第8章23話 4月になった
遂に4月になってしまった。異世界に親戚から逃げて来て一年間、色々な事が有り過ぎた。
叔父さんもお母さんも居なくなって、ダニエルまで行方不明になっている。
ノア兄さんとフェン兄さんとは仲良しだけど、皆それぞれに家族が出来て、俺も奥さん達が居なかったらボッチだった。
「ラルド。何故素直に人の忠告を聞けないのだ。生ける精霊である筈の魔王が死ぬ運命だったり宮殿から離れられなかったり、おかしいと思わなかった事自体が混乱状態ではないか」
「姉上の言う通りです……」
今日、朝からラルドさんを説得して呪いを解いてみたら見事に呪われていたのだった。
女王様はエールで喉を潤し続ける。
「お前が混乱していたから本当の宮殿ですら、坊やばかり気にするのだぞ。呪われて無いと威張っておったな。何だあの真っ黒の妖気は! 自分で気が付かない事自体呪われておる」
「その通りです……」
さっきまで俺と我が家のお姉さん達全員でラルドさんの浄化をして、ラルドさんからどす黒いような煙り状の物が大量に出ていたのだった。
女王様は、またエールで喉を潤し、続けた。
「鏡を見てみろ。坊やが再生したお陰で正しい姿に戻ったろうが。何故、自分が老化していくのか不思議に思わなかった?」
浄化の後でラルドさんを再生したら32~3歳くらいのイケメンオヤジになってしまった。
後から来たサキバさんが、若くなってしまった父親を珍しそうに見ている。
「言葉も無いです……」
「女王様。もう勘弁してあげなよ」
「坊やが、こう言うから止めるが少し反省せい」
ラルドさんが可哀想なくらい落ち込んでいる。
次々と料理とエールが運ばれて来る。
「トメラも呼んでやれば良かったな」
「来れるなら呼んで下され」
マネさんのつぶやきにラルドさんが応えると、ミアさんが連絡している。
「ラルドさん、宮殿に行ってみたら? 反応が違うと思いますよ」
「そ、そうですな。少し失礼しますぞ」
ラルドさんがワープで居なくなった。
「坊やは優しいな。助け舟を出したな」
「だって可哀想なんですよ」
「良い子だな」
「女王様とマネさんはミノルちゃんに甘過ぎ」
「私もそう思います」
ミズリさんとポニーさんに二人が突っ込まれている。
「女王様は止めて下され。マレリアで十分ですぞ」
「じゃ私達に殿を付けるのを止めて下さいよ。そんな立派な者じゃ無いですって」
ミアさんが言い返している。
「私は新参者ですからな」
「嫁仲間になったら全員同じですよ」
テリッチさんが一言で終わらせた。
エールを飲んで皆それぞれ勝手な事を言って楽しんでいると、ラルドさんが嬉しそうに戻って来た。
「宮殿と街が私を主人とハッキリ認識しているようですぞ。それと昔の街や古い家の土台も見えるようになりました」
「お前の兄上になってしまった坊やに感謝するのだな」
「本当だ。ミノルさんと叔母様が結婚したんなら、ミノルさんはお父様の兄上ですね」
「それは勘弁して下さいよ」
俺がお願いすると、女王様が優しく微笑んで俺の頭を撫でてくれた。
昼過ぎからマネさんとポニーさんが仕事が有り、王宮でドロン騎士団隊長と王様に会うとかで居なくなった。 女王様はもう少しラルドさんをイジメたいようだ。
「テリッチさん、皆さん仕事が有るようですし薬草見に行きません? 女王様の泉の奥に見慣れ無い植物が生えていたの見ました?」
「長い時間居なかったので、見てません。行きましょうか」
女王様に泉の薬草を取る許可をお願いすると、何時でも勝手に使って良いとの返答だったのでテリッチさんと泉に飛んだ。
泉は我々が住んでいる洞窟の倍は有る広さで、奥の部分に花などが群生している。
「あそこなんです」
「本当だ! 珍しい薬草が沢山生えている」
テリッチさんはローブから鎌を取り出し、薬草を採りに行った。俺は相変わらずテリッチさんの薬草集めをボーッと見ている。
薬草を一抱え持って来て泉の側に広げ、ローブを脱いだ。
「ここも結構暑いですよ。ミノルさんは泉に浮いていて下さい」
泉に入って縁でテリッチさんの働いているのを見ていると、縁に生えている苔も種類が違う事に気が付いた。
「テリッチさーん。此処の苔を見て下さい」
テリッチさんが来て苔を見ている。
「種類が違う珍しい苔ですね。とても助かります。余り手に入らない苔なんです」
テリッチさんは俺にキスしてくれた。
テリッチさんが薬草採りをもう一度やって、泉の苔を集め始めた時、女王様がやって来た。
「テリッチさん、良いものが有りましたかな」
殿から、さんになっている。
「貴重な物が沢山生えてます。助かりますよ」
女王様も泉に入ってテリッチさんを見ている。
「今、聞いたのだが王への反乱スポンサーはボロミア公爵経由のアイラス教団だそうだ。私の親戚が軍を送る予定だったらしい」
「ボロミア公爵がまだ暗躍しているんだ」
「お金は何処から出たのでしょうね」
「セントニアを魔国に送って稼いでいるようだ」
「また魔獸を送ってやりましょうか? 魔法陣はこの前のが使えますし、37層の魔法陣は生きてますから出口を作ってやればすぐですよ」
テリッチさんが言いながら苔を集めている。
「じゃ、今日の夜中に魔法陣を張りに行きますか」
「37層の魔獸は貯まっているのかな」
「これ洞窟に置いて見に行きましょう。マレリアさんは初めてですよね、ダンジョン」
「うん、行ってみたいな」
洞窟に行くとマネさんとポニーさんが帰って来ていた。テリッチさんが状況を説明している。
「私は情報隊に行ってクレールブルクの場所を確認して来ます」
ポニーさんがワープで飛んで行った。
我々三人で37層に行った。所狭しとワイバーンの飛べないのが貯まっている。
「数に不足は無いな。しかし良く増えとる」
また魔獸が増えているのでマネさんが驚いている。
「こんな魔獸を見たのは初めてだ。街に放したところを見たいな」
女王様は期待でワクワクしているようだ。
ポニーさんが来た。
「今クレールブルクに行って来ました。1万人以下の街で館も小さいです。余り人も歩いて無いですから、今でも館の前に有る広場に魔法陣を貼れますよ」
ポニーさんと女王様が行ってみる事になった。二人は魔法陣を持って透明化して居なくなった。
「女王様が楽しそうですね」
「そうだな、本当に楽しそうだ」
「私と同じで、長く一人だったのだと思いますよ」
目の前の魔獸の群れに動きが出て来た。魔獸がどんどん消えてゆく。
「儂が少し動かして来る」
マネさんが飛んで行って雷の弱いので何カ所が刺激を与えている。
魔獸が魔法陣に吸い込まれるスピードが速くなった。
二人が戻って来た。
「凄いぞ。あの魔獸は出て来た途端に館に突進して壊してしまった」
「本当に凄かったですよ。館が古いし木造だったので、呆気なかったです見に行きます?」
「粉々の館を見ても仕方無いですよ。それより魔獸を減らさないと。魔法陣の出口効力の3日間でスカスカにしましょう」
女王様が嬉々として魔獸を動かして、魔法陣に誘導している。
ミアさんがエールとソーセージと串焼きの肉を持って来た。ピクニック気分だ。
「これで王様とホフマン家の報復になれば、一仕事終わりなんですけどね」
「館に居ればそうなっていると思うぞ。凄い早さで館は崩壊したからな。ポニーさんが驚いていたくらいだ」
女王様が言うとポニーさんが頷いている。
そのまま夜まで魔獸を動かしながら、我が家の宴会が続いた。




