慢しきれなくなりました。伯母様に会えて、美味しい魚料理が食べれるチャンスですもの」
「初めて来たが、ここの魚は本当に美味い」
女王様がどんどん御機嫌になってゆく。
「兄さんが初めて来た時から比べると、人口が3倍くらいになっている。仕事も増えたし皆、兄さんに感謝しておる」
やはり港湾工事が大きかったようだ。城壁も作る予定だし、どんどん発展してくれると思っている。
「ここの港が良くなると魔国も相当助かると思うぞ。目の前に魔国の大型港があるからな」
「伯母様を担いでいたグループが連合を組み出したと言う噂が聞こえますよ」
ドレッチェルさんが女王様に忠告している。
「大丈夫ですよ。噂に上った貴族は全滅させますから。ノア兄さんの結婚式で、こちら側の勢力図も変わります。必ず、こちらの劣勢貴族と魔国の反魔王グループは手を結びますからチャンスかも知れません」
「ドレッチェル、安心せい。坊やの言う通りだ。こっちは待っていれば敵は動き出す」
今日は大漁だったと言うだけあって、初めて食べる魚が沢山出て来る。どれもビックリする程美味しかった。
「大型と中型の船が増えたので、漁民の行動範囲が広がりましてな。魚の量と種類が増えましたのじゃ」
「凄い量だろうけど売れるの?」
「この村とリヒトブルグで結構消費してしまうからホフマブルグはまかないきれないみたいですよ」
ミアさんの説明に依ると、魔国から大分魚を買っているようだ。
「魔国とは、どんどん密接になって来るのう」
「どこかで不満分子を一掃せぬと面倒な事になるな」
マネさんが真剣な顔で考えていた。
真面目な話しをしているのは数人だけで、殆どは魚に興味が行っている。皆で次々と食べてしまうので、お孫さんのお姉さんがもう一つ調理用の焚き火を作って魚を焼き始めた。
「儂の孫でな女だが良い漁師だ。料理も上手い。食べてやってくれ」
本当に調理が上手かった。味付けも焼き具合もお爺さんに負けないくらいだ。
お爺さんとお姉さんが焼く魚を我々は片端から食べ尽くしてゆく。エールなど何杯飲んでいるのか分からないくらいだ。
ミズリさんとポニーさんの目が据わって来ている。面白がって女王様がエールを注いで歩いている。
我々は2時過ぎまで食べまくって、やっとお腹一杯になって落ち着いて来た。
「腹がいっぱいだ。少し歩こう」
マネさんの意見に賛成してヘフナドルフを歩く事になった。
町は発展して店が増えている。メインの通りは色々な店が並び宿が二つも出来ていた。そのうちの一つがお爺さんがお爺さんが推薦していた食堂だった。
ミアさんが入って行って偵察していた。
「夜は一時までやっているみたいです」
今度夜食に来る事で意見が一致した。
酔っ払いのミズリさんとポニーさん、テリッチさんまで辛そうなので全員で妖精の池に行った。
「妖精さんコンニチワ」
俺が挨拶すると空中で妖精さん達が手を振っている。
とりあえず酔っ払い3人を池に浮かべておいた。妖精さん達が、アルコール臭いのか鼻をつまんでいる。
思い起こすとテリッチさんは会話に入って来ないで、ひたすら飲み食いに専念していた。珍しい事だ。
「ここなら酔いを醒ますには良いだろう」
マネさんが酔っ払いを浮かべ終わって、土手に座っている俺の隣りに座って言った。
大量のバスタオルを洞窟から運んでから女王様とミアさんも池に浮かびに行った。
俺も疲れを感じて来た。
「疲れたなら寄りかかれ」
言われた通りに久し振りにマネさんに寄りかかっていたら、香りと温かさで寝てしまった。




