第8章19話 マレリア女王様
あの女とか言っていたけど、やはりお母さんはどうしてもお母さんで時々治療も兼ねて来ている。
今日はノア兄さんの結婚式の報告に来た。ラルドさんも気を使ってくれてアデルさんは後ろに行かされ、お母さんとマレリア女王は定位置の一番前に居る。
「お母さん、ノア兄さんが結婚式を挙げる事に
なったよ。出席して貰えなくて残念だよ」
お母さんが俺を見て微笑んだような気がした。
「坊やの兄上が結婚式をするのか?」
マレリア女王が話し掛けて来た。暫く前からここに来ると必ずみたいに話をしている。
「そうなんです。やっとホフマン家も正常になりそうで、ホッとしているんですよ」
マレリア女王と言う名前も自己紹介で教えてくれた。俺はお母さんとマレリア女王にゴブリンの治療魔法と再生魔法を掛けながら話している。
ここのゴブリン魔術師より俺の方が魔法が強いようで、ゴブリン魔術師も喜んでいる。
「めでたい話しは嬉しいな。ここに居ると退屈で」
「スミマセン、僕が女王様を撃ち落としたばっかりに……」
「良いのだ。お陰で頭も正常に戻って、周りに利用される事も無くなった。坊やの責任では無い」
当時、嘘を吹き込まれて洗脳状態だったようだ。
女王様の肌が凄く荒れている。治療と再生を掛けまくって、なんとかマシにした。
「無駄だ坊や。すぐ戻ってしまうだろう」
「僕が奥さん達と住んでいる池に漬けておけば、治るのですが……」
「坊やの嫁達に迷惑を掛ける話しだ。忘れなさい。私も自分しか入れない治療の泉を持っているが、行きようも無いしな」
「ラルドさんに相談してみますよ」
前の宮殿に行くとラルドさんが既に居た。
「ミノル殿が来ていると聞きまして、待ってました。マレリアの治療までして頂いて済みませんです」
「マレリア女王が皮膚病になっているんですよ。けっこう重傷なんです」
「治してやらんと不味いですな」
「ゴブリン魔術師では駄目らしくて、最近は僕が治していたのですが急に症状が悪化しているのですよ」
「マレリア女王はもう自由にしてあげたいのですが、今度は命を狙われていまして……かと言って宮殿に迎える訳にもゆかず困っているのです」
「暫く僕の客人として宿に泊まって貰いますか?」
「とりあえず、そうして頂いて宜しいですか? あそこなら安全ですし、助かります」
「二三日女王様の泉で治療してからで良いですか?」
「あそこはマレリア女王以外入れないのですが、余り長く一人に出来ませんぞ」
「分かりました。何とかします」
洞窟に帰ってマネさんに状況を説明する。
「ミノルが撃ち落とした女王様か。ミノルが付いていてやれ。ところでどんな人だ?」
「見た目は40歳くらいのキツイ感じ、綺麗な人ナンだけと。確か800歳以上だったと思った」
「ミノルがデレデレ出来ないタイプだな。治るまで付いていてやれ」
「デレデレなんてしません! 治療が終わったら僕の部屋を使って貰おうと思ってます。箕輪さんの奥さんの叔母さんだと思うので知らせてあげて下さい。昼御飯は一緒に食べましょうよ」
テリッチさんが女王様が着るローブとサンダルを持って来てくれた。
「皮膚用のポーションです。使ってみて下さい」
女王様へのお土産にミアさんがくれたサンドイッチとコーヒーが入ったマジックバックも持って村に行った。
「女王様ー。許可貰って来ましたよー」
ゴブリンの中から女王様が現れた。寝ていたようだ。
「良く許可が貰えたな。坊やはラルドに信頼されているのだな」
「女王様の泉は僕も入れます?」
「私と一緒なら入れるぞ」
「じゃ一緒に飛びましょう」
「私は魔法が使えないのを忘れたか?」
女王様を浄化魔法できれいにして、再生魔法で下半身の筋肉を再生した。
「立ってみて下さい」
女王様が立ち上がって、喜んでいる。
「とても失礼なんですけど少し身体に触れますよ」
「構わんぞ。好きにすると良い」
女王様の後ろに回って抱き付いた。魔力が流れてゆく。
「ワープしてみて下さい」
ワープが成功して泉のある洞窟に着いた。
「こんな手が有るのか! 初めて知ったぞ」
「僕の住んでいる洞窟に似てますね。こっちの方が広いですけど」
女王様が一部鏡張りの壁の前で自分を映しウンザリした顔をした。筋肉が失われて身体全体が緩くなってしまっている。
女王様が泉に入って身体全体を泉に浸すと細かい泡がいっぱいたった。
「坊や、背中を流してくれぬか? 久しぶりの湯で痒い」
思わないリクエストに驚いた。
「恥ずかしがるな。坊やの母親より年寄りの女に恥ずかしがってどうする」
女王様の迫力に負けて一緒に泉に入り、手で背中を流した。凄い勢いで泡がたった。女王様は口を何回も濯ぎ顔と頭も洗っている。
上半身と腕の筋肉も減っているので再生して、背中に触れながら治療魔法を掛けると効果が高かった。
「済まんな、坊や。こんな婆の皮膚炎に付き合って貰って。お陰で凄く楽になっている」
「このままではローブも着れませんから」
「そうだな。普段は着ないが、食事にも行けないのは困るな」
「昼食にドレッチェルさんを呼んであります。家の家宰の奥さんなんですよ」
「それは奇遇だ! 楽しみだな」
「魔壁の修理は明日には何とか終わらせますので、我慢して下さい」
「坊やは治せるのか?」
「はい、得意です。任せて下さい」
「もう無理だと思っていた! 嬉しいぞ」
女王様が本当に嬉しそうだった。
顔に凄く荒れが出てシミも酷いので、先に治療する。不思議に精霊魔法の治療が良く効いた。手と肌が触れた場所が青く光を放つ。どんどん肌が綺麗になってゆく。
歯茎も緩んでいるようなので、口に手を入れさせて貰って治療した。腫れが取れたようだ。
「精霊魔法か、珍しいな。何故、全てを持って無いのだ?」
「精霊様がくれた魔法だけですよ」
「なら私のを坊やにあげよう。これで殆ど全ての精霊魔法が使える筈だ」
女王様は俺の頭に手を乗せ、少し魔力を取ってから魔法を移転してくれた。
「坊やは魔力が豊富だから、借りるのも楽だ」
女王様が笑っている。
「精霊魔法も普通の魔法みたいに、項目で別れているのですね。再生魔法も有るんだ!」
精霊魔法を全てレベル50で貰っている。以前から持っている精霊魔法のレベルに引っ張られて、どんどん増え出している。
皮膚炎はゴブリン魔法だが、筋肉ならと思って女王様に立って貰って全身の筋肉に精霊魔法の再生を使ってみた。
長く魔法を維持していると筋肉が再生され始めた。垂れた身体に筋肉が戻ってカッコ良くなって来た。
「疲れたので、少し休みます」
「当たり前だ! あんなに長時間……人が良いのも程々にしろ」
ふらつく俺を女王様が抱くように支えてくれた。女王様は俺より大きいので支えるのも楽なようだ。
魔力を相当使ってしまったのだが、すぐに戻って来る。
「女王様は凄いですね! 魔力がどんどん戻って来る」
「私ではない、泉の力だ。私の筋肉も相当戻っている。坊やを簡単に支えられるぞ」
女王様が俺を振り回して遊んでいる。
「久しぶりに身体を動かせる。嬉しいぞ!」
密着していたので肌が擦れて爆発してしまった。力が抜けて木偶人形になっていた。
女王様がそれに気付いたのは暫く後だった。
「坊や……坊や。大丈夫か? 済まない事をしてしまった。意図的では無いのだ。余りに嬉しくてな、振り回してしまった。婆で申し訳無かった」
俺を覗き込むようにして話している。
「女王様は婆では無いですよ。凄くカッコ良くて美人です」
「可愛い事を。良い子だな。嬉しいぞ」
女王様は俺が撃ち落とした時みたいに、強気のかたまりみたいな顔で無くなっている。
魔力が戻っていたので再生を続け、身体の線がカッコ良くなったところで止めた。また3分の1くらい魔力を使っていた。
女王様を見ると32~3歳くらいに若返っていた。
「女王様、女王様。若返っちゃった!」
女王様が慌てて鏡に走って自分を見ている。
「坊や! アリガトー!」
思いっきりキスして貰った。
「自分では若返れ無いのだ! まさか坊やが出来るようになるとは思わなかった」
女王様は話しによると、そろそろ寿命だったようだ。せいぜい50年が良いところと、諦めてたらしい。
再生レベルを見ると80を超えていた。凄く魔力が無くなった筈だ。
「もしかしたら、魔壁を再生で治せるかも。やってみますね」
精霊再生魔法で簡単に治ってしまった。
「女王様、両手を出して」
治したばかりだから少しだけ膨らませる。
「これで地脈と魔素の両方から魔力が得られますよ」
「凄い勢いで魔力が溜まってゆくな。何と礼を言ったら良いのか……嬉しいぞ」
女王様が涙目になっていた。
「坊やは精霊達とほぼ同じ魔法を使えるようになっている。他に持って無いものが有ったらやるからな」
「じゃ僕もプレゼント。自分で飛ぶ方法です」
頭に手を置いて飛ぶ知識を直接渡してあげた。
「凄いな! こうやって飛んでいたのか」
女王様が泉の洞窟の中を飛んでみている。
「魔壁が治って最初に使ったのが飛ぶ魔法とは……坊や、感謝するぞ」
ラルドさんはどうやって飛んでいるのだろう?
「女王様もラルドさんと同じで、生きている精霊様なんですか?」
「そんなようなものだ。だから私を担ぎ出したい者が居るのだ」
「大変ですねー」
「坊やは平和で良いな……」
女王様が俺をジッと見てから言った。
「後で、その削れて中途半端に治してある所を修復してあげるからな」
「中途半端なんですか?」
「まだ坊やの嫁達が慣れていないのか、頑張っているのだが足した部分が定着していないのだ。今に慣れるだろうが時間がかかるな」
女王様が言うには最初に限界まで精神を削ってしまったので、後で足しても剥がれ易いのだそうだ。マネさんが前に言っていたのと同じだった。
「その時すぐに治しておけば大事にならなかったのだが……」
女王様は俺の知らない事を色々と話をしてくれて楽しかったが、昼食時間になったので宿に行くことにした。




