第8章17話 ノア兄さんの結婚式
あれから三日間くらい、お詣り以外何もしていない。6人家族で仲良く気ままに過ごしている。
洞窟の池以外に妖精の池と温泉の池も有るので、適当にバラけると開放的空間でプライバシーも作れる。
だが一日の多くは何故か全員一緒に居る。俺とミアさん以外は孤児の出身なので、家族が出来たのが嬉しく楽しいようだ。
俺もようやく慣れて来て、マネさんとテリッチさん以外の奥さんにも自分から色々とお願い事を出来るようになった。
お陰様で削れた部分もすっかり良くなり、健康的になっている。
今日は朝からミアさんミズリさんとポニーさんが王様に呼ばれ、トメラさんも入れて5人で朝食会だそうだ。
王様も相当ストレスがたまっているらしい。
俺は作業部屋でノア兄さんに頼まれたポーションを作っていると、テリッチさんとマネさんが見に来た。
「何を作っているのです?」
「肌の敏感ポーションの強力型を使った例のポーションなんです」
テリッチさんが驚いている。
「布団で擦れただけで動けなくなりますよ」
「僕もそう思うのですが……兄とロドニー公が強力なのが欲しいと言うので」
「今ので十分強力だと思いますけど」
三人で考え込んでしまった。
「そう言えばミノル、ノア様が引きこもって出て来てないそうだ」
マネさんが、にこやかに言った。
「兄さんは夢中になると、そればかりになるから」
「ボロミア公爵がミアノスドルフを捨ててクレールブルクに移転した事も、セルファン王国と戦争していた事も知らないのではないのか」
ボロミア公爵は領内第二の街クレールブルクに移転していた。ミアノスドルフは魔獸に破壊され尽くされたようだ。これで暫くは何も出来ないだろう。
「箕輪さんが家宰になっていて良かったですよ。ロドニー公と相談して、結婚式を早いうちにしてしまわないと」
「そうだな。儂もそれが良いと思うぞ、テルリアさんの年齢を考えて子作りもせねば」
ポーションが出来上がって、毒性テストをしてみると全く問題無かった。
「試飲テストは怖いものがあるな」
「そうですね……」
マネさんとテリッチさんが珍しく消極的だ。
「テスト無しでノア兄さんとフェン兄さん、ロドニー公に配ってしまいますか」
「そうだな、箕輪さんにも差し上げたらどうだ。奥様は魔族だから問題無いだろう」
「そうですね。以前から、あのポーションの愛用者ですし」
我々三人は館の執務室に飛んだ。フェン兄さんと箕輪さんが話をしている。
「ミノル、体調は良くなったの? 無理したら駄目だよ」
フェン兄さんは何時もの調子だ。
「すっかり良くなったんで新型ポーションを持って来たんだけど」
「どんなの?」
「ノア兄さんとロドニー公のリクエストで、肌の敏感ポーションを強めにしたやつを作って来たんだけど……兄さんと箕輪さんも要る?」
フェン兄さんと箕輪さん用に100本の箱を二つ出した。
「毒性テストも全てパスしているけど、こっちではテストして無いから」
「どのくらいの強さ?」
「二倍くらい」
「……家でテストするよ」
箕輪さんが黙って自分用の箱をマジックバッグに入れている。
「ノア兄さんは?」
「一週間くらい会って無い」
箕輪さんも首を縦に振っている。
「呼んでみるわ」
フェン兄さんが念話を始めた。俺はノア兄さん用の箱を机に出した。
「面倒くさそうに話していたくせに、ミノルが新型ポーションを持って来たと言うと10分後に来るって」
「ノア兄さんはもう結婚式させた方がいいよ」
「私もそう思います!」
箕輪さんにまで言われている。
「6月の花嫁でロドニー公を説得して結婚式はロドニー公の館で全てお任せ、費用はこっち持ちで考えているけどフェン兄さんどう思う?」
「それ良いね! テルリアさんだって喜ぶよ」
「こっちはラルドさんと寄子さん箕輪さんだけで良いよね。ラルドさんが来てくれればだけど」
フェン兄さんが念話している。
「必ず出るって」
話が勝手にどんどん決まっていく。
「ノア様がロドニー公に言われて驚く所が見たいです」
テリッチさんとマネさんが笑っている。
ノア兄さんとテルリアさんが来た。
「ミノル、待たせて済まないな」
「私がミノルさんに会いたいとワガママを言ったのです。申し訳有りません」
テルリアさんは相変わらず美人だけど、顔色が赤みがかって汗ばんでいる。
「いえ、テルリアさんに会えるのは嬉しいです。姉がいるのは嬉しいことですよ」
「ミノルさんにそれ言って貰えるなんて嬉しいですわ」
テルリアさんの呼吸が少し乱れている。ポーションが効いている最中のようだ。
「今日は他の奥様達は?」
「王様に呼ばれて身内だけの朝食会だそうです。あの三人は王様びいきですから」
「叔父様ったら、相変わらず綺麗な人と話すのが好きなようですね。宰相がイライラしている頃ですわ」
「そうなんですか?」
「あの方、自分抜きで朝食会されるのを凄く嫌がりますの」
面白い事を聞いた。ノア兄さんが箱をチラチラ見ている。
「兄さんのリクエストした新型だよ。効き目は二倍くらい有るけど、これ以上は無理だから」
「済まんな、ミノル」
ノア兄さんが少し赤面して箱を抱えた。
「ミノルさんアリガとー御座います。今度、是非とも私がラインレル様のヒロインみたいな姿を見に来て下さいね。テルリアは頑張ってますのよ」
ニッコリ微笑んで言われると凄く困る。ノア兄さんが凄く慌てている。
「さあ、早く部屋に帰って新型を試しましょう」
テルリアさんに即されて、ノア兄さんとテルリアさんがワープで消えた。
「本当に天然だな」
マネさんが感心している。
「家の奥さんと凄く仲良しなんですよ、最近」
箕輪さんが少し困っている。
「僕はこれからロドニー公の所に行って、何が何でも話を進めて来るね」
「ミノル、頼むよ」
フェン兄さんが頭を抱えていた。
三人で朝食を取ってからロドニー公の所に行くことにした。
「今朝はカニオムレットと野菜のシチューです」
朝のお姉さんがコーヒーを持って来てくれた。
「カニオムレットは美味そうだな」
「マネさんはエールの方が良いんじゃないですか?」
「ロドニー公の所に行くからな。少しガマンだ」
マネさんが誰かと話している。
「ロドニー公が来るそうだ」
ロドニー公が夫人とワープして来た。
「カニオムレットと聞きましてな」
「レオニー夫人は、ここ初めてですよね」
「そうなんでですの、楽しみで」
笑顔の素敵な夫人だ。
「丁度、伺おうと思っていたところです」
マジックバッグに入れたポーションをロドニー公に渡した。
「これは、有り難いです」
ロドニー公と夫人がマジックバッグを覗き込んでニコニコしている。親も娘も天然過ぎる。
お姉さんがジョッキを見せるとロドニー公が頷いている。
「実は相談が有りましてな。ノア殿とテルリアの件でして……」
「何か問題でも?」
「その、婚約の儀だけでも早いうちにと思うのですよ」
お姉さんがエールとカニオムレットを配膳し出した。夫人がうっとりと匂いを嗅いでいる。
「食べながら話しましょう」
夫人は自分の娘の婚約よりカニオムレットが大事みたいに食べ始めた。
「美味しいですわ!」
エールも飲んでいる。マネさんがホッとしてエールを飲み始めた。
「婚約の儀なんて面倒くさいですから6月辺りで結婚式してしまいません? 僕の生まれた所では6月の花嫁は幸福になると言うのですよ」
「宜しいのですか?」
「ロドニー公が言えば兄は逆らわないと思います。フェン兄さんと僕は賛成と言っていたと言って構いません」
「ロマンチックですわ」
「式はロドニー公の館で、好きにやって下さい。費用はこちらで全て持ちますので。男兄弟しかいないので、仕切れません。是非とも宜しくお願いします」
話しはどんどん進んでゆく。海老のバターソテーが出て来てエールも進んで酒宴となり、王様達まで飛んで来てしまった。
ヤバいと思ったが既に動き始めたものは、止めようが無かった。




